第六話 初戦。そして動き出す英雄
今回から黄巾部将として演技・史実に登場した人物を恋姫化(女性化)させて登場させますがそれでも良いという方は、駄文ですがよろしくお願いします。
戦いの時が来てしまった。
人材は国への反感が強、く集まった農民を中心に集めて訓練を施した。
厳しい訓練は生半可な心を持つ者では耐えられませんからね。
彼らはそれを耐えきった精鋭。その数総勢15000。
その際に何人かの将となる素質がある者達を見つけました。
「主、準備が整いました」
そう話しかけてくる大人の女の雰囲気を持つ髪の長い女性ははその一人、名を程遠志。真名は美須々みすず)。
私の知る程遠志はもちろん男ですが女になっていました。
山賊をしていたらしいのですが、私が出るのならと参加したらしいです。
普通こういう輩を私は隊に置きたくなかったが目の奥にある武人の光があるのを見つけため、鍛えたらなかなかの武人に変貌。
最初は粗暴で村を襲ったりしようとしていましたが今では落ち着きがあり、冷静な判断を下せる信頼が出来る存在に。
その時の話をすると顔を赤らめて「お恥ずかしい限りです」と言っていました。うん、いいですね。
「イヨイヨダネェ」
言葉に独特な響きがある少女は名は馬元義、真名は明埜。
同じく女に変わっています。
顔は包帯でぐるぐるに覆われており、表情は読めないが目は嗤っているように感じられる。
服は袖が異様に長い物を来ており中には暗器を仕込んでます。元は農民で重税に苦しめられていて反乱に加わったらしいです。・・・あくまでらしいですけどね。それしちゃ人を殺すことに躊躇いがなさ過ぎます。あんまり気にしないようにしてますが。
武器は短刀や手裏剣を使うのだが主な役割は間諜に彼女の専用部隊の忍などを使った諜報活動。
なかなか面白い計略を思いついたり、政務もできるので数少ない文官役としても活躍してくれてます。
「・・・」
この無言で物静かなのは張曼成、真名は琉生。
やっぱり女性です。
山の行き倒れているところを私が見つけて保護したところ、何故か私の下にいたいと書き出し今に至ります。まったくしゃべらない、というか話しているところを見たことがありません。
名前とかは筆談でしたしね。
二本の双剣の使い手であり、軍を率いる統率力も持っているため我が隊の副隊長になっています。
こちらに向かっている朝廷の軍は総勢20000。
こちらより多いですが所詮はあまり訓練されていない兵隊。
率いる将も明埜曰く
「アリャダメダナ。軍隊ハ統率デキテナイシ、将自体モ私ガヤッタホウガマダマシダ」
と言っていました。
まあ、所詮は民の反乱と軽く見てるんでしょうね。
対応が遅すぎる。
おかげでこちらは準備万端で訓練も無事終えることが出来ました。
前哨戦にはちょうどいいですね。
「主、号令をお願いします」
「ええ」
美須々に返事を返し、私の部隊が見通せる場所に立つ。
うん、綺麗に並んでいますね。訓練の成果がでている。全員の視線を受け止めると私は口を開く。
「さて、みなさん。初めての戦争ですね。敵はどうやら私達をなめているようで、ゆっくりと進軍してだらけきっているようです。所詮は民の反乱だ、すぐに押さえつけられると」
みなさん顔に怒りが浮かんでいます。
それはあれだけ奪われ、またなめられているわけですから当然ですね。
「私は思う・・・ふざけるな!!」
私の怒声が辺り一帯に響く。
「あいつらは我らに何をしてきた?私達に何をやって来た!?あいつらがしたことは私達罪もない民に重税をかけ金を搾り取り、その金で遊び尽くしてきただけだ!!その間私達はただ耐え忍ぶしかなかった・・・だがついにその時は来た!今こそあの愚か者どもに罰を与えるときが来たのだ!!もはや佞臣が溢れ、帝ですらそのいいなりになる漢に未来はない、我々が新しい時代を築くのだ!!」
さぁ張角様、いまこそあの言葉を使わせてもらいます。
「蒼天已に死す 黄天當に立つべし !!」
最初は唖然としていましたが、言葉の意味を理解すると誰もが手を握りしめ、その手を天に突き出す。
我が兵達も同様に繰り返す。
「「「「「蒼天已に死す 黄天當に立つべし !!蒼天已に死す 黄天當に立つべし !!」
「さあ行くぞ!!お前達はあいつらのようにだらけきって太りきった豚ではない!!過酷な訓練に耐え抜いた精兵だ!!あいつらに積もりに積もった恨み、今こそはらしてやれ!!」
「「「「「おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」
ふぅ・・・こんなもんでしょうかね?
