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文武平等  作者: 風紙文
第十章
231/281

剣守会と名乗った訳

元いた部屋から扉を二つ横に見た先の部屋へ、俺達は入った。

そこは椅子やベッドが置いてあるあの部屋よりも殺風景……というより、何も無かった。剣の舞が出来る部屋らしいから邪魔になりそうな物は一切置いていないのだろう。よく見ると剣か何かが刺さった後がついている。

「では始めましょうか。武川君、剣を」

「はい」

俺は久しぶりに、パズル錠を解いて剣を手に持った。

大剣の重さを両手にしっかり感じる。柄には空気砲の仕掛け、刃の腹にはパズルが付いている。

「それが『五を統べる一』ですか……初めて見ましたが、そのような名前が付いた理由が分かりますね」

「森人さん……本当に剣の舞を行うのですか?」

「もちろんです。それに、私の勝てる確率は極めて低いですし」

「……」

さっきから森人さんはそう言っているが、どういう意味なんだろうか? リーダーになるような人で、剣の舞が弱いということがあるのか?

「では、私も剣を出しましょう」

森人さんはパズル錠のかかった状態の剣を取り出し、錠を外して剣を…

「え……?」

「驚きましたか? コレは一応、その他に分類されているのですよ」

剣という名前でありながら刀剣の形をしない物をその他種と呼び、その他の種類の剣は今までも幾つも見てきている。

槍や鎌、カッターナイフ。その他とは言っても刃はあるものの他にも、ハンマーやメイス、ブーメランといった刃の無い物もあったけれど、どれも武器には変わりなかった。

だが、森人さんのその他種の剣は、刃も無ければ武器でもなかった。

「剣守会という名も、この剣を手にしたことが理由でもあります」

森人さんの剣は……盾だった。

白の縁取りがされた青色のシンプルな盾、今確かに錠を外したところを見たけれど、まさかコレが剣だとはとても思えない。

「国守さん。開始の合図をお願いできますか?」

「分かりました」

国守さんは俺と森人さんの間辺りに立った。俺は剣を両手で持って構え、森人さんも盾の剣を構える。

「先程も申しましたが、リハビリと思って無理をしないように」

「はい」

「そしてもし、このまま戦いを続けようと思うのでしたら仰って下さい」

「……はい」

後一日寝ていれば完治する。そう言われている以上無茶はしないつもりだ。けど、本音を言えば……しっかりと勝負がしたい。こうして休んでしまっていた分を取り返したい。

早く、皆の力に……

「それでは…………始め!」

国守さんの合図に、俺は前へ出た。

森人さんは盾を構えて防御体制。恐らくリハビリとなる今はあちらから積極的に攻撃してくることは無い筈。

剣を振り上げ、一気に振り下ろして切りかかる。

ギィン!!

盾にぶつかり、甲高い音が鳴った。

……やはり、普通の盾だ。

そういえば、これで攻撃が出来るのか? そもそもどこで攻撃するんだ。勝率が低いって、攻撃が出来ないから何じゃないのか?

「よい一撃です。かまわず続けて下さい」

森人さんの言葉に応えるように、剣での攻撃を続けた。

強い一太刀、弱めの一太刀、突き、色々と試す。全て盾に防がれて当たらないが、今はそれで良い。

……普通に動ける。だが、やはりまだ足の動きに違和感があるか。こちらから攻撃しているだけだからこれでも良いが、あちらの攻撃に対しての回避に影響があるかもしれない。

「どうやら完璧とは言えないようですね」

森人さんにも見抜かれていた。

「どうしますか? このまま終わりにしても構いませんし。このまま、本当の剣の舞を行っても宜しいのですよ」

「……」

無茶はしないように。動きに若干の支障がある。更に、盾という特殊過ぎる剣を相手にする。

これらの条件の中、俺の出した選択は……

「……このまま、戦いましょう」

「な!? 何を言っているのですか武川さん!」

「それで、良いのですね?」

驚く国守さんとは対照的に森人さんが訊いてきて、俺は頷いた。

「そうですか……分かりました」

「森人さんまで! 先ほどリハビリ程度だと言ったじゃないですか!」

「武川君本人の言葉です。安心してください、私の勝率は極めて低いのですから」

「……分かりましたよ。ですが、私は外で待たせてもらいます。全ての責任はお二人でお願いします」

「もちろんです」

「では、武川さんも程々に」

そして国守さんは本当に、部屋の外へ出て行ってしまった。

「では、始めましょうか」

「はい」

俺は剣を改めて構え直しつつ、森人さんの言葉を改めて思い出す。

私の勝率は極めて低い。

どうしてそんなこと言うのか、理由が全く分からない。盾だから攻撃が出来ない、とも考えたが、まさかそんな理由じゃ…

「それではまず、この剣について少しご説明しておきます。見ての通り盾であるこの剣には刃がありません、名のでこちらから攻撃を行うことは一切出来ません」

…そんな理由だった。じゃあどうやって剣に勝利を刻むんだ?

「ならばどうして勝利を刻むのか? そう思いましたね?」

また見抜かれていた。

「それは、この剣の能力を使うのです」

つまり、能力でしか攻撃が出来ないということか。

「ですが能力の発動には条件がありまして、発動しない限り私は必ず勝てません。故に、私の勝率は極めて低いのです」

なるほど……能力の条件さえクリアさせなければ、誰でも勝ててしまう。だからそんな言葉を。

「では、仕切り直しましょうか」

「はい」

今度は開始の合図を言ってくれる国守さんがいないので、互いに構えて。

「……行きます」

「どうぞ」

これを合図に、剣の舞を開始した。


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