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文武平等  作者: 風紙文
第八章
166/281

動き出す

薄暗い場所、そこに六人が集まって、一人ずつ、言葉を紡ぐ。

「時は来た」

「駒は揃った」

「今こそ、起立の時」

「我々が揃えば、一矢報いるはおろか」

「彼らを…………えーっと……」

パシパシ!!

「はいカーット」

丸めた台本で手を叩き、明かりを付けて体育館が照らされた。


……side 町田《演劇部》


「やれやれ蔓、まーたお前か」

「うぅー、ごめんなさーい……」

「先生、映画の撮影ではないので、カットと言うのはどうかと」

「つぅてもな通辻、これが一番止めやすいだろ?」

「まぁ、そうですね」

「んじゃ、ちょい休憩ー。蔓はその間にセリフ覚え直しとけー」

「は~い」

「……」

今日は日曜日。演劇部は体育館のステージを借りて本番に近い舞台で練習を行っていた。

と言っても、景色や装置は何も無くて、本番の位置で台詞を語るだけだけど……やっぱり、皆凄いな。

今回は橙華ちゃんがミスしたけど、ここまで、中盤の終わりまで通しで演技をしていた。

ようやくの休憩に、皆一息ついている。やっぱり、見てるだけは申し訳ないな。

「花香、ちょっといい?」

「え、う、うん。どうしたの藍ちゃん?」

「ちょっと、こっち来て」

藍ちゃんに着いていくと、皆から離れてステージの袖に付いた。

「どうしたの? こんな隅で…」

私は気付いた。

人の願いを叶える人を傷つけない武器、剣。

演劇部はそれを使うグループ……D,grants,7kitとしての顔も持っている。

その演劇部に、二学期の始まりから入部してきた陽花さん。あの人も剣を持っていて、D,grants,7kitの、最後の7人目として私の代わりに入った。

でも藍ちゃん曰く、陽花さんは何かを企んでいるらしい。

けれど暴こうとすればすぐにも出来るんだけど……今はもっと大事なことがある。それを終わらせるまで、公にはしないと、私と藍ちゃんで決めたんだ。

こうして二人きりになったということは、きっとそれについてのこと。

「作戦を変更するわ」

やっぱりそうだった。けど、

「へ、変更?」

「うん……陽花さんがどれだけ、こちらの仲間を演じるか。そして……相手に対決を申し込む」

た、対決……

「で、でも、騒ぎにしないようにするって……」

「大丈夫。そこは考えてあるの。上手く行けば……勝負に勝てる筈」

「……」

「信じてくれる? 花香」

「……うん、私、藍ちゃんを信じる」

不安で一杯だけど、でも、藍ちゃんの言葉にはとても考えられた作戦なのか、期待が満ちていた。

「ありがとう……さて、休憩もそろそろ終わり。また練習に戻るわ」

「うん、頑張ってね」

「もちろん」

藍ちゃんは舞台へ、私は一段降りた場所に立つ桜間先生の隣へと戻った。今の私はここで明かりの調整などを行っている。

「そんじゃー次、さっきの続きから行ってみよう」

その後は誰も失敗することなく、終盤まで終わった。

「よーし、今日はこの辺りで終わりにしておくかー」

いつの間にか、窓からは夕日が差し込んでいた。そんなに時間経ってたんだ。

「ふひー、お疲れー」

陽花さんが背伸びしながら言ったのを皮切りに、皆も帰りのムードになった時、

「皆、ちょっと良い」

藍ちゃんが1人、全員の視線を集めた。





……side 陽花


「んー……」

寮の部屋ん中、帰って来てからずーっと、腕を組んで考えてる。

まさかなー、委員長があんなこと言い出すなんて思いもしなかった。注意が必要とは思ってたけどさ。

「……紫音?」

「どうかしたの、しーお」

うんうん唸ってるあーしを見て、同室のみゃーことリリがやっぱり訊いてきた。ちなみにしーおってのは、最近ついたあーしのあだ名。

「むむ……」

みゃーこは良いんだけど、リリに聞かれるのはちょいマズイんだよね。

「……?」

「しーお?」

……ここまで聞かれたら、しゃあない。

「みゃーこ、リリ」

「……なに?」

「どうしたの?」

「あーし等さ、友達だよね?」

「ん……もちろん」

「もちろんだよ」

「だよね。もち、あーしもそう思ってる。だから…」

だから……


「あーしは2人のこと、絶対に裏切らないからね」


「……私も」

「ボクだってそうだよ!」

うん、2人共、期待通りの答えが返ってきてくれた。

「けど急にどうしたの?」

「いやー、ちょっとね。今やってる劇に、そんなのが出てくるから」

「へ~」

ふぅ、リリはごまかせた。

「……」

でもみゃーこには、感づかれたっぽいかな。

「2人共見に来てよね。文化祭の劇」

「もっちろん!」

「ん……絶対行く」


……さってと、この後はどう動くのかね、委員長は。


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