第三十話 僕達には英雄がない。
偉大になるということは、誤解されるということだ。
~ラルフ・ウォルドー・エマーソン~
「公孫賛ってさん付けすると『公孫賛さん』ですよね?それ太陽みたいな感じ何でこれから公孫ダースベイダーに名前変えてくれませんか?」
「なんか息が苦しそうだし夏場暑苦しそうな名前だから遠慮させてもらう」
「じゃぁ公孫スカイウォーカーで。『選ばれしものだったのになぁ』と言ってみたい」
「なんでちょっとしんみりしているんだ?あとお前が私の事嫌いなのはよく解った。で、どうするんだ?もう何日も洛陽を攻めっぱなしだぞ?」
白蓮の言う通り、現在戦線は膠着状態にあった。
この洛陽に撤退した董卓軍だが既に閉じこもって何日も経過している。袁紹と袁術のダブル馬鹿、じゃなくて脳みそが欠落というか、そもそも詰まっていたのかすら危うい二人が中心に攻城してはいるが攻めきれない。
事実ここを落とされれば終わりなのだ。
流石に華雄も出撃などという愚行は二度と犯さず……犯していた。三度と犯さず……犯しすぎだと思う。
まぁともかく敵も必死なのは間違いない。
明埜との連絡も取れないが大方予想通りだろう。わざわざ洛陽に退いたとうことは策はなったという事に違いあるまい。
唯一、波才が気にしていたことは遷都する可能性であった。史実で董卓が行った焦土作戦。あれが実際に行われれば、おそらく演技通りの展開になったであろう。しかし董卓に限ってそれはないと、波才はある程度に目星をつけていた。
彼女、董卓は優しすぎるからだ。
ここの民を見捨てられない、もし見捨てられるなら宦官とあんな対立の仕方なんぞしないだろうに。
馬鹿だと笑うことは容易いが……いかんせん、波才には笑えないことだ。彼女の物語にはまったくもって興味のかけらもない。それでもその生き方には畏敬の念を抱いていたからだ。
だが正しい事ばかりではこの世の中を生き抜けない。
なんともはや、正しい事より正しくないことをなす方が生きられるなどこの世はなんと残酷なことか。きっとこの世界を作り上げた神は面白半分で作ったのだろうに。そう波才は苦笑する。
明埜は神の存在を否定するが波才は信じていた。こんなにも悪意がある世界いなのだ、あまりにも歪みすぎて作為的なものしか感じない。恐らくはその根源に私は神がいるのだろうと。
「(……にしても董卓がいいやつねぇ。私の想像では演技基準だからとんでもない豚か、『女帝』って言葉が似合うような董卓を想像していたのですが)」
どうも演技や史実の『董卓』の印象が強すぎたのか、いまいち『優しい董卓』が想像できない。
少なくとも戦う敵が自分にとって嫌な奴なら遠慮なく殺せたであろうに。
世の中正義の反対は悪じゃなくて正義、みたいなこともあるから複雑なのだ。勇者と魔王のように二極化されていたら解りやすくてやりやすいものを。
「とはいえ……この状況は果てしなくめんどいですねぇ。なんせ向こうは待ってるだけで勝手にこっちが崩れてくんですから」
「そうだよなぁ」
なんせ反董卓連合のチームワークは凄い。
「ジェットストリームアタックを仕掛ける!!」
「解った!!じゃぁ夕飯はそばにしよう!!」
「まて、ここは神に祈るんだ!!」
「そんなことよりカバディしよう!!」
「ちょっと待て!?何で四人いる!?」
というぐらいのチームワークだ。
ぶっちゃけ順調にいかねば本拠地まで追い詰めたとしても、容易に崩壊してしまう連合なのだ。
もうぐだぐだ過ぎて笑いすらおきない。波才からすれば旬が過ぎた一発芸人を見ている気分だ。実にやるせない、しかも本人達が無駄にがんばるので更にやるせない。
「それでどうする?」
「……そうですねぇ。あ、そうだ」
波才は名案とばかりに手をぽんと叩く。
「白蓮が洛陽の前で踊るのはどうでしょう?」
「……一応聞いておく。どんな効果が見込める?」
「洛陽のMPが吸い取れます。あと私が大笑い出来ます」
「お前やっぱり私の事嫌いだろ!?」
「ははは」と笑って明後日の方向を向く波才。
それを見た白蓮は大きなため息をついて頬杖をつく。
「まったく……お前他の軍でそんなこと言ってたら間違いなく首をはねられるぞ?」
「でしょうねぇ。流石に何で自分の首が今も胴体と離婚調停結んでいないのか不思議でなりません」
