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文武平等  作者: 風紙文
第六章
133/281

顧問と部長

……side 町田《演劇部》


部活動時間は終了したけど、時間が惜しい演劇部はまだ活動を行う為に、部長が申請しに職員室へと向かった。

「用事があるというなら無理強いはしないよ。皆、大丈夫かな?」

通辻先輩がそう訊ねると、

「だいじょぶで~す」

「右に同じでーす」

「予定はありませんわ」

橙華ちゃん、緑子ちゃん、赤乃ちゃんも大丈夫。

「ボクがいないと、作業は進まない」

日羽里先輩は作業を続けたまま告げ、

「私も大丈夫です」

「ふむ、どうやら愚問だったようだね」

結局全員、部室に残りました。

「ならちょうどいい……例の件はどうなった?」

「はいは~い」

トーンの落ちた通辻先輩の言葉に、橙華ちゃんが手を挙げた。

「えっとですね、2年生に転校して来た2人ですけど、今片方は部活の見学をしてるみたいですよ」

多分陽花さんの方だ。少し前にそういう話をしてるのを聞いたことがある。

「つまり、ここへ来る可能性があると?」

「それは無いかと」

緑子ちゃんが言葉を繋いだ。

「その人はクラスメイトに勧誘され、仕方なくその人達がいる部活を見て回ってるだけですから。誘った人のいない部活に来ることは無いでしょうね」

一応私が同じクラスだけど、さすがに誘う気にはなれなかった。

「では、もう1人の方は」

「それなら若干怪しいですわよ」

赤乃ちゃんが言葉を引き継ぐ。

「つい先日、何やら探っているような動きをしているところを見かけましたの。場所は駅の向こうの住宅街ですわ」

「住宅街か……そういえばつい最近、教会が建ったとか聞いたな」

「そこは、調べられなかった」

日羽里先輩が作業を続けながら伝えた。

「向かってみたところ、そこの神父だか牧師だかどちらかに勧誘され、迂闊に近づけないと判明」

「ふむ……まぁそこは追々でいい。今気にすべきは事は…」

「うーす、やってっかー」

扉が開き、お決まりの挨拶と共に入ってきたのは、

「こんにちは、桜間先生」

『こんにちはー』

「へーい」

演劇部の顧問、桜間先生。

「順調かー?」

「はい……どちらも、問題無く」

「そっか……ならいいや」

私たち、D,grantsを作った張本人です。

桜間先生は席の一つに座り、私たちを見舞わした後、

「あれ? 1人足りなくね?」

「部長ならば職員室へ先生に会いに行った筈ですが、お会いになりませんか?」

「あー、じゃ行き違ったな、まあ戻ってくるだろからいっか」

い、いいのかな……?

「とりあえず……町田」

「!? は、はい!」

急に名前を呼ばれ、驚きながらも返事をする。

「ワリィな、なんか1人だけ仲間外れっぽくて」

「い、いえ、そんな、気になさらないで下さい」

私たちは演劇部のメンバー全員で、D,grants7kitというグループを組んでいる。後半の7kitとは、七つ道具という意味で、夢を叶える為の剣を持つ七人ということ、らしい。

けど現在7kitには先生を除いて6人しか、剣が6本しか無い。

「あん時一年生にあげたのは失敗だったな。お礼として他の剣持ってくるとか言うからそのままにしといたら、逆に持ってかれて。アレ本当は町田に渡すつもりだったのに」

まだバスケ部と演劇部を掛け持ちしていたわたしは、一年生の橙華ちゃん達より後に剣をもらう予定だった。けどその前に、ある一年生の人が受け取り、そのまま誰かに取られてしまった為、演劇部に専念し始めた私には剣の話だけがされ、物が渡されることはなくなってしまった。

