まさか乙ゲーに転生するとは思わなかった。
どうも、私です。
死にました。転生しました。
トラックが迫ってきて目を瞑ったら息苦しいときたもんだ。んで、声もうまく出せない、なんかぼやけてる…そして気絶。
で、美人さんたちが涙ぐみながら覗き込んでる。
あ、転生か。
そう気づいたのはきちんと思考できるようになってからです。もちろん、だからなんだという話。多分、たまたま記憶が残っているだけなので、前世で悔いが残っていることができるむしろラッキーな状態ではないですか!!
「よし、べんきょうしよう。かじも、スポーツも頑張ってみよう。」
前世では私は怠け者だった。親には孝行らしいことはできずに葬式のときに後悔したものです。今世ではまだ両親は健在、仲睦まじい。
ならば、完璧とまでは出来ないけれど、できることがあるのに何もせず前世のように後悔したくない。
そう決意してはや15年。中学を卒業し、高校もきちんとこなしていると、何か変な既視感を覚えました。昔、見たような光景があります。
イケメンに囲まれる、美少女…あぁ
乙ゲーか。
私はとりあえず主人公には転生していないようです。良かった良かった。
そういえば通っている学校の顔偏差値がやけに高いなぁと今さらながら考えます。私の顔は…うーん、自分ではもう見慣れた顔でよくわからないですが、まあまあかなと。
「うーん…もうすでに攻略対象とは接触してしまっているのですよね…」
そう、生徒会役員も、部活の先輩も、モテモテなクラスメイトも、仲が良く先生にいたっては幼馴染み。これを見ると私が主人公のような状況ですが前世の影響なのか何だか息子を見守るような感覚でしか接しておりません。あはは。
みんなが幸せになれるなら協力しますがまさか主人公さんが逆ハー狙いだとはおもわなんだ。
「他者の気持ちを踏みにじり、優越感に浸りたいだけの女性は彼らを任せるに値しませんね。」
ーむんっと気合いを入れている彼女を微笑ましそうに見ている攻略対象の彼らはまだ主人公に好意はない。中学から一緒にいる彼ら(+α)は一生懸命な彼女を見るのが好きだった。
「また何だかゆーちゃんが気合いを入れているね、俺たちに何かあるのかな。」
「みんなは私が守ってあげるのですよ!!ってもう可愛いよな。なんであんなに一生懸命何だろうか。」
「そりゃ決まっているだろう、ゆーだからさ。あの子は昔から変わらない。何をするのにも一生懸命、周りを気遣い、困ってる人がいるならなりふり構わない。その反面、嫌いな奴にはとことん冷たい。」
「そーそー。僕、ゆーちゃんから目を離せないよ。危なっかしいし。さて、じゃあ行動しよっか。」
彼らは彼女のためにいろいろとしてきた。
彼女は実は色々なギャルゲーの攻略対象でしかもエログロ展開があるキャラだった。実は彼らも転生者で、ギャルゲーの知識があったのだ。
ゲームではかなりビッチだったはずの彼女はほんわかした一生懸命な子になっていて彼らは驚いたと同時に、彼女を守らなければと思った。
「次はどの馬鹿を潰せばいいんだ?」
「んー…まだわからんな。」
「あ、もしかしたら乙ゲーなるものに巻き込まれたりしてー。」
のんきに喋る彼らは知らない。
巻き込まれているわけではなく、自分たちが攻略対象だということに。
「うーん、主人公さんから守るといってもどうしましょうか…」
「「「「「ゆーは渡さない。彼女が幸せになるまで汚させるものか」」」」