変わり者達
「俺も、剣を手に入れる事は出来ないんですか?」
「え?」
俺が唐突に言った言葉に、大和先生は驚いて訊き返した。
七ヶ橋は相変わらず隣で傘を引きずっている。
「武川も、叶えたい願いがあるのか?」
「いえ、そういう訳では」
「じゃあ何でだ?」
「それは……」
正直、言った俺でさえ今驚いている。
何で言ったのか、理由は……あの時、七ヶ橋の手伝いで傘を壊す為に傘と木刀での戦い。
あの時に生まれた気持ち、うまく説明は出来ないけど、アレが忘れられない。だから、剣を手に入れると、アレみたいな事がまた何回も行える。
今はただ、それだけ。
「それだけ、です」
「へぇ……武川はクラスじゃおとなしめの奴だとは思ってなかったけど、まさかそこまで戦闘狂だとはな、予想外だ」
「自分は普通なんかじゃないですよ」
「ははは、俺もそうだ」
大和先生は左腕を俺の首に、右腕を七ヶ橋の首に回して二人の肩を抱いた。
「俺も武川も、そして三夜子も、普通なんかじゃない。普通のカテゴリには入れない変わり者の三人衆だ」
寮の自室へと戻ってきた。
鞄を机の上に置き、椅子に座る。結局あの後2人とは女子寮の前で別れ、七ヶ橋は寮へと、大和先生は来た道を帰っていった。
道場に行くにはまだ時間がある。その間に明日の準備やら宿題やらを片付けるのだが、今日はキャストパズルを解く事に使おうと思った。
鞄の中身を机へと空け、筆箱や教科書と共にジャラジャラと音を立ててキャストパズルが複数個机の上に置く。まだ解けていない物は計五、そしてつい先日買った一つ、今日はそれに挑戦してみるか。
目の前に置き、改めてそれを見てみる。
形は八角形、色は赤茶……銅の色だな。上面には模様が施され、見た目は西洋っぽい。
他のキャストパズルみたいな鎖やら、知恵の輪のような仕掛けは見当たらない。
さて、どうやって解くんだろうか?
裏返してみる―――変化無し。
縦にしてみる―――変化無し。
手に持って振ってみる、
カチカチカチ
中から音がした。何か入ってるな。
だが、見た目に変化は無い。
「何だよ、コレ」
縦にして、指で弾き、机の上を転がしてみた。
カタ
八角形のソレは転がらない。そりゃそうか。
横に戻し、再び観察する。
その時ふと、七ヶ橋が持つ傘についているパズル錠を思い出した。
そういえば、コレもアレに似ていた気がするな。仕掛けが見当たらない辺り、まさにそれだ。
そうか、パズル錠って名前なら、キャストパズルに似た所があるのかもしれない。何かヒントが見つかるかもしれないな。
……等と考えている間に、時間は過ぎてしまった。
……次の日。
「ふわぁ……」
俺は寝不足だった。
結局あの後、道場から帰ってきてからも宿題が無かったのを良いことにあのパズルを解く方法を試行錯誤していた。
そして、解けてしまったのだ。まさかあんな方法だったとは思いもしなかった。
というか、徹夜していて頭がボーッとしてきた時、手でいじってたらあっさり解けてしまったんだ。
その瞬間目が覚め、そして急に眠気に襲われ、そのまま机に突っ伏して朝を迎え……今に至るのだが……
「ふわぁ……」
再び欠伸を一つ。正直……眠い。
だが頭の中にはある考えが浮かんでいた。
決行は放課後。
だったら今の……授業中の間に、寝ておくか……