「早く七人揃わせたいんだけど……さすがに見つからねぇかんなー」

「そ、そんなに急がなくても」

「いんや、あんな名前付けた以上、あの人にもワリィしな」

あ、あの人って……

その時、

「桜間先生、ここに居ましたか」

扉が開いて、桜間先生に会いに行っていた演劇部部長が戻ってきた。

「うーす、桔梗」

私と同じクラスで、二年C組、そしてクラス委員長の桔梗(ききょう)(あい)ちゃん。

この藍ちゃんこそ、演劇部の部長だ。

「職員室へ行って、今さっき出ていったと聞いた時にはもう予想してましたよ」

「わざわざゴクロー、申請は通しといたから最長下校時間まで頑張りな」

「いえ、さすがにそれは長すぎかと。皆、この時間までと決めたのを言って、そこから計算するから」

藍ちゃんはてきぱきと全員の意見を聞き、部活の終了時間を決定した。

「では、四時には速やかに下校します」

「へーい」

「流石は部長だ。部員全員の意見を聞いた上で皆が納得する答えを出すとは、やはり部長を任せて正解だったようだね」

「本来なら、アナタがなる筈だったんですよ? 通辻先輩」

藍ちゃんは自分の鞄が置いてある席に座り、窓際に寄りかかっている通辻先輩を見た。

「アタシは人をまとめるというのがどうも苦手でね。黄希もそうだろう?」

「そう、こうした作業の方が適任」

「別に三年生がしなくてはいけない訳ではないから、それならばクラスをまとめている委員長に任せればと思ってだよ」

「そだな、私もその姿見て委員長を部長にするの賛成したんだ」

「……桜間先生、ここで委員長って呼ばないで下さい。ここは教室じゃありません、部室です」

藍ちゃんは何故か、教室、またはクラス活動中以外で委員長と呼ばれる事を嫌っている。

けど、呼ばれても仕方ないとも思うんだよね。

「でもよー、その格好見たらほぼ役職は委員長だぜ」

「そうですね、その髪型にその眼鏡」

「典型的な委員長像と言っても、過言ではありませんわ」

「そんな姿の委員長、漫画で見た気がします」

「委員長先輩は委員長先輩だよ!」

「……」

あわわ……桜間先生から緑子ちゃんまで。それと橙華ちゃん、委員長先輩は無いでしょ……

「……………………ふぅ」

あ……こ、このため息は。

「い……」

じゃなかった。危ない危ない。

「あ、藍ちゃん、私、ちょっとお手洗い行ってくるね?」

「……えぇ、ごゆっくり、花香」

「う、うん……」

ゆっくりと、しかし確実に部室の扉へと向かう。

「日羽里先輩はそのまま作業を続けて下さい」

「言われなくてもそのつもり、いいん…………部長」

日羽里先輩のギリギリセーフを聞いた頃、私は扉に手が触れた。

音を立てて開き、音を立てないように静かに閉めて。最後、パタンという音だけが響いた。

その直後、

「皆さん、桜間先生も、少しよろしいですか」

大きい訳ではないのに、よくはっきりと聞こえる藍ちゃんの声が部室内から聞こえた。

わたしは少しだけ扉を開いて中を覗いて見ると、

「げ……しまった、やり過ぎたか」

「桜間先生、最早手遅れです」

「迂闊でしたわ……つい言葉の流れに乗ってしまいましたわ」

「ま、最長でも下校時間までですよね」

「緑子ちゃんなんでそんな冷静なの!?」

「だって、もう後の祭りだし」

「だからって~…」

「蔓さん、静かに」

「は、はい!」

あー……やっぱり始まった、藍ちゃんのお説教タイム。

ヘッドホンを装着し始めた日羽里先輩以外、黒板の前に立つ藍ちゃんを正面に見るように席についたのを確認して、藍ちゃんが口を開いた。

「何度も言うようですが、確かに私はクラスで委員長という役職に付いています、ですがそれは教室2年C組内での話。そこから一歩外或いは部室内に入ったならばその瞬間に私は2年C組の桔梗藍もしくは演劇部部長の桔梗藍になるのです。容姿は個人の自由で私はこの髪型を小学の六年生から眼鏡は視力の落ちてきた中学の二年生からかけていて今の姿になったのは実質中学二年生からでその頃から委員長に選ばれることがありましたが嫌ではなかったので断らず受け入れましたが以来あだ名は委員長になりました。中学ではまだ仕方ないと思っていましたが高校に上がってもその定着が終わることなく続き…」


い、いつまで続くかな……

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