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文武平等  作者: 風紙文
第七章
163/281

応用

……side アルクス


「お二人共、ご無事ですか?」

「ん? って、うぇ!? アルクスさん!?」

「失礼ですね、人を見るなり妙なものを見たようなその言い方は」

それだけ元気、ということでしょうけど。

「す、すいません、けどどうしてここにいるんですか」

「瞑想が終わり、こちらへ歩いてきたから、で良いですか?」

「え、えっと……」

「階田、今はそんなことを話している場合じゃない」

「そうですわ。随分と余裕がおありですのね」

お二人の前に立つのは、確かリリィさん。女の子の方ですね。相性的に、このお二人が当たるのは少々不利な気が…

「へ、そっちこそ、オレに能力が効かないから焦ってんじゃねぇのか?」

……おや?

「階田さん、今なんと?」

「へ? あ、そうなんすよアルクスさん、オレ、アイツの能力効かないんです」

男性である筈の階田さんに、能力が効かない。ということは……

「階田さん、ひょっとして女の人…」

「女でも男好きでもないっすよ!」

どうやら既に話に出ていたようですね。

「つう訳で、オレが前衛で早山が後衛で戦ってるんです」

適切な配置ですね。しかし、

「階田さん、ワタクシから一つ助言します」

「助言?」

「はい、端的に申しまして階田さんは能力の扱いが一点張りです。それを、注意してみてください」

「はぁ……」

よく分かっていない。という返事ですね。

「ワタクシも加勢します。2人前衛で挑みますよ」

剣を構え直し、相手を見る。

「お話しは終わりましたか?」

丁寧に待っていてくれたリリィさんには感謝です。

「行くぜぇ!」

階田さんが一足先に前へ、剣を大きく振りかぶり、縦一線に振り下ろす。

ガキィン!! 甲高い音と共に鎌の刃により防がれた。

「このっ、これならどうだ!」

階田さんは能力を発動し、柄を軸に刃を回転。ドリル状の剣で再度攻撃をしかける。

そういえば、すっかり前に出るタイミングを失いました。

「どうもなりませんわ、ただ刃が回った程度では」

防御はせず、ひらりひらりと回避されてしまう。

「とはいえ、こちらの攻撃が行えないのは少々厄介ですね」

階田さんの剣は全体的に長く攻撃の範囲が広いため、リリィさんも攻撃を仕掛けられないのが唯一の救いです。もしあれで早山さんのような剣なら、適切な距離を取られたら攻撃され放題でしたから。

「このやろ!」

「フフッ……」

大振りな一撃を避け、リリィさんは後退。今まで一度も当たっていません。

「ちょこまかしやがって……一回で当たればコツが掴めるかもしれねぇのに」

「階田」

「あ? なんだよ早山。今話してる場合じゃ…」

「いいから聞け。すぐ済ませる」

「おぅ……」

「階田、お前はアルクスさんが言った通り、能力の使い方が下手だ」

「なっ……!」

下手とは言ってないのですけど。

「お前の剣は俺のと同様に応用が効く。それを使え」

「応用って…………!」

何か、閃いたようですね。

「サンキューな早山、アルクスさん、早速やってみるぜ」

階田さんは再び前へ、今度は送れないようワタクシと早山さんも後ろに続きます。

「いくら来ようと、アナタの攻撃はおそるるに足りません」

リリィさんも剣を構えて迎え打つ。

「それはどうかな!」

階田さんは柄を肩の高さまで上げ、刃を真横に、地面と平行になるように持ち変えて突撃。そんな特殊な構えに、リリィさんは笑みを作り。

「フフッ、何を思ってのその動きかは全く分かりませんけど……足元が留守でしてよ!」

無防備な足元へ剣を走らせた。本来草を苅る用途に使われた鎌らしい、素早い足払いの一撃。

しかし、

「掛かったな!」

階田さんは、宙に浮きました。

「え……?」

なるほど、能力で剣を軸にし、その場に鉄棒があるようにすると、回転を利用して足払いを回避しましたか。

能力を攻撃以外に生かすように、と説明したつもりでしたけど、そうするとは、階田さんらしいですね。

そのまま回り続け、途中で軸を解除するも、動き続ける力でリリィさんの後ろまで飛び。

着地と同時に、

「喰らいやがれ!」

今度は自分を軸にしての回転切り、速度が段々と上がり、相手を切り続けます。

「こ、これはさすがに……!」

リリィさんは防御に転じますが、重量のある刃の回転を込めた攻撃を、鎌を持った細腕では押さえきれず、

ギィン!

