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文武平等  作者: 風紙文
第八章
194/281

隠してきたこと


―――時は、武川達が大和先生達の元にたどり着く、少し前にまで戻る。



……side 町田


「……」

文化祭で人がたくさん歩いている中、私はようやく目的の人物を発見した。

ゆっくりと後ろから、ポケットに入っているそれを確認してから、声をかけた。

「お、押川さん!」

「ん~? あ、ちょうど良いところに!」

「え、え?」

もしかして、押川さんも私を探してた?

「ねぇねぇ町田さん、みゃーさんとしーおどこにいるか知らない? 携帯も繋がらなくてさ」

七ヶ橋さんと陽花さんなら、学校のどこかで戦ってるはずだけど……どうしてそれを知らないの?

押川さんも、剣を持ってるはずなのに。だから私は、ずっと探していたのに。

「町田さん?」

「!? は、はい!」

「もしかして知らない? パズル部の誰かとすれ違ったりしてない?」

で、でも、これはチャンスかも……

「ひ、1人、見ました」

「誰を?」

「こっちです」

押川さんを連れて、なるべく人気の無い場所を探す。

でも今の学校でそんな場所いったいどこにあるんだろう……藍ちゃん達はどこでどうやって戦ってるのかな。

その時ふと、思い出した。

あの場所なら、もしかしたら人がいないかもしれない。

そう思いながらたどり着いたのは、体育館の裏手。思った通りに、誰もいなかった。

「ここで見たの? 誰もいないみたいだけど」

きょろきょろと辺りを見回す押川さん。

……その背中に回って、ポケットに入れていた物を取り出す。

押川さんは陸上部。体力や運動神経じゃ絶対に適わない。

だから、後ろから奇襲をかけて……一回の攻撃で決めないと、勝ち目は無い。

藍ちゃん達のためにも、私は……

「……ごめんなさい。押川さん」

聞こえないくらい小声で言ってから。小さな剣を両手で握って、振り上げて、


後ろを向いたままの、押川さん目掛けて―――



キン


「はいはいすとーっぷ」

「!?」

気がついたら、私と押川さんの間に誰かが立っていて。振り下ろした剣はその人が持つ何かが防いでいた。

「あ! みゃーさんのお姉さん! って2人共何やってるの!?」

押川さんがこちらを向いて、今の状況を見てしまった。これじゃあもう、奇襲は出来ない。

「今更かもだけど、キミに言っておくことがあるよ。リリちゃんは剣とは一切無関係だったんだよ」

え……そ、そんな……

「で、ですが、パズル部に…」

「三夜子の友達として入ったの。他の人はみんな黒だけど、唯一の白なんだよ」

七ヶ橋さんのお姉さんという人は、剣だと思う物を持っていない方の手で私の剣を両手ごと握った。

「キミは多分、良いように使われてたのかもしれないよ。もしくは何か別の理由でリリちゃんを狙ってたのかもしれないけど」

「そ、それは違います。わ、私が自分で、押川さんを…」

「本当に? 全部自分の意志? 少しでも誰かに言われたりしてない?」

「……!」

劇が終わって、最後の作戦会議の時。

『花香、アナタは押川さんを探して』

藍ちゃんにそう言われていた。

……でも。

「……そうです。全部、私が考えて行ったことです」

真っ直ぐに目を見て、そう伝えた。

「……そっか。なら、別にいいや」

「え……? い、いいって……」

「あ、もちろんコレは貰うよ。それとも、ワタシとやってみる?」

「いい、いえ!」

「じゃ、貰うね」

慌てて手を離して、剣は七ヶ橋さんのお姉さんの手の中に入った。

「ふむふむ……ほうほう……」

角度を変えたりして色んな方向から眺めて、何かを探しているみたい。

「んー……あ、コレか。おーい、やっぱりアタリだったよ」

そして後ろに向けて、剣を放り投げた。

すると、

「なら、通じる筈だ。一線、二百六十三重の太刀」

後ろにはもう一人知らない誰かがいて、投げられた剣に持っていた剣を当てた瞬間。甲高い音が何回も聞こえたかと思うと。


ピシッ……パキン!


