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文武平等  作者: 風紙文
第一章
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プロローグ:始まりに

変わり者達による、力と知恵の平等バトル。まずはその、プロローグを。

―――6月の始まり頃。

空は早くも梅雨入りしたかのように、どんよりと曇っている。だからといって雨が降るでもなく、傘は折り畳み式を鞄に忍ばせている者が多いだろう。現に登校している生徒の手に傘を持つ者は数える程だ。

ちなみに俺も傘を忍ばせているほうで、今は一人、学校へと向かっている。

別に友達がいない訳ではない、ある理由で登校時間が皆より早いから一人なだけだ。

それを知る俺の友達曰く、それは変わり者の行動だ。らしい。

その言葉に対して訂正はしない、俺は変わり者だ。

いや、人は皆変わり者だ。

普通の人というカテゴリはあるにして、普通が何なのか分からない。人ってのはどこかしらが他人とは異なる、つまり、変わっている。

結果として、人は皆、基本変わり者なんだと、俺は思う。勿論、俺も例外ではない。

そうなると、学校ってのは変わり者の集まりって事になる。


……だが、そんな変わり者の集まりである学校の中に居ても尚、変わり者と呼ばれ、見られる奴は存在する。

少なくとも、学校に一人は居るんじゃないか? と、俺は思う。


その時、アイツはやって来た。


誰かと言えば、生徒であり、変わり者であり、更に言えば、見られ呼ばれる変わり者だ。

理由は明確、聞けば分かる。

アイツが来る時、いつも、


カッ  カッ  カッ


と、音がするからだ。

何の音かと振り向く者はもういない。そこまで響く音でもないので、誰かと会話していれば耳には入ってこない。仮に聞こえている者がいても、注意することはない。


何の音かと言えば……傘。あれは、傘を杖代わりに地面に付いている音。


それだけ考えれば別に変な所は何も無い。俺だって傘を持っていて、雨が降っていなければ手持ちぶさたで杖みたいに地面を叩くことがある。

だがアイツの変わり所は、その傘にあった。

まず第一に、アイツは傘を壊さんがばかりに強く叩きつけている。

近くで聞くとよく分かる。


ガッ……ガッ……ガッ……


見た目に反してかなりの力で地面をついている音だ。誰もそんなに力強くは突かない。

そして第二に、アイツは晴れでも傘を持ってきている事だ。

例えば、午後から降ります。という天気予報を聞いて念のために持って来るならまだ分かる。だがそうじゃない、アイツは、一日中晴れです。という天気予報を聞いた日でも傘を付いている。

そしてもう一つ、これが一番変な事。

朝に雨が降ったその日、アイツは地面を付く傘とは違う傘を差して登下校しているんだ。

傘差さないの? と聞く人はもういない。いや、最初から、俺が知る限りそれを見た時から言う人なんていなかった。

アイツは二年生で、俺と同じクラスで、席は一番後ろの廊下側で、どうやら帰宅部らしい。




……ところで、俺は妙にアイツに詳しいが。


何故かと言えば、俺も変わり者が集う学校の中で、変わり者って事だからだろう。





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