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文武平等  作者: 風紙文
第七章
153/281

いつまで

「剣狩りかー、そういえば旅の途中でそんな名前聞いたなー」

七ヶ橋家の居間、早山を加えた俺達6人は椅子やソファに座り、現れたという剣狩りが去るのを待っていた。

「さすがに家屋に入ってくることはないと思うが……剣の気配が無ければ、ここに来ることは無いだろう」

早山が七ヶ橋家に来たのは、三夜子と双海さんの戦いを感知した剣守会が部活終わり直後を派遣したかららしい。

「ま、その人が居なくなるまでゆっくりしてくと良いよ。最悪泊まれば?」

「お気遣いありがとうございます。しかし自分は、報告へ行かないと行けませんので」

「あーしもちょっとね、リリに心配かけそうだし」

「そっかー。あ、三夜子はどうする? 泊まる?」

実家でその表現はどうだろうか?

「実家でその表現はどうかと思うけどね」

被った!?

「で、どうする?」

「……どうしよう」

首を傾げて悩む三夜子、本来なら泊まれば良いんだろうが、多分、押川の事を考えているんだな。

「……あ」

すると、何か思い出したように三夜子は呟き、頭の位置を戻した。

「……そういえば姉さん」

「ん?」

「……いつまで、家に居られるの?」

あぁ、大和先生に聞いてきてくれと頼まれたことだ。聞かれた双海さんは、腕を組んで首を曲げ、天井を見上げる。

「いつまで、かー。とりあえずは……うん、今年中は居るかな、旅の資金を稼ぐ為に」

「……そう」

今年中なら、少なくともまだ三ヶ月はある。

「文化祭も行きたいしね」

「……文化祭?」

「へ? 何で在校生の三夜子が首を傾げるのさ」

「……?」

よく分からないという風に、三夜子は俺達を見る。同じく転校生である陽花も聞いてきた。

「文化祭って、もうすぐなの?」

「A組ではもう話に出たよ。そうですよね、早山さん」

「あぁ、確か食品販売になる予定だったな」

「C組もそろそろ話に出るだろ」

早くて明日にも、委員長が招集をかけるだろう。

「でもなんで双海さんが知ってるんです?」

「ワタシは兄さんに聞いたから」

そう言いながら、何故か双海さんは居間を出ていった。

「でも、文化祭かー、向こうのガッコのも楽しかったけど、こっちのガッコも楽しいんだろうなー」

「……向こうの学校は、どんなだった?」

「えっとねー…」

陽花と三夜子の女子組が向こうの学校の文化祭話で盛り上がり始めた時、萩浦、俺、早山、さながら男子組が、

「こちらの学校は、どのような文化祭なんですか?」

「どのような、って言われてもな」

「比較対象が無いからな」

こちらの文化祭話で会話が始まった。

「まぁ、文化祭っぽい文化祭だな」

クラスや部活で屋台や出し物をして、体育館では演劇部が劇をやったりして。中学より豪勢、位の至って普通な文化祭だな。

「何か、学校特有のイベントとかは」

「んー、多分、アレか?」

「あぁ、学内イベントか」

その名の通り、学内全て、生徒先生お客まで含んだ人による一大イベント。内容は毎年変わるらしいので、今年何をするか当日まで不明だ。

「ちなみに去年は何を?」

「東西南北鬼ごっこ」

「はい?」

聞いたことないだろう言葉に萩浦は首を傾げた。

「校舎がロの字形だろ? そこを東西南北に別けて、校舎毎に鬼ごっこするんだ。因みに一番最初に鬼が全員を捕まえた方角が優勝で、最後の最後まで逃げた人はMVPだった」

尚そういう内容の為、お客は志願制で、追う側と追われる側を選べた。

「……だが、一番厄介だったのは生徒と先生は直前まで自分が追う側か追われる側か分からないということだ」

あー、そうだったそうだった。俺も早山も追われる側で苦労したよな……

「そ、それは、大変でしたね……」

