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文武平等  作者: 風紙文
第八章
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布と輪VS錠とキューブ 教師の秘策

……side 大和


パズル部対演劇部……D,grantsとの剣の舞。

三夜子達を見送った後、リーダーの桜間先生を探そうと原良と一緒に歩き出したら、その桜間先生からメールがあることに気付いた。

「で、ここに来てみた」

「俺にとっては懐かしい場所だな」

卒業生の原良はそうだろうけど、俺としては、毎日来る場所だ。もちろん、桜間先生も。

「職員室か……ここで戦うのか?」

「いやいやそれは後がめんどくさいでしょ。片付けとか」

その職員室から桜間先生が現れた。ずっとここにいたのか。

「どーも、大和先生」

「はい……桜間先生」

「久しぶりっすね、桜間先生」

「ん? えっと……あ、原良か。オールAの」

「そうですよ」

オールA? あ、そういや聞いたことある。原良正忠をローマ字にすると母音が全部aだからそんなあだ名が付いたって。誰が思い付いたか知らないけど的確過ぎるな。

「ここに原良がいるってことは、剣を持ってるってことでいいんですね?」

「そっちのメンバー数がよく分からないから、援軍としてね」

「メンバー数? あー、そういやちょっとサバ読んでましたね」

やっぱり。原良やアルクスさんに来てもらって良かった。

「教えてもらえませんか、そっちのちゃんとした数」

それを三夜子達に教えて、無理をさせないようにしたい。まぁあっさりと教えてくれるわけは無…

「いいですよ」

教えてくれるのか!?