ますます疲れたように白蓮はため息を吐く。今この連合で間違いなく一番の苦労人は彼女であろう。なんせこんな性根が腐っている家臣を飼い慣らしているのだ。
「まぁ私は白蓮になら正直この首あげても良いと思っていますよ」
その言葉に驚いたように私に振り向く白蓮にに波才は心からの満円の笑みを浮かべた。すると彼女はばっと目を逸らす。心なしか顔が赤い。流石にからかいすぎたかと波才は苦笑いを浮かべ、椅子に体を預けた。
「さて、ここらで真面目にやりますかね」
「え?あ、ああ。そうだな、うん、そうしよう」
「さて、気を取り直して献策させていただきます」
~side 波才~
私は顔を引き締めて彼女を見つめる。まだ頬が微かに上気しているが……支障はないはずだ。現に彼女も何故かいつも以上に私を真剣に見ている。
……というか見つめすぎて怖い。なんだこの殺気は?
早く話しましょう。
「特に具体的な行動を取る必要はありません、また私達が策を連合に述べる必要性もありません」
「……は?」
この言葉は予想外だったのか惚けて彼女は口を開ける。
「正気か?このままだと間違いなく連合は瓦解するぞ?」
「これが私達だけの戦なら即座に動かなくてはなりません。ですが今は連合という形態を取っている。つまり下手をすれば普通は得られないような情報を彼らに掴まれてしまいます。現に私もいくつか掴んでいますからね」
劉備と孫策の同盟に関する事、袁術が皇帝を目指している事、曹操と劉備が史実とは違い漢王朝を利用する兆しがない事、軍の編成状態及び訓練状況、軍の主要人物と相互関係、戦い方による性格と戦法、現在の軍備の状態。
これらよりこれから先の大陸での進行状況を見極める素材として調理を開始するのだ。料理人によってどう調理するかは試行錯誤しているがおおよその先は見えてくる。
特に今は袁紹と曹操が重要だ。袁紹と曹操のおおよその軍全体の方向性と性格が把握できたがこれより先にどんな人材が入るかによって大きく変わってしまう。食材は新鮮なものを即座に手に入れて調理する必要がある。
「……何もしないと?」
「そうではありません、何かするでしょうからそれに乗っかって利用しようと私は考えています。今のところ劉備と曹操辺りが何かを思い付いつきはじめるでしょうから」
劉備は最初の汜水関での行動力から動かないなどと言うことは絶対にない。最初の戦い以降軍備もあまり消耗していないために何らかしらの行動を起こす可能性がある。
曹操もそれは同じだ。こんな状況が続くなど私達と同じく前線に位置するからには望むはずもない。
必ずや何らかしらの行動を起こす。
何より彼女はそろそろ大きな、劇的な勝利が欲しいはずだ。
最初の戦いでは関に一番乗りの素振りを見せるものの結局は孫策と劉備に持って行かれている。二回目の虎牢関も敵は撃破するが呂布に阻まれて落とすには至らなかった。
これに関しては劉備も同じ。聞けば私達が奮闘している隙に虎牢関を攻め落とそうとしたが呂布に阻まれて失敗。なんでも関羽と張飛が揃っても呂布を止められなかったらしい。
……どんな化け物だ呂布は。
だがこのおかげでずいぶんと展開が読めるようになったのは間違いない。
なんせ無理に攻めても落とせないのだと解ったのだから。現に今洛陽は落とせる気配が無い、仮に無理攻めしようともお抱えの看板達が束でかかって勝てないと劉備は理解したはずだ。それに彼女は確実に仲間を大切にするタイプの人間。仲間を失う危険が多い賭けにベットするはずがない。
そして曹操にもこのことは耳に入ったはずだ。無駄に間諜が多いのだから、知らないわけがない。
彼女は関羽に入れ込んでいる。この連合中にも押しかけて勧誘したらしい。
つまり実力は認めていて彼女が側に置くに相応しい武があると理解している。そんな関羽が張飛と立ち向かっても勝てない武人だ。
彼女も無理攻めなんぞはしない。
ここまで結局話していて何を言いたいのかと言えば、持久策を取ると言うことだ。間違いなく。
無理にかかっても勝てないなら敵を弱らせればいい。
穴に潜む虎へ自らの手を入れる必要は無い、火の煙でいぶりだして弓矢で針の山にしてやればいい。
そのためには軍全体で方針を固める必要がある。だから彼女達は必ず全体の軍議で指針を示すのだ。
ようはそれに乗っかろうという話
……え?孫策?
