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文武平等  作者: 風紙文
第六章
137/281

教会へ来た理由

……side 陽花


授業が終わって、三夜子からの誘いを断腸の思いで泣く泣く断って、あーしはここを訪れた。

「確かこっちの方……あ、あった」

前に広がるのは、どう見ても場違いな教会。

なんでこんなところに教会なんか建ったりしたのか、その理由は分からないけど、あーしが思っているこの想像は、あながち間違いではない思う。

周りに誰もいないのを確認して……いざ、調査開…

「そこに居るの、陽花さん?」

「!?」

声は真後ろから聞こえた。おそるおそる振り返ると、

「い、委員長?」

「……陽花さんは転校生だから仕方ないけど、学校の外ではそう呼ばないでくれる?」

「あ、スンマセン……じゃなくて、なんでここに?」

「こっちのセリフよ。もしかして道に迷った?」

いや、そうじゃない。一昨日教えてもらったからここを目指して来たんだけど、

「そうなんだよー、真っ直ぐ歩いてたつもりなんだけどさ」

ここで違うと言ったら、理由を考えなくちゃいけないから嘘をついた。

「真っ直ぐって、ここは逆方向も良いところよ」

「あっははー、あーしってば昔から方向音痴でさー」

あれ? そういえば。

「委員長こそ、こんな場所で何してんの?」

「道草よ、それでそういえば最近教会が建ったとか聞いたから来てみたの」

「へー、そんなことしそうなタイプには見えないけどね、委員長」

「……あのね、陽花さん」

「はい?」

何か、委員長怒ってる?

「何度も言うようだけど、私を学校の外で委員長とは呼ばないで、そのあだ名が定着するの嫌なのよ」

「あー、そりゃスンマセン、ついその呼びに慣れちゃって」

「次からは気をつけてね。名字の桔梗でも、名前の藍でいいから、呼び捨てでもあだ名でいいわ、ただし、アレは無し」

「へーい」

すんごい思い入れがあるんだな、委員長(口には出してないからセーフ?)

「よろしい。まぁ私も用事は済んだし、案内するから一緒に寮へ帰りましょう」

「わーい、サンキューですいいん…」

「……はい?」

おおっと、危なっ。

「き、桔梗……さん」

「よろしい」

委員長こえー、今の目マジだったー。

とその時、

「おや、こちらに御用ですか?」

教会の中から、あの時見た牧師が現れた。しまった、見つからないようにしてたのに。

「少し珍しかったんで、見に来ただけっす」

委員長が言ってたのと同じような嘘をつく。

「そうでしたか、確かに、ここはまだ建ってから日が浅いですからね」

「という訳でー、充分見たので失礼しまーす。行こう桔梗」

「えぇ、失礼します」

揃って頭を下げ、踵を返して歩いていくと、

「お待ち下さい」

二歩も行った所で引き止められた。

「何ですか?」

「我が教会では、毎週日曜日には瞑想を行っております」

知ってる。まさに一昨日見に来たばかりだ。

「それとは別に、迷える方々の話を聞くことと……」

何故か間を開けて、牧師は、言った。

「……悪しき刃を、集めて浄化もしています」

悪しき刃? それって、まさか……

「そう、貴女方から発せられる気配を持つ刃のことです」

「「!?」」

バ、バレたの? 錠がかかってんのに。やっぱりコイツ、剣に関係してるのか。

ん? いやちょっと待てよ。今、貴女方って言ったよね、ということは……まさか、委員長も?

「悪しき刃を集める。それがワタクシがここへ来た理由です。先日も一つ悪しき刃を人から離すことが出来ました……さぁ、貴女方の悪しき…」


「「断わる!!」」


あーし達は同時に走り出した。

「ちょっと委員長! まさかとは思うけどひょっとして委員長も持ってんの!?」

「その呼び方は辞めてって言ってるでしょ! そういう陽花さんこそ!」

「もち! もうバレてるみたいだから見せる!」

あーしは鞄の中から剣を、錠のかかった状態のを取り出した。

錠のかかった状態のそれは、金剛杵とかいう神様の持ってる法具に似てる物で、それが知恵の輪みたいに2つ絡まっている。

「そっちは!?」

「今はそれどころじゃないわ!」

えー、何かそれズルい。とか思いつつ前を見ると、

「花正!?」

そこには買い物袋を持った花正が歩いていた。

「あの子、一年生の」

「へ? 武川の従姉妹で同い年でしょ?」

「え? でも確かあの時……」

「逃がしません」

後ろからの声に振り向くと、

「悪しき刃、渡してもらいます」

牧師がスッゴいスピードで追いかけてきてた。つか早っ!? あの裾長い服であのスピードは反則でしょ!

