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文武平等  作者: 風紙文
第十一章
263/281

戦後/隠玉

side……『大和』


D組の洗脳事件を聞いて、俺達は犯人である剣士団リーダー学化を倒すために向かっていた。

「それで、この人数でどうにかなるのか? 相手はレベル5の剣なんだろ?」

不意に、原良が先頭を行く俺の隣に並んで聞いてきた。

「どうしたんだ? 剣の強さはレベルの差じゃないって言ってるお前らしくないな」

「D組を操るとか、能力が未知数過ぎる相手だ。不安にもなるぜ」

「B組からも援軍はあると思うが、何にせよ俺達が止めないといけないんだ」

それに、と今は布の鞘に納めてある剣に手を触れた。

「レベル5なら、ここにもある」

そこからしばらく行くと、視界に扉が入ってきた。あそこにD組を洗脳した学化がいる。

「相手が一人とは限らない、充分に注意して…」


その時、まるで大きな何かでもぶつかったような音が扉の向こうから聞こえてきた。


「!? な、なんだ? 今の音」

「部屋の中からみたいだったが」

もしかしてもうB組からの援軍が戦っているのかもしれない。

「急ぐぞ!」

俺達は足早に扉の前へ、全員が剣を構えた事を確認して勢いよく扉を開いた。

「こ、これは……何があったんだ?」

部屋の中は、すでに戦闘が行われた後のようだった。

壁際には機械のような何か、おそらく洗脳に使用した物で、さっきの音はアレが壁にぶつかった音だろう。

部屋の中央付近では、学化が倒れていた。初めて見た時と手に持っている剣が変わっている。

そして、学化の他に倒れた2人と、その間を走り回る1人。

「大変っすよ陽花ちゃん! ハルが目を覚まさないっす!」

「まーあれだけ戦ったんだから、階田も疲れたんじゃない? あーしだって、今ちょっと立てないし」

「でもさすがにおかしいっすよ! まるで寝ちゃったみたいに起きないんすから!」

「それはさすがに……いやでも、さすがにそこまでは無いかな」

あれは、陽花と雨切橋、そこに倒れてるのは階田か。そういえば3人共B組だったな。

すぐに役割を決め、学化を抑える係、機械を調べる係、倒れている陽花達の所へ行く係に別れて行動を開始。俺は1人、陽花達に駆け寄った。

「お前達! 大丈夫か!」

「この声……もしかして、大和センセ?」

陽花は仰向けのまま、首だけこちらを向いた。

「ここで何があったんだ?」

「その……話すと長くなるんだけど」

陽花の話によると、元々D組の援軍に行く予定だった陽花達3人は、D組の洗脳事件をアルクスさんから聞いて走り出し、部屋の中にいた学化さんにしてレベル5の剣『波動』と戦い、勝利したという。

「まぁぶっちゃけ、まさか勝てるとは思ってなかったんだよね。階田の剣が何か変わらなかったら危なかったかも」

階田の剣が何か変わった?

「そうなんすよ! ハルが、ハルが目を覚まさないんす!」

雨切橋に連れられて倒れている階田の元へ。その手には、鏡みたいな剣が握られている。

「この剣が、変化したっていうのか」

「急に光ったと思ったら、形が変わってたっす」

「それって……剣のレベルアップなんじゃないのか?」

「アロンダイトってハルは言っていたっす」

なら、確実だな。

「大丈夫だ。少しすれば目を覚ますよ」

三夜子からレベルアップした時の状況は聞いている。剣が変化した後急に倒れて、しばらくしてから目を覚ましたと。階田の剣もレベルアップしたなら、同じようになる筈だ。

「よ、良かったっす……」

「そいや、大和センセはどうしてここに来たんですか?」

「俺達も洗脳の話を聞いてここに来たんだ。まさか終わってるとは思わなかったけどな」

ゆっくり休んでてくれ、と言ってから俺は機械のような物の所へ。

「コレでD組を洗脳してたのか」

壁にぶつかった時に壊れたのか、動いている感じは無かった。けどこんな大きな物どうやって壁にぶつけたんだ?

「あ、あの、それ、あたしがやったんすけど……」

後ろに付いてきていた雨切橋が自らの剣を見せながらそう言った。

あぁこの剣か、これなら出来るだろう。

「何か、マズかったっすか?」

「いや、止められたならそれで良い、筈だ」

どこかに居る操られたD組のメンバーの洗脳が解けていれば良いが。

「大和」

そこに、倒れている学化を調べていた原良がやって来た。

「どうした?」

「コレ、確かお前も持ってたよな」

そうして渡されたのは……





side……『早山』


「月乃! どうしたのだ月乃!」

「月乃さん!」

急に倒れた月乃に蒼薙と萩浦が駆け寄った。

対して、国守さんは冷静だった。

「落ち着いて下さい二人とも、月乃さんは恐らくレベルアップの代償を受けたんです」

「レベルアップの代償? それはいったいどういうものなのだ?」

「それはですね…」

その時、前から感じた気配に、俺は思わず切られた方の手を動かしていた。

「っ……!」

痛みを覚えながらも腕を動かし、手の前に箱を作り出す。すると、何かがカキン! と音を立てて当たり、床に落ちた。

見てみるとそれは、先ほど剣に取り付けられ、俺の手を切った本物の刃。

「早山くん!?」

「……大丈夫、です」

「まさか気付かれるとは思いませんでした」

刃が飛んできた方向にはもちろん刃を飛ばした剣狩りの寧々が、それぞれの指の間に同じ刃を挟んで立っていた。

「な、何をするつもりですか!?」

「剣で負けた以上他の方法で勝つだけです」

……マズいな、こちらには怪我人と倒れた月乃もいる。

だがそれ以上に、触れれば切れる本物の刃を扱う相手に勝てるかどうか……

「剣を返すのならば考えを変えても構いません」

「そんなこと、する訳ないでしょう!」

「では覚悟して戦って下さい」

寧々が刃を持った両手を胸の前で交差し、俺達は身構えた。


「いいや、もう終わりだ」


「え?」

天井からホウさんが降りてきて、寧々の首に一撃を当てた。

「まさ、か。あの道をみつけたのですか?」

「黙て眠れ」

もう一撃入れると、寧々はその場に倒れ込んでしまった。

「フン、剣の戦いに本物の刃を持ち込むからワルい」

「ほ、ホウさん……ですよね?」

「他にダレに見えル?」

「今までどこに行っていたのだ? それに何故天井から出てくるのだ? それと…」

「まとめて質問するな、そして答えてるヒマは無い。こちらが勝手に話す」

いきなり現れたホウさんは、寧々が持っていた刃を回収して国守さんの剣に入れさせて、話し始めた。

「一人で調べて分かたことが幾つかある。まず、この建物は妙な創りをしている。そしてもう一つ、ヤツらの隠し玉が判明した」

「隠し玉……ですか?」

「アレがどこまでの力かは分からない、が、ヘタしたら最悪此方が全滅だ」

「ぜ、全滅!?」

「そうさせない為の手段はある。そのためにはまず、伽行とは戦わないことだ」


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