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文武平等  作者: 風紙文
第九章
215/281

それぞれ放課後へ

パズル部の部室は、隣の演劇部と一つの教室を半分にした広さ。半分ゆえに席の数も普通の教室の半分で、全て教卓を向いて並んでいた。

パズル部が出来て早数ヶ月、全員は自然と座る席は決まっていた。

縦二列に横五列の並びで、後列真ん中に俺、窓側に早山、扉側に萩浦。教卓の目の前にあたる前列の真ん中に三夜子が座り、窓側は月乃、扉側が押川。ここまでが正式部員。

両端は、前列窓側に花正、扉側の前後に双子がよく座っている。

今日は珍しく、席が全部埋まっていた。

そして、もう一人、

「それにしても紫音、最近よく来てるけど大丈夫なの?」

「まね、学園祭の大仕事も終わって、次は来年だし」

隣の演劇部の陽花が、ここ毎日のように遊びに来ていた。

陽花には特に指定席はなく。空いている場所や、三夜子と押川の間で机に腰掛けていたりする。

「あ、そういえば報告があるんだけど」

ふと、陽花が全員の視線を集める。

「多分だけど、演劇部の全員、剣の記憶は無くなったっぽいよ。なんとなく話に織り交ぜてたんだけど、反応が無くなったから」

「そんなことしてたの?」

「そこまでが任務だったからね、それも終わったし、そろそろパズル部に移ろっかな……って、思ったんだけどね」

ふぅ、とため息をついてから言葉を続けた。

「なんてーのかな。感情移入したっていうか、三年生がいなくなって人数的に大変になるっていうか……」

「つまり……どういうこと?」

「えーっと……みゃーこ、ゴメン!」

パシッと音を立てて両手を合わせながら三夜子に向けて頭を下げた。

「……どうして?」

この三夜子の言葉を、陽花は捉え方を間違えていた。

「その……演劇部も、楽しくてさ。それにほら、部室隣だからこうして簡単に遊び来れるし……だからその…」

「……違う」

「え?」

三夜子が言ったどうしては、どうしてパズル部に入らないのか、という意味ではなく。

「……どうして、わざわざそんなことを言うの?」

「で、でも、そういう約束してたし……」

「……紫音が好きになった場所を、わざわざ離れる必要はない」

「みゃーこ……」

「そうだよしーお! ボクも陸上部と掛け持ちだもん。わざわざやめる必要なんてないよ!」

「リリも……うん。そうね、あーし、演劇部続ける!」

「うむ、頑張るのだぞ陽花」

決意を新たにした陽花に、何故か花正は拍手を送っていた。

「ところでさ、一つ聞いていい?」

そこで、押川が手を挙げた。

「剣を使っていた人は、他の人が同じものを使うと使っていた時の記憶が無くなるんだよね?」

「ん……そう言ってた」

「じゃあさ、ボクみたいな人はどうなるの?」

押川みたいな人?

「むぅ? どういう意味なのだ?」

「それはあれでしょ? リリみたいに、剣は持ってないけど剣のことを知ってる人はどうなるのってことでしょ?」

「うん。ボクは剣を持ってないから、記憶が無くなることはない筈なんだけど」

「あー、確かにどうなるんだろ。翔一知らない?」

「ううん、今までそんなこと無かったから分からないよ。早山さんは、ご存知ないですか?」

「……いや、剣守会でも聞いたことがないな。大和先生に訊いてみよう」

数十分後、部室にやってきた大和先生に押川が疑問をぶつけた。だが、

「そういや、どうするんだろうな」

明確な答えはもらえなかった。

「俺から言えるのは、剣のことは他の人には秘密にしといてくれってことくらいだな。詳しいことは今度剣守会に行った時に聞いてみる、わるいな押川」

「いいえ、大丈夫です」

「今度の剣守会の集まりは…」

「先生、確か今日の筈です」

「あ、本当だ」

携帯を開いてスケジュールを確認していた大和先生先生に対して、早山が答えた。

「紫音、僕達も剣士団に呼ばれてたよね」

「そうそう、あーしの任務完了の報告にね」

『あ』

その時、今まで静かにパズルを解いていた双子が声を揃って言った。

「今ので思い出しました、」

「アルクスさんに、買い物を頼まれてたんだ」

今のどこに買い物を思い出す台詞があったんだ?

「む、買い物ならばわたしも帰りにするつもりだったぞ。昨日醤油を使い切ってしまったのでな」

「それではこの後、」

「一緒に買い物行こうよ」

「うむ、わたしは構わないぞ」

なんか段々と皆のこの後の予定が立っていくな。

そうこうしている内に、本日の部活の時間が終了。皆それぞれの予定に向かって行動を始めた。

大和先生と早山は剣守会へ。

陽花と萩浦は剣士団へ。

花正と双子は買い物へと。

「創矢は先に帰っていて構わないぞ」

なので残った俺、三夜子、押川、月乃は帰宅を開始するも、

「あ! そういえば今日、陸上部の先輩を送る会の話し合いだった!」

「そんな大事なこと忘れてたの?」

「もう終わってるかもしれないけど……ボク行ってくる!」

押川は陸上部の部室へ向けて走り出した。

次の瞬間、向かう先にある演劇部の扉が開き誰かが出てきて、

「わわ!?」

「あ! ご、ごめんね!」

ぶつかりそうになりながらも何とか避け、押川は謝りながら階段へ向かって走り去っていった。

「び、ビックリしました……」

「あ、花香」

演劇部から出てきたのは、町田だった。

「雅さん、ちょうど良かったです。実はお話ししたいことがありまして」

「話したいこと? なによ」

「その……ここでは話しにくいのですが」

「なら今パズル部の部室が空いたから、ここで話しましょ」

「はい、ありがとうございます」

「というわけだから、2人共。また明日ね」

「ん……また明日」

「あ……あぁ」

押川と月乃とも別れ、俺と三夜子の2人だけで、帰宅することになった……


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