日曜日の夕方丘
毎週日曜日の8回目の鐘を鳴らす時には朝の町も夜の町も人は居ない、そう…皆礼拝に来ているのだ、祝福と感謝を身に受けながら
日曜日の教会は忙しかった、シスターは柔らかい大きなパンを窯で焼き、小さなグラスを用意して前日に清めたワインも取り出して行った、そして神父も説教台に立ち、今日学ぶ聖書の一説や話をする準備をしている内に、鐘を鳴らしに行く時間になった。
シスターは大急ぎで塔に登り、重苦しい鐘の音を8回鳴らした。
もう既に礼拝堂には大人や子供が座っており、朝の学校の子供たちは白い立派な聖歌隊の服を身にまとっていた。
ユーコは早く歌いたくて仕方ないと言うのが見受けられるが、反対にボウは緊張している、そしてヤエは少しばかり子供っぽいと思うせいかあまり笑顔は無かった。
そして祭壇の裏からは神父が聖書の一説や使徒信条を読み上げ、皆で祈りの言葉を唱えあって居た、そしてそれが終わると聖歌隊の舞台になり1週間学校で教えられた歌を子供達皆で歌い、聖歌斉唱が終わればパンとワインの祝福を施す事になった。
女はレースで出来た薄いベールを頭につけ、黒いワンピースと言う服装で、男は黒いジャケットに白のシャツと黒いズボンと言う服装だった。
祝福をするのは神父の仕事だが、神の子の血肉であるパンやワインを分け与えるのはシスターの仕事だった。
それが終われば最後に行われる献金が始まった。献金袋を回すのは子供達で、シスターはその間にパイプオルガンで祝福の曲を終わるまで弾き続けているのであった。神の子である教会はこの献金によって彼らが生かされている事が容易に解るだろう、なのでシスターも神父も派手な遊びを避けているのだ。
そして礼拝が全て終わると聖堂では祈りを捧げるもの、懺悔をするものなど様々な事情で残る人が居るのである、シスターは聖堂の掃除をしようとする時に一人の書生がイエス像をマジマジと見て考え込んでいるのを見ていた。
「何か有ったのか?」
「え…ああ…」
「何か有ったのかい?」
「無償に死にたい…」
そう言うとシスターは書生の手を引っ張り、聖堂の椅子に座らせた。何にせよ死にたいと言う人を突っ撥ねるほど彼女はキツく言えない性質なのだった。
「話せるなら話して御覧?」シスターは自分なりに優しく問いかけた、少しばかり蓮っ葉な印象だが…
「苦しむために生きるなら人生なんて意味が無いと思うんだ、そう思うと僕は感覚が鈍るんだよ」書生は苦しそうに今の人生を語る、シスターは顔色を変えずにこう彼に呟いた。「凸凹の無い人生も人を不安にさせるよ、だって何にもないのを解ってて歩くんだからさ」と励ます訳でもなくしれっと答えた。
「そうか…シスターもただ妄信的に神に仕えるわけではないんだね」
「何も考えないで信じる方が怖いんだよ、神も人もね」
「そっか」
そう答えて彼は「また来るよ」と言って彼は教会から去って行った、また一人教会に変化を起こす人が増えたとても長いようで短い日曜日であった。