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文武平等  作者: 風紙文
第九章
208/281

2本目

「……」

玄関から顔を出し、左右を確認。

右を見て、左を見て、もう一度右を見て左を見て、

「……よし、いねぇな」

安全を確認して、玄関からゆっくり出て歩き出す。

「後は……」

足音を極力抑えながら、隣に建つ家を確認する。

人の気配はあるけと、こちらに気付く気配は無し。もしかしたら、もう出掛けているのかもしれない。

「……よし、大丈夫だな」

安心を確認して、一息ついて普通に歩き出した……


「ハーーールーーー! どこに行くっすかーーー?」


……side ルカ


そんなハルの背中に、今までの行動を見ていたあたしは飛び付いた。

「いぃ!? る、ルカ!? テメェ出掛けてたんじゃねぇのか!?」

「なーに言ってるっすかハル、あたしはここに居るじゃないっすか」

本当は出かけようとしてハルの家の前を通った時、丁度出てくるハルを見つけたから隠れて見てたけど、それはナイショだ。

「お前のことだから、出かけようとしてオレの家の前を通った時、オレが出てくるのが見えたから隠れてた。ってもおかしくはないが……さすがにそれは…」

「そそそ、そんなわけないっすよー、は、ハルの考えすぎっす」

「……図星かよ」

明らかに動揺してるあたしを見て、仕方なさそうにハルはため息をついた。

「で? ハルはどこに行くっすか! 良かったらあたしも一緒に…」

「ダメに決まってんだろ。お前は元々行こうとしてた所へ行け」

元々、と言われても、特に目的もなく街をふらふらしようとしてただけだけど。

「どうせお前のことだから、特に目的もなく街をふらふらしようとしてただけかもしれないが」

「は、ハルって、実はエスパーだったっんすね!」

「は? 何言ってんだ?」

二回も連続して心の中を当てられるなんて、エスパーとしか考えられない。

「エスパーだかなんだか知らねぇが、オレは行くところがあるんだ」

「早山くんのところっすか!」

「うっ」

呻いた、図星のようだ。

「結局昨日は会えずじまい。だから昨晩辺り武川さんから手に入れた早山くんのメールアドレスで連絡して、今日会う約束をしたっすね!」

「……」

「ふっふっ、どうやらエスパーなのはハルだけじゃなかったみたいっすね」

ほとんど同じ時間を過ごしてたから、似たような能力を得たのだろう。

「行く場所さえ分かっていれば、あたしは後をついて行くっす。さぁ、早山くんのところへれっつごーっす!」

「……はぁ、仕方ねぇ」





昨日も来た隣町、そこから更に歩くこと数分、たどり着いたのは、昨日も来たあの河川敷だった。

「ここっすか?」

「おぉ、話ついでに練習相手になってもらうんだよ」

「でも確か昨日、ここを使うなら許可を取れって聞いたっすけど」

「早山は剣守会だぞ、許可くらい取れんだよ」

あー、なるほど。

「どうせならルカ、お前も練習してけ。早山の方も一人じゃないみたいだからな」

「?」

一人じゃない? となると、剣守会の仲間の誰かとか?

「お、いたぞ」

ハルの視線の先に、早山くんの姿を見つけた。会うのは久しぶりだけど、すぐに分かった。

そしてその隣には見たことある人が2人と、初めて見る人が1人。

「……来たな」

「? 階田は分かるけど、その隣にいるのは誰よ」

「あれは、雨切橋さんですね」

「やっぱりね、階田が来るって知ったらルカもついて来るって思ってたのよ」

4人の近くまで行って、改めて全員を見る。

早山くんから一人飛ばして並んで立っているのは、陽花ちゃんと萩浦くん。同じ剣士団だからよく知っている。

そして、早山くんの隣に立っている人は、多分同い年だと思うけど。

「……まず、知らない者どうしで自己紹介しておくか」

「そうね」

その人が一歩、あたし達に、というかあたしの前に。

「アタシは月乃雅。早山とはクラスメイトで同じ部活よ」

「ご、ご丁寧にどうもっす。あたしは雨切橋縷々香。長いのでルカと呼んでくださいっす」

「なんか、変わった話し方ね」

「昔っからこうなんだよ」

「そーっすね、いつの間にか定着しちゃったっす」

何でだったか? 思い出してみようかな……うーん……

「とりあえずどうする? 結果六人とか大人数になっちまったが」

「……そうだな、普段は出来ない戦いをしてみるか」

「じゃあこうしない? 2対2対2で、ちょうど6人よ」

「へー、面白そう、あーしはそれ賛成」

「僕も賛成です」

「オレもそれで良いぜ、ルカ、お前は?」

「うーん……思い出せないっす……」

「おい、ルカ?」

「えーっと……確か、小学生の後半辺りでは、もうこうだったすから……」

「聞こえてないわね」

「おいルカ!」

「ほぅ!?」

いきなりの大声に驚いて、あたしは慌ててみんなを見た。

「なな、なにごとっすか!?」

「お前、話聞いてなかったのかよ」

「うっ、ご、ごめんなさいっす」

「もういい、お前も賛成側だ。これで5人か」

「……なら、決まりだな」

「おっし、さっさと始めようぜ、ルカ、準備しろ」

「おーっす!」

あたしは剣を取り出して鍵を外し、

「気合い入れるっす!」

ポケットからはちまきを取り出して、頭に巻き付けた。

「え? それって……正解?」

「いえ……恐らく…」

「ぷっ、ルカ、間違えてるよ」

「え?」

月乃さん、萩浦くん、陽花ちゃんに言われて、ハルの方を向いた。

「ハル、このはちまき、何て書いてあるっすか?」

「特攻」

特攻!?

「ま、また間違えちゃったっすか!?」

必勝を持ってきた筈なのに、これでは暴走族みたいだ。

「まぁ良いんじゃね? 昨日の合格よりはマシだろ」

まぁそう言われれば。

「よーし、このまま行くっす!」

「……良いのかしら、アレで」

「……まぁ、本人が良いなら、口出し無用だな」

「そんじゃ、組み分けは、このままで良いよね?」

どうやら三つの2人組で戦うらしい。早山くんは月乃さんと、陽花ちゃんは萩浦くんと、そしてあたしはハルと組み分けがされた。

みんな少しずつ下がって、それぞれの剣を手に取る。

「ハル、どうするっすか?」

「どうもこうもねぇ、前に来た奴と戦う、それだけだ」

「了解っす」

剣の能力的にコンビネーションは皆無だから、ハルの作戦に乗ることに。

「さぁ、いつでも良いぜ」

「……こちらもだ」

「こっちも良いよー」

それぞれの片方が答えて、間が空き……誰からともなく。

『スタート!』

放たれた合図で、あたし達は前に飛び出した。

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