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文武平等  作者: 風紙文
第九章
199/281

レベル……

2人共、旅行の準備をしていて来客は困るだろう。なので三夜子には家の前で待ってもらい、俺は一人玄関を開けた。

「ただいま」

「おぉ創矢、おかえりだ」

家に着いた俺を迎えたのは花正だった。

「母さんは?」

「向こうにいるぞ」

「親父は?」

「向こうにいるぞ」

その向こうの場所を教えてくれよ。

「じゃあ……拍露達は?」

「それなら道場だ、帰りの支度をしておくと言っていたぞ」

そうか、なら。

「分かった」

俺は家に上がり、二階に行って荷物を部屋へ。一階に降りるとそのまま道場へ向かった。

一応戸を叩き、返事が返ってきてから開いた。

「あ、武川さん」

最初に気付いたのは拍露。直後に横矢と緑羽もこちらを向いた。

学園祭に来るため泊まっていた三人だが、帰りは明日の予定だ。予定を早めてもう帰っていたりしなくて良かった。

「片付けてる所悪いが、拍露、ちょっと良いか?」

「え? は、はい」

やってきた拍露と共に、外で待っていた三夜子の所へ。

「もしかして、先ほどの事……ですよね」

「いや、そうじゃない。実は白塗に聞きたい事があるんだ」

「白塗ですか? でも、白塗は……」

「どうかしたのか?」

「いえ、まだ間に合うかもしれません。少し、待って下さい……」

そう言うと拍露は目を閉じた。

前は数秒程で変わったが、今は一分くらいかけて、ようやく、

「ふわぁ……せっかく寝付けてきたのに、どうしたの?」

拍露の中のもう一人の拍露、レベル5の七振りの人格が一つ、白塗が現れた。

「寝てたのか」

「まぁね。もう剣の戦いとは無関係だろうし、暇だから半年くらい寝ててみようかなって思ってね」

は、半年って。

「……そんなに、眠れる?」

「そりゃあ、使い手を待って数十年寝てたこともあるし、むしろ短い方だよ」

そうか、そう考えれば……と、そんなことはどうでもいい。

「白塗に聞きたいことがあるんだ」

「なに? どうせ剣のことでしょ」

分かっているのなら話が早い。

「百の内の七振りであるレベル5の白塗なら知ってる筈だ。剣はいったい、何本存在するんだ」

「? 百に決まってるでしょ。そんなことも知らなかったの」

「それは有り得ない。何故なら一本の剣に100の勝利を刻むには、最低でも百一本の剣が必要になる。それとも、願いなんて本当は叶わないって意味なのか」

「それは無いよ。オレだって昔、人の願いを叶えた事あるもん、100の勝利を刻んでね」

「だからその為には…」

「形として存在出来る剣はこの世に百本だけ。でも……姿としてこの世に存在している剣は、もう少しあるんだよ」

「は……?」

姿として存在している、剣?

「分からない? もう少し簡単に話そうか?」

「あ、あぁ。頼む」

「はいはい」

やれやれという風に首を振ると、白塗はあっさりと話し始めた。

「この世に剣の形をしたものは同時に百しか存在出来ないけど、その内の一本が別の姿になる分なら、別に良いんだよ。形としては百ちょうどだからね。分かる?」

俺はいつかホウさんが言っていた言葉を思い出した。

1つで有りながらもう一つであるという可能性もある。白塗が言っているのはそういう意味だろう。

「オレも昔は戦ったよ。一度戦った相手がもう一度挑んできて、その場で剣が別の剣に変化したんだ。まぁ、使い手が下手で勝ったのもあったけど……ある一つは、どうしても勝てなかったな」

「……複数?」

三夜子が呟いた通り。今の白塗の言葉には姿だけという剣が何本もあるように聞こえた。

「そうだね。詳しくは知らないけど、多分七は確実なんじゃないかな」

七は確実?

「どうしてそう言い切れるんだ」

「だって経験上、どう見てもレベル5の七振りに対抗した能力ばかりだったからね。レベル5の上を行くレベル5対策、さながらレベル6、あるいはレベルMAXかな」

レベル5を凌駕する能力を持つ剣、レベルMAX……そんな剣が存在していれば、剣の数は百以上になり、一本の剣に100の勝利を刻むことも出来る。過去の戦いの経験者にして剣の意志だった白塗の言葉なら確実だ。……しかし、

「そんな剣があったら絶対にそれが勝ってしまうんじゃないのか」

普通に強力なレベル5に対抗出来る能力、下のレベルでは歯が立たないだろう。

「別に、そうとも限らないよ」

「え?」

「ちゃんと聞いてないの? レベル5に対抗した能力って言ったんだ。レベル5より強力な能力なんて一言も言ってないよ」

「つまり、他の能力を持つ剣には効果の無い能力もあると?」

「一応平等に効き目はあるだろうけど、得手不得手はあるだろうね。レベル5のある一振りにだけ恐ろしく強い剣、それがレベルMAX。レベル5以外は誰もが持てる可能性を持つ剣……これで良いかな?

「あぁ、よく分かった。ありがとう」

早速明日、大和先生に伝えよう。

「どういたしまして。さて、それじゃオレはそろそろ半年程寝ようか……いや、ちょっと待った」

何かを思いついたように白塗は言葉を切った。

「ねぇ、武川さん」

「なんだ?」

「剣について教えてあげたからさ、一つ、オレの願いも聞いてくれないかな?」

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