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文武平等  作者: 風紙文
第十一章
259/281

波を映して吹き飛ばす

side……『陽花』


「な、何があったの?」

「ハルの剣が、変わっちゃったっす!」

光が消えた時、階田の手にあった剣が変わっていた。

全体的に銀色に光っていて、刃が薄く広くなっている。特に刃がピッカピカで、剣を見るあーしの顔が映っている。

まるで、鏡みたいな剣だ。

「ひょっとして、それが噂に聞いたレベルアップなのかな」

みゃーこの剣がレベルアップした時に。レベル5以外の剣ならレベルアップする可能性があるとは聞いてたけど、まさかこのタイミングでなるなんて。

「は、ハル? そうなんすか?」

「……」

階田は目を閉じて、何かを聞いているみたいだった。

初めて剣の錠を外した時も頭に言葉が響いたけど。もしそれと同じだったなら。

「……なるほどな」

階田は目を開けて、自分が持つ剣を見た。

「アロンダイト、か。武川なら詳しく知ってたかもしれねぇな」

アロンダイトって名前の剣らしい。

「けど、コレでどうにかなる。いや…」

階田はアロンダイトの切っ先を、学化さんへと向けた。

「絶対に、勝つ。剣はレベルじゃねぇ、剣と使い手の実力だ!」

なにやら勝算があるみたいだ。

「レベルアップしてレベルは一番上になったけどね」

「ぐっ……今は勝てば良いだろ!」

「まね。その剣、使えるの?」

「あぁ、学化さんはオレに任せろ。オマエ達は機械をブッ壊せ」

「そんじゃ、任せるよ階田」

「任せろ……行くぜ!」

階田は一人学化さんへと走った。

「それがレベルアップか。しかし、剣が変わった所で使えなければ意味は無い。ましてや能力が使える距離まで近付けなければ無意味」

学化さんの剣はすでに切っ先が床に向いた状態、いつでも波動を飛ばせる体勢が取れている。

「また吹き飛ばすだけです!」

剣の模様が赤く輝いた。目には見えないけど、波動が飛ぶ合図だ。

「悪いが、ソレはもう効かねぇ!」

すると階田は、剣を自分の前に、先端を床に向けて片手で柄を持ち、片手を刃の腹に当てて盾のように持った。

次の瞬間、階田は何かに押されたように身体が動く。しかし、今までみたいに吹き飛ばされることはなく、

「なっ!?」

むしろ逆に、波動を飛ばしていた学化さんが後ろへと吹き飛ばされた。

「えぇ!? なな、何があったんすか!?」

「分かんない……でも今のってさ」

なんか、さっきまでのあーし達と同じだったような気がする。

ふと、思い出した。階田の持つ剣、刃が鏡みたいにあーしを映してた。ならあの持ち方をした剣の刃には、波動を飛ばした学化さんが映っていたと思う。

剣に映った相手に攻撃を返す能力とかだったら……目に見えない波動を受け止めれば飛ばした学化さんへ返っていく。

レベルアップはレベル5に効果的な能力になるとは聞いてたけど、まさかあの剣、この状況にビンゴだったんじゃない?

