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文武平等  作者: 風紙文
第五章
106/281

分かりやすいよく分からない

月乃の説得に、二十分も掛かった。

「というか今更だが、里帰りしてたんじゃないのか? 確か夏休みいっぱいいるとか言ってたよな」

「一度は考えてたけどね、でもほら…」

月乃は落とした鞄を肩にかけ、前を指差す。そこには先ほど見ていた掲示板。

「…夏祭りがあるじゃない、だから帰って来たのよ」

なるほど、向こうの夏祭りはもう終わっているからな。

「で? 3人で夏祭り回るのね?」

「あぁ、さっきそうなったな」

「ふぅーーん…………」

あ、次何言うかもう分かった。

「三夜子、もう大人数確定だからいっそ部員全員で行かないか?」

「ん……それは良い」

「よし、決まりな」

「ちょっと!? なんで先に決めちゃうのよ!」

「アタシも一緒に行くわ、とか言うんだろ?」

「うぐっ……」

月乃は面食らったように唸った。やっぱり図星か。

「さてと……花正、次はどうする?」

「そういえばアンタ達、それどういう集まりなのよ」

「一応、花正の数年ぶりの街案内だな」

「そこに何で七ヶ橋が?」

「……」

三夜子は目を反らして、

「……月乃も来る?」

答えないまま、逆に月乃に聞いた。

「え? あー……さすがにこの荷物持ってはキツイわね」

肩にかけた鞄をかけ直す、見た目やさっきの音でかなり重そうなのはよく分かる。

「……学校」

あぁ、なるほど。

「花正、高校を見に行くのはどうだ?」

「高校とは、3人の行っている?」

「見た事あるとは思うが、そこも5年ぶりだし、学校の向こうが寮だから月乃も来れる……って、三夜子が考えてる」

「ん……そんな感じ」

そんな感じて、まぁさすがに三夜子も初対面の花正に緊張があるんだろう、多分。

「確かにそこも懐かしい場所だ、是非行こう」





学校へ向かう途中、花正は同い年ながら高校へ行っていない事を聞いた月乃が驚いていた。

「え、じゃあ普段なにしてたわけ?」

「剣道の鍛練だ。後は家事や、時に近所の手伝いをしていた」

「はぁー……同い年とは思えないわね」

という感じの会話をしながら歩いていると、学校の正門へと到着。

「おぉ、ここがそうなのか」

「昔は前を通るくらいしかしてないからな。今俺達はここに通ってるんだ」

「ふむ……高校か、こうして見ているとわたしも通ってみたいものだな」

感慨深げに校舎を見上げる花正だが、ふと思い出したように俺の方へと顔を向けた

「そういえば、今日創矢は部活を休んだのだろう? なのにここへ来てよかったのか?」

「大丈夫だろ、何せ部員がここに揃ってるからな」

「では先ほど電話していた先生というのは、部活の顧問ではないのか?」

「そうだが?」

「その人に会ったらさすがに怒られないか?」

「大丈夫だろ」

そんなことで怒るような大和先生じゃない。

「……大丈夫」

三夜子も答えた。

「……もう帰ったから」

つまり大和先生、学校に居ないんだな。

「そうか、ならば良いが」

「じゃあ次行くか」

正門から少し歩くこと数分、俺達は女子寮の前へ。

「それじゃ、コレ置いてくるわ」

「なら、その間に男子寮見てくるか」

鞄を置きに中へ入っていった月乃と別れ、俺達3人は男子寮の方へ。

「これが寮だったのか、昔は何の建物かと思っていたが」

昔は聞けなかったもんな。

「……あ」

「む? どうしたのだ、三夜子」

三夜子は急に歩き出して、ある物の前で止まった。それは、掲示板……って、またか。

「書いてあることもだいたい同じだろ」

商店街で見たものと内容はほとんど似ていて、夏祭りの日付も書かれている。唯一のこちらにだけあるのは、不審者に注意、という一番新しい感じの張り紙だ。

不審者か、確かにこの辺りは学生が多いし、こういう注意書きも必要なんだろう。

「不審者くらい、わたしなら一刀に…」

「止めとけ」

花正ならやりかねん。けど相手が大人じゃ危ないぞ。

「……」

「三夜子も傘を眺めるな」

もう開け方が分かってるんだから壊す必要はないだろう。

「むむ、しかしな創矢、誰かが襲われるくらいならばわたしが一刀のうちに…」

「止めとけと言っとる」

聞かない花正の頭に軽くチョップを当てる。

「むぅ……おそらく勝てるのに」

「確定出来てから挑め、いや、どっちにしてもダメだ挑むな」

その時、視線を感じた。振り向けば……まぁ、三夜子だな。他に誰もいないし。

「……」

何も言わないまま、じー、と俺を見ている。

「どうした?」

「……やっぱり私が挑…」

「止めとけって」

言い切る前に言葉を被せた。

「……」

すると何故か、納得いかなそうな顔になった……と思う。若干眉が動いただけだから確定は出来ない。

「創矢、三夜子にはチョップしないのか?」

「え?」

「……」

まさか、そういうことか? いやそれはあり得ないだろう。と思っだが、三夜子は俺をじー、っと見て、

「……やっぱり私が挑…」

リテイクと言わんばかりに同じ言葉を繰り返した。心なしか、体を前屈みにして頭をこちらに向けているようにも見える……

「や、止めとけ」

恐る恐る、三夜子の頭にチョップを当ててみる。

「……ん」

すると今度は、こくり、と素直に頷いた。当ってた、のか?

相変わらず、三夜子の行動は所々よく分からない……

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