彼女は動けない。もし彼女が独立勢力ならば考えてもいいだろうが、生憎彼女の現状は猿の子飼い。
先の戦で戦果は上々、それほど問題もないはずだ。
これを話したものの白蓮は納得がいかないと顔を歪める。
どこか駄目なところあったんだろうか。
首を傾ける私に彼女は若干きつい言葉使いで言い放った。
「単経、お前が言うことも理解出来た。だが一つ聞きたい。お前は洛陽攻略の策を既に思い付いているんじゃないか?」
私はその言葉に間を置かずにこくりと頷く。
白蓮はますます顔を歪めた。
何故だろうか?そう思っていると。
「何故、私達が待たなくてはいけないんだ?」
……ああ、そういうことか。
「恐らくお前はその答えが既に出ているだろ?多分この洛陽を攻め始めたときには既にでてたんじゃないか?」
「お解りでしたか?」
「仮にもお前は私の配下だろう?いい加減お前という人間も解ってきたつもりだ」
「……それって採用したこと後悔していませんかね?」
「……流石にここまで性格と人間性が歪んでるとは思ってなかったよ」
むむむ、白蓮も言うようになりましたね。
一体誰の影響やら……昔の純情だった白蓮を返せ!!
「いや、多分お前のせいだ思うんだが……」
あーあー何も聞こえな~い。
「まぁいいよ。お前がそうやって話を逸らして私が気負うことがないように気にかけてくれてるのは解るからな。でも今回はそれは不要だ単経」
「……本当にかわいくないご主君になっちゃいましたね」
「ほっとけ」
本当……かわいくないですね。私達。
そう思って私と白蓮は互いに笑う。
本音を言うとここまで成長するとは思わなかった。成長しても普通と言うのは笑えるが。
「納得できませんか?」
「ああ、悪いが出来ない。策があるのにそれを使わないことで死んだ民がいるからな」
本当、貴方はまっすぐ。
まっすぐだけれど、前を向いて行きたいのだけれども自分はそんな生き方が出来ないのを彼女は知っている。
だから今彼女は泣きそうな顔をしているのだ。
どうしようもく悔しくて、悲しくて。でもそれでいいんですよ、そうじゃなかったら私は貴方に仕えてなどいないのですから。
「でも、仕方がないんだな」
「ええ。理由を言いましょうか?貴方にはきついかもしれませんが」
「頼む、せめて死んでいった者達への言い訳をしたい」
自分を偽らずそういえるのにどれだけの勇気がいるのか……私には無理ですよ。白蓮、貴方は誇って良いです。この私が貴方を英雄と認めます。
だからこそここで言わないのは彼女への侮辱になる。彼女の物語に『偽り』など必要が無いのは目を見れば解る。
私は息を吸い込み、口を開いた。
「曹操や劉備、孫策の軍が言うことと私達が発言するでは重さが違います」
「重さ……か」
「既に彼女達は抜きん出ておりその策を示すのはむしろ当然のこと。なんせ今や誰もが彼女達の力を知り認めている。そんな人間がこの均衡を破る策を示せば驚けど「ああ、やはりこいつらは凄い」と納得はつきます」
でも、と私は彼女を見る。
「私達は、どうですかね」
私達は彼らに比べて一番の弱者だ。この連合で最弱を名乗っても過言ではないのだ。
だがそれは一般大衆が噂すればいいこと。内心彼女達はいい加減私達に気がつき始めている。
当初、曹操の間諜が思いの他優秀であったのだ。そのため公孫賛軍の深部に辿り着く者達が多だいた。ある程度であれば不審に思われるためにえさをばらまき、帰らせるつもりであった。しかし深部に辿り着いた彼らを帰すわけにはいかない。
結果として初期の段階で多くの曹操の優秀な間諜を処分せざるを得なかったのだ。
その後なんとか無事に隠す事に成功し、少人数しかたどり着けなくなった。ある程度のおやつ程度の情報を掴ませ、曹操の下へと帰らせられるように調整をしたのだ。