投げられた剣が、空中で折れてしまった。

「ふん、やはりハズレだたか」

「え? アタリじゃないの?」

「アタリという名のハズレだ。どちでも良い」

「えー、ややこしいから統一しようよ」

「やるだけムダだ。それより…」

剣を折った、中国風の服を着た女の人は私の前に歩いてきた。

「オマエ。あの剣をどこで手にした」

「え、えっと……その……あ、藍ちゃんから貰いました。あ、藍ちゃんは、拾ったと言ってましたけど……」

「拾たか……なるほど、あの時だな。ならいい。オマエにはもう用はない」

「となると、次は……」

2人は振り返って、

「みゃーさんのお姉さんと……たいやきを買ってた人が……え?」

いきなりの状況に混乱していた押川さんを見た。

「どうやら、手遅れだな」

「まだ分からないよ、文化祭の出し物ってことで…」

「オマエ、それで良いと本当に思てるのカ?」

「あー……うん、ダメだね」

「オマエは黙ていろ、私が話す」

女の人が1人、押川さんに近づいた。

「おい、オマエ」

「え? ぼ、ボク?」

「他に誰がいル? オマエ、七ヶ橋三夜子を知っているナ?」

「みゃーさん? もちろんだよ」

「なら聞け。七ヶ橋三夜子は、その周囲の人含め、オマエに隠し事をしている」

「隠し事? それっていったい…」

「私が言えるのはここまでだ」

「え! どうして!?」

「言てしまえ私はそのことについての90パーセントぐらいを語ることが出来るが……語るべき相手が違うのだ。しがない情報屋からよりも、もと聞きたい主がオマエにはいる筈だ」

「聞きたい……」

「きとすぐ分かる」

女の人は折れた剣を拾い上げ、

「私はもう帰る。後はすきにしろ」

それだけ言い残して、行ってしまった。

「うーん、じゃあワタシは……どうしよっかなー」

七ヶ橋さんのお姉さんは、肩に背負っていた物に剣を終いながら呟いている。

「あ、あの……」

そこに、押川さんが声をかけた。

「ん? どしたのリリちゃん」

「えっと……みゃーさんのお姉さんって、何者なんですか?」

「何者か、かー……」

悩んだように首を傾けた七ヶ橋さんのお姉さんは。

「強いて言えば……願いを叶えたい人、かな?」





文化祭終了まで、残り一時間を切った。

戦いが終わり、まだ時間が残っていたので、それぞれが文化祭を楽しんだ後、残り一時間前に部室に集まるように決めていた。

そして時間になり、部室の前には花正と双子を含めた部員全員が揃った。

「2人は良かったのか? アルクスさんと一緒じゃなくて」

「はい。最初はそうアルクスさんにも伝えたのですが、」

「後片付けは任せて楽しんでこいって」

なるほど。きっと今は色々と忙しくて2人に構ってられないんだろう。

「それよりも創矢、早く中に入ろう」

「そうだな」

俺が扉を開け、中へと入ると、


「あ! みんなおかえり~」


いるとは思っていなかった押川が座っていた。

「……リリ」

「みんなしてどこ行ってたの? 携帯も繋がらなくて、探しちゃったよ。それでここにいれば絶対見つかると思って待ってたんだ」

「そ、そうだったのか」

空間の中、戦いで邪魔にならないように皆ここへ荷物と一緒に携帯を置いてったからな。

「ちょっと、野暮用でな」

「へ~、皆で?」

「あ、あぁ、そうだよな?」

俺が聞くと、全員頷いて返した。

「そっか~……やっぱり、みんなそうなんだ」

一瞬、押川の表情が暗くなったように見えたが、すぐに笑顔になり。

「ねぇみゃーさん、一つ聞いていい?」

「ん……なに?」

「あのさ……」



剣って、知ってる?


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