と、それより今は別のこと考えないと。

「ルカ、階田が抑えてる間にあーし達であの機械を止めるよ」

「はいっす! でも、どうやってやるっすか?」

そこなんだよね、問題は。止めるというか壊すのはどうにでもなると思うんだけど、そこまで行くのをどうすれば良いのか。

いくら階田が止めてるとは言っても、機械に近付けば学化さんが黙ってないはず。

学化さんの反応が間に合わない早さで近付いて、機械を止められる一撃を当てるには……

「あ」

一つ、思い付いた。





side……『ルカ』


「はっ!」

学化さんが波動を飛ばす。

「ムダだ!」

ハルはそれを剣で防ぎ、映った学化さんへと跳ね返す、

「そちらこそ、すでに見切りましたよ」

しかし学化さんがその場から離れて吹き飛ばされることはなかった。

「どうやらその剣の正面にいるといけないようですね。それだけ分かれば対策は立てられます」

「チッ! さすがに何度もは効かねぇか」

もうハルの新しい剣に対処を始めた学化さん。いつこちらにも気を向けるかは時間の問題だった。

早くしなくちゃいけない……でも。

「ほ、ほんとにいいんすか?」

「もち、コレが一番手っ取り早くて確実だから」

陽花ちゃんの作戦は確かに早くて確実だと思う。

「でも、陽花ちゃんの役割が危なすぎるっすよ!」

「大丈夫だって、上手くいけば無傷。ヘマしても剣だから無傷だし。それ以外の要因で怪我するかもだけも」

「だったら危ないのに変わりないじゃないっすか!」

「今の状況で、危険を省みないで攻められる訳ないじゃん」

「それは、そうっすけど……」

「大丈夫、あーしを信じて。そしてあーしはルカを信じるから」

「……」

今更、他の方法を考えてる時間はない。

とても危険だけど、確実に機械を止めるにはこれが最も早い。

「……分かったっす。やるっすよ陽花ちゃん!」

「思いっきりね!」

陽花ちゃんはあーしに背を向けた。視線の先にはハルと学化さん、その向こうに機械。戦っている間に大分学化さんから離れている。

今なら、行ける。

「行くっす!」

あたしは剣をバットのように構えて、前に立つ陽花ちゃんの背中目掛けて、

「ホーム、ラーーーンっす!」

剣を振り切る。

次の瞬間、陽花ちゃんが前へと吹き飛ばされた。

あたしの剣で吹き飛ばせば一気に距離を稼ぐことが出来る。それを最初聞いた時にはただただ驚いた。

でも確かに、機械へ近付くには良かった。吹き飛んだ陽花ちゃんは学化さんが気付くより早く機械の横にまで移動出来た。

「なに!? まさか自らを飛ばすとは!」

横を高速で移動した陽花ちゃんに学化さんは気付いた。でも機械とは距離がある。

「こんな機械、叩き壊す!」

陽花ちゃんは能力を発動し、機械へ剣を振るった。

「させません!」

行っていては間に合わないと判断したのか、学化さんはその場でハルに背を向けて剣から波動を飛ばした。

「くっ!」

剣が機械に当たる寸前、陽花ちゃんに波動が当たって動きを止められた。力を上げてるから吹き飛ばされはしないみたいだけど、動けないみたい。

「コッチがガラ空きだぜ!」

背を向けた学化さんに対してハルが直接剣で切りかかる。

「分かっています。しかし甘い!」

「チッ!」

学化さんは剣の向きを陽花ちゃんからハルへと向けなおした。とっさのことで防御出来なかったハルは吹き飛ばされ、

「次はそちらです!」

再び剣の向きは陽花ちゃんに向けられた。

「くっ……もうちょい、だったのに……」

再び動けなくなる陽花ちゃんは、

「仕上げは……頼んだよ、ルカ!」

「了解っす!」

ハルと陽花ちゃんの動きを見ながら遠回りに機械へと近付いていたあたしに声をかけた。

陽花ちゃんの作戦は、自らを飛ばして機械に接近した所を学化さんに止められる。ハルと2人で注意を引いている間に、あたしが機械に近付いて……

「ホーーーム」


剣で、機械を、


「ラーーーーーーンっす!」


吹き飛ばす!



ドガシャーーン!!



剣で叩いた機械は吹き飛ばされ、壁にぶつかって派手な音を立てた。

その衝撃で機械は真っ二つに分かれて、分かりやすく壊れたことが分かった。

「!? まさかそんな方法が、あったとは……」

「隙ありだ!」

飛ばされた機械を見て驚いている学化さんの背中を、ハルは下から上へ一刀両断。

「もう一撃!」

そこから斜めに切り落とし、

「トドメだ!」

その場で回転して数回切りつけると、学化さんは膝をついた。

「だ、だが……機械を破壊した所で洗脳は…………伽行さん……すみま……」

そこで言葉は止まり、剣を手放してその場に倒れた。

「やっ……やったっす! やったっすよハル!」

あの学化さんに勝って! みんなを操っている機械も止めた!

「へっ、当たり前だろ。絶対勝つって言ったんだからな」

剣を肩に担いで、あたし達の所へ一歩前へ歩く。


次の瞬間、ハルは剣を手放し、そのまま倒れ込んだ。


「ハル!? 陽花ちゃん! ハルが!」

慌てて陽花ちゃんを見ると、

「あー……ゴメン、ルカ、あーしもちょっと、耐えるのに力使いすぎて……少しだけ、休ませて」


陽花ちゃんも剣を手から落として、仰向けに倒れてしまった。


「えぇ!? ふ、2人ともー!? どうしちゃったんすかーーー!?」

あたしはとりあえず、遠くにいるハルの方から先に近付いていった。

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