表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
文武平等  作者: 風紙文
第六章
135/281

創矢は?

「よーっす、みんな揃ってるかー」

月曜日の放課後、部活の時間。部室へと入ってきた大和先生の言葉に部室内の全員がそちらを向いた。

「……リリは部活。花正はこれから来るって」

「そっか…………なら、ちょうどいいや」

代表して三夜子がいない2人の理由を応えると、大和先生は声のトーンを落とした。少しだけ張りつめた空気が拡がる。押川がいないことをちょうどいいと言うということは、つまり。

「剣狩りが、この町に現れた」

黒板の前に立った大和先生がそう切り出し、確定した。

「しかも……今回は4人組らしい」

「よ、4人組?」

今までの剣狩りは必ず1人ずつだった。その1人1人にこちらは複数で挑んで、どうにか勝ってきたというのに、4人同時だと……

「けど、安心の種もある」

大和先生はチョークを持ち、いつものように書きながら説明を始めた。

「最初に確認されたのが、ちょうど始業式の日だ。検索の結果、1人1人の実力は今までの奴らよりも低いことが分かった。だからといって油断は出来ないけどな。それから、数日経った昨日」

丸が4つ黒板に書かれる、剣狩りのつもりだろう。

「1人、戦闘不能になった」

右端の丸にバツが引かれた。

「……戦闘不能とは?」

すぐさま早山が手を挙げつつ質問をぶつける。

「戦えなくなったんだ。剣を、取られてな」

「つまり、剣守会が剣を取ったと」

「いや、違う」

バツの書かれた丸の横から矢印が伸び、その先に剣と漢字で書かれる。

「剣守会が到着した頃には、既に相手は剣を持っていなかったんだ」

「……では、誰が?」

「それは分からない、行方は現在捜索中だ」

「でもそれって、剣狩りや剣守会以外にも剣を取ってる人がいるってことですよね?」

月乃の質問に、大和先生はそうなんだ。と返す。

「何が目的か……まぁ願いの為だろうけど、既に剣を持つ人がもう一つ剣を持ったってことになる。ただ、何でそれをするかが良く分からないんだ」

「と言いますと?」

「えっとな」

チョークで新たに丸を書き左右に十字を書いた。

「別の剣を二つ同時に使う、コレが何を意味するか分かるか?」

問いかけに俺達は頭を捻らせる。少しして、月乃が手を挙げた。

「能力を二種類使える」

「そう、それも正解だ」

能力二倍、と書かれた。

「それも?」

「ぶっちゃけコレはメリットだが、デメリットはもっとあるんだ。例えば…」

「……戦う数二倍」

三夜子が呟いた。

「そうだ、もしも願いを2つ叶えたくてそうしているとしたら」

勝利数二百、と書かれる。

「単純に剣と二百回戦うことになる」

え? でもそれは……

「それって、自分が持つもう一つもでは」

「そうなんだよ」

同士討ち、と書かれ、下に線が引かれた。

「自分で持ってる剣どうしでも戦う必要になるんだ。剣は、百振りしかないからな。剣狩りもそんなことはしてこないさ」

そうか……一見有利にも見えるけど、剣狩りが剣を二振り使ってくる者がこないのはそういうことだったんだな。

「持っていったのが誰かは分からないが、何を考えてる奴かも分からないし……まだ狙ってる可能性もある。剣狩り共々、注意してくれな」

こうして、一通り説明が終わった時、

「創矢!」

ガラガラパーン! と大きな音と共に扉を開けた花正がやって来た。

「やって来たぞ創矢、さぁ行こうではないか!」

挨拶もそこそこに俺のところへ真っ直ぐとやって来て机をバンバンと叩く。

「ちょ、落ち着け花正。まだ部活の最中だぞ」

「む、そ、そうだった……し、しかし待ちきれないのだ!」

落ち着きの無いのはいつものことだが、今日は更に凄いな。

「なんだ? 花正どうかしたのか?」

開けっ放しの扉を閉めながら大和先生が訊聞いてくる。

「はい、実は部活終わりに花正の携帯電話を選びに行くんです」

俺の両親曰く、この年齢で携帯を持ってないのは色々不便だろうということで、昼間に一緒に行くようにと電話があった。だからこの喜び様だ。前に花正は犬だと満場一致したが、今は更にだな。後ろの一本結びの髪が尻尾のようにも見えてきた。

「はぁー、携帯電話を買いにねー」

「……」

…………あれ? 何かこんな展開、前にもあったような……?





