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文武平等  作者: 風紙文
第六章
134/281

ある日曜日

日曜日の朝、学校が休みの今日、携帯の着信で目を覚ました。

「誰だ……こんな時間に」

まだ朝の7時を回ったところ、日曜日は遅くまで寝ていたりするので、いつもより早い目覚めになってしまった。とは言ってもまだ寝ぼけ眼で、頭はボーッとしてる。気を抜けばまた夢の中だ。

とりあえず、着信音の理由だけ見るか。携帯に手を伸ばしてディスプレイを見ると、

「三夜子か……」

やっぱりというかなんというか、三夜子からメールが届いていた。

……何かの呼び出しとかだろうな。靄のかかったような頭でろくに考えもせずにメールを開く。



from 三夜子

sub 無題


やっほー武川起きてる~? 日曜日だからって遅くまで寝てるのはもったいないないぞー?

ところで武川ってこの辺りの育ちなんだよね?

良かったらこの辺紹介してくんないかな~?



「はぁーー!?」

瞬間に目が覚め、上体を起こした。

「わっ、た、武川さん?」

見れば萩浦は机に向かい勉強をしていた。

「ね、熱心だな」

「進み方が違いますから……とそうではなくて、どうかしたんですか?」

「あ、あぁ……コレ」

萩浦へとメールを見せる。発信者の三夜子からは想像も出来ないくらいの明るい文面の並びを。

「これは……」

「不思議だろ? 普段三夜子からのメールは題名のところで済ませるんだが今回は無題で本文がやたら長い上に伸ばしとか使って疑問形にしてやがるこれは三夜子に何かあったと考えるしかないだ…」

