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文武平等  作者: 風紙文
第一章
17/281

調理実習 終了

普通の煮物と筑前煮の違いは、筑前煮の場合、最初に材料を油で炒める事だ。

フライパンをコンロの上に点火して、油を少し引く、フライパンが熱せられるのを待つ、

「ねぇ、武川君」

隣で味噌汁を作っている押川が話しかけてきた。

「なんだ?」

「結局、あの後みゃーさんとは戦ったの?」

「あぁ、一応な」

「傘を壊す為だって聞いたけど、どうなったの?」

「全く壊れなかった」

「へぇ~、とっても頑丈なんだね、あの傘」

「そうだな」

材料をフライパンに入れ、菜箸を持ち、炒める。

「……みゃーさんってさ」

「ん?」

「あの傘が無かったら、普通に友達ができると思うんだよね。ほら、みゃーさんって誰彼構わず人には接する事ができるし」

「あー……」

あの時にも、傘を貸してくれたしな。

「それは分かる」

「でしょ」

「でも、それだけじゃダメだと思うぞ」

「え?」

「あの性格も、だ、いくら誰彼構わずって言ったって、あれじゃ人と接する事がないだろ」

自分から話しかけない人に、自分から話しかけに行くことはよほどのことがないとあり得ない。

「うぅむ……確かに」

「だったら今は、少なくとも俺達が七ヶ橋の友達でいればいいと思うぜ」

「そっか、そうだね」

「……リリ」

いつの間にか七ヶ橋が隣にいた。

今の、聞かれたか?

「どうしたの?」

「……これ」

その手には切られたネギ。

「あ、そうだった、ありがとうみゃーさん」

「うん」

押川はそれを受け取り、鍋の中へ、

「ねぇ、みゃーさん?」

「なに?」

「ボク達、これからもずっと友達だよね?」

「……もちろん」

……2人は、相性が良いんだな。





「調子はどうだ?」

大和先生が各班を回っており、四班の所に来た。

「順調です」

既に味噌汁、筑前煮、おひたしは完成した。

後はおにぎりで、米が炊けるのを待つのみだ。

「ほぉ、中々バランスの良い班だなここは」

「他はどうなんですか」

「六班は酷かった」

「はぁ……」

そんなのさらりと言っていいんですか?

「で、三夜子が担当したのはどれだ?」

「いえ、特に担当は決めてなかったので」

味噌汁は押川が、おひたしは早山が、筑前煮は俺が作った。

「なので、おにぎりを頼もうかと……て、先生?」

「……」

大和先生は、まるで「やっちまったな」という顔をしてこちらを見ていた。

「どうかしましたか?」

「いや……うん、大丈夫だろう……大丈夫さ……うん」

「何ですかそのあからさまにヤバイなって感じの言い方は」

「気にすんな……頑張れ」

そのまま、隣の班の所へと行ってしまった。





米が炊け、七ヶ橋がおにぎりを作る。

大和先生の言葉が気になり、七ヶ橋の方を見てみると……言葉の意味はすぐにわかった。

七ヶ橋の手には、おにぎりと思われる米の塊が……あぁ、そういう事か。

刃物を使うのは大丈夫、でも使わない料理はダメ。

七ヶ橋の言葉は、そういう意味だったんだ。

つうか、おにぎりを下手に作る方が難しくないか?

七ヶ橋は包丁を使わない料理は出来ないとは、どういう理屈なんだ……筑前煮を頼めば良かったな。

ちなみに、

『そういう事は先に言っておいて下さい!』

と、調理実習の感想欄に書いておいた。

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