……という訳で、大和先生に言われ、部活を早抜けして携帯電話を買いに来た。

ただし、いや、やはり、2人だけではない。

「創矢ー! 早く来ないと置いていくぞー!」

「いや、花正場所知ってるのか?」

「あ」

だろうな、花正が行ってしまってから出来た店だから。全く、元気過ぎるぞ……

それに引き換えこっちは……と、いつもなら、逆ベクトルな三夜子がいるわけだが。

「なんというか、同い年には見えないわね」

今回は……月乃がいた。

どうしてこんな珍しい状況になったのかと言うと、三夜子は姉である双海さんと会う約束があるらしく、何故か悔しがっていたのを月乃が宥めたところ。

『……なら、月乃が行くといい』

と一言。それで何故か、月乃は付いてきたのだった。

「いったい何が、ならだったんだろうな……」

「どうかした?」

「いや、別に……」

わざわざ来る必要もなかっただろうに、月乃は『仕方ないわね』と言いつつ付いてきた。

「本当に良かったのか? 何か予定とか…」

「あったら元々来てないわよ。てかそれは今さら聞くことじゃないでしょ」

まぁ……そうだな。

「ふぅ……」

「……」

無言のまま、気まずさが生まれそうだが、前を行く花正のテンションの高さからくる何をしでかすか分からない為の注意がそれを防ぎ、結局無言のまま、歩き続けていった。

その時、

「あれ? 武川?」

「え?」

後ろから掛けられた声に振り返ると、そこには陽花がいた。

「珍しい所で会うな、一人か?」

「まね、昨日聞いてどんな場所か見てみたくてさ」

「なるほど」

「ちょっと創矢、知り合い?」

そういえば月乃と陽花は面識無いか。

「聞いたことあるだろ、転校生が2人いたっていうのは。A組が萩浦で、C組がこの陽花なんだ」

「どもっす、転校生の陽花紫音です。部活はみゃーこと同じ所入る予定なんで誘わないで下さい」

すっかりトラウマだな、部活勧誘。

「みゃーこ……あ、三夜子ね」

「おぉ? ひょっとしてみゃーこと知り合い?」

「えぇ、色々あってから今は同じ部活よ。あたしは月乃雅、よろしく」

「こっちこそ、みゃーこと友達はあーしと友達さ」

2人が軽い握手を交わしていると、

「創矢ーー!」

花正が大声で駆け寄ってきた。

「どうした」

まぁ予想は付くが。

「場所が分からないわたしを一人にするな!」

「勝手に先走ったお前が悪い」

「うっ……た、確かに」

やれやれ……というか、店はこの道に一応あるんだが見つけられなかったのか。

「武川、この人は?」

あぁ、もちろん花正とも初対面だな。

「俺の従姉妹で、同い年の花正だ。制服は着てるけど学生じゃない、その辺は長くなるから割愛な」

「蒼薙花正という、パズル部の学外部員をしている」

「みゃーこのいる部活ね。ならみゃーことは友達なんでしょ?」

「みゃーこ?」

「三夜子だよ」

「おぉ、三夜子のことか。うむ、わたしと三夜子はもちろん友達だぞ」

「ならあーしとも友達だわ、よろしく」

「うむ」

花正と陽花も握手を交わすと、

「それにしても……」

陽花は俺達を見回して、最後に俺を見て。

「武川、何て言うか、アレね、モテモテね」

「は?」

俺が、モテモテ?

「みゃーこを筆頭に、雅とか、花正とか、ここまで別ジャンルと親しく話してるとかもう、そうとしか言えないし」

「そう……なのか?」

2人に訊いてみる。

「むぅ、わたしはよく分からないぞ」

花正はまぁ元から答えを期待してなかった。月乃を見ると、顎に手を当てて何か真剣に考えている。

「そうね…………うん、創矢はアレね。いずれ……」

いずれ?

「……後ろから刺される、とか言うやつね」

「はぁ!?」

刺される!?

「創矢は刺されるのか!?」

「そーそー、後あるいは、爆発しろ、的なやつよ」

爆発って!?

……ん? まてよ、それは聞いたことがあるな。

「創矢は爆発するのか!?」

「実際にはしないが、そうじゃない他人からそう言われても仕方ないって意味、だよな?」

「そうね、そういうやつ」

「リア充ってのね」

そうか……他人に言われなくちゃ分からないものだが、俺、リア充だったのか…………って、どんな話だこれ。すっかり目的を忘れるところだった。

「ま、だからどうしたって感じだけどね」

陽花がその言葉で締め、陽花とはその場で別れて、本来の目的遂行の為に俺達3人は歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