ついに
赤い光が集まって出来上がったのは、巨大な剣だった。
その見た目から、先ほどよりも当たってはいけないと理解した時にはもう行動に移っていた。
左の剣を弓に、右の剣を矢に見立てて構える。左右の剣に風を起こして、赤い大剣に向ける。
その隙を見た伽行は後退した、背中には扉のある壁がすぐに迫っている。確実に、追い詰めている。
「剣刃……突、風!」
風をまとった剣を投げつけた。真っ直ぐと鋭い矢となった刃が、赤い大剣を真っ二つに裂き、
「フフフ……甘いわ」
裂けた二つに大剣が両方、私に向かって降ってきた。半分にしただけじゃ、アレは止まらなかった。
「もう諦めなさい!」
「……イヤだ!」
まだ終わってない。
まだ片手に剣はある。これだけで、あの裂けた大剣を制して、伽行へ届く!
迫る大剣に対し、一振りになった剣を構えると、
「いい気迫だな!」
「らしくなかたが、ワルくない」
二つの声が聞こえ、私の後ろから現れた一つの影が、
「道を空けな!」
剣を大剣の片方にぶつけ、明後日の方へと弾き飛ばした。
しかし、もう片方が降ってくる。けど一つだけなら、私が、
「進むのだ! 三夜子!」
目の前に花正が立ち、両手に持った剣で大剣を受け止めた。
「……花正、それは?」
花正は両手に、左右に一振りずつ刀を持っていた。片方は『模抜』だけど、もう一つは初めて見る。
「長い説明をしてる暇は無いので省くが先ほど戦い国守さんが回収していた剣だ! 剣そのもので回収し持ち主は別にいるので能力は使えないがこうして役に立つと借り受けてきた! さぁ、今の内だ!」
「うん……ありがとう!」
花正の横を抜け、数メートルに近づいた伽行へと走り寄る。
「そう……まだ来るというのね。けれど、こちらにもまだ手はあるのよ、まだ真似していなかった……そのものよ!」
現れたのは……赤い鎧の騎士だった。
それも、先ほどとは違う。コレは、黒騎士と同じ姿をしていた。手に持つ剣も『影切』に似ている。ここまで来て、まさか剣の使い手そのものと同じ者を呼び出すなんて。
でも考えは変わらない。私は、伽行へと進むだけ。
なぜなら、すでに赤い黒騎士に向かう姿を見つけていたから。
「まさかまたオマエと戦うとは、な!」
「残念だけど。一対一にはしない」
先ほどの声の主で大剣の片方を吹き飛ばした野山さんが剣を振るい、音川さんが少し離れた場所から剣の能力で銃弾のような物を飛ばした。
赤い黒騎士は剣で防御し、振るうと野山さんは下がってきた。
「援護は頼むぜ縁、俺今訳あって回復石が無いからな」
「そう。ならしっかりと合わせる」
こちらを見ずに、2人は赤い黒騎士に向かった。
「……ありがとう、ございます」
お礼と共に、戦いの中を通り抜けるとそこには、
「……いったいどこまで、邪魔をすれば気がすむのよ!」
怒りを露わにした伽行の姿があった。
「……もう、逃げ場は無い」
「っ! ……えぇ、そうね、確かにもう後ろは壁よ。けれどね、双剣だったアナタが剣一つでどうするというの?」
怒りを抑えてなるべく冷静な口調で、まだ余裕があるという風を装って、伽行は言ってきた。
けど確かに、伽行の手には今だ二振りのレーヴァテインがある。
けど、その時も一瞬だった。
「そういうオマエこそ、油断し過ぎだ」
先ほどの声の主の2人目の、ホウさんはすでに伽行の背に回っていて、
「ほれ行くぞ、逃すなヨ?」
素早く剣を切り上げ、伽行の持つレーヴァテインの一つを手から弾き上げた。
「なっ!? い、いつの間に…」
「フン、言葉ではなんとでも言えても、追い詰められ後ろに気が回らなくなているな。ほら、行たぞ」
「任せなさーい」
この声は……
「姉……さん?」
レーヴァテインが飛んで行った方向を見ると、
「やぁ三夜子、さっきはありがとう」
手をひらひらと手を振る元気な姉さんの姿を見つけて、少し涙が出そうになった。
「アレは任せておいてね」
宙を舞うレーヴァテインを姉さんは追いかけると、レベルアップした剣の別れた先で掴んだ。
その瞬間に、レーヴァテインに強力な力がかかり、
ピシッ!
音を立てて、レーヴァテインが真っ二つに折れた。
「!? よくも……やってくれたわね!」
「いいや、まだだ」
レーヴァテインが折れる所を見ていた伽行の隙を付き、ホウさんはもう片方のレーヴァテインを手から弾き落とした。
「大層な名前だが所詮は偽剣、通じることは証明済みだ。一線、七千三百八十四重の太刀」
床にたたき落とされたレーヴァテインに剣をぶつけると、床と剣の間で甲高い音と共に振動して、ついに、
パキンッ!
もう一つのレーヴァテインも、使用不能となってしまった。
「そん、な……レーヴァテイン、が……」
予想外の衝撃だったのか、その場に立ち尽くしてしまった伽行に。
「後は、オマエが決めろ」
「……はい」
私は、片方になった剣を両手で握り、
袈裟切りに、一線……
……
……こうして、
……長く続いた戦いに、
……決着が、付いた。