表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
文武平等  作者: 風紙文
第八章
169/281

報告と報告と

『あーしは味方だから』

三夜子に対して、すれ違い様に陽花はそう言ったらしい。

「……私は、信じる」

「僕も信じてます。紫音はああいう性格ですから、本当に大事な人を完璧には裏切らない……いえ、裏切れないんです」

パズル部の部室。先に来ていたA組の3人に先ほどあった出来事を全て語った。ちょうど終わった頃に大和先生も現れ、話は更に進んでいく。

「しかしまさかあちらから宣戦布告されるとはな。剣守会では時を見て交渉する予定だったんだが、もう出来そうにないな」

「……負けた方は剣を全て渡すという条件を出すということが、相手の本気具合が分かります」

「それだけ勝算がある、ということですよね……」

「……」

せめて、こんな時じゃなければまだ良かったのに。

「まぁ、これも問題ではあるけどな。学園祭のことも忘れちゃいけないぞ?」

大和先生が言った通り、今は学園祭に向けての準備が忙しくなっていく時期だ。

演劇部の委員長だって、学園祭が終わってから開戦と言っていたが、それを知らされた側としたら心が落ち着ける訳がない。

そんな気持ちを持ちながら、クラスの出し物とパズル部としての出し物の準備もする必要がある。それに後者はまだ、何も決まっていない。

そして、後一つ…

「でもな……まさかあの中に押川の名前があるのが一番の驚きだ」

そう、花正の情報があったことも驚きだが。パズル部で唯一無関係の押川も、剣を持っていると思われていることが今一番の問題だった。

因みに、今日は掛け持ちの陸上部へ行っているので押川はいない。

「押川を含めてちょうど8対8って言ってたが。実際には7対8になるんだな」

「なんとかそのことを伝えられないでしょうか」

このままでは剣を知らない押川が狙われるだけではなく……押川以外の部員全員で隠し事をしていたことがバレてしまう。

「あー……無理だろうな」

変更の無いよう、私はこれより先アナタ達の前でこの話は一切しない。そちらも一切話さないように。こう決めた委員長は頑なに守り続けるだろう。

何か方法はないか、と考え始める前に、三夜子が呟いた。

「……紫音に」

「そうです、紫音もその場所にいたんなら、きっと訂正してくれてる筈です」

「じゃあそっちは任せて大丈夫そうだな」

「……後は、戦いの場所ですが」

「それは任せろ。俺があの場所で言ったからな、これから剣守会へ相談しにいくぜ」

これで大体の問題は学園祭が近づくに連れて解決するっぽいな。

となると、今一番の問題はパズル部が学園祭で何をするか、だが、

「うーん……」

『……』

ただ1人、今の会話に入っていなかった部員の悩む声に全員の視線が集まった。

「えっと…………月乃?」

「んー…………え? あ、あぁゴメン、なに?」

「コッチのセリフだ。何を悩んでるか知らないけど、ちゃんと話聞いてたか?」

「あ……ゴメン、所々しか聞いてないわ」

「おいおい……」

よくこの状況でそこまで熟考してたな。

「で、でも全く聞いてなかったわけじゃないのよ? えっと……陽花が三夜子の味方だって言ったところまでは完璧に覚えてるわ」

序盤も良いとこだった。まぁ月乃には後でもう一度聞いてもらうにして。

「いったい何を悩んでたんだ?」

「それは…………あ」

何か思い付いたように、月乃は指を鳴らした。

「そうよ、創矢がいたじゃない」

「俺?」

「あ、でも待って……確かに良いアイデアだけど、彼方が許すとは限らないわね……そもそも、創矢には……」

何やら1人ぶつぶつと呟いている。内容は全く分からないが、『彼方』、『アイデア』、『創矢』という単語が何回も出てくるのはよく聞こえた。

「うーん……これ以上無いアイデアだと思うんだけど…」

「いったいなんなんだよ」

「よし、今日の夜に連絡して、彼方の許可が出るかどうか聞いてみましょう」

何か答えが出たみたいだ。

「こっちの質問は無視か」

「え? あ、あぁ、また考え込んでたみたいね。とりあえず、明日には結果が出る筈だから」

「明日になったら話す、ってことか?」

「えぇ、それで良いかしら?」

こんな一大事そっちのけで考え込んでたことが、明日には結果が出て話すっていうなら、

「あぁ、分かった」

今のところは、それでいい。

「じゃ、今は他に考えることがあるのよね?」

月乃の話はそれで終わり、パズル部は新たな話題……文化祭でパズル部が何をするかへと移った。





……side 陽花


「だーかーらー、リリは剣と全く関係ないって言ってるでしょ」

「そう、だったのね……」

「ぶっちゃけアッチ戸惑ってると思うよ。まさかリリが頭数に入ってるなんて思わないから」

「それは、悪いことをしてしまったわ」

「まぁ謝る必要とかはないと思うけど、みゃーこくらいには誤解が解けたこと伝えといていい?」

「えぇ、よろしく」

「へーい」

携帯を開いて、差出人みゃーこでメールをうつ。

「……でも」

「んー?」

画面を見ながら何か呟いた委員長へ返事をする。

今、演劇部の部室の中には一番に来たあーしと委員長しかいない。他のクラスはともかく、同じクラスの町田さんも来てない。トイレとかかな?

「押川さんが剣を持ってないとしたら、実質こちら8のあちら7になるのよね」

「……そーだねー」

いやー、どうだろ。パズル部には大和センセの後ろに剣守会、あーしや翔一の後ろには剣士団があるから、増援なんて簡単過ぎると思うんだよね。特に剣士団、同い年の階田とか、送りやすそうなの多いし。

「よし、これでおけ」

メールを書き、送信ボタンを…

「よーっす、皆揃って……あれ? 全然いないな」

扉が開き、桜間センセが顔を見せた。

「皆それぞれに用事があるみたいですね」

「そっかー…………で、宣戦布告は出来たのか?」

扉を閉め、桜間センセは近くの席に座った。

「えぇ、もちろん」

委員長は宣戦布告の内容、主にルールを丁寧にセンセへ伝えた。

「おいおい、その人数はおかしくないか?」

あ、センセはもう知ってたのか…

「だって、こっちの戦力は8以上いるだろ」

…………へ?





from 紫音

su  報告と、報告!!


何とかリリについての誤解は解くことが出来たよ

でも聞いちゃった話によると……あーし達には、まだ剣を持つ戦力がいるみたい

しかもね、部員じゃないらしいの

それ以上は聞けなかったけど、この時点で7対8どころじゃなくなってる

あ、あーしはみゃーこの味方だからね。演技はしてもガチで戦いはしないから

それにしても、何とかパズル部も戦力を増やした方がいいよ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