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文武平等  作者: 風紙文
第一章
21/281

パズル部、最初の活動

そして放課後。俺と大和先生は体育館裏の、金曜日に俺と七ヶ橋が負けかけた所にやって来た。

「剣ってのは、コレだ」

「コレって……」

先生が指さした先、そこにはこの前も見た『森の柱』があった。

「コレが、剣ですか」

「生徒達の間では森の柱って呼ばれてるんだよな。でも少し考えればこんな形の、骨がついたような柱は存在しない」

「……」

初めて見た時からおかしな物だと思っていたが、まさか本当におかしな物だったとは。

「でだ、ここを見てくれ」

大和先生は森の柱に近づいて表面に触れた。

「ん? なんかぶつかったのか、表面の苔が少し取れてんな」

多分それは俺がぶつかったのが原因だ。

「まあいいや、ここを見てくれ」

大和先生が示す場所は柱の中心部分、よく見てみると溝のようなものがついている。それを幾枚も、柱の腹に見つけた。

「板を動かして絵を揃えるパズルがあるだろ、コレはそれに近いものでな、パズルを揃えないとまず抜けない、だから今の今までここにあり続けてるんだ」

「つまりコレを解いたら、剣になるって事ですね」

「その通り、でも難しいぞ。聞いた話じゃコレはレベル4の中でも上位のパズル錠らしいからな」

レベル4、七ヶ橋が持ってる剣と同じか。

「今一度聞くが、この剣の錠を外すか?」

「……はい、やります」

「OK、なら早速始めてくれ……と言いたい所だが、今日はパズル部成立の初日だ。部室に行って部員どうしの顔合わせやら何やらをしないといけないから、とりあえず今は後回しだ」





校舎北側の四階、生徒達はここを部室棟と呼ぶ。

理由は言うまでもないが、この棟には美術室の美術部、音楽室の吹奏楽部、そして視聴覚室の軽音楽部を除いた全ての文化系部活の部室がここに集まっているからだ。

この棟を使った授業は全く無く、運動系の部活はこことは別にある部室棟を使っている為、ここを通る者は全て文科系の部員と言っても過言では無い。

新たに設立された事もあってか、パズル部の部室は一番端に置かれていた。

大和先生の後に続き中に入る。広さは普通の教室の半分程、右端にある駆動制の壁で半分にされており、向こうはまた違う部活の部室だ。人数が人数なのでこれでも別に狭くは感じない。

机と椅子が計15セット。黒板に向いているのを見ればここも元々は授業に使われていたのかもしれないと思う。

「とりあえず、自由に座ってくれ」

そう言って大和先生は教卓へ。

「武川君こっちにおいでよ、みゃーさんと並んで座ろ」

パズル部の2人目、押川が手招きして一つの席を指さしてくれたのでその席に座る。右隣に七ヶ橋、その向こうに押川という、七ヶ橋を中心とした並びになった。

「よーし、今日はパズル部設立の日だ。まずは部員どうしの自己紹介といくか、まぁ3人共知り合いだけどな、名前とクラス、後は趣味特技だけでいいからな」

何で趣味と特技までと思っていると、まずは押川から、と先生が言ったのを聞いて押川が席を立った。

「押川李々子です。クラスはA組で、特技は運動です。趣味はおしゃべり、かな? これからよろしくお願いします」

ぺこんと頭を下げ、席についた。

「じゃあ次は……武川」

「はい」

席を立ち、2人の方を向いて自己紹介をする。

「武川創矢です。クラスはC組で……えっと、趣味はパズルを解く事。特技という程ではないけど剣道をやっています。皆さん、どうぞよろしくお願いします」

押川にならって頭を下げ、席についた。

「最後に三夜子」

「……」

七々橋は何も言わずに席を立ち、坦々と語りだした。

「……七ヶ橋三夜子。クラスはC組……趣味は…」

『……』

趣味は、で口を閉じたので何故か沈黙。思いつかないのか考えているのか。

「趣味は?」

大和先生が改めて聞くと、七ヶ橋は答えた。

「……特に無い」

無いのかよ!

