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私だけのヒーロー!?

作者: しょこれぃと


 今日もこの時間がやってきたのだ。

そう、朝の満員電車の通学の時間が!

私の高校の制服は、雑誌で常に上位にランキングされる程の可愛らしいデザインなのです。

ピンクと黒の色彩の織りなす制服の組み合わせがバッチリで、黒いネクタイのクールさ加減がたまらないのだ! 後ろに結んであるリボンもこれまた最高の仕上がりなのだ。

まぁ、私もそれが目当てで中学三年生の時に猛勉強してギリギリのラインで入ったのだ。入れてよかった~って思うことは制服だけじゃない。

そう、私は変なフェロモンを放っているのかなぁ? よく電車の車内で、週の半分以上痴漢に逢ってしまうの……。

私、名取南なとりみなみは『ふぅ』と溜息を吐いてしまった。仕方ないよね。だって女の子だったらみんな痴漢が怖いもんっ!

(はぁ……いやだなぁ。でも!)

 私には強い味方がいる! 名前は倉瀬裕貴くらせひろたかクン。いつも困っていて、いつだか痴漢の手を取り撃退し、震え上がっていた私を慰めてくれた事があった。

その時は名前も知らず、ただただ、『かっこいいなぁ』と思っていた。そして彼は颯爽と『それじゃぁ、気をつけるんだよ?』と言って学校へ行ってしまったのだ。

それから私は彼の事が気になり、彼のことを調べた。だって、すごく美形で素敵な男子なんだもん! 情報に長けている友達の女子に、外見と制服の特徴と、特に目立った『竹刀』を持っていたという事を話したら、友人は彼の名前をさらりと教えてくれた。そういう友達を持つとすごく助かるなぁなんて。

(剣道部に入っていて、強いって聞いたけど見に行きたいなぁ。応援したい! はぁ、でも倉瀬クンはモテるんだろうなぁ。事情通の友ちゃんが優良物件って言ってたし。はぁ~ぁ)

 だって、顔は目は二重のぱっちりで、口元は甘い感じで、何より雰囲気大人っぽい! 言葉遣いも丁寧で、正義感が強い。何より、冷静でたまに話す時に私をレディとして扱ってくれる。

一回目の痴漢騒動から毎日守ってくれてるなんて優しい人なんだろう。本当に尊敬してしまう。声が出せずじっと我慢して痴漢の魔の手から逃れる日を待っていた私には、電車の中は苦痛極まりない世界だった。

だけど、痛みを和らげてくれたのは誰でもない、倉瀬クンだった。その日から私は変わったって言ってもいいぐらい!

ぼんやりと倉瀬クン萌えを頭で考えて、頭なでられたりとか、キスされちゃったりとか!

 そんな妄想をしていたら、いつの間にか待ち合わせの時間になっていることに声をかけられて気付いた。

「おはよう。なんか顔赤いけど大丈夫?」

「え、あ! 大丈夫だよ! おはよう。倉瀬クン!」

 最上級の笑顔で応えるのは当たり前だけど、あらぬ妄想をしていたことが激しく恥ずかしくて、私はついつい赤くなってしまう。

笑顔は大事! いつも好きな人には良い印象でありたい! って思うのが乙女でしょ!

駅のホームから見える青葉が夏を感じさせる。暑い日差しをうけ、輝いて見える。勿論いつも輝いているけど、倉瀬クンは!

「今日も暑いね、あ、ネクタイ曲がってるよ。ちょっと待って」

 そう言うと倉瀬クンの手が私の胸元のネクタイに伸びてくる。

(しまったぁ……身だしなみチェック忘れてたぁ)

「はい。できた。今日は三つ編みなんだね。可愛いね」

「あ、ありがとう。身だしなみチェック忘れてた。ぁぅぁぅ。可愛くなんてないよ。でもありがとう!」

(どうしよう。褒められちゃった。嬉しすぎる!)