「落ち着いて下さい武川さん。よくメールを見て下さい」

「え?」

言われた通りメールを見ると、文面の最後に、


by 紫音


と書かれていた。

「紫音……陽花か」

「七ヶ橋さんの携帯で、紫音が武川さん宛にメールしたようですね」

「そ、そういうことか」

最初は本当にどうしたんだと思ったぞ。冷静になった頭で、再度見返してみる。

「つまり、陽花が俺にこの辺りの案内をしろってことだな」

「せっかくの休日ですからね、七ヶ橋さんや押川さんと遊びたいのでしょう」

でもこの辺りの地理がよく分からないから、地元民の俺が呼ばれたって訳か。まぁ断わる理由も無いし、いいかと思い、返信メールを打ち始める。

「萩浦も一緒にどうだ?」

そう聞いてから、後悔した。

「お気持ちは嬉しいのですが、紫音が嫌がると思いますので」

「そうだったな、悪い」

「いえ、お気になさらず」





指定した時間に学校の前で集合ということになり、時間の5分前に行くと、

「あ、武川来た。はろー」

「……おはよう」

すでに陽花と三夜子が来ていた。押川は多分、部活があったんだな。

「わざわざ悪いねー、この辺りは武川が詳しいってみゃーこが言うからさ」

「まぁ実家が近くにあるからな」

「おー、それは適任」

「とりあえず有名な所を案内すればいいか? あるかは分からないがリクエストが有れば聞くけど」

「んー、特には無いかな、一通り分かれば問題無し」

「そうか、なら行こう」

とりあえず歩き出し、十数分かけて駅前に到着。

「ここがこの辺りの人達の買い物の場所だ。大体は揃うが、隣の駅にしか無い店もある。隣と合わせれば、ちょっとした都会並みだ」

商店街を歩きつつ、細かい説明を加える。

「ふへー、色々あるわ、駅なんてここ初めて来て以来だし」

「駅前の広場にはたまに移動屋台とかも出てたりする。その辺りは三夜子の方が詳しいよな?」

「ん……」

何せ何時どの屋台が来るのか知っているからな。どこから得た情報なんだか。

「これで、一通りは回ったぞ」

「ふむふむ、思ってたより店は充実してるわね。ゲーセンもデカかったし」

「他にあるか? 何なら隣の駅くらいなら歩いて行けるが」

「あっちは何?」

陽花が指さした方向は、商店街を抜けた先。

「住宅街だな、俺の家もそこにある」

「……ちなみに、道場」

いやそれわざわざ言わなくても。

「ふーん、じゃあ武川、剣道とか上手いの?」

「まぁ物心付いた時には始めてて、今でも家の手伝いでやってるからな」

「へー……って、あれ? みゃーこ?」

陽花の隣にいた三夜子が何か見つけたのか、一人すたすたと歩いて行ってしまう。

「……」

しかしすぐ近くで止まった、見ているのは、掲示板だ。

「なになにみゃーこ、なんか面白いことでも書いてあった?」

三夜子の後に続いて俺と陽花も掲示板の前へ。

「……これ」

三夜子が指さしたのは、一番上に貼られていた紙。そこにはこう書かれていた。


日曜日二時より、瞑想を執り行います

興味のある方もふるってご参加下さい


    牧師 アルクス


あぁ、あの教会……礼拝堂だったか? まぁどっちでもいいか。そういえばそんなことをするとか言ってたな。

「へー、瞑想って具体的に何するのかしら」

「……?」

知らないんだろう、三夜子が答えを訊くかのように俺を見て首を傾げた。といっても、俺も知らない。

「気になるなら見に行けば良いんじゃないか?」

時間的には始まっているが、ただ知りたいだけなら参加しなくても大丈夫だろう。

「それもそうね、そうと決まればこの教会とやらに行き…」

声をさえぎるように携帯の着信メロディが聞こえた。これは俺のじゃない。

「あぁ、あーしだ」

陽花が携帯を取り出してボタンを押すと音は止まった。

「メールか。2人共ちょっと待って」

メールの文面を目で追っていた陽花は、

「……そっか」

何か小声で呟いた後、一瞬掲示板に目を向けた後素早く操作してメールを返信した。

「よし、返信完了。お待たせ、行きましょっか」

「……今の、誰から?」

「前の高校の時の友達よ」

「……そう」

「そーよそーよ、さ、さっさと行きましょ」

「ん……行こう」

「?」

三夜子は追求しなかったが、陽花の返答はどうも怪しかった。

呟いた言葉も気になるし、それに一瞬だが、前にある掲示板を見たのも気になった。

もしかしたら陽花も、三夜子に隠し事があるんじゃないか?





俺が案内して歩くこと数分、教会へと到着。その時すでに多くの人が教会から出てくるところだった。

「ありゃ、終わっちゃったみたいね」

「……でも、平気」

「まぁ瞑想をしにきた訳じゃないからな」

その内容を知りたいだけなら、人に聞くだけでいい。

「今してきたばかりの人だらけだし、武川の知り合いとか、声かけやすそうな人はいない?」

「そうだな……」

ざっと周りを見てみるが、知ってる顔はいても、すれ違う程度で声を聞いたことの無い人ばかりだ。まさか親父や母さんがいる訳ないだろうし、花正が興味本意で来てないだろうか?

「いや、いてもアイツに説明出来るとは思えない」

やったことを箇条書きみたいに伝えるだろう姿が目に浮かんだ。

「誰かいたの?」

「いや、誰も…」

その時ふと、目に入った人物がいた。

「皆様に、神のご加護があらんことを」

この教会の牧師、アルクスさんだ。どうやら見送りをしているらしい。

「あの人なら知ってるだろ、ここの牧師だから」

指さして、陽花と三夜子に示すと、

「うーん……別にいいわ。武川、行きましょ」

眉をひそめた陽花は1人今来た道を歩いて行ってしまった。

「あ、おい、陽花?」

「……紫音、どうかしたの?」

「さぁな」

後を追うために歩き出す。

「……後」

「?」

「……牧師と神父の違いって、何?」

「……」

それを今聞いてくるか……

「まず神父ってのは…」

つい先日調べた、神父と牧師の違いを説明しながら、俺と三夜子は陽花の後を追いかけた。

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