表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
文武平等  作者: 風紙文
第十一章
242/281

ある恋話

……side 月乃


「いやー、終わった終わった。今日の練習はこれで終わりっと」

「まぁ、明日もあるけど」

「だよねー」

ここは、陽花達の入っている剣士団と呼ばれるグループの本拠地。アタシや陽花、後2人はここでほぼ毎日剣の舞を行っている。

「翔一達遅いねー、みやっち」

「そうね、それだけ勝負が長引いてるってことなんじゃない?」

「早くリリとみゃーこの居る寮に帰りたいのに」

「なら一足先に帰れば? 萩浦達にはアタシから言っておくから」

「いやー……それは何か、違うんだよね。来た時も一緒だったし、やっぱ帰るのも一緒じゃないと」

「なら、待つしかないわね」

「しかないかー」

はぁ、とため息を付いた陽花はすぐに、

「にしても、武川とみゃーこが付き合うとはねー」

「……それ、もう何度目よ」

何の脈絡もなくもう何回聞いたか分からない台詞を呟いた。

創矢と三夜子に会いに行ったあの日。大和先生の話が終わって何か質問がないか聞いて、手を挙げた三夜子があっさりと創矢と付き合うと宣言した時は、部屋の中が一瞬静まり返った。

最初に声を出したのは大和先生で、創矢に確認を取って創矢も了承。その後はその場にいた皆でおめでとうと言ったのよね。

「まあの2人はいつかこうなるだろうなって思ってたし、武川ならみゃーこも任せられるかな」

「まるで親目線ね」

「そういうみやっちはどうなのさー」

「? どうって?」

「武川のこと、ちょっとくらい思うとこもあったんじゃないの?」

「創矢のこと……」

つまりアタシが、創矢のことを好きだったと陽花は思っている。

「聞いたよ、一年生の時追いかけ回してたって。それってやっぱ…」

「無いわね」

アタシはキッパリと断言した。

「え……マジ? ホントに無いの?」

「その話、アタシが一年生の頃部活を作ろうとして創矢をメンバーに勧誘するために追いかけ回してたってのは聞いてるわよね? そのどこに恋愛感情があるのよ」

「あー……そう言われたらそかも」

……まぁ、完璧に無かった訳でもないかもしれないわね。

創矢1人に固執していたことが、きっとそれだった筈。クラスが別になってからは早山に狙いを切り替えたけど、また創矢を狙いにしたのも、多分それが理由。

だけどいつ頃だろう……創矢には三夜子がいて、あの2人はいつかきっと、お互いに認めるって。

その時からだと思う、創矢を1人の友達として見るようになったのは。

「でも……いつからかしらね」

「ん? みやっち何か言った?」

「何でもないわ」

「ふーん、そう。あ、そいやみやっち知ってる?」

「何をよ」

「町田さんってさ、どうやら早山のこと好きらしいよ」

「えぇ、知ってるわ」

「あ、そなんだ」

だって相談されたもの。ちょうど創矢が倒れた日に。

アタシが早山に狙いを変えた時、その原因になった出来事が起こった時から、つまり二年生になったばかりの頃ね。

「ちょい意外だったなー。あの町田さんが早山って、そう思わない?」

「そうかしらね、誰が誰を好きになるかなんてその人の自由じゃない」

「おー、みやっちちょいカッコいい」

「そういう陽花はどうなのよ」

「? あーし?」

「そうよ、人の色恋沙汰より自分のことは考えたことないの?」

「いやー、あーしはさ……」

そう語った陽花の表情は、さっきまでとは違って真面目なものになっていた。

「あーしはね、ずっと待ってるんだ。あっちから言ってくれるまで、ずっと」

「……そう」

「待って待って……絶対あっちから言わせてやるんだ」

陽花も陽花で、考えてるのね。

と、その時、

「紫音、月乃さん」

「……2人共早かったな」

萩浦と早山が揃って現れたので、アタシ達は帰路に付いたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