「じゃあもうちょっとこっちへ」

桜間先生が出てきたのは俺達から離れた方の扉。もう一つの扉の横を通り過ぎてそちらへと向かう。

「その辺で」

扉と扉の中間くらい、壁を挟んで職員室の真ん中くらいで桜間先生は俺達を止めた。

「じゃあまず紹介してなかったD,grantsのメンバーを教えましょう」

そう言った桜間先生は、俺達の方を指さした。理由も分からず顔を見合せた後、意味が分かったので後ろを向くと。

今通り過ぎた扉が開いて、一人の人が姿を見せた。

「……やっぱり、そうでしたか」

実は、剣守会の調べで大体の目星は付いていた。

剣の種類までは分かっていないが、D,grantsのメンバーと思われるもう一人の、先生。

「大菊先生」

「大和先生。貴方もそうでしたか」

体育教師にして女子バスケ部の顧問。大菊先生が、そこに立っていた。

でも何故女子バスケ部の顧問が演劇部のD,grantsと組んでいるのか……いや、同じ剣を持つ人だから互いに協力してるんだよな。

「紹介してなかったD,grantsのメンバーは、その大菊先生ただ一人ですよ」

「一人ですか?」

もっといると思っていたんだが。

「人は、ね」

「……どういう意味ですか?」

「私が答えましょう」

意味深な言葉に訊ねると大菊先生から返事がきた。その手には剣……だと思う物を持っている。

それを前へと出しながら、

「この剣の能力は二種類のコピーを出すこと。倒せないコピーと倒せるコピー、その内倒せないコピーを、他のところへ行かせました」

他のところって、三夜子達のところか。しかも今、倒せないコピーって。

「もしも演劇部の部員が負けた場合、コピーが現れて戦うようにしてあります」

「そんなの、そっちが必ず勝つじゃないですか!」

「そう、そしてパズル部の誰かが負ければ、コピーはここへとやって来て……また戦う。さすがの大和先生も倒せないコピーが相手では勝ち目はないでしょう」

そうか、それがあるからパズル部に勝負を挑んできたのか……絶対に負けない仲間というものがあるから。

「いったいどうすりゃ…」

「落ち着けよ」

今まで黙っていた原良が大菊先生へ一歩近付き、口を開いた。

「久しぶりっすね、大菊先生」

「貴方は……原良正忠」

「まさか先生も剣を持ってたとは思いませんでした。そして今のを聞く限り、そうなったら俺達に勝ち目はないっすけど……今ここにいるのは本物ですか?」

「そうだけど、だから何か?」

「じゃあ話は簡単だ。大和も分かるな」

なるほど、原良の言いたいことは分かった。

「剣の能力なら、剣の持ち主を倒せば消える」

「だったら、コピーが来る前に大菊先生に勝てば良いだけだ」

原良は剣を取り出し、俺もパズル錠を外すと、剣を手に取った。

前までは、剣を出した瞬間に布縫の布が出てきていたが、今ではいくらか制御出来るようになっている。これでも教師業の傍らで修行はしてるんだぞ。

「原良、桜間先生を頼む」

「言われなくてもそのつもりだ」

「なんか生徒とやるのは気が引けるが、卒業生なら問題無いか」

桜間先生も、手に剣を……また変わった形だな。

「2人はいいね、ちゃんと剣の形で。七つ道具にも鋏がいるけど、アレも刃物ではあるからな」

桜間先生の手には、何故かハンマーが。

「生徒に使わせ難いと言ったのは桜間先生でしょう」

大菊先生の手には、多分メイスと思われる物が握られていた。

ただ、二つ共パズル錠の形がそのまま剣になっているな。桜間先生のハンマーの先は、回転式の南京錠。大菊先生のメイスは、先がルービックキューブだ。

「というかわざわざ一対一にするに必要ないでしょ。ちょうど二対二なんだからさ、そのままでいいじゃない」

「そうですね、私も桜間先生に賛成です」

「という訳だから……始めようか!」

かけ声と共に、桜間先生と大菊先生は前へと走った。その先にいるのはもちろん2人に挟まれた形の俺達。

桜間先生、この形を狙って俺達を動かさせたのか。だがその程度では怯まず、先の予定通りに原良が桜間先生に、俺が大菊先生を正面に迎えた。

上段から振り下ろされる攻撃を、剣を横に構えて防ぐ。

ガッキィン!

うっ、衝撃が強いな。打製武器だから一撃の重さが刀剣類よりあるんだろう。

それでも弾き返し、近くにいる大菊先生へ剣を振るった。

「くっ、近付き過ぎた」

慌てて後退したが、剣は見事にヒット。

原因はやはりあの剣だ。一撃が重いのと同時に剣そのものが重い。前へ振れば少し持っていかれてしまうので近付き過ぎてしまったのか。

それも踏まえて、どうやら使い慣れてはないな。このまま倒せないコピーとやらが来る前に…

「勝ってしまおう、と思っていますね」

うっ、顔に出てたか?

「その考え、これを見ても出来ますか?」

まるでマイクを向けるかのように、剣が前に出される。

瞬間、大菊先生が分身した。

姿形から手に持つ剣まで、瓜二つな先生が並んで立っている。

しかもそれだけじゃ終わらず、本物と思われる一人からもう一人、もう一人、もう一人……


計十人の大菊先生が、そこに立っていた。


「これが、能力のコピー……」

「こちらは倒せない方の六人も、九人まで出せる倒せる方ですが。どうです、さすがにこの数は?」

「……」

確かに、1対10てのは不利過ぎるよな。

これは……仕方ない。

「加減しながら、使うしかないな」

油断するとまだ飲まれるからな。ゆっくりと、落ち着いて。

俺は剣の鍔、布が巻かれている部分に手を触れると、布が溢れ、身体を包んだ。

帽子とマフラーを身に付けた姿となった俺を見て。

「その格好……まさかあの時の」

大菊先生は思い出したらしい。

武川が剣を手に入れた時、一年生と戦っていた場所に大菊先生が現れ、顔を隠した俺が気絶させたということがあった。あの時にはもう大菊先生は剣を知っていたのかもしれない。

だが、今はどうでもいい。

大菊先生のアレは、倒せないコピーがここに来るまでの時間稼ぎが目的だ。

つまり今出したコピーは倒せるなら、さっさと片付けて、勝つんだ。


今まさに戦ってるかもしれない。皆の為に。


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