いきなりなんてずるい。可愛いなんて言われてトキメキを感じない女子なんていない。このドキドキとした鼓動が伝わってしまったらどうしよう。寧ろ伝わって? って!

「名取さんは可愛いよ。笑ってると更に可愛い」

「え!? なんで私の名前知ってたの? 確か知らなかったよね?」

「この間美術のコンクールに応募しなかった? うちの学校で話題たんだ」

「そ、そうなんだ」

 名前知っててくれた! 嬉しすぎる!

うーこの思い伝われー!! もう! 神様のいじわる!

「倉瀬クンも有名なんだね。剣道で県大会行ったって聞いたよ? すごいね!」

「あ、うん。ありがとう」

 微笑みが眩しい……。神々しいというか、もうメロメロだよぉ。はぁ……。倉瀬クンモテるんだもんなぁ。うちの学校にもファンがいるくらいだし。もう嫌になるー!!

「友達がね、倉瀬クンのこと好きでね、よく話し聞いてるの! よく告白されてるって聞いたからすごいなぁって」

 好きな子ってのは私だけどね……はぁ。

「俺、好きな人いるから……相手はどうなのかわからないんだけどね」

悔しいなぁ。私ばっかり好きで。なんだか空回りしててちょっと淋しい。ブルーになってきた。好きな人……いるかぁ。はぁ……。

でも、でもだ。ここで諦めたら私の名前が廃る! 乙女というからには恋に生きなければ!

「あ、電車きたみたいだね、行こうか」

 そんな微笑ましいような悲しいような光景を繰り広げていた。けれども時は無情なもので、朝の倉瀬クンタイムが過ぎていく。そう、電車に乗らないと。あの、暑い暑い、満員電車に乗らなくちゃならない。ぎゅうぎゅう詰めの電車の中は妙な匂いがする。なんだか線香の匂いやら、香水の匂いやら色々混ざってくらくらする。

(私は邪魔なだけだな……好きな子ってどんな子だろう。可愛いんだろうなぁ。その子が羨ましい。妬んでしまいそう。こんな私キライ)

 涙が零れそうなのを必死に堪えて隠そうとして、倉瀬くんから離れた。

(だって、泣いたら何て言ったら良いかわからないもん)

 ただただ、悲しい。好きな人なんていなくなっちゃえばいいのに! なんて考える私ってなんて嫌な子なんだろう。

それでも倉瀬クンは私が自分から離れたのを知らず、必死に引っ張ってくれる。それだけで心が救われる。大事にしてくれてるけど、所詮ただの女の子。好きな人と結ばれたら私は要らない子……。それでも懸命に右手で私の腕を引っ張ってくれる手が熱い。

(この時間がずっと続けばいいのに……)

 そう願わずにはいられなかった。女々しいなって思ってしまう。

でも諦めちゃだめ! こんなんで諦めたら私は何も出来ない子になっちゃう。しっかりしなくちゃ。

気を取り直して近くに寄った時、事は起こった。なんとやっぱり、おしりを揉みしだく感触を覚える。

何度も何度も経験したあの感覚が。

(嘘、嫌だ……どうしよう。やだ。怖い)

 そう。いつまでも倉瀬くんを頼ってられない。自分で。うん自分で対処しなくちゃ!

でも声がでないよ……でも手を払えない。どうしよう。助けて!!

「や、やめ――」

 おしりを揉む手が更にエスカレートしていき、スカートの下着の中まで侵入しようとしている。どうしよう助けて! 倉瀬クン!

