朝の町の花見酒
朝と夜と夕方は変わらずとも季節はやってくる、そんな中でまた私は引っ張り出されたわけなんだが…
今日は夜の街は空っぽだった、そう…朝の町は素朴で自然が豊かな町なので花や海で四季の変化によって表情がよく変わる街なので旅人も観光客もやってくる、そして今日は桜が満開になる日だった。
今日も彼女はお勤めをしようと思っていたら今度はクロエではなく神父に腕を引っ張られていった…
「どう言うつもり?」
「春を楽しんでも天に居ます神様は罰を与えようとはせんじゃろうに」
と浮かれているようだった、彼女は仕方なく祭りのときに買った質素な普段着に着替えて朝の町に神父と共に繰り出していった。
朝の町は白くて四角い町を見事に美しく薄桃色の化粧が施されていて、所々に桜の花びらが舞い上がっていた。
そして芝生の上には既に花見を楽しむ人達が酒を飲んだり、踊ったりしている中でやはり、一人酒を売る男が居た。彼も少しばかり出来上がってはいたものの商売にはなるので祭りには必ず居るようだった。
神父は樽の様に太った大衆食堂の主人ともう酒を飲み始めていて、これはもう止められないと諦めた時に、一人の書生がベンチに座り、ぼんやり花を眺めていた。いつかシスターに相談を持ちかけていた書生だった。
シスターは気になったのか、彼に「ちょっと隣失礼して良いかい?」と尋ねたら「あれ?シスター…さん?」と書生は答えた。まさか此処で知り合いで尚且つ修道女と会うと言う事は無かっただろう。
「君は宴には行かないのかい?」と聞くと「あんまりこう言うのは好きじゃないんだ」と答えた。
彼と同じ人間が居ることに安心したのか、書生はシスターに笑顔を見せた、そしてシスターは「この間よりは笑顔があって安心したよ」と言うと「シスターももう少し笑えよ」と言った瞬間に互いに視線が重なり、つい可笑しくて二人とも噴出してしまっていた。
「僕はね、哲学を勉強してるんだけどこんな風に楽しく生活している人を見てたらあんまり要らないんじゃないかなって感じるときがたまに有るんだ」と袴に散った花びらを眺めながら呟いていた、彼はどうも深く物を見てしまう性質なのだろう、人のことは言えないが…
「何でも何時も必要って物は無いよ、必要なときに必要なだけあれば良い…神も哲学も」とシスターは言った、彼にも自分にも…そしてそんな話をしていたら「お前らも酒飲めよ!弁当美味いよ!」とクロエが向こうからカクテルとフランクフルトを持ってシスターと書生を呼んでいたのだ。
「私はシスターで良いよ、君の名前を知りたい」と言ったら「和樹」と一言なのり、彼女たちも騒がしくも楽しい花見の宴に混じっていき、それは夜遅くまで大騒ぎをしていたのであった。