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文武平等  作者: 風紙文
第十章
229/281

確認して

……side 三夜子


一夜明けて、朝。

学生寮よりも距離がある武川家から学校に向かうとしても、余裕過ぎる時間に私達5人は家を出た。

理由は、河川敷に寄るため。

「……いくよ」

「いつでもいいわよ、三夜子」

「うむ、遠慮は無用だ」

前で剣を持った月乃と花正、後ろでリリと紫音に見守られながら、私は傘の錠を外した。

傘が左右色違いの双剣に変化する……昨日感じていた違和感が、今日はとても薄れていた。

無くなった訳ではなく、気付かないと気付かないぐらいしか無い。でも確かにある。

これはいったい何なのか、それを確かめる為に今、ここにいる。

改めて前の2人を見てから、剣を交差して風を起こした。

するといつもの通り、かまいたちが飛び出して2人へと向かう。

「問題なく使えるみたいね」

「そのようだな」

来ると分かっていた2人は揃ってかまいたちを回避する。元いた場所を風が通り過ぎた後、そこへ戻った。

「……次、行くよ」

「いつでも来なさい」

「準備は出来ているぞ」

風は使えた。次は、昨日と同じことをして確かめる。

左右の剣を十字に合わせて、右手を引く、

「……剣刃突風」

風をまとった剣を、前へと投げた。

「……あ」

しまった……

「! 花正、止めるわよ!」

「うむ! て……な、なに!? 三夜子には避けるよう言われていたではないか!?」

「思ったより強いのよ! アレじゃどこまで飛んでいくか分からない。目的は渡すことなんだから止めたって良いんだから止めるわよ!」

「わ、分かった!」

……月乃も気付いたみたい。確かに力を入れすぎた。

2人共剣を構え、迫る剣に対抗する。

「同時に攻撃するわよ、さすがにそれで止まるわ」

「うむ!」

月乃はもう一つの刃も動かして、花正は鞘から剣を抜いて、

「せー、の!」

「はっ!」

揃って剣へ攻撃…


スッ……


「「あ」」

…花正の剣の能力が発動して、結果月乃1人だけで、

「こっ……のぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

剣を地面に叩き落とす事に成功した。

「な、なんとかなったわね……」

「す、すまぬ月乃。通り抜けることを忘れていたのだ」

「いいわよ、なんとかなったんだし。それより三夜子、投げるわよ」

「ん……」

月乃はたたき落とした剣を拾い上げ、私に投げ返した。昨日は受け取った時から違和感を感じ始めたけど、今日は……元々あった薄い感じから変わらない。

「どうなのだ? 三夜子」

「……問題は、あまりなさそう」

「そうなのか」

「何言ってんのよ、問題はこれからでしょ」

……確かに、昨日はこの後に風を使おうとして、使えなくてそのまま気を失った。

これから同じことをして、また気を失ったら……

「……」

考えるのは、気を失ってからにしよう……気を失ってから考え事って出来ないような気がするけど。

私は剣を振り上げて、

「……強風」

一気に、振り下ろした。

瞬間、剣の先から強風が吹き荒れ、河川敷の小石とかを巻き上げて土埃を起こした。

「……使えた」

威力も問題ない、むしろ強すぎるくらいで、それでも気は失わないし……薄い違和感も全く変わらない。状況はほとんど同じなのに、同じようにならない。この違和感も……

強風だったため、前にいる2人が見えなくなるほどに巻き上がった土埃は一分程掛かって無くなった。

「問題なさそうね」

「うむ、無事そうではないか」

2人が剣を閉まって歩いて来て、後ろで見ていた2人も集まった。

「大丈夫、みゃーさん?」

「ん……なんともない」

「ならば、昨日のはどうしてだったのだろうな」

「……分からない」

考えることは得意じゃないけれど、一つだけ思い付いたことならある。

風が……能力が使えないということは、この剣が、全く別の物になっていたということ、と思い付いた。

……もしも、この考え事が合っていたとしたら……

「あ! てか時間ヤバ!」

紫音が携帯で確認すると、いつもの登校時間を少し過ぎた時間だった。それも寮からの時間だから、更に遠いここからだと少し危ない。

「とにかく早く学校行かなきゃ! 急ごう皆! それじゃね花正!」

「うむ、皆気を付けて行ってくるのだぞ」

花正とはここで別れて、私達4人は学校へと早足で向かった。


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