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文武平等  作者: 風紙文
第九章
210/281

一方こちらは

―――時は少し遡り。


「さぁ、今晩は何を食べようか」

夕飯の買い物の為、俺と花正、三夜子の三人でスーパーへと買い物に来た。

ここは駅前から少し離れているが、全体的に値段が安く、今も人が多い。

花正が言うに、ルカと出会ったのはここらしい。

「創矢よ、何か食べたいものはあるか?」

「そう言われてもな」

特に食べたいものも無いし、そもそも花正がなんでも作れる訳じゃない。失敗も普通にあるからな。

「……私も、手伝う」

「ならあれだ。2人が作りたい物を作ってくれれば良いだろ、俺は文句言わずにそれを食べるから」

俺は好き嫌いは少ない方だ。花正もそれは知ってるだろうし、作ってもらう側だからとやかくは言わないさ。

「ほぅ、そういう手があったな。よし三夜子、何を作ろうか」

「ん……どうしよう」

花正は片手にカゴを持って、三夜子は片手にいつも通りに傘を持って、2人は並んで歩き出した。

「時に三夜子、三夜子はどのくらい料理が出来るのだ?」

「……包丁を使えば、わりとなんでも」

そうだった、三夜子も特殊な料理スキルの持ち主だったな。

「そうか、では包丁を使う料理にしよう。ふむ、何があるだろう」

いや料理なら大体使うだろ、と言おうしたその時、

「おや、皆さん」

俺達の前を、カゴを持ったアルクスさんが歩いていた。

「む、あなたは神父さ…」

「牧師ですよ」

ツッコミが早かった。というか花正、いい加減覚えろよ。

「皆さんお揃いで、お買い物ですか?」

「アルクスさんも、お買い物ですよね」

すでにカゴの中には色々と入っている。

「レドナさんとリリィさんも一緒ですよ。今はお店の中を見て回っています」

アルクスさん達も、やっぱり自分達で料理するんだな。当たり前だろうけど。

「時に、武川さん」

「はい?」

「少しお話ししたいことがあるのですが、今宜しいですか?」

「はい。大丈夫ですけど」

「では、わたし達は先に買い物しているぞ」

花正と三夜子は先に歩いていき、俺はアルクスさんの隣に立つと買い物をしている風を装うように歩きながら。アルクスさんは口を開いた。

「ではまず、レベルMAXという言葉はご存知ですか?」

「それは、剣のですね?」

「ご存知でしたか。ワタクシは先日、剣守会にて聞いたのですが」

……そもそも、俺が白塗から聞いて、大和先生が剣守会に話したから、発信源から直に聞いてる俺のが情報が早いのは当然か。

「剣の新たなる強化、レベル5を上回るレベルの剣……ワタクシはそれを昨日見たのです」

「見た? 誰かがレベルMAXの剣を持っていたんですか?」

「はい。強剣屋というグループに、お二人。レベルMAXの剣を持つ方がいらっしゃるのです」

強剣屋、剣狩りを壊滅させたグループの総称だ。

なるほど、レベルMAXの剣があったからレベル5を3つも持っていた剣狩りに勝てたんだな。

「強剣屋とは、剣を持つ三つのグループが集まり出来たグループなのですが、そのリーダーの内お二人がレベルMAXの持ち主なのです」

レベルMAXが2つ、確かレベル5と同じ数あるかもしれないって白塗は言っていたから、まだ後5つある可能性があるか。

「この辺り、ですかね。お二人にもお伝え願いますか?」

「はい。大丈夫ですけど……どうしてさっき2人を呼び止めなかったんですか?」

さっきまで一緒にいたんだからその場で話せば手間が省けただろう。

俺が訊ねると、そうですね、とアルクスさんは少し考えて、

「なんと言いましょうか……武川さんが最も早く理解したくださると思ったからですかね」

「あー……」

とてもよく分かりやすい理由を答えてくれた。

と、そこへ、

「アルクスさん、こちらにいましたか」

「あ、武川さんが一緒にいるよ」

リリィとレドナがそれぞれ手に数種類の商品を持ってやって来た。

「お二人共、まずはご挨拶ですよ」

『こんにちはー』

アルクスさんの言葉に寸分違わずシンクロして挨拶され、少し驚いたが俺も返事をする。

「武川さんもお買い物ですか?」

「あぁ、花正と三夜子と一緒にな」

「ふーん、あの2人もいたんだ、会わなかったよね? 姉さん」

「そうですね、兄さん。私たちもお店の中を歩いていましたが、お二人には出会いませんでした」

そんなに広い店ではないけど、まぁそんなこともあるだろう。

「あれ? 武川さん、携帯鳴ってない?」

不意に、レドナがそんなことを言ってきた。全く気付かなかったが、確認してみると確かにメールを受信していた。

「よく気づいたな」

「まぁね、耳はいい方なんだ」

メールの差出人は萩浦だった。内容は、今月乃や早山、陽花と、階田とルカを含め六人で河川敷で剣の練習をしているから良かったら来ないか、というもの。

「剣の練習か……」

「練習ですか?」

「それならボク達も行きたいなー、ねぇアルクスさん。行っていい?」

「別に構いません、ですが、一度買い物した物を教会に持って帰ってからですよ」

俺も花正達の買い物の荷物持ちで来てるしな、それにここから家とは河川敷は逆方向。花正も言えば二つ返事だろうから、俺達も一度家に帰ってからだな。

俺はそのことをメールで送り返し、花正達と合流してメールの内容を伝えた。やはり二つ返事で了承したので、早々に買い物を済ませて俺達はアルクスさん達と別れた。





その後、一度帰宅して買い物をしまい、玄関前にいた双子と共に俺達は河川敷へと向かった。

……ただ、一つ気になったことがある。

あの萩浦が、俺のメールに返信をしてこなかった。

まぁ普通あの程度に返信はしないだろうけど、萩浦なら少し、しそうな気もしたんだが。


……まさか、メールを送れないような状況になってるなんてこと……考えすぎ、だよな。


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