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文武平等  作者: 風紙文
第十章
235/281

煙に巻かれて

部屋の中は、入る時に見たのと同じ壁際に荷物が少し積んである程度で広く。

入る時に見なかった伽行を中心に十数人の人が立っていた。

「あら、もう少し人数がいると聞いていたのだけれど。たった三人だったの? せっかくこれだけ人を集めたというのに」

「……向こうのことはまだバレてはいないようですね」

「助かる。悟られないように」

国守さんと音川さんが小声で会話している間に、私は伽行の周りにいる人達を見た。

男の人も女の人もいて、全員私よりは年上だと思う。

その手には必ず、剣を持っている。けど、同じ形の剣を持っている人が何人もいた。

剣に同じ形は二つは無い。それならあの人達が持っているのが……

「その人達が持っているのが、偽剣ですか」

「偽剣? あぁ、また勝手に名前を付けたのね」

剣狩りという名前も、剣守会の人が付けた名前だと聞いたことがある。

「えぇそうね、コレ等は私達が創った人工の剣よ」

声に合わせて周りの人達が偽剣を見せるように刃を立てた。

見た限り、数はバラバラだけどここにある偽剣は四種類。一つはアルクスさんの持っていたフランベルクという炎の剣だ。

「本物の剣の劣化版とはいえ、この数を相手にするのはどうかしらね」

伽行も双剣の竜顎を構えて、私達を逃がしてくれる雰囲気は全く無い。

「これは……そう簡単にはいきませんね」

「だからと言って。ここ以外の逃げ道は無い、多少無理矢理にでもここを抜ける」

「えぇ、それに異議は唱えませんけど……さすがに数が多いですね」

そう言うなり国守さんは剣の扉に手を入れて、

「……時にお二人共、視力はどの程度でしょうか」

いきなり質問をしてきた。

「……え?」

「それが。今何の意味がある?」

「例えばですけど、視界が急に悪くなった場合にはどうしますか?」

「それは。状況による」

「このような場合では?」

このような場合……多くの敵に囲まれている場合では。

私が考えている間に、音川さんは答えた。

「この場合なら。視界の悪さを利用する」

「では、それで行きましょうか」

「理解した。七ヶ橋は待機」

「……はい」

これから何をするのか、何となく分かったつもりだけど、そこに私が役立てる場面はあまり無いと思う。だから待つように言われて少し安心した。

「もし危険を感じた場合は動いてくださいね」

「……分かりました」

「作戦会議は終わったかしら?」

ずっと待っていた伽行が訊ねて、

「えぇ、今ちょうど」

「そう、ならこちらも動きだそうかしら」

指示を出して周りの人達が少しずつこちらへ近付いてくる。

「ではこちらも」

扉から出した国守さんの手には、筒状の何かが二つ握られていて、

「行動。開始」


その何かが床に叩きつけられた瞬間、部屋の中を煙が包んだ。


「これは……煙幕ね」

伽行の冷静な声が聞こえる。

他の声は、声みたいで声じゃなかった。

「うわ!?」

「きゃあ!?」

「ぐあ!?」

例えるなら……攻撃を受けて倒れる時みたいな、そんな声だ。

「レベルアップ」

ここで音川さんの声が聞こえた。煙幕の中で剣が変化する光はうっすらと見える。

そして倒れる人の声が聞こえなくなると、周囲に風が巻き起こって煙が次第に晴れていった。

その間、一分くらい。

煙が晴れると、そこには、

「行動。完了」

「さすがですね音川さん」

私の近くにいた筈の音川さんと国守さん。その周りにさっきまで偽剣を持っていた人達が一人残らず倒れていた。

これで相手は伽行一人。こちらは三人で伽行を囲うように立っている。圧倒的に有利な状況。

「あら、まさかあの視界の中でここまでするなんてね」

それなのに、伽行の態度は変わらなかった。

「これで私達の方が有利です、これ以上の攻撃はおすすめしません。何もせずに、私達をここから出しなさい」

「何もせずに、ねぇ」

「あまり危害は加えたくないのです」

「よく言うわ、それだけ暴れておいて。それにアナタは偽剣まで盗んでいるじゃないの」

「うっ……」

よく見れば国守さんの周りに倒れている人は誰も偽剣を持っていなかった。近くにも落ちていないし、収納の中に入れたのかもしれない。

「それは。泥棒では?」

まさかの音川さんからのツッコミが入った。

「こ、これは偽剣に対抗するための資料としてですね……」

「だとしても。泥棒は泥棒」

「そうね、創った物を勝手に持って行かれたらそれは泥棒よね」

「うぐ……」

「……」

……何というか、緊張感が無かった。

「は……話を戻します」

「はぐらかすのね?」

「話を戻します!」

「でも。まだ話は…」

「戻します!」

強引に話を戻した。

「伽行珪子、これ以上の抵抗は止めて。大人しく私達を解放しなさい。そうすれば私達も攻撃は致しません」

「あら、そう。それなら…」

伽行は両手の剣を下げて……


「なんて、素直に従うと思っているのかしら?」


次の瞬間、私の左右から竜の顎が迫ってきた。


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