慣れないなりにやらせていただきましたが我が軍の士気は十分。
我が部隊を国税が払えず親を殺された者、家の物を全て奪われた者、自分の娘や妻をさらわれた者など恨みがある者達で構成したのは正解でしたね。
お互いの苦労と苦痛を共有し連帯感が生まれる。過酷な訓練にも励まし合い、耐えきったことで自信もついた。
これはもはや賊などとは言えない練度と信念と統率がとれた部隊です。
さて、朝廷の軍のみなさんには悪いですが天和様達のためにも敗北してもらいます。
~朝廷軍将 side~
我々はこの度の反乱の討伐命令を受けて派遣された。
まったく・・・たかが農民の反乱如きで私が出るとは。
だが、流石に数が多いらしい。その数は十万と聞いているが所詮は農民の寄せ集め。抵抗らしい抵抗も出来ぬままこの反乱は収まるだろう。
他の将軍もすでに各方面に派遣されている。私も負けるわけにはいかないな。
「将軍!!向こうから土煙が」
む、来たか。
数は一万ほどか?
こちらは二倍の戦力。
初戦にはちょうどいい。
「迎撃する!!陣形を取れ!!」
兵が横陣に広がる。だが相手の軍は早く、展開が完成するころにはすでに間近にまで接近を許す。
正面には黄巾を身につけた敵将の姿が見える。
衝突。
怒号と悲鳴と血が戦場に飛ぶ。
敵はなかなかやるらしく我々を押している。
ちっ!!ただの農民の反乱と言うには統率が取れている。我々に突貫してきた黄巾の女将は自ら先頭に立ち双剣を奮う。
女将が剣を振れば私の部下の体の部位が飛び、悲鳴がこだまする。
・・・あいつは本当にただの農民か!?
すでにかなりの数を切っているのに疲れを見せず、涼しい顔をして剣を振るうその姿は我々に恐怖を与え、逆に反乱軍にはさらに勢いがつく。兵士達の士気は落ち始めていた。
たかが農民と油断していたが、実際に戦うと築かれていく屍は味方の者ばかり。
あのようなすさまじい武を持つ者が自分達に剣を向けていると考えると寒気が走る。
「しょ、将軍。あ、新手が!?」
「なにっ!?」
そう思って左方を見るとそこにはまたもや黄巾の布をつけた部隊が。
「っく!!応対し「将軍あれを!!」今度はなんだ!?」
逆の右方を見るとそこにも黄巾の旗が。
やられた!!
前方のみに気を奪われている隙に両面を挟まれたのか!?
えぐり取るように攻撃を加える反乱軍。
すでに隊は混乱し、陣形が取れていない。
「くそっ撤退だ!!どのような顔をして帰れば・・・」
「ン?帰ルノハイイガ首ヲ置イテイッテクレナイト困ルネ」
不吉な声にとっさに後ろを向くと、そこには顔を包帯で隠した黄巾を腕に着けた反乱軍とおぼしき兵がいた。
もうここまで押し寄せてきていたのか。そう思いその者の後ろを見ると私の兵達がみな首から血を流して倒れている。
まさかこいつが!?