だが最初の処分した間諜の数はいくら何でもごまかしきれない。
……これら一連の行動を、曹操にばれている可能性もなくはない。
私達は自らの反意を義憤を生かすために鋭き牙を自ら折り、去勢した犬だ。
ただ奥に残した一つの牙で全てを制するために堪え忍んできた。
だがそれもここで露見したら台無しになってしまう。今まで隠していた分の反動が大きく、多くの目が私達を観察し見破ろうとする。
「ここで何かしら行動を起こせば私達を見る目が変わる。もしかしたら優秀な人材も来るかもしれないだろう」
「そうかもしれませんね。でもね、厳しいことをいいますが貴方には集まりませんよ」
その言葉に彼女の体は一度大きく震えた。
「いえ、言い方が悪かったですかね集まりはする。でも定着はしない」
「何故だ?」
私は今さぞや酷い顔をしているだろう。
何故なら私は嗤っているのですから。嗜虐的な嗤いを浮かべて彼女に言葉を投げかけている。
自分でも何故嗤っているのかは解らない。
でも同時に泣いている自分もいるような気がした。何故だろう。何故、私はいつからこんなにも壊れてしまったのか。
「定着するための大樹である貴方自身に魅力がないからだ」
「……」
「この時代の英雄には夢がある。この世界の英雄には夢がある。誰もが純粋にそれを追い求めて正道を歩んでいく。彼らは軍を見ず人を見る。彼女達は自らが仕えるに値するか、その命を賭すに値するか、自らの野望を望めるかを」
椅子に深くおろしていた腰を上げて前のめりになりつつ白蓮の目を見つめる。彼女もまた私の目を見ている。
「白蓮、貴方は魅力がありますか?力がありますか?飢えた英雄達に自らの血肉を与えて肥やせる英雄の英雄足るものを持っていますか?曹操、劉備、孫策に勝てますか?」
「……ないな。それがないから星は私の下から去っていった」
揺れぬはずがない言葉の槍衾に、囲まれた彼女は目を逸らさない。
彼女は普通であるが故にこの言葉に耐えられない。内に隠した傷はどれほどのものか……。
私ですら自らが特別では無いと知ったときに死にたくなった。誰もが特別を望む、誰もが英雄になりたがる。
だが人はいずれ気が付くのだ。なれないと。
人としての自分としての限界に気が付いてしまう。
なれぬと知ったとき、人は諦めて魅力を失う。物語を失う。
「確かに我々の下に人は集うはず、ですが我々が求むは英雄です。ただの兵などいくら集まれど呂布が黄巾兵を蹂躙したように変わりませんよ?……まぁ英雄がいなくても勝てる方法はありますけどね」
「……大方、私が認められないものだろ?」
「ですね、毒矢などの暗殺。内部攪乱や風評による民の先導。とことん毒を喰らうとこまで喰らう作戦ですね。正道が大好きな方々には効果的ですよ?まぁ私も白蓮も納得できないでしょうからしないですけど」
そんなもの見たくもない。例えるなら三国無双で出陣する前に毒を飲ませられたり、内乱で出陣出来ないなどの新コマンド搭載とかそんな感じ。
なんかすっきりしないですよね。
「私達は彼らと同じように真似事をしたり普通にやったのではまず勝てないんですよ。人も義も天も志も手に入れている彼女達に対して、私達はやっとそれらを手に入れようとしている最中なのですから」
このままでは曹操や劉備や孫策とかいっている前にまず袁紹に負けてしまう。
豊かで漢の伝統を紡いできた向こうの土地に対して、今まで異民族に奮闘してきた田舎だ。
精々どんなにがんばっても東京VS仙台ぐらいの差がある。
幸い向こうは馬鹿が王座についているからいいものの……。
「今はただ潜み、耐え、雄飛の時を夢見るのですよ」
あ~疲れました。我ながらよく噛みませんでしたよ。