「じゃあ、特技は?」

「……剣術?」

さらりと言った。

いやいやそんなさらりと特技が剣術って……まあ、いいか、俺も剣道って言ったし。

「へぇ~、みゃーさん剣術が使えるの? あ、だから武川君と戦ったんだね?」

「……そう」

押川もあっさりと受け入れている。

「今度ボクにも教えてよ」

押川、多分お前が考えているような生半可なものじゃないんだぞ。

「……分かった」

分かったのかよ!?

声に出そうなツッコミを無理矢理押さえ込んだ。あまりこの話題を深掘りしない方が良い。

「とりあえず自己紹介は終わりだな。次にパズル部の具体的行動内容を発表するぞ」

先生は黒板にチョークを走らせ、具体的内容を書いていく。一分も経たずに書き終わり、こちらを向いた。

「世の中にあるパズル、知恵の輪からジグソーパズルまでをやって、やった感想やレポートを出すんだ。個人で解いたり、2人か3人で解いても構わないぞ、とにかくパズルを解く事、それがこのパズル部の具体的内容だ」

なんつうか……その、遊びみたいな内容だな。

黒板にも『パズルを解いて解いて解き明かす』とだけ書かれている、それだけを見たら何してるんだと言われても仕方ないと思う。

「自分だけじゃ解けないようなパズルを見つけたらここに持って来て全員で力を合わせて解くのもありだな、でもコンセントは使えないからテレビゲームとかのパズルは無しな」

パズルゲームが無くても充分遊びっぽいが。

「それじゃ、部活開始……と、言いたい所だが。そう都合良くパズルなんて持ってないよな」

それはそうだ、普段からパズルを持ち歩いている生徒なんて……あ。

「あの……」

「どうかしたか?武川」

普段からパズルを持ち歩いている変わった生徒。いるじゃないか、ここに。

「コレで良ければ」

鞄を机の上に置き、キャストパズルを机の上に並べた。

「おぉ、凄いな武川」

「武川君すご~い」

「……」

三者三陽の反応だ。七ヶ橋は前に見た事があるから無反応なのか、そうじゃないかは判断できなかった。「じゃあ、今日はコレ等を解いてみるか」

「は~い」

「……」

押川と七ヶ橋が一つずつ手に取った。

さて、俺はどうするか。今机に置いているのは一度も解けてない物だけなのでどれを選んでも時間はかかるだろう。

とりあえず、目がいった一つに手を伸ばす、

「武川」

その時、大和先生が俺を呼んだ。

「はい?」

「武川には、解かなきゃいけないパズルがあるだろ?」

「解かなきゃいけない? あ、そうでした」

そうだ、ここでキャストパズルを解いている場合じゃない。

俺は席を立ち、扉に向かう。

「武川君どこ行くの?」

「ちょっとな」

「部活終了時間には帰ってこいよ」

「はい」

3人に見送られて教室を出て。再び体育館裏、『森の柱』を正面に見る。

「コレが剣、か……」

近づいて地面に膝をつき、表面を撫でながら改めてよく見た。

長方形に囲いがあり、その中に様々な模様がかかれた板。上には細い棒がついていて、剣だとしたらコレが持ち手か。

改めて見て、なるほど、剣が地面に刺さっているように見えなくはない。

板の一つに触れ、横の空きに動かしてみる。

普通に動いた、こんなに苔まみれだから何か引っ掛かると思っていたがそんな事は無かった。

適当に板を動かしてみる。空きができた所に板を、そうしてできた空きに更に板を動かして埋めてみる。

暫く続けたが、特に変化はない、板の並びが変わっただけ。

そこでふと気づいた、板に模様がついているんだ、それが関係している筈。

板の模様を改めて見る。黒い二重線が板につき一本、ある板は縦の線、ある板は横の線、柄とは呼べない、本当に模様のようだ。

「この模様を合わせればいいのか?」

板の大きさから見て並びは縦4の横3、そこに板は6枚……ん? 空きは一つだけでいい筈だ。そうすると数枚足りない気がする。

まぁ、今はこの状態でやってみるとしよう。

板に手を触れ、パズルを解きにかかった。

それと同時に、考えておく。剣を使って、叶える願いを。

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