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文武平等  作者: 風紙文
第二章
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一年前、始まりと原因

アタシが通っていた中学は、田舎にあった。登校の度に田んぼの畦道を通るぐらいの。さすがに高校はここより田舎な訳はないだろうと、友達みんなで話したものだ。

そして卒業したアタシは推薦を使ってこの高校に来た。寮生活が必須となってみんなと離ればなれになってしまったが、友達だって入学式直後すぐにできたから別に寂しくはなかったわ。

それからしばらくして、部活を選ぶ時期になった。

友達がどこにしようかと話し合っていてアタシに話題がふられた時、迷わずここの推薦の理由になった部活、バスケ部に入部届を出すと言った。

すると友達の一人が、頑張ってね、と応援してくれた。何故応援してくれたのか? その時のアタシには知るよしも無かった。

そして初めての部活の日、新入生の自己紹介が終わり、そのまま練習が開始された。

もちろん新入生が二、三年生と同じ内容をする訳がない。まずは屈伸運動やランニングなどの体力作り。

新入生初めての内容は、外周だった。

ここの外周はかなり長く、それを部活時間いっぱいやること、しかもノルマを課せられていて超えられなかった人は次回に持ち越される。はっきり言って、新入生にはかなりキツイ内容だった。

そんな時、ある一人の新入生に目が行った。彼女は毎回の外周でノルマをこなせず、貯金が貯まる一方だった。

毎回見ていて分かったのが彼女、体力はあまり無い、はっきり言ってこの部活には向いてないと思った。

しかも、バスケ部と共に兼任して他の部活にも入っている為、二回に一回しか来ず、外周は更に貯まっていく。

別に彼女のやっている事、分かっていてやっているのだろうから、アタシがとやかく言う事では無いだろうと思い、でも気にはなったので観察は続けていたある日、彼女の方から話しかけられた。

意外にも波長が合った為、アタシは彼女、町田花香と友達になった。

互いにクラスも同じだったし、話す機会は他の友達よりも多くなっていった。

それと同時に、バスケ部の内容が体力作りから本格的練習へと変わり、激しさを増していった。まぁアタシはと言えば推薦で学校に来たレベルだ、むしろ体力作りより付いていく事が出来ていた。

しかし……花香は違った。

その体力作りよりも忙しく大変な内容に花香は付いていく事が出来ていなかった花香に、先輩は、


付いてこれないなら

部活を辞めなさい


そう言い放った。

花香はもちろんショックを受けただろう。

けど、アタシもショックを隠せない程に受けていた。

この部活の強さの理由……それは努力の積み重ねによる結晶ではなく、強者のみを集めて、弱者を切り捨てるこの制度にあった。

この言葉を糧に這い上がって強くなる生徒も居るのだろう先輩はそれを見越してそう言ったということも分かる。でも花香にその力は無かった。

その言葉にアタシははっきり言って……腹がたった。

誰かを削るその制度。それはアタシの居た中学での禁忌。

それをアッサリとやる……こんな部活に付いていく……考えただけで嫌だった。

その晩、アタシは花香に訪ねた、まだバスケ部に入り続けるか。

そしたら……部活はイヤだ、でもバスケはやりたい、続けていたい、と。

だったらと、アタシの提案を言う、花香は喜んで賛同してくれた。

アタシの提案はこうだ。

まず、バスケ部を辞める。そして、新しい部活を作るのだ。新しい……バスケ部を。

早速行動に移る……部活を作る条件は3人以上の部員となる生徒と、顧問となってくれる先生のみ、登録さえ出来れば部室は用意してもらえる。つまり、アタシと花香の他もう一人の生徒が必要となる。

しかし、女子3人でそれを行う事は女子バスケ部が存在する為不可能。

その為、男子を加えての男女混合のバスケ部しか作れない事が分かった。

それからは奔走する日々が続いた。

問題なのは、男子バスケ部が学校には存在するためにバスケをやりたい男子生徒はそこに入部してしまうので見つけられないことだった。

そんな日々が続き、夏休みになり、そして夏休み明け、アタシはアイツを知った。

まさか同じクラスにあんな運動神経を持ちながら帰宅部の男子生徒が居たなんて。逃すまいと、多少、強引に部活勧誘したところ、逃げられてしまった。

そこからは手段を変えながら勧誘を続けまくったが……結果、二年生になってクラスが変わってしまったので断念することに。

しかし、アタシは諦めない。そう思っていた時、ある人に会った。

そいつは見た目からして変わった人だったが、高校生の年齢でもないのに学校を歩いていた更に変な奴と思った。

ソイツは去り際にアタシにある物を渡した。

「いずれ役に立つ時が来るだろう! サラバだ!」

そう言い残して去っていったが……コレでどうしろというんだろうか。

とりあえず持ってはおくけど、役に立つ時は来るわけ無いと思いながら勧誘を続けた。

すると、一年の時も同じクラスだった他の男子生徒がアイツに劣らない運動神経を持っていたことを知り、すでに部活には入っていたが、もはや構っていられなかったアタシ達は無理やり勧誘した。

だがある時から上手く隠れられてしまい、あらゆるところを探したが結局見当たらず、瞬間、思い出す。

そうだ、またアイツを勧誘すればいい。アレから数ヶ月が経った、ひょっとしたら心変わりしている可能性だってある。

アタシはアイツのクラスを調べ、いざ勧誘に行こうとした。

その時、ある人がアタシを訪ねてきた。

その人は三年生、アタシがバスケ部に居た頃に良くしてもらった先輩、今年はれて部長になったらしい。

おめでとうございます、とお祝いの言葉を述べると、その部長は、アタシにこう言った。


バスケ部に戻らない?


たったわずかな時間しか活動してなかったアタシだが、その中でも目立って能力があったらしい。しかし急に辞めていったアタシを部長は覚えていて、今再びバスケ部に入らないかと勧誘に来たのだという。

アタシは多少ながら悩んだ。戻るか戻らないかじゃない、どう言って断るかを。

そう思考していた時、アタシは一体なにを考えていたのだろう、偶然、頭にあの言葉が過ったからだろうか、それとも、こうでもしなくちゃいけないような気がしたからだろうか。

もっと考えれば他の口実もあっただろうけど。その時、アタシは、

「すみません、実は目をケガしてまして……」

何故目だったのか、おそらくスポーツ等出来ない言い訳として一番に思いついたのだろう。

その場でアタシは、あの変な男に貰った眼帯をした。

すると部長は諦めてくれた。治ってからとか他に言葉はあったような気もするけれど以外にもあっさりと引いてくれて助かった。あの男には感謝しなくてはいけなくなったけど、二度と会う事は無いだろう。

二年生になってから寮のルームメイトになった花香が、眼帯をして帰ってきたアタシを見て何があったのかを聞かれたから正直に話し、安心してもらった。

「ここまでやったんだから必ず、部員を集めるわよ! 確か花香のクラスに武川創矢って居るわよね。そう、一年生の時に花香の帽子を取った帰宅部の男子、またソイツを勧誘するわよ」

ここまでやっておいて、今さら諦めるわけにはいかないわ。


いざとなったら、あの男からもらったもうもう一つの物を使って……武川と戦ってでも。



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