そう思って用意されている水を口に含んだ。咽が小さく上下する。
……まぁいろいろ言ったけどあれですね。
「決めるのは白蓮です。もしかしたら私は間違っているかもしれない。この世界で私のようにただ堪え忍ぶだけでは報われないかもしれない。貴方の考えている方が正しいかもしれない」
椅子に寄りかかって背もたれに身を預ける。乾燥した木が軋む嫌な音が無音の空間に響き渡る。
「御主君、貴方が決めてください。先人たる王は多くの意見を聞き判断して滅び、名を残してきたのです」
事実この三国志でも呉で二張と呼ばれ、孫策に孫権を任された能力が高い人物である重臣張昭は赤壁の戦いで降伏を進言している。対して周瑜の抗戦意見を孫権は採用し呉を存続させた。
二人とも優秀な人物だ。君主にはその判断力が問われる。ぶっちゃければどんなに能力がなかろうと判断力さえあれば配下の将の意見を採用して国を豊かにすることが可能なのだ。
別に私は自分を優秀だとは思ってはいない。あんな化け物軍師共に並ぼうなどというおこがましい雑念はとうの昔に切り捨てた。
だがそれでもここで目立つのは不味い。一応考えているつたない策が台無しになる。
「お前の言うことは解った。でもわざと侮られてどうするつもりだ?」
「……一応、『二虎競食の計』を考えています」
どうやら白蓮は理解したらしい。
あれ、なんか能力上がってない?
「……やはり乱世は終わらないんだな」
「終わってくれたら私も帰れるんですけどねぇ」
お互いに深いため息をつく。
これが終わったら私達公孫賛軍の相手は袁紹以外にあり得ない。恐らくそう遠くない未来に彼女は攻め込んでくるはずだ。
あの国力相手に真面目に立ち回るなど馬鹿げている。今は相手にとって都合がいい存在であり、従順な姿を見せればいい。
こちらは従属するような態度を見せて袁紹軍を支援、媚びるように手紙や貢ぎ物を送り目を曹操に向けさせる。そのまま争わせ、互いの国力を減退。もしくは隙を見せた袁紹の背後を攻める。
曹操は理解でき、見破るだろうが袁紹は見破れない。
仮に袁紹背後より攻めた場合、官渡から襲撃地点まで退くことは袁紹軍にとって難しく曹操軍の追撃にあうだろう。逆に曹操軍も袁紹との戦いにより得た領土は少なく、投資した資産の方が大きい。つまり国力が著しく落ちる。
これぞ『二虎競食の計』。
だが、これには将の獲得が必須だ。
これは迅速に行わなければ曹操からの停戦要求が袁紹と行われる可能性がある。袁紹はこれを結ばないわけにはいかず、曹操はこれ以上兵を減らしたくないはず。私達はそうした場合手に入れたばかりの領土と共に戦うことになる。確実に勝てるかもしれないが疲弊する。
そうなれば勝ったとしても私達の戦を観戦しながら国力を回復させた曹操軍に攻められ、たやすく打ち破られるだろう。その為に一回の戦闘で袁紹が持つ都市の大半を制覇、及び大多数の戦力を削る必要があります。
ですがこれには公孫賛軍人材が足りなさすぎる。それにこれが成功しても曹操と戦う事は必須ですからねぇ。
どう考えても優秀な将がいるのだ。ウチの美須々と琉生だけでは不安がぬぐえない。
「解った、お前の案を採用する。にしても」
そう言うと彼女もまた椅子にもたれかかる。いつの間にか彼女は笑っていた。
「そうかぁ……悔しいなぁ。情けないなぁ」
この言葉に思わず胸が締め付けれられる。僅か二つの『悔しい』、『情けない』に彼女はどれだけの思いを込めたのだろう。
白蓮とて努力をしなかったわけではない。それこそ太守になるぐらいに死にものぐるいで努力をしたはずだ。なのに気が付けば自分より劣っていたはずの劉備に抜かれており、勝てないと宣言されている。