「き、貴様何者だ!?」
「コレカラ死ヌヤツニ教エルコトハネェヨ」
「なんだと!?」
そう言って剣を構える、が。
ヒュン!グサッ
何か嫌な音が聞こえた。まるで乾きもしない肉に何かを突き刺したような、そんな音だった。
私の体が傾く。私の体は馬から崩れ落ちていく。
「(何が起き・・・・た)」
彼はそのまま地面に落ちると、何が起きたか解らないという表情でこの世を去った。
その首には一振りの小型の刀剣が突き刺さっている。
それを見ていた明埜は、まるでつまらないものを見ているかのように男の体を蹴り飛ばした。
「マジデアッケネェ・・・オ前ラノ大将ハ俺ガ殺シタゾ!!」
明埜の声が戦場に響き渡る。
その声の異質さに驚き、そして言葉の意味を知ると朝廷の軍はもはや形をなせず兵達は逃げ出した。
だが、怒りに燃える波才の部下達はそんな彼らの背に容赦なく剣を振り下ろす。
もはや戦とはいえない一方的な虐殺が始まった瞬間だった。
~波才 side~
どうやら何事もなく終わったようです。
今は追撃を美須々に命じて陣幕で休息中。
全滅はさせずともいいからほどよいところで帰ってくるように伝えてあるし、今の美須々なら問題は無いでしょう。
「アア・・・ホントツマンナカッタ」
そう言ってあくびをするのは大将首を獲った明埜。
「・・・」
無言で寡黙な琉生も不満そうな顔をしている。
兵達には三位一体を徹底させていた。対する敵は倍だったにもかかわらず、統率がとれてなかったからかこちらの被害は少ない。
負傷者二千、死者は千名に満たない。最初に衝突した琉生の部隊がやはりそれなりの被害を受けたようで。
それでも倍の敵に当たってそれだけの被害だったと見るべきか。
私達の隊は左右から挟撃したがあまり被害はない。向かってくる敵よりも混乱で右往左往する兵や、逃げる兵が多かったからでしょうね。
それにしても統率が全くとれていない。
琉生の隊が先行し、正面から攻めたがこちらに気づいて陣形が完成するのがあそこまで遅いのは致命的だ。
そして指揮官の視野が狭いのか正面の敵のみに気を取られすぎいた。
挟撃する私達に直前まで気がつかないというのも・・・しかも兵は全くと言っていいほど鍛えられておらず、鍛え抜かれて怒りに燃える私達の兵との差は明確です。
私が敵の流れの中心にたどり着いたときはすでに明埜が敵の首を獲り、それを周りに誇示している姿がありました。
「まあ、あちらさんが弱いというのはいいことですよ」
「ソウナンダケドサァ・・・琉生モモウチョット骨ガアルヤツトヤリタイダロウ?」
「・・・」
無言だが否定の意味ではないでしょう。明埜は更に大きくため息を付く。
「まあ、今の朝廷はこのような軍が関の山でしょう。ですが、この時を雄飛の時への足がかりにしようとする者達はどうですかな?」
私の空気が変わったことを感じたのか、明埜が目を薄め私の話を聞くために身を乗り出す。
心なしか琉生も私の話を聞きたそうにしている。
「正直張角様が率いる者達の中でまともなのは私達だけでしょう。他はみな数を頼りに押し込めるような事しかできず、戦の心得や名のある部将には勝てません」
「ホウ?マルデ俺ラガ負ケルミタイナ言イ方ダネ」
「負けるでしょうね」
そう言ってため息をつく。
二人は驚きの表情を浮かべていた。
反乱は下手すれば他の所にも飛び火してしまうのでほとんどの有力者はいい顔をしない。
さらには明確な指示を出さずに続々と各土地で勝手に反乱しているのでほとんどの有力者が全力で潰しにかかります。
しかも反乱は本来入念な準備と下調べと協力者(内部の人間や有力者)を集う必要があるのですが、突発的に起こってしまったために当然ながらそれを行っていません。
史実でさえ内部の有力者である宦官中常侍の封諝、徐奉を内応させていました。
え~と結論。
内部の協力者ゼロ。武器?そんなものはない。しかも明確な指示のない統率の取れない者達が続々と発生、各有力者の土地を荒らしてまわる。兵糧もない、つまり兵糧は奪うしかない。頼れる人物も勝手な反乱で敵対者多数のため得られない。
どう見ても詰んでいます。本当にありがとうございました。
「いくら私達が勝とうともそれは個々であり、全体が勝つわけではありません。最終的には押され負けるでしょうね」
「アンナヤツラニカ?」
「・・・」
二人が抗議の視線を向けてきます。
