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文武平等  作者: 風紙文
第十章
222/281

いないより

……side 三夜子


……創矢は、風邪を引いて休み。寮にいないのは家が近くだから帰って療養している。という扱いだった。

『同室が萩浦だからな、わざわざ説明する手間が省けたぜ』

兄さんからそう聞いて、私は朝、紫音と一緒にA組に行って、リリにもその話をした。

「そうなんだ、昨日そんなことが……」

「あーしと翔一が1日予定を遅らせてたらこんなにはならなかったのに」

「ボクもだよ。結局話し合いは今日だった、あの時一緒に帰ってたら」

「……2人のせいじゃない」

「でもみゃーこ」

「……私が、無理に誘ったから」

「みゃーさんが?」

「……帰っても、どうせ一人って言ったから。私が、寄り道するって言ったから」

創矢を誘わなければ、あんなことにはならなかった筈。だから…

「……悪いのは、わた…」

「なに言ってんのよ」

声が遮られて、前には月乃が立っていた。

「話は聞いてるわ。誘って良かったじゃないの」

「……え?」

どうして、そんなことを?

「よく考えてみなさい。三夜子が誘おうとそうじゃなかろうと、創矢は家に帰る為にあの道を通ったのよ。そこで空間が張られたあの場所で、会わない方が難しいに決まってるじゃない。強剣屋とかいう人が助けに来たのかもしれないけど、どちらにせよあの場で創矢は戦いを選んでるわ。その時に、三夜子が隣にいるだけでどれだけ創矢が楽になったか、考えてみなさい」

「……」

私が隣にいるだけで……私が、一緒に戦うだけで……創矢を助けられた。

いるといないなら、いるが良い。

「……なるほど」

「分かった? 分かったなら、マイナスに考えるのはやめなさい」

「……分かった」

「ならいいわ。ところでそろそろ授業始まるわよ、2人は戻りなさい」

「え? もうそんな時間?」

時計を見ると、確かにそろそろ戻らないといけない時間だった。

「マジだ、みゃーこ戻ろ」

「ん……」

「そんじゃリリ、また」

「今度はボクがC組みに行くね~」

手を振ってA組を出る……その前に。

「……月乃」

「なに?」

「……ありがとう」

「あまり深読みするんじゃないわよ」

「ん……分かった」

私と紫音はC組へと戻った。


……創矢、今頃何してるのかな。


学校終わったら、絶対に行こう。





「……なんか、風邪引いた時を思い出すな」

時刻は昼を過ぎた辺り、俺はまだベッドの上にいた。

とはいっても、決して動けないわけではない。昨日みたいに起きあがろうとして倒れるようなことはなくなり、少しなら歩けるようになった。

ただ、まだ走るといった運動の類いは不可能らしい。試そうとして、倒れかけた。

まだ寝ておいた方が良いと言われ、今に至る。

今を文字で表すなら、暇だ。

風邪を引いて学校を休み、休息のため眠ってから、昼過ぎ辺りに起きても、制限されてやることが無い状態と言えば分かるだろうか? まさにその感じだ。

確か高校一年生の時にも風邪を引いて、家が近かったから帰って休んでいた時も寝てるだけで、こんな感じだったな……いや、確かあの時は、あまりに暇過ぎてパズルを解いてたな。

今思えば知恵熱で悪影響だったのだろう。1日寝てれば大丈夫と言われていたのに、完治に2日掛かった。

今なら、問題ないよな……とは言うものの、手元にパズルは、剣の錠しかない。

「……花正か、三夜子が来てくれればな…」

その時、扉が叩かれた。誰かが来たみたいだ。

誰だろうか、三夜子達はたまだ学校だろうから……あ、もしかしたら花正か。ならちょうど良い。

「はい」

返事をすると、扉が開いて、

「お邪魔するっすー」

「よぅ、体調はどうだ?」

現れたのは、ルカと階田の2人だった。

「お前達……学校は?」

2人も同い年の高校生だ。三夜子達がまだ来れないみたいに、普通ならまだ学校にいるはずだが。

「今日は午前中だけで終わったっす」

「早山から連絡があってな、そこまで遠くなかったからこうして来たんだ」

そう言えば運び込まれたから知らなくて当たり前たが、ここはどの辺りなんだろうか? 階田が近いってことは、隣町の方か?

「気分はどうっすか?」

「確かルカは寸前で止まったあの顎と、もう一つ何かを受けたんだろ?」

「あぁ、レベル5の剣の一撃を二回もな」

「そんな寝込むくらいの重傷なのかよ」

「重傷というか、体が上手く動かないんだ。少し歩くのがやっとだな」

「そ、そんなにひどいっすか」

「そういや、ルカも当たってねぇのにしばらく目覚まさなかったよな」

「俺の場合は同時にレベル5の攻撃を受けたかららしい。けど数日休めば良くなるらしいから安心してくれ」

「そういうことなら、安心するっす」

「まぁそんだけ普通に喋れるなら心配はいらねぇな」

「わざわざありがとうな、2人共」

正直、ずっと一人でさびしいと思い始めてしまったところだ。それだけ、俺は誰かと一緒にいたんだな。

いないよりは、いる方が良い。

「時にルカ、花正の携帯のアドレス知ってるよな」

「もちろんっすよ」

「実は今携帯も使えなくて、それで花正に連絡したいことがあるんだが」

「問題ないっすよ、それでは」

ルカは携帯を取り出して。

「どうぞっす」

「あぁ、まず…」


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