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文武平等  作者: 風紙文
第一章
15/281

担当教科

小学校から中学校に上がる時に変わる事の中に、教科により先生が変わる事がある。

小学校までは担任がほぼ全ての教科を教えられるが、中学はそうじゃない。教科毎に担当教師が変わる事が普通で、それは高校でも同じ事が言える。そうすると小学校よりも授業を習う先生の数が増えるのが当たり前だ。

すると見えてくるのは、様々な先生の姿。

熟練者のような先生。逆に新参者のような先生。大和先生はその後者だった。

「おーし、始めるぞ」

今日の3時限、4時限は続けて大和先生の授業だった。

大和先生の担当教科は……普通は男性教師となると体育だったり数学だったりするが、大和先生は普通じゃない。

大和先生の教科は、家庭科だった。

今日は前から話し合いが行われていた2クラス合同の調理実習。2年生はA~Dの全4クラス、今回はA組とC組の合同だ。

何だか……大和先生の意図を感じるのは俺だけか?

A組とC組、合わせて全50人。一班5人で十班、班分けは先生が決めているので、その時になるまで誰が同じ班になるかは分からない。

因みに俺は四班、他の生徒は、A組は押川と早山、後1人は今日休みらしい。

C組は俺と七ヶ橋だった……絶対、大和先生が仕組んだよな、コレ。

まぁ、それはいいや。

2時限で眠気は全て飛ばした(寝た)ので、この後の授業は真面目に取り組もうとしてた所だ。

各々エプロンやら三角巾やらを身につけ、4人が四班の机に集まった。

「よ~し、がんばるぞー! がんばろうね! みゃーさん」

押川が後ろから七ヶ橋に抱きつく。

「うん……よろしく」

七ヶ橋はそれを気にせず、いつも通りの無表情で答えた。

「武川君も、よろしくね!」

「あぁ、よろしく、ここだけ4人みたいだな」

「一体どうしたんだろうね~、つきのんは」

つきのんとはアダ名で、本名は月乃(つきの)。俺は一年の時に同じクラスだったので少なからず面識がある。

もしも月乃がいた場合には、この四班は男子2人と女子3人の組み合わせになっていた。

そして、もう1人の男子。名は早山(はやま) (ひと)()

早山も一年の時にクラスが同じだったので、知らなくはない。だが、あまり会話した覚えはない。

何故なら早山は、

「はやまんもよろしく~」

「あぁ……」

いわゆる、寡黙なのだ。

必要最低限以上の事は言わず、聞かない。自分から何かを話す事は、とても珍しい。

はやまんとは、押川が付けた早山のアダ名だろう。

「押川と仲良いのか?」

アダ名で呼ぶ上に同じクラスなのだから当たり前だとは思うが、早山に聞いてみた。

「いや……そうでもない」

「え? でも今アダ名で…」

「押川は、クラスの全員にアダ名をつけてるだけだ」

「全員!?」

要は押川を除いた24人分だ。

「武川こそ、押川と友達なのか?」

「友達……なのか?」

押川を見て訊ねた。

「な~に言ってんの武川君、ボク達はもう友達だよ」

「だ、そうだ」

「そうか……いずれアダ名がつくだろう」

それは、嬉しいやら恥ずかしいやら。

「まあ……頑張れ」

「あぁ、ありがとな」

中々良い奴じゃないか、早山。

「……創矢」

そこに押川の抱きつきから抜け出た七ヶ橋が話しかけてきた。

「どうした?」

「……創矢は、料理できる?」

「料理は……」

全寮制であるこの学校では朝御飯は寮で出るのだが、他の二回、昼と夜は自ら用意しなくてはいけない。昼は購買でなんとかなるとして、夜は買い食いか自炊のどちらかに別れる。

ただ俺の場合は、昼は購買で、夜は家が近くほぼ毎日のように家には帰っているのもあって、家で食べてから寮に戻ってるので料理をする必要がない。

だからといって、自炊が出来ない訳ではない。先も言ったが、ほぼなのでたまに帰らなくても良い時が月に数回ある。その時は態々、飯の為に家に帰るのは気が引けるので自炊をすることもある。

そんな事もあり、

「一応、人並み程度なら」

「……そう」

「七ヶ橋はどうだ?」

「……出来なくはない……でも、出来はしない」

「どっちだよ」

「……どっちもどっち」

だからどっちなんだ。

「はぁ……まあ、大丈夫だろ、簡単な物ばかりだし」

「うん……がんばろ」

「あぁ、頑張ろう」

俺達四班は調理に取りかかった。

しかし、

出来なくはない……でも出来はしない。

七ヶ橋が言ったどっちつかずな言葉だが、どういう意味なんだ?

まぁ、気にせず始めよう。



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