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文武平等  作者: 風紙文
作中話
281/281

考えられない

これは、文武平等の物語の間で起こっていた出来事。

今回は、七章の後~八章の始まり位の出来事です。

……side 陽花


一週間の内、五日は必ず学校がある。

その五日には昼休みがあって、昼休みには昼食を食べる。

今ではみゃーことリリと一緒に食べている……四回は。

で、後一回は、みゃーこ達以外と食べている。

ま友達付き合いってのもあるし、皆もこっちに来てからの友達に違いない。みゃーこ達も一緒に食べれたらそれが一番なんだけど、そう簡単にいかないんだよね。

……で、今日はその一回の日。

みゃーこはリリのいるA組に向かって、あーしはC組で席をくっ付けていた。

「そういえばさー」

3人向き合ってそれぞれのお弁当をつついていると、いつものように篠目(ささめ)が何か話題を出してくる。あーしと宮西(みやにし)はとりあえず目線だけ向けて次の言葉を待つ。これがいつもの流れ、違うのは話題とお弁当の中身だけ。

「やっぱ高校生の内に一度は恋したいよねー」

今日は、恋についての話っぽい。

「いや、アンタは充分してるじゃん」

宮西のツッコミが入った。確かに、篠目はクラスメイトの浜樫とそういう噂がある。確証は無いけど。

「でも、恋かー。まぁ高校生活は限られてるもんね、高校生の恋はその間でしか出来ないし」

「でしょでしょ? しーおもそう思わない?」

「んー、ま確かにね。十代と二十歳以降じゃ何か違うかも」

二十歳になったことないから知らないけど、何かそんな感じがする。

「てかさ、しーおはどうなの」

「? あーし?」

「そう、A組の萩浦くん。幼なじみなんでしょ?」

「あー、まね。幼稚園から今に至るまで、転校先の高校まで一緒」

「なんかもうそれ、腐れ縁っていうか運命の赤い糸なんじゃない?」

「2人は付き合ってないの?」

「……」

あーしが、翔一と付き合うか……

昔から一緒過ぎて、行きも帰りもほぼ一緒。

お互いに、自分以上に相手を知り尽くしてる幼なじみの翔一と……

「……考えられないなー」

一緒に居すぎて、今さら翔一と彼氏彼女なんて出来るわけない。

「よーく考えたけど。翔一と付き合ってる姿が想像出来ないわ」

「へー、そういうものなのかな」

「ほらあれじゃん? ずっと一緒に居すぎて異性として見えないっての」

「ふーん、幼なじみいないから分かんないや」

それから少し、閑話休題。各々お弁当に箸を伸ばしてから、再び篠目が言葉を出す。

「じゃあさ、誰かカッコいいと思う男子はいるの?」

どうやら付き合う相手の話に変わったっぽい。

「例えば、C組の中でなら」

範囲狭っ。てか、よく教室内でそんな話出来るね、本人聞いてるかもなのに。

とか思ってたら、考えてた宮西が、あーし等にしか聞こえないように小声で語りだした。

「あたしはね……武川とか、ちょっと良いと思うんだ」

「あ、確かに、ちょっと良いかも」

おぉ、意外に武川モテてる。

「でもあれでしょ? 武川って七ヶ橋と付き合ってるんでしょ?」

「え? マジ? よく一緒にいるの見るとは思ってたけど、そこまで行ってたんだ」

いやー、実はまだそうじゃないんだよね。みゃーこが気付いてないっていうか、気付けてないっていうか、まだどっちからも告白はしてない。

ま両想いっぽいし、どっちかが告白すればすぐにでも彼氏彼女になるね、あの2人は。

「じゃあさ、他の組ならどう?」

C組、武川だけで話終わっちゃったし。

「あ、アタシあの人。A組の早山」

おぉ、武川に続きまたパズル部から出てきた。

「背高いし、剣道やってるなら絶対強いし、寡黙なのも、まぁ悪くないかなーって…」

「あー、早山は辞めといてあげて」

宮西の言葉を、篠目は止めてしまった。

「なんで? あ、まさかアンタ早山狙い?」

「いいや。実はここだけの話、早山を大好きな女子がC組にいるの」

あ、多分町田さんだ。演劇部で一緒だった時、すれ違った早山を見てうつ向いて顔赤くしてたから。

「やっぱ早山モテるんだなー。てかそのクラスメイトって誰?」

「それはヒミツー、アタシはあの子、応援するって決めたんだ!」

うーん、確かに町田さんはみゃーこ達以上に大変そうかな。早山がどう思ってる全然分からないし。

今度聞いてみようかな。

「他には?」

「あ、じゃあさ、ちょっと違うかもだけど、いい?」

「なになに?」

「前にさ、休みの日に部活で学校に向かってて、門の前でカッコいい女子見ちゃったんだよね。どこのクラスかは分からないんだけど、なんというか……凛々しいっていうか、武士っぽかったの」

