決戦に備えて
部活終了時間の後。俺と七ヶ橋、大和先生の3人は戦いが行われる予定の河川敷に来た。
最後の仕上げとして、俺と七ヶ橋が模擬戦を行う為だ。
「そういや、お前達は戦わねぇのか?」
河川敷の小石が転がる地面にためらいなく座った大和先生が、ふいにそう聞いてきた。
「自分と七ヶ橋がですか?」
「つか、そのまま戦ったらそれがそのまま『剣の舞』だけどな」
「そういえば……」
そう、俺は今さら気づいた。剣を手に入れたら、願いを叶える為には、七ヶ橋とも戦わなくてはいけない事に。
本当に今さらだな。そして大和先生の言う通り、今からしようとしている事がまさにそうじゃないか。
こんな簡単に戦っていいのか? そんなことを考え始めた、その時、
「はっはっはっ!」
向こう側から、どこかで聞いた笑い声が聞こえた。
「何だ? この妙な笑い声」
大和先生も声のした方向に顔を向ける。続いて七ヶ橋が後ろから聞こえた声に振り返る。
俺はその声の方向をすでに見ていた、なのでその先にあの帽子男が現れたことも分かった。
「そこの少年、戦いにはまだ日が早くないかい?」
どうやら俺に用があるようだ。
「分かってますが、練習をしておきたくて」
「ふむ……だがそれがどれだけ役に立つかな? 双剣であるその少女と、両手剣であるあの少年とでは、何もかも違うのではないかい?」
「それは…」
確かに剣の種類は違うし、戦い方も全く違うだろう。
「ちょっと待ちな」
大和先生が入ってきた。
「双剣だって、百本の内に何回も戦うだろ、だったらこの戦いもムダにはならない筈だぜ」
「む、確かに……」
「忠告と助けてくれた事には礼を言うが、口出しはしないでほしいな」
「むむむ……それは悪かった、だったらお前が2人の審判をすると良い、勝敗が決まる前に止めればカウントはされないからな」
「わざわざどうも」
「では…」
帽子の男が去っていく、
「…と、一つ聞こうか」
少し行って止まり、再び振り向く。
「少年と少女は、その男とはどういう関係だ?」
「えと……担任です」
「……右に同じ」
「おいおい三夜子、それだけじゃねぇだろ?」
「……部活の顧問」
そっちかよ! 確かにそうだけどな。
ふと見ると、予想した答えじゃなかっただろう大和先生がずっこけていた。
「そうか、では、約束の日に」
帽子男はそのまま行ってしまった。
「さてと、アイツのお陰で2人が無理に勝敗をつけなくてもいい事が分かったな。俺が審判するから、2人共、全力で戦ってくれ」
七ヶ橋が帽子の男が去っていくのを見送ってからこちらを向き、剣を構える。
「……勝負」
「ああ、いい勝負にしような」
「……」
縦に首を振った。
「よし、そんじゃあ……模擬戦始め!」
先生の合図と共に、七ヶ橋が一足飛びに突っ込んできた。
それを俺が防ぐと、
ギギィン!!
『剣の舞』開幕の音を奏でた。