「……っ!」

 触る手が二人に増えてしまう。なんてことなの! いやらしいさわり方で嫌気と吐き気がする。すると

「何やってるんですか! 犯罪ですよ。電車降りて下さい」

「な、な、なにも私はしていないぞ。私の手を離せ。糞ガキが! な、何を見ている! お前。ぅっっ! 糞ガキが……」

 周りがざわめきだつ。女子高生や、サラリーマンなど、色んな人達がこそこそとうわさ話をし始めている。男は顔を真赤にさせ激怒さするが、倉瀬クンはその手を離さず強引に駅から降ろしてしまう。私も降り、駅員さんと警察の方とお話をし、私は半泣き気味だった。

だって気持ち悪かったから。

サラリーマン風の男は、くたびれたスーツにしおれたネクタイ姿でお縄についた。

なんとか事件が片付いたので、ホッとした私は涙がいつの間にか溢れていた。なんでこんな目に遭わなきゃいけないのかわからないし、助けてくれた倉瀬クンにお礼を言いたいけれど、涙が止まらなかった。

「泣かないで名取さん。俺がついてるから。ね? ほらこれで拭いてあげる。俺、嫌な思いをさせちゃって無力なトコが辛かった。ごめん」

「え!? そんなことない。絶対無い! 助けてくれたもん。だからありがとう。本当にありがとうございます。」

 全身全霊をかけて私はお礼を言う。手を握りしめて悔しそうにしている姿をみていたら、涙が自然と止まっていた。

「だって、俺、痴漢するとかありえないって思ってるし、許せないから。だから俺の無力なところが許せなかった。だって好きなのってキミなんだよ」

「え!?」

 私は驚きを隠せないというよりは本当に時間が止まったような感覚に陥った。だって好き? 好き? 私を?

ワタシノコトガスキ? 何かの間違え? でもでも。これ夢じゃないよね。だよね?

ほっぺをつねったら痛かった。やっぱり夢じゃない。

「あのね。私の好きな人、倉瀬くんなのだから……その付き合ってください。だから幸せにしてください! お願いします」

 頭を下げるとお互い『ごちんっ』とぶつかる。コレも甘い思い出になるんだろうなぁ。うん。嬉しい。私の事好きって……。なんて幸福なんだろう。好きな人って私って――ニヤニヤしてしまいそうなのを抑えニッコリと微笑んだ。

「笑ってくれた。よかった。いつこの思いを伝えるか迷ってたんだ。俺幸せにするよ!」

 こうして私達は幸せな日常の第一歩を踏み出したのだ。毎日守ってもらい。大学へと進み。そして結婚。お決まりの『お風呂にする? ご飯にする? それともわ・た・し?』もしちゃった!

時は流れて、私たちは老いていき年齢を重ね、ついに裕貴クンは死んでしまった。

ガンと五年戦い苦労はしたけれど、最後を看取れてよかったな。でも淋しいよ。私を一人にしないでくださいよ。『あなた』――いつの日かまた来世で出会う事を祈りつつ、命が尽きるのを最後まで支えた。


「あらあら、あなたデジカメなんてもってたのね。何がうつってるのかしら? みてもいいわよね? 私達の思い出の記録かしら?」

 そう思い私は拙い手つきでデジカメをいじるとなんと『パンチラ写真』などが出てきたのだ。

最初はなんだろうと思ったけれども、もしかして痴漢していたのは旦那である裕貴クンだったのかもしれない……。そう考えるとふつふつと憤りが感じた。

私はいてもたっても居られず、裕貴クンが眠っているとされるお寺へ行き、カチンときたので線香なんてあげるなんて以ての外だ。

寧ろツルハシを持って行き、墓を壊そうとしてのをお寺の住職さんにより止められ、願いは叶わず。

それでも気が収まらず覚えていなさいとばかりに

「あなた……地獄にいるのか天国にいるのかわからないけれど、私の命が尽き果てたら……わかっているわよね。拷問してやるからね」

 乙女の純情を踏みにじったこの日から、裕貴クンをどう落とし入れるかを考えて余生を過ごしていくことになった。私は忘れない。優しさはあったけれども、それよりもだ。それよりも許せないと言っていた『正義感の強い』男の姿はもう既に記憶の彼方へと消えていった。

処女作を少しいじりかきました。

純愛をかきたかった。でもどうでしょう。笑

笑ってくださったら光栄です。

楽しく読んでくださったらなおうれしい!

ヒーローというものはどういうものなのか。

恋する乙女はどんなものか

そんな感じでかいてみました。

また書きます。

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