「なにそれ?」

え、それって……

「その女子ってさ、髪型ポニーテールで、スカート長めでしょ?」

「そうそう。しーおも見たことあるんだ」

「まね、クラスまでは知らないけど」

やっぱり……花正だ。意外っちゃ意外だけど、分からなくはない。凛々しい感じに見えるんだろうね、パッと見だと。

「そうくるなら、あたしも言っちゃおうかな」

「ほぅ、なにかな?」

「前にね、友達に用があって部室棟まで行ったの。で用事が終わって、階段降り始めた時にね……スッゴいかわいい子見たの! しかも2人!」

あ、また何か、知ってる感が……

「あ、知ってるかも! あの金髪の男の子と女の子でしょ!?」

「そうそれ!」

「でもどう見ても高校の生徒っぽくないんだよね、着てるのも私服っぽいし」

これは、フォローしておかないと。

「あー、あの子達ね、演劇部の子役助っ人」

「あ、そうなんだ。ならあの格好も納得だー」

「あれであーし等と2つしか離れてないからさ、来年には高校生だよ」

「へー」

やっぱりか……それレドナとリリィだ。

「ならあのそっくりなのも、そういう役だからなんだね」

いや、あの2人は双子で元々あんな感じ。

てかさっきから、パズル部関係者の話ばっかりだ。

話題を元に戻そう。

「なんか話反れてきちゃったね」

「うん、何話してたっけ」

「クラスでカッコいいと思う男子だったよね」

そう。C組が一人だけで終わって、別の組まで広がったやつ。

「てかさ、ぶっちゃけどうなの? 浜樫とは」

宮西が篠目へと再度訊ねる。

「んー、でもお互い部活忙しいし、終わる時間も違うからね」

「すれ違い、ってやつね」

「じゃあさ、今一緒にお昼食べたら?」

浜樫は教室内で、数人でまとまっている。

あれ? いつもならいるはずの武川がいない。どこいったんだろ。

「いやー、あの中入るのも浜樫だけ引き抜くのもヤバいでしょ」

「そうだねー、今度約束しときなよ」

ここで再び、閑話休題。お弁当を粗方片付けてから、今度は宮西が話を始めた。

「でさ、もし誰かと付き合ったとして、何する?」

内容が誰かと付き合ってからに変わった。

「まぁ……デート?」

「駅前歩くだけでも、充分楽しいよね」

「そだね、お金もあんまりかからないし」

「でももし遠出するなら、やっぱ遊園地かな?」

最寄り駅から電車で四駅ほど行くと、少し大きめの遊園地がある。

「楽しいよね、あそこ」

「そういえばアタシ達は行ったことあるけど、しーおは行ったことある?」

「まね、みゃーこと、リリと、武川と、雅と、後、翔一と」

実は花正も一緒だったけど、言うと説明入りそうだから言わなかった。ゴメン花正。

ただ、あーしの台詞を聞いた2人は何故か目を丸くしていた。

「うっわなにそれ、男女混合で遊園地って、青春楽しんでるじゃん」

「しかも男2人に女4人て、武川と翔一幸せもんだよ」

「そう?」

実は女子5人だったけど。数十年ぶりっていう花正のはしゃぎ具合に武川と雅はスッゴい疲れてたけど。

「でも途中ではぐれてさ、あーしと翔一だけで色々回ってた……どうしたの?」

言葉の途中で、2人はまた目を丸くした。

「いやいやしーお、それもうデートだって」

「そう?」

「そうだよ、男女2人きりで遊園地だよ?」

「ふーん。でもあーしと翔一、付き合ってないし」

そもそも付き合ってる想像も出来ない。

「じゃあさ、他誰かはいないの? 好きな人」

「うーん……」

少なくとも、周りの知り合いはみんなお互いにいるっぽいから無し。

「それともしもさ、萩浦くんが誰かと付き合ったら、しーおはどうする?」

「うーん……?」

翔一が誰かと付き合って……そうなれば、今までみたいに一緒に帰るようなことは無くなるだろうし、あーしが知らない翔一の秘密を知る誰かが現れるのか……


………………


「……うん。考えられない」

「なにが?」

「あーしが翔一と付き合うの」

「それは聞いた…」


「で、あーしが翔一以外と付き合ってるのも」


「「……え?」」

「いやね。なんかもう、翔一と彼氏彼女する気は全く無いんだけど、他の誰かと付き合ってるのも、考えられなくてさ……どうすれば良いかな?」

聞きながら、最後の一口を食べる。

「「……」」

2人は口を開けたまま、茫然としていた。

やっぱ、人に聞くことじゃなかったか。

とはいっても、あーしからそんなこと言いたくないし……

あ。そうか。





放課後、携帯で翔一に電話をかけた。

『もしもし?』

「あ、翔一? あーしだけど」

『うん、ディスプレイに名前出てるからね。それで、どうしたの?』

「あのさ……翔一ってさ、あーしのことどう思ってる?」

『え? どういう意味?』

「だからね……あーしのこと、好き?」

『えっ!? な、なに言ってるの!?』

「あっはっは、なにマジになってんの」

『え……?』

「冗談だよジョーダン、今に始まったことじゃないでしょ」

『う、うん……そうだね』

「でしょ、だからさ、軽く答えてよ」

『え、えっと……でも……』

「あーしは、好きだよ」

『え? 今、なんて……』

「それじゃね」

『あ、ちょっと待っ…』

携帯を切って閉まった。

ま、今はこれで良いかな。

「……どうしたの?」

隣にいたみゃーこが首を傾げて聞いてきた。

「なんでもないよ、みゃーこ」


あーしから言いたくないなら、翔一の方から言わせれば良いんだ。

そしたら今……までとあんまり変わらないかもしれないけど。

少しくらい、変化はあるのかな?

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