とかなんとか考えてる内に、

「おぉ!? な、なんだ、今通りすぎて行ったのは!?」

あーし達は花正の左右を通りすぎていた。

「あれは陽花と、委員長……? おぉ!? また!?」

牧師も花正の横を通りすぎた。もし花正も持ってたら狙われてたな。

「陽花さん、そこ!」

委員長が指差す前は、二手に別れた道。

「いい、そこで左右に別れて追われなかった方が助けを呼ぶ!」

「おっけ!」

二手に別れた道にたどり着き、

「じゃ! 健闘祈る!」

あーしと委員長は別々に逃げた。





「ふぅ……巻いたかな? それとも委員長の方に行ったとか」

入り組んだ道を右往左往していたら、後ろから誰も来ていなかった。

「とりあえず、助けを呼ぶしか」

携帯を開いて、翔一の番号を選んで…

「オイ、そこの学生」

「?」

見れば前の方に、三人組の男が立っていた。

その内一人は、何か刃物のみたいなのを持ってる。

「その手に持ってるの、俺達にくれないか?」

あ、まだ剣持ったままだった。

「こんな物、何に使うんですか? ぶっちゃけ売っても一文にもなりませんよ」

「いいから大人しく渡してくれないかな、あまり手荒にしたくはないんだ」

「はっ、そんな刃物持って言っても説得力無いし」

「っ! このガキ!」

刃物を持ってた男が一番に怒って刃物を振り上げて近づいてくる

「……」

あーしはただ、それをじっと見る。普通刃物を向けられたらビビるもんなんだけど、そんな気分には一切ならない。

「何でビビらねぇ!」

だってそれ、人切れないし。

「こっちも持ってんの、忘れてんの?」

鞄を放り投げ、錠を外し、剣を構えて……

約8回。それが、相手が倒れるまでに加える剣の斬撃の平均回数。

気持ちが強かったり、あるいは弱かったり、能力による攻撃とか色々合わせたらよく分からなくなるけど、平均はそんなものらしい。

でも分かるよね? 結構な数だってこと。

けど、あーしにはそれが出来たりするんだよね……


ズザザザザザザザ!!


「なにっ!?」

「……」

気ついた時には、剣を持った男は地面に膝をついていた。

「この、テメェ!」

「やりやがったな!」

うわー、負けフラグセリフ言いながら2人、剣持って迫ってきたし。

「……チッ」

ヤバ、舌打ち出た。早く終わらせなくちゃ……

「……ふぅー」

息を吐いて。吸って。

「…………キッ」


ズザザザ!! ズザザザ!!


「いっ!?」

「早ぇ!?」

剣を落として、2人も地面に倒れた。

弱かったな、3人同時でも多分勝ってたかも。とりあえず、鞄を取りに……

「……クッ!?」

ヤバい、ちょっと使い過ぎた。

「くっ……うぅ…………」

し、深呼吸……すぅー、はぁー、すぅー。

「…………ふぅ」

何とか落ち着いた。さすがに連続で使い過ぎたかな。でも別に選んでこの能力になった訳じゃないし、仕方ないっちゃ仕方ないけどさ。

「余波が出んのは、辞めてもらいたいね」

あーしの剣の能力、それは鬼化。肉体強化って言い方も出来る。

簡単に言えば、通常以上の行動を行える。剣を素早く振ったり、回避出来たり。

そしてあーしの剣は持ち手の両側に鍔、その先に二枚の刃、それを両手に一つずつ。計八つの刃を使えば、一回の乱舞で八回斬ってたりする。

ただ、使い過ぎると身体にガタがくるし、鬼の名残か妙に怒りっぽくなる。睨みとかかなり恐くなってるらしい。

はぁー……毎度思うけど、翔一のが羨ましいわ。

「見つけましたよ」

あ、しまった。

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