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文武平等  作者: 風紙文
第十一章
278/281

それぞれの願い

剣の数が百以上になったということは、つまり剣に百勝を刻むにもわずか数回は負けても大丈夫だということだ。

いくら剣の能力が多くても、剣を扱っていた年期などどうしても勝てない相手というのはいるだろうと予想していた。

「そういやお前とは一度戦ってたよな」

「はい、河川敷で」

「そん時はレベルアップした剣だったよな。じゃあ今回はレベル上げはナシだ」

野山さんの手にはヴィーティングにする前の剣が握られていた。

「どうせならお互いレベルMAXの剣でやりたかったが、能力封じられて負けないとか反則だろ」

「ヴィーティングの回復石も強力でしたよ」

「ま、お互いそれは使わないんだ。今出せる全力でやり合おうか!」


そうして戦った野山さんは、レベルを上げる前の剣でも恐ろしく強かった。





side…… 三夜子


レベルMAXの剣を持った人は、一度戦った相手と剣を変えて戦う必要があった。

だから……

「まさかみゃーことか。でも一度戦ってるから、レベルが上がった剣とだよね?」

「ん……そのつもり」

「そっかー、元々のに勝てなかったのに瞬間移動でしょ? 勝てる気しないわー」

「……でも、手加減しない」

「もち、あーしも手を抜くきも抜いてほしいとも思ってないけどね」

いつものように笑った紫音を見て、ふと思った。

「……紫音の願いって何?」

「いきなりだね、でも、それは後にしようよ。この戦いが終わったら今日は終わりだし、いつも通り喋りながら帰ろ」


私は剣のレベルを上げ、紫音と対峙した。





「よっす三夜子、今日の相手はお前か。そういえば三夜子と真剣に戦ったことなかったな」

「……確かに」

兄さんとは練習試合ばかりで、決着が着くまで勝負したことは無かった。

「そういや三夜子、双海とは会ったか?」

「……まだ」

そうか、姉さんとも戦うんだ。それもレベルMAXの持ち主だから、二回は。

「じゃあもし会ったら伝えといてくれないか。この戦いが終わった後、どうするのか」

「……分かった」

「じゃあ、始めようか……」


マフラーと帽子を身にまとっても意識を保ったままの兄さんと、レベルアップ前と含め二連戦を行った。





そして次の日に

「この戦いが終わったらかー、どうしよっかな」

姉さんと出会い、兄さんからの伝言を伝えた。

「そうだねー、家のこともあるし、継ぐために大学通ったりしなくちゃいけないかもだけど、願い叶ったらまた家留守にしないといけないかもだしね」

「……姉さんの願いって」

「お母さんとお父さんの捜索だよ」

……やっぱり、今も同じ。

あの時、家を出ていった時から、変わってない。

「学生の三夜子や先生の兄さんよりも動けるからね。もし見つかっても遠くにいたら迎えに行く必要あるし」

姉さんの願いは……私と一緒。

「さてと、そろそろ始めよっか。三夜子とはレベルアップ同士の決着は着いてるから…」

「……違う」

「へ?」

「……アレは、カウントしない」

「そっか……じゃ、全部やろっか」


お互いにレベルアップを持つ者同士の戦いは、1日がかりだった。





……たくさんの人と戦っていて、いずれ来ると分かっていたことが、今日、訪れた。

「……」

「まぁ、遅からずこうなる日が来るのは分かってたけどな」

「……私も」

今日の相手は、創矢だった。

それも……百勝目の相手が。

「それで、実はな、三夜子」

「……?」

「この戦い、もしも俺が勝ったら。百勝目なんだ」

「……私も」

つまりこの勝負、どっちが勝ってもどちらかの願いが叶うということ。

……そういえば、

「……創矢」

「なんだ?」

今まで何やかんやで毎回はぐらかされていた。けど、今回こそは。

「……創矢の願いって、何?」

「あ……あぁ、そういえば、言ってなかった、よな」

「ん……今日こそ、聞かせて」

「それは……」

「……」

創矢の願いを聞くまで、剣も構えない。答えが出てくるまで、真っ直ぐに創矢を見続ける。

「その……」

「……」

しばらく考えるように悩んで、私から視線を外したり合わせたりして。

ついに、答えてくれた。

「……俺が、剣で叶えたい願いっていうのは」

「……」


「……三夜子の願いを、叶えてくれって」


「……え?」

私の、願いを……?

「最初に三夜子の願いを聞いた時にな、そう思ったんだ。その時からずっと、剣を手にしてからも、この願いは変わってない」

……私の願いを、創矢も叶えたいと思ってくれていた。

ずっと……私達は、同じ願いのために戦っていた。

「……そう、なんだ」

「あ、あぁ、だからさ三夜子、この勝負、どっちが勝っても…」

「創矢」

今の創矢は、照れているのかもしれない。

その感情はまだよく分からないけど、私は、

「な、なんだ?」

だから私は、

今できる精一杯で。



「ありがとう。創矢」



満面の笑みで、お礼を言った。

「あ……あぁ」

「そして……これからも、よろしく」

「……あぁ、これからもな」

私達は剣のパズル錠を外して、更に私は剣をレベルアップ。

お互いに一定の距離を取って……

「創矢」

私は剣の能力でその距離を一気に無くして、


そして……


「んっ……」

「!? み、三夜子!? 今何を…」

距離を戻して、剣を構えて。

「行くよ、創矢!」

口を押さえて驚いている創矢に向かっていき……


私達の最後の戦いが、始まった。


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