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文武平等  作者: 風紙文
第十一章
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剣を剣とする剣

―――剣が、姿を変えた。

今までも野山さんや音川さん、ここに来て三夜子と双海さんの剣が変化した所を見てきたが、俺の剣もまた、姿を変えた。

現れたのは鞘に収まった剣で、派手な装飾は無いが、鞘と鍔と柄、剣の全てが輝いている。

その時、頭の中に言葉が浮かんできた。最初に剣を手にした時に聞こえた物と同じ声のような言葉だ。

言葉が伝えてきたのは、この剣の名前と、その能力。

……なるほど、コレは、まさに隠し玉の対策になり得る。

「……創矢、これは?」

隣で見ていた三夜子が訊ねた。

「これは……この剣の名前は…」

伝説の剣と言われれば、最強とされる剣と言われれば、高確率で名前が出る最も有名な剣の名前。


……エクスカリバー


「かつての持ち主を常勝に導いたこの剣なら、レーヴァテインを止められる」

「……勝てるの?」

「あぁ、この剣は、剣を押さえられる」

俺は右手で柄を握り、左手で鞘を持ち、鞘から刃を抜く。

次の瞬間、刃から光が溢れ出した。

光は友也を中心とした輪に集まる人達の端にまで届いた。

ちょうどその時、友也がレーヴァテインを振り上げて何か能力を使おうとして、

「ばくはつ……どーーん!」

友也が唱え、レーヴァテインを中心に周りの人を吹き飛ばす衝撃が……起こらなかった。

「あれー? どーん! どーん!」

首を傾げてレーヴァテインを見た友也は、何度も何度も叫ぶが、能力は発動しない。

「んー? こわれちゃった?」

その姿を見て、花正や音川さん達も不思議に思いだした。

「何だ? 攻撃が来ないぞ?」

「まだ分からない。気を緩めないで」

「いえ、おそらくもう能力は来ません」

そこへ俺と三夜子は入っていった。

「む? どういう意味なのだ創矢」

「その剣。レベルアップの能力か」

「はい、この剣。エクスカリバーは…」

『五を統べる一』という名前を持つこの剣が、レベル5の板を全て収めてパズルを解いたことで表れたエクスカリバー。

その能力は……能力の使用禁止。

アルクスさんの持つエクゼキューショナーズソードの能力を無力化することに少し似ているが、コレは発動された能力を消すのではなく。能力そのものを使えなくしてしまう。

剣という存在を、能力の無い純粋な剣へと変えてしまう。最強とされるレベル5を統べたゆえの、全ての剣を統べた剣。

おそらくだが、この剣は特別な物だ。レベル5のどれかの対という物ではなく、レベル5はおろか全ての剣の能力の対であり得る。

そしてそれは、能力を作り出す偽剣のレーヴァテインも例外ではなかった。

「あれれー? どうしてー?」

レーヴァテインの異常に首を傾げている友也は、こちらのことは一切気にしていなかった。

「つまり。もう能力は使えないと?」

「レーヴァテインだけではなく、こちらの輪に居る人の剣全てですけどね」

剣を鞘から抜いた時に溢れ出した光、おそらくアレが発動の条件で、光に触れた人の剣だけが能力を消されるんだろう。

現に、伽行は今も竜顎を作り出して森人さんが盾の剣で防いでいる。

「なるほど。理解した。能力が無いのならば彼を捕まえる」

確かに、今までは能力で近付けなかったが、それが無くなれば押さえるのは簡単だ。

……だが、

「すみません、少し待ってくれませんか」

俺は1人、輪の真ん中に近付いた。

「……創矢?」

「何をする気なのだ? 創矢」

「ちょっとな、気になることがあるんだ」

「させない。勝手な個人行動は許さない」

やはりというか、音川さんに止められた。

けど、俺も引き下がらない。

「お願いします、少しだけ時間を下さい」

「何をするか。明確に伝えて」

「それは……」

言えば必ず、許されないことだろうな。

「……アイツと、戦いたいんです」

「それは。何故?」

何故、か。俺もついさっき思い付いたことでもあるんだが。

それをしっかりと、音川さんに伝えると、

「……分かった。やってみるといい」

音川さんは許可をくれた。

「ただし。リミットは5分」

5分か……説得に2分くらい使ったとして、残りは3分ぐらいか。

「ありがとうございます」

「……」

「創矢よ、本当にやるのか」

隣で何も言わずに見ていた三夜子と、花正を見て。

「大丈夫だよ。そう簡単には負けないさ」

俺は1人、友也へと近付いた。

右手には剣を、左手には鞘を持って近付くと、友也も俺に気付いた。

「ん? おにーさんはだれ?」

「俺の名前は、武川創矢。お前は?」

「伽行、友也です」

まずは挨拶、普通に出来て一安心。

よし、次だ。

「友也は、チャンバラって知ってるか?」

「うん、知ってるよー」

そうして友也はレーヴァテインをぶんぶんと振るった。知っているなら、話が早い。

「今から俺と、チャンバラしようぜ」

左手の鞘をどうしようか考え、床に置こうとしたら何故か腰の左側にくっ付いた。原理は全く分からないが、とりあえずそのままで、エクスカリバーの柄を両手で握って構えた。

対する友也の答えは、

「うん! いいよー!」

やる気満々で大きく頷き、レーヴァテインの柄を両手で持った。

よし、この形に持ち込むことが出来た。ここまでで、1分と少しくらいか。

「行くぜ……」

「いつでもいいよー!」

そして俺は、いつ来るのかと待ちわびている友也へと、剣を振るった。

友也はレーヴァテインを前に、エクスカリバーの攻撃を防いだ。


カチン!


片やエクスカリバー。

片やレーヴァテイン。

伝説の剣を使った、5分間のチャンバラが始まった。


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