「あの程度に負けるような訓練を私達はしてませんよ」
「ダッタラ」
「ですから言ったでしょう、雄飛のための足がかりにしようとする者達がいると。聞けばちらほらとすでに私達にそれなりの実力を持ち、対抗し始めている者達が居ると来ますよ?」
「・・・ソイツラニ俺達ハ勝テナイト」
「私達でも間違いなく苦戦を強いられるでしょうね。下手に油断すれば確実に首をこれですよ」
そう言って手刀を作り、首にとんっと軽く当てた。
「今戦った程度と同じにとらえてはなりません。あの人達は将も弱く、統率もろくにとれてはいなかった。ですが彼らは本物です。皆さんと同等、それ以上の者達がその意志のもとに私達に襲いかかってくることになるはずです。正面から戦わず、計略を用いたりもすることもあるしょう。そんな者達に我々以外の仲間が勝てますかな?」
その時、私の下へと歩み寄る知った気配を感じた。
・・・お帰りのようですね。お茶の用意をしましょう。そう思い腰を浮かす。
「・・・無理ダロウナ所詮ハ農民ダ」
「だがそうだとすると何故張角様は此度の乱を始められたのでしょう」
聞き慣れた声に二人が後ろを向くと、そこには追撃を命じた美須々の姿があった。
「この程遠志、ただいま帰還しました。兵達はすでに休ませています」
「お疲れ様でした。まあお茶をどうぞ」
そういって茶を差し出す。
「ありがとうございます・・・そのような話を陣中で話されても良いので?人払いはしてあるようですが万が一の事もあります」
「大丈夫ですよ。兵が来たなら気で解りますから。・・・まだ三人にはこの話していませんでしたね」
そう言って黄巾の乱の始まりと真実を話す。
三人は唖然としていた。
あの無表情な琉生でさえ口を開けて驚いている。
「・・・ソレマジカ?」
「・・・ええ」
「だとすると困りましたね・・・」
美須々がため息をついて茶碗を置く。
明埜も包帯の下はあきれ顔になっているのが解る。
「私はあの方達を守るために此度の乱に参加しています。みなさんはこの話を聞いて思うこともあるでしょう。最悪、この軍を抜けても構いません」
だが美須々と明埜はその言葉を笑い飛ばし、琉生は何を言っているのかと眼を細めた。
「ッケ、ナニ言ッテヤガルンダ。私ノ主ハ張角様・・・モウ様付ケスンノモアホラシイ、張角ジャナクテ旦那ダ。旦那ノ言ウコトニ私ハ従ウ」
明埜は口元を三日月のように歪ませる。
「私も同じです、私は主に救っていただきました。その時から主を一生仕えるお方と決めたのでむしろ嫌だと言ってもついて行きますよ」
美須々も明埜に続いて笑う。
「・・・」
琉生も何も話さないが、他と同じなのだという意思表示を頷くことで示した。
「みなさん・・・ありがとうございます」
私は良い仲間を持ちましたね。私にはもったいないぐらいの良くできる仲間を。
これから激しくなるであろう戦いを彼女たちと生き抜くことになる。
誰一人欠けることなく天和様の元に戻ろう。
そう私は決意した。
~??? side~
「???様これを」
「なにかしら?」
「先日朝廷の軍と黄巾党の軍隊が衝突し、朝廷の軍は将を討ち取られ敗走した。それの詳細です」
「なさけない!我らだったらこうきんとうなどたやすく打ち破ってみせるというのに!!」
「・・・」
彼らの主は口を歪ませ笑っていた。
「???様、そうなされたので?」
「へぇ、なかなか面白いじゃない。秋蘭、この情報にある黄巾党の部隊を調べなさい」
「はっ!!」
「???様、そのこうきんとうの奴らなど私が打ち破って見せます!!」
「ええ、期待しているわ春蘭。でも彼らを甘く見てはいけないわね」
「そこまで・・・ですか?」
「見る限り優秀な将のもと統率されている、下手すれば私達でも厳しい戦いになるでしょうね。・・・ふふ、彼らに会ってみたくなったわ」
その姿は凛々しく英雄にしか発せられぬ英気、そばに控える姉妹の将もその主の姿に見とれる。
「この曹操の覇道を妨げんとする者をね」
乱世の奸雄が今、彼らに牙を剥く。
6話目ありがとうございました。
オリキャラって原作キャラみたいに感情移入し難いですよね…。
オリキャラの何故波才の軍に来たかみたいな番外編を作ってみたので現実が一段落したら投稿してみます。
駄文ですがそれでも「構わん、やれ」と言ってくれる方、これからもよろしくお願いします。