向かう前に
そして、ついにその日はやってきた。
学生や働いている人の休日などを合わせられるだけ合わせた結果、年末近い今日になったらしい。
「今日で決着がつくのだな」
「あぁ、そうだな」
集合場所は剣守会の本拠地。今はそこへ向かうため、花正と共に駅に向かっている所だ。
「しかしちょうど良いタイミングだったな、明日おじさん達が帰って来るのだろう」
なんやかんやで長い間旅行をしていた親父達が、明日帰ると数日前に連絡があった。本当にちょうど良いタイミングだ。
「だが、おじさん達が帰って来たら創矢は寮に帰ってしまうのだよな」
「そうだな、花正が1人にならないなら別に俺が居る必要性も無くなる訳だ」
「ふむ……それは少し、寂しいな」
「いや、どうせ俺ほぼ毎日家に帰ってきてただろ。それに年越しは家で過ごす予定だから」
「おぉ、なら寂しくないな」
全く緊張感が無いな花正は、花正らしいといえばらしいが。
「む、アレは」
その時、誰かを見つけた花正はその方向を指さした。その人達も俺達に気づいて、こちらへと歩いてくる。
「お2人共、こんにちは」
『こんにちは』
「こんにちは、アルクスさん」
「レドナとリリィもな」
3人も今日の決戦に参戦する。アルクスさんは剣守会からの参戦で、一応レドナとリリィはパズル部からの参戦になっている。
目的地は同じ駅なので、5人で歩き出して数分かけて到着した。
「アルクスさん、俺達は三夜子達を待つんですけど」
「そうですか、ではワタクシ達も一緒に待ちましょう」
『はーい』
「む、どうやら来たようだぞ」
学生寮の方向から、三夜子達がやってくるのが見えた。
確か早山は先に行くと言っていたから、三夜子と、陽花、月乃、萩浦の4人の筈。
しかし、
「む? アレは」
「押川?」
4人に加えて、何故か押川もやって来たのだ。
「やっほーたけやん、はなちゃん。レドナくんとリリィちゃん、牧師さんも」
「あ、あぁ」
「うむ」
何故剣を持たない押川も一緒に来たのか、事情を説明してくれそうな陽花や萩浦の方を見る。
答えたのは陽花。
「いやー、やっぱリリに隠し事出来なくてさ。そしたらせめて駅まで一緒に行くって」
「そういうことか」
「そうだよたけやん、ボクが力になれないのは分かってるもん」
押川は俺達を見回せるような位置に立ち、全員に言った。
「本当なら、どんなことでも良いからみんなの役に立ちたかったんだけど……剣を知ってるだけのボクが行っても迷惑にしかならいよね。だから、ここでみんなの無事を祈ってるから……みんな、頑張ってね!」
「ん……がんばる」
「ありがと、リリ」
「うむ、必ず無事に帰ってくるぞ」
押川に見送られて、俺達は集合場所へと向かった。
決戦の火蓋が切って落とされる時が、着実に近付いていた。