資本主義的な桃太郎
雑文
むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんがいました。経済活動圏の枠外にはじかれ、なおかつ年金制度も確立していないこの時代では毎日仕事をして生計を立てねばなりません。
おじいさんは山へしばかりに、おばあさんは川へ洗濯にいきました。男らしさや女らしさといった型にはまった伝統的概念に常日頃から懐疑的なこのおばあさんは、洗濯といういかにも女性らしい仕事に鬱屈していました。しかし父性的な階級社会を否定しようとしない今の政治では女性の自己実現はまだまだ程遠いと嘆息をつくのでした。
そのとき川の上流から大きな桃が流れてきました。これを持ち帰れば家庭内での地位が多少向上するのではないかという打算的な思考はごく当然のことなのでした。
さっそく持ち帰った桃を(さりげなく、しかししっかりと所有者の確認をし)食べようと切ってみると、なんと中には男の赤ちゃんがいました。
おばあさんは女性的かつ偽善的義憤にとらわれましたが、自分たちに子供がいないということで、協議の結果自分たちの子供として育てることにしました。名前は桃太郎と名付けました。
桃太郎はすくすく大きくなって、体格、健康と共に恵まれた男の子になりました。
ある日、桃太郎は鬼が島へ鬼を退治しに行くと言い出しました。桃太郎は征服主義者に育ってしまっていたので、どさくさにまぎれて鬼が島の所有権を主張するつもりでした。おじいさんおばあさんは黍団子を作って桃太郎を送り出しました。
道中、犬、サル、キジに会いました。彼らはそれぞれ同じことを言いました
「腹が減って死にそうです。どうか黍団子を分けてください」
もちろん市場原理から考えて無料で団子を提供するほど桃太郎は無知ではありません。それぞれを短期非正規雇用員として雇いました。
ついに鬼が島に着いた桃太郎一行。鬼が島では鬼たちが近隣から盗み出した財宝で飲めや歌えの大騒ぎ。
「自分ならあの財宝を元手に投資するのに」
そう思った桃太郎はキジを使って、鬼たちと交渉を開始しました。数回の交渉の末、無知の鬼たちは桃太郎の条件で島の財産の管理を任せることにしました。
こうして投資運用で得た利益の50%が桃太郎の取り分となり、犬サルキジや鬼たちは桃太郎の下で働くことになりました。大金持ちになった桃太郎は後世に名を残す納税者となりました。happily ever after