「あっ!」

ついには剣を弾き飛ばされてしまい。無防備となった所に攻撃は重ねられ、

「トドメだ!」

回転を続ける階田さんが、一際速度を上げての一線が走ると、


ズバッ!


「っ……! 兄、さん……申しわ、け……ありま……せ…………」

パタリ、とリリィさんはその場に倒れてしまいました。

「……アイツ、一人で勝ってしまいましたけど」

「はい、ワタクシも初めて見ました」

あの階田さんの、勝利する姿を。

「やった……勝った! 剣狩りに勝ったんだ! 見てましたかアルクスさ……うぷっ」

勝利の喜びを分かち合おうとしましたけれど、今だ止まらない回転に目を回し始めた階田さんへ、

「はい、ちゃんと見ていましたよ」

そう答えたワタクシは、剣をゆっくりと振り上げるのでした。





一か八か、もしもこれが失敗したら、勝ち目は無いに等しい。

三夜子と花正はレドナの剣と相性が悪い。だから、


……この策を、実行する。


「布縫の帯!」

パズルを入れ換え、剣から数枚の布の帯を呼び出した。伸縮自在な帯を伸ばし、目標へと迫る。

「ん? それが能力? なら一応、避けて…」

「させないぞ!」

「……」

花正と三夜子が左右から攻撃。レドナはそれに気を取られ、布の帯は、目標を捕らえた。

「え? なに、コレ?」

目標とは、レドナの剣……槍の刃だ。

帯が幾重にも巻き付き、刃を完璧に隠してしまう。

「こんなもの、振れば簡単に千切れて…」

レドナが剣を振るう、だが帯はびくともせず巻き付いている。

「これで、お前の攻撃は封じた」

強いては、能力を封じたんだ。

「!?」

ここで初めて、レドナの顔に焦りの表情が産まれた。まさかこんな方法で攻撃手段を封じられるとは思いもしなかっただろう。俺だって、さっき考えたばかりだ。

策は単純。レドナの剣の形状は槍、普通のより持ち手が長く、刃が短い。

能力は刃が触れた時に必ず発動する。なら、それを布縫の帯で封じてしまえば。能力はおろか、攻撃を出来なくなるのではないか。というものだ。

「このっ、千切れろ! 外れろ!」

力を込めて振られるが、長さに余裕のある帯が揺れるだけで傷つく素振りも何も無い。

どうやら、賭けは俺の勝ちらしいな。

「ムダだ、レベル5の帯は固い」

今までも炎の塊や雷なんかを防いだ帯だ。剣の刃は初めてだったが、傷一つつかないのを見るにやはり材質は本物と違って布じゃない何からしい。

さて、こうしてレドナの攻撃手段は封じた。つまりは、

「俺達の勝ちだ」

レドナの左右に立つ三夜子と花正はいつでも攻撃出来る状態。

レドナはまだ回避や防御は出来るだろうが、挟まれた上に帯経由で俺と繋がっている。やり様によれば、動きの制限も可能だ。

「大人しく降参するなら、これ以上攻撃は…」

「あ……」

不意に、レドナの目が丸くなった。

その先には俺、けど視線は更に後ろを見ているようだ。

いつの間にかまた入れ換わり、後ろにはアルクスさん達とリリィが居るが、まさか勝負に決着が?

「……分かったよ。ボクの負けでいいよ」

レドナが槍を手放し、両手を挙げる。


それが、向こうの決着を教えてくれた。

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