努力をし続け、血を吐いてまで手を伸ばしたのに彼女は負けているのだ。決して日々の修練を怠ったのでは無かろうに。
「……貴方は貴方らしく生きて頂ければいいのですよ」
私もまた同じか……いや、諦めたから彼女の勝ちか。
敗者から遅れる言葉などたかがしれているが……それでも言わせて欲しい。
「貴方は公孫賛なんですから。他の誰でもないんですから貴方だけの物語を紡いでください」
彼女は私を見ずに、ただ一言返した。
「ああ、そうだな」
■ ■ ■ ■ ■
それから数日後、連合に参加している全諸侯を集めた軍議が開かれる。
そこで開口一番に曹操が提案した策に周りは沸いていた。
「……攻め続ける?どういう事だ?」
私好みのポニーテールをした馬超が首を捻らせる。
「うわ……えげつないですねぇ……」
「張勲、どういう事なのじゃ!妾にも解るよう、説明してたも!」
張勲が口を引きつらせて恐る恐るといったようにそう漏らした。
だがその主君である袁術は理解が出来なかったのか彼女の服をつまんでひっぱり彼女に問いかける。
盟主である袁紹は「間断なくとっくにせめておりますわ!!」とか言って皆さんから微妙な目で見られていますね。
一回辞書で間断の意味を引いてきたらいいかと。
曹操は鼻で笑って得意げに説明し出す。
「簡単な事よ。今の散発的な城攻めの方法を変えて……そうね、一日を六等分にでもしましょうか」
その言葉に興味を引かれたのかいやにちみっこい蜀陣営の女の子が身を乗り出す。
「そうして、一つの隊が六分の一ずつ攻め続けるという事ですか?」
「そうよ」
「一日の六分の一しか攻めないようでは、いつまで経っても城なんか陥ちませんわ!」
「麗羽の言う通りなのじゃ!残りを昼寝されたらたまらんぞ!」
……。
え?
思わず今のは聞き間違いかと思い周りの皆さんの様子を見る。
「……………」←あからさまに馬鹿を見る目をしている曹操
「……………」←いつか絶対独立してやると最決心を固めたような目をしている孫策。
「……………」←開いた口がふさがらないといわんばかりのちみっこい軍師
「……………」←なんかもう駄目なやつを見るような目な馬超
その後、無事張勲の教えにより馬鹿二人は理解したようです。そんな一日に一体ずつ攻めるわけないでしょうに。
みんなが感心する中、うちの君主様はどうも良くない顔をしてらっしゃる。
「……公孫賛、私の策に何か不備があったかしら?」
「いや、驚いて声も出なかったと言うだけだよ」
「……そういうことにしておきましょうか」
……ああ、この空気は嫌だ。なんていうか女の子同士の腹の探り合いは肌寒くなるものある。
その軍議の帰り道。
「……単経」
振り返った彼女は硬い表情だった。
「この戦い、勝つぞ」
言いたいことはたくさんあるだろうに。しかし、結局の所はこれだ。勝つのだ、勝つしかない。勝たなければ意味がない。
ならば勝てばいいのだ。幸いにも目の前の連中は正道しか歩めない連中。しからば、こちらは下の下の策を取ればいい。剣の達人にマシンガンをぶっ放す、まぁこれくらいでなければ。
「ええ、我らの勝利を掴みましょうぞ」
波才は嗤い、白蓮は笑った。
先日、母と何の因果かゲーセンに行きました。
そんで母親がしていたのが某豆腐屋のカーゲーム。そこでの母の言葉。
「っちょ!?母さんブレーキブレーキ」
「ブレーキなんてない!!」
それで良いのか元教職員。
どうもこんばんわ、いろいろと不安な味の素です。風邪ひいて更新ちょっと遅れました。みなさんも風邪にはお気をつけください。
……そう言えば、うちのお母さん高校に私を送ってもらった帰りに事故ってた事ありました。しかもうちの学校の先生と。
クラスの友達に「お前の母さん事故ってるぞ」って朝一番に言われた時にはマジ冗談だと思った。