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文武平等  作者: 風紙文
第七章
152/281

姉妹対決

開始早々、三夜子が持ち前の素早さで双海さんとの距離を一気に踏み込んだ。

「お、早いね」

「……」

表情を全く変えずに驚く双海さんに対して、同じく無表情に三夜子は両手の剣で連撃を繰り出した。

「おぉ、さすが双剣」

しかし双海さんはまたも驚くことなく、左手に持つ剣で全ての攻撃をいなしてしまう。

「やはり剣の扱いは双海さんの方が上手ですね」

「あーしの八連撃も守られる気がするなー、つか守りそう、双海さんなら」

「……」

全ての攻撃を防がれた三夜子は後ろへ下がり、距離を開けた。

「うんうん、数ヶ月でその実力なら必ず強くなるよ三夜子、ワタシが保証する。ワタシにも勝てるようになるよ」

そう言う双海さんは、明らかに手加減していた。言葉からも、ただ攻撃をいなしていただけからも分かる。

「……嬉しい、けど」

「けど?」

「……今、勝ちたい」

三夜子は剣を交差に構えた。あの構えは……

「……かまいたち」

一気に振り切る。それと同時に、三夜子の剣から鋭い風が吹き出した。

「おっと」

さすがに少し驚いた双海さんは剣を前に防御する。だが吹く風を完璧に防ぐことは出来ず、腕や足に鎌鼬の風が触れた。

「ふむふむ、風の能力か。なんとも三夜子らしいね」

三夜子らしい……か?

「え……? 2人はそう思う?」

「ど、どうだろう」

2人も首を傾げていた。

「ではでは、三夜子が能力を見せてくれた訳だし、ワタシも能力を見せるとしましょう」

双海さんは剣……ブーメランの形状をしたその先を、三夜子へと向けた。

「……」

三夜子は防御の姿勢を取り、双海さんの言ったブーメランの能力へ身構える。

「三夜子、ミョルニルって知ってる?」

だが双海さんは、何故か質問してきた。

「……? にょるみる?」

違うぞ三夜子。

「三夜子なら言うと思ってたよ。しかし、のー、にょるみる。いえす、ミョルニル」

「……知らない」

「だよね、知ってた」

知ってて聞いたのか双海さん……しかし、ミョルニルか。

「にょるみるだがミョルニルだか分からないけど、2人は知ってる?」

「うん、僕は一応」

「俺も知ってるぞ」

ミョルニルとは、北欧神話に出てくる神の一人、雷神トールが持つ武器だ。だがミョルニルは確かハンマーの筈。ブーメランとは似てもにつかない……

「そうか、そういうことか」

「武川さん、もしかして」

萩浦も同じ答えに行き着いたらしい。

「あぁ、間違いない」

「どういうこと? そのミョルニルが双海さんの剣の能力と何の関係があんのさ?」

「どうやら分かってる人がいるみたいだし、答え合わせと行きますか」

双海さんは剣を、ブーメランを背負うように振り上げ。

「まぁ三夜子も、この姿を見れば分かるだろうけ……ど!」

振り下ろすと同時、双海さんは剣を手放し、ブーメランは回転しながら正面に立つ三夜子へと飛んでいった。

「……!」

身構えていた三夜子は飛んでくるブーメランを見る。だんだんと近づいてくるブーメランをただただ見続け……

「……今」

当たる寸前、横に回避、数秒前三夜子がいた場所をブーメランは通過し……


軌道を90度三夜子の方へ変えてその体を通過した。


「……え?」

予想外の軌道に、三夜子は驚いている。

「えぇ!? ちょ、何今の曲がり方! ブーメランって直角に曲がるの!?」

それを見ていた陽花はもっと驚いていた。

「アレが、ミョルニルという意味だよ」

「へ? どういうこと?」

「神話に出てくるミョルニルには、投げると相手をなぎ倒して帰ってくるという能力があるんだ。つまり…」

双海さんの剣がそれと同じ能力を持っているなら。

「……相手に必ず、当たる攻撃を放つ能力」

「強すぎない? ソレ」

「まぁ、半分当たりだよ」

双海さんは戻ってくるブーメランを見ながらそう言った。

「? ……半分?」

「そ、半分……」

回転を続けるブーメランに手を伸ばし……

「あ」

取り損ねた剣が、双海さんの手を通過して地面に刺さった。

「あぁー、やっちった」

「え……?」

「な……?」

「……?」

な、何で自分の剣が手を通過するんだ? それにもしミョルニルなら、必ず投げた本人の手へ帰ってくる筈……

「ま、こういうことなのだよ」

やれやれと首を振った双海さんは、刺さった剣を引き抜く。

「……なるほど」

どうやら三夜子は意味を理解したらしい。

「ど、どういう意味ですか双海さーん?」

理解出来ない陽花が訊ねると、双海さんは答えてくれた。

「ミョルニルみたいに、投げれば必ず当たって帰ってくる。まぁそれはそうなんだけど、ブーメランはさ、当たればあまり戻って来ない……これは剣だから貫通して戻って来るけど……戻って来ても、必ず手で取れるって確証は無いでしょ?」

「まぁ、そうですね……」

「それにさ、言っちゃえばコレほとんどが刃だから、取り損ねたら、絶対自分が傷つくよね」

「た、確かに……」

ということは、双海さんが持つブーメランの剣の能力って……

「つまり、投げれば必ず相手に当たって帰ってくる。ただしそれを取り損ねたら自分もダメージを受ける。という、諸刃の剣的な能力なのだよ」

「えー……強すぎと思ってたのに……」

「強力過ぎる故に、失敗時のデメリットもあるんだ」

「けど、ワタシっぽいよね? ね?」

「そ、それは……どうでしょ?」

「ぼ、僕はそうとは……」

陽花と萩浦は否定している。トリッキー、という意味では合ってはいるが、俺も賛同しかねるな。

「……確かに」

三夜子は首を縦に振った。

「「賛同者いた!?」」

さ、さすがは双海さんの妹か……

「でしょー? さてさて、互いの能力披露も終わったし……そろそろ本気で始めよっか?」

「……ん、本気で」

双海さんの纏う雰囲気が変わった。今までの余裕は一切なくなり、剣の先を前へ向ける。

三夜子も、表情に変化は無いが、前を見るその視線は相手だけに向けられている。

「……いざ」

「勝負……」

先ほどとは比べものにならない本気の2人が、これから戦おうと……


「あ! ちょ2人共ストップストップ!」


陽花の声がそれを止めた。その理由は、

「人来た!」

剣を使っている姿、ましてやそれで戦っている姿など他の人には見せられないからだ。

「ふむふむ……勝負はお預けだね、三夜子」

「ん……残念」

三夜子は剣を傘に戻した。双海さんは剣の、ブーメランのまま、近くに置いてあったギターケースの中に閉まった。

そこへ、陽花が気付いた人がやって来る。

「あれ……?」

そこへやって来たのは、

「……早山?」

今日は部活ということで、この誘いを断っていた早山だった。

「お前達は……そうか、ここが、七ヶ橋の家なのか」

俺達と、向こうに立つ三夜子達を見て理解したらしい。

「そうだけど、早山はこんなところで何してんだ?」

学校のある場所からわりと離れているこの場所で。

「……どうやら気付いてないようだな」

「気付いて、ない?」

「この辺りに、剣狩りが現たれという情報が入ったんだ」

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