大変……そうだな、東西南北の4つに別れてるから逃げ場が少なくて、そもそも文化祭でも校外のお客さんも多くて走り難くて、開始一時間もせずに終わったもんな。

「お待たせー」

その時、どこかへ行っていた双海さんが戻ってきた……手に色とりどりの液体が入ったコップの乗ったお盆を持って。

「さーさー早山くん、お好きなのをどーぞ」

「ありがとうござい……」

色鮮やか過ぎる液体達を見て、早山はさすがに言葉を失った。そして双海さんに聞こえないよう、俺と萩浦へ小声で聞いてくる。

「……アレは、何だ?」

質問に対しては、

「当たり付きのハズレくじだ」

間違いではない正解を伝えておいた。





「……はい、分かりま、ゴホッ……スミマセン、少し喉の調子が悪くて……」

まさかあんなハズレもあるとはな……

「はい……分かりました。そう伝えます……では」

携帯を閉まった早山は、もう一度咳き込んでから、俺達の方を向いた。

「剣狩りの気配が消えたらしい。まだどこかにいる可能性もあるが、一応は警戒を解いた」

「じゃ、もう外に出て良いってこと?」

「あぁ、そういうことだ」

「おけ、ならあーしと翔一は家に行って……みゃーこ達はどうする?」

「……」

考えるように床を見て、天井を見上げ、正面に戻ってくると。

「…………なら」





「じゃーねー」

双海さんに見送られて七ヶ橋家を出て、

「じゃあな」

早山は剣守会へ、

「じゃ、あーし達はこっちだから」

陽花と萩浦は実家へ向かう為途中の道で別れ……

「……」

「……」

俺と三夜子は、並んで歩いていた。

というのも、考えた結果、三夜子が発したのは、

『……創矢に、この辺りを案内する』

というもの。いったい何を考えているのか……まぁ普段から分かりかねてるが、いったい何を考えてそうなったのか。

「……」

「……」

しかし、案内すると言っていたのになんで無言が続くんだ。今のところ俺達が歩く音と三夜子が傘をつく音だけが聞こえる。

いや、冷静に考えてみよう。今歩いているのは、いわゆる住宅街。学校の周囲や俺の家近くに似た民家の建ち並ぶ場所だ。ここを説明しようものなら住宅街の一言で終わる。まさか一軒一軒説明されても逆に困るというもの。だから、無言なだけさ。

「で、これはどこに向かってるんだ?」

きっと案内が必要な場所へは向かっているだろう。

「……多分、駅」

ほら…………ん?

「多分……って、どういう意味だよ」

「……遠回り、だから」

遠回りなのか……そういえば、さっき見た来た道の逆方向へ歩いてきた気がするな

「なんでわざわざ遠回りするんだ?」

「……」

しかし三夜子は答えない。自分で考えろってか?

ふむ…………あぁ。

「なるほどな」

「……?」

「久しぶりの故郷だからだろ」

遠回りと知っているくらいここも慣れた道なんだ。家に帰るのが久しぶりなら、当然ここもそうだろう。

「…………ん、多分、そうだと思う」

思う?

「違うのか?」

「……よく分からない」

よく分からないて……それ以外の答えなんて俺には想像出来ないぞ。いや、三夜子本人以外には正解は出せないだろう。

「まぁ、駅に向かっているんだな、遠回りで」

「ん……それは確か」

「それなら別に……」

そこでふと、気付いた。

……妙に、静かだ。

民家が建ち並ぶこの場所で、俺と三夜子が歩く音と傘がつかれる音しか聞こえない。そんなことがあり得るのか?

「なぁ、三夜…」

呼ぼうとした、その時、

「……」

三夜子が足を止め、前を見ているのに気付いた。

「あれ? そっちの人は前にも見たね」


「まぁいいや、ここにいるってことは2人共に剣を持っているってことだよね」

聞いたことのある声が前から聞こえ、振り返り見るとそこには、双子の剣狩り、その男の方が、手に槍状の剣を携えて立っていた。

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