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文武平等  作者: 風紙文
第八章
181/281

ドッペルゲンガーの正体

……side 大和


教室の中から、悲鳴のような声が聞こえてきた。

「おー、調子いいみたいだな」

「あ、大和先生」

入口で受付をしていた篠目に声をかけられた。

「おぅ、頑張ってるみたいだな」

「大和先生も入ってかない?」

「悪いな、今見回り中だから」

数人の先生で異常が無いか見て回ってる最中で、ちょうど2年C組の前に来たんだ。

「今の悲鳴、そうとう怖いみたいだな」

衣装こそ作るのを手伝ったが、内装とかには関与してないからよく知らない。これは中で驚かす生徒達の力だな。

「やっぱこの回の大オチがスゴいからね。やるなー、七ヶ橋」

へー、三夜子が。

「この悲鳴が良い宣伝になって、この行列だよ」

入口の向こうに、ずらっと人の、一般客8に学生2くらいの割合の列が出来ている。悲鳴の度に、その人達も驚いたり待ちわびるように笑っていた。

「そうかそうか、このまま頑張れよ」

「はーい」

篠目に手を振り、2年D組の方へ歩いていく。

……今はああしてクラスの手伝いをしてるが、午後になって、演劇部の劇が終わったら、戦いの開始だからな。

今の内に楽しんでおけよ、三夜子達。

「……ん?」

その時、前から見知った顔が。

「あ、兄さん」

「よう双海、来てたのか」

「まね、これから三夜子のとこ行くよ」

「三夜子の所か、でも凄い列だったぞ?」

「大丈夫、時間稼ぎは持ってる」

双海は両手に食べ物を持っていた。右手にクレープ。左手にお好み焼きの入った袋。後、肩にギターケースを背負っていた。

「え、まさか双海、その肩の……」

「? うん、持ってきた。なんか日常の一部になっちゃってさ」

おいおい、こりゃかなりの戦力が増えるんじゃないか?

「不味かったかな?」

「いや、むしろ好都合だ。ちょっとこっち来てくれ」

俺は双海を連れて人気の少ない所に行き、この後起こる戦いについて説明した。

「ふーん、そんなことになってたんだ」

「そういうわけなんだが、頼めるか?」

「おっけー、というかコレ持ってたら、その空間とかいうのに入っちゃうんでしょ? なら手伝うしかないでしょ」

よし、心強い戦力が加わったぞ。

「でも悪いな、文化祭楽しみたいだろ」

今だに相手の戦力数が分からない以上、1人でも多くのが味方が欲しい。

「のーぷろぶれむ、だよ。ところで、戦う相手がどんな人かくらいは知っておきたいんだけど」

「あ、ならコレを……」





……side 陽花


「みゃーこー、いるー?」

2Cだけでなく、様々な理由で着替えをする女子の為の更衣室に、あーしは入った。

「ん……紫音、ここ」

幸いに2Cの数人しかいなかったから、みゃーこはすぐに見つかった。

「って、おぉ、怖いねその格好」

みゃーこはテレビから這い出る系の幽霊姿だった。話には聞いてたけど、めちゃくちゃ似合ってる。ぶっちゃけマジモンぽい。

「……それで?」

首を傾げる姿は、みゃーこ本人だったけど。

「と、忘れる所だった。はいコレ」

あーしはポケットからある物を取り出し、みゃーこに渡した。

「……コレは?」

「演劇の、最終回の優待チケットだよ」

演劇部部員の特権ってやつで、正面の良い席で見れるチケット。各部員最大四枚ずつ持てて、すでに一枚は翔一、もう一枚はリリに渡しておいた。

「……二枚?」

「そ。もう一枚は……分かるよね? みゃーこ」

「………………」





「……ということが、あった」

「なるほど、陽花からか」

三夜子から一枚のチケットを貰い、今の話を聞いて納得した。

「押川と萩浦にも渡されてるなら、入口で合流した方がいいな」

「ん……行こう」

クラスの手伝いも終わり、三夜子の着替えを待っていた状態だから、三夜子が来たからすぐに…

「お二人も演劇ですか?」

そこへ、古年が声をかけてきた。

「あぁ、陽花からチケットを貰ってな」

「偶然ですね。私も桔梗さんから頂きました」

古年の手にも俺達のと同じチケットが、二枚。

「誰かと見るのか?」

「はい。入口で待ち合わせをしています、よろしかったらそこまで一緒に行きませんか?」

というわけで、古年を加えた3人で演劇の行われる体育館へと向かう。

その途中、ふと思い出した―――古年のドッペルゲンガーを見たという噂話を。

本人は知っているのだろうか? ただ、内容が内容だからな、あまり知らない方が良い気も…

「そういえば、変わった話を聞いたのですが。私のドッペルゲンガーを見たという話です」

知ってた!?

「……そうなの?」

あの時三夜子は着替えに行ってたから知らないみたいだ。

「そうらしい……けど、まさか本物のドッペルゲンガーじゃないだろ?」

非現実な、魔法じみた剣を使っている俺が言うのもなんだが、非現実過ぎる話だ。

「もちろんです」

古年がしっかりと否定してくれた。

「じゃあ皆が見たのはいったい何なんだ」

「それならすぐに分かりますよ」

「え?」

「あら、創矢と三夜子」

「やっほーみゃーさん、たけやん」

一階に降り、体育館へ一直線に向かっている中、別方向から月乃と押川、早山と萩浦が現れた。

「押川と萩浦は聞いたが、月乃と早山も演劇か?」

「えぇ、花香からチケット貰ったのよ。早山もね」

「あぁ、月乃に渡しているところに出会ったら、余らせたらもったいないというからな」

「あの、ところでですが、そちらの方は?」

萩浦は古年を見て訊ねた。そうか、初対面だったな。

「あ、古年じゃない」

「久しぶりだな」

「お久しぶりです。月乃さん、早山くん」

去年同じクラスだった月乃と早山は、今やっと気付いたみたいだ。

「私もチケットを持っています」

「二枚? 誰かと待ち合わせてるの?」

「はい。おそらくすでに入口で待っているかと…」

その時、

(あや)

古年に似た声が、古年の名前を呼んだ。

「あぁ、いました」

古年が振り向いた方向を俺達も見ると、


……そこには、古年のドッペルゲンガーが立っていた。


『!?』

多分全員、少なくとも表情や動作に出ている俺と押川と月乃と萩浦は驚いた。

「待たせましたか」

「いえ、今着いたところです」

古年はドッペルゲンガーに近づいていき、その隣に並んだ。顔から背まで全く一緒。よく見れば古年は制服でドッペルゲンガーは私服という違いはある。しかしそれ以外は全く同じだ。

「こ、古年……もしかしてその人が?」

「はい。そうです」

古年はチケットをドッペルゲンガーに渡し、2人揃ってこちらを見る。

(あや)、この人達は?」

「紹介します。こちらはクラスメイトの武川くん、七ヶ橋さん。こちらはA組の月乃さん、押川さん、早山くん、萩浦さんです」

「なるほど。初めまして」

ドッペルゲンガーはペコリと頭を下げる。俺達も慌てて下げ返す。

「私の名前は、古年(ふみ)(あや)とは双子の姉妹です。ちなみに漢字は(あや)と同じ字を使います」

古年 文って書いて、ことし ふみ。か……もしかしてだが。

「ひょっとして、昨日も文化祭に来てたか?」

「? はい。前日も来ていましたが」

……コレが、古年のドッペルゲンガーの正体だな。

「ほら、すぐに分かりましたでしょう」

「あぁ、そうだな」

「何の話?」

噂を知らない月乃達A組メンバーは揃って首を傾げていた。

「後で話すよ。今はまず、早く入ろう」


演劇部から貰ったチケットを持つ8人で、演劇の行われる体育館の中へと入った。


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