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黄巾無双  作者: 味の素
反董卓連合の章
40/62

第二十八話 彼女のドリルは人の心を抉るドリルだ。

女と猫は呼ばないときにやってくる。


~ボードレール~



どうも、右手が疼く波才です。


っく、お、俺の右手が。






……いや、大丈夫ですよ。別に中○病なんてなってないですからね?次回からエターナルフォースブリザード相手は死ぬとかやりませんから安心してください。

どっかの薬味みたいに魔法世界編突入!!とかないんで。


……。


ちょっと面白そうだなぁとか思った私は多分過労で疲れてますね。

普通に昨日の痛みが引かないだけです。


やっぱり歴史に名を残す武人となんてやり合ったら死にますね。次からは逃げます。ええ、逃げますとも!!


私の命令は常に命を大事に!!

いざという時は配下二人に任せて私は逃げます!!



「主……何か、その、私の立ち位置的には間違ってないけれど、それでも酷いこと考えてません?」


「え?何その具体的な質問。なにそれ怖い」


「やっぱり考えてらしたんですか……」


「……」



非難的な目を向けてくる美須々と琉生。

そんな目で見られても、特殊な性癖を持たない私は嬉しくないです。

仕方がないので、私は両腕を広げ、まるで宣教師のように悟りきり、陶酔する表情で二人に笑いかける。



「大丈夫ですよ……二人に何かあったとしても貴方達は私の心の中で生き続けるのです」


「それ死んでますよね?絶対死んでますよね?……いえ、主のために死ぬのは構わないのですが……何んでしょう?この胸のもやもや感」


「……」



美須々はどこか納得しない表情を浮かべながら、自らの胸をさする。

一方、琉生はどこか諦めた顔で私を見ている。なんですか、その休日に早朝から長蛇の列でパチンコに並んでるおじさん方を見る目は。


美須々はしばらく己の心情を見つめ直していたが、考える事に疲れたのであろう。

悩ましげに息を吐き出した。だから失礼だっつうに。



「まぁいいです。それよりも問題は……」



そう言って彼女はまるで何かが存在するかのように虚空を睨み付ける。その顔は嫌悪で彩られており、まるで親の敵を睨み付けているように思えた。


彼女は決してただ何も無いところを睨み付けていたのではない。その先にあるもの、それは。



「劉備め……恩を仇で返すのが彼らの流儀なのですか。結構なことです」



そう、彼女が見ている方向に構えているのは劉備の陣。

先の戦いの功労者であり、この連合でも既に有名になっている時の人だ。ただしこの時の人は千数百年語られるわけだが。


琉生も美須々と同じように見るが、あからさまな変化はない。物静かな彼女がそもそも美須々のようになったら、それは天才の前触れだろうに。

目が細丸程度だったということは、琉生も美須々と内心同じ事考えていると言うことか。



「以前にも主の悲願を妨害した。だが、それは敵であったからだと自らに言い聞かせて我慢できます。ですが今回は……」



あ、美須々の背後に噴火寸前の大山が見えるわ。おかしいなぁ~今布陣している場所って盆地なのに。

顔も見る赤くなり、般若のように顔が歪む。

その口から汚い罵倒が出る前に、私は彼女を制止する。



「まぁまぁ……美須々、これは私の不手際ですよ。手の内を隠しすぎた結果がこれなんですから」


「主はそれで良いのかもしれませんが手助けしてやったのにも関わらず主に怪我を……すみません。出過ぎた事を」



私の雰囲気を察して自ら一歩退いた美須々、空気の読める子は好きですよ。


まぁ、言っちゃなんですが今回は自業自得です。

自ら背後に二人を追いやって勝手に負傷とか……ないわ~。

いや、劉備が敵軍を受け流して本隊を巻き込むとよんだところまでは良かった。実際そうなった。


……なんで。


なんであんの髪の毛脱色猪女はこっちに突撃して来たんすか!?それも自分の部下ほっぽいて!!


まじありえねぇ、

あれか、目の前に敵がいたからか?敵がいたら突撃するんですか?

普通あそこは本陣行くでしょうが!!何!?本能で戦ってんの!?


否定しようとするが……ふと、私は否定要素が見つからないことに気が付いた。

何だか無性に悲しくなったので考えるのを止めた。



「まぁこの件はここまでにしましょう。むしろ次からが本番です」



私の空気が切り替わった事を理解し、彼女達は無意識のうちに背を正す。


既に明埜は洛陽に向かわせた。時期に策はなるだろう。

先の戦いでは軍師がいなかったが、この戦いでは陳宮がいるなぁ……。

さらには呂布などの新たな猛将に次第によっては董卓の片腕の賈詡が来るかもしれない。


……陳宮はまだいいとして問題は賈詡。あのチートがこの世界でも健在ならばもの凄くめんどい。


まぁ、めんどいというのはあくまで正面から戦った場合。搦め手で体内の毒を暴れさせればいいでしょう。

聞けば董卓に賈詡はたいそう入れ込んでいるみたいですからね。

その危機と聞けば飛んで行くぐらいだとか。


ははは、おお~なんと美しい友情なのでしょう?


……いや愛か?この世界では割と百合百合しい所多いですからね。

曹操とか曹操とか曹操とか。だからこそ私は曹操に捕まるわけにはいかない!!天和様達が毒牙にかかったら思うとそれだけで鼻血が……じゃなくてそれだけで手が怒りに震えます。



「主?鼻血が出ているのですが?」


「え?あ、ああこれはちょっと熱くてですね」


「ええと、風が吹いているので寒いと思うのですけど」


「「………」」



目の前にはいかがわしげに見ている琉生と美須々の姿が。

こ、この空気何だかすんごい嫌なんですけど。なんか小学生がいたずらして一人の女の子泣かしたら、その友達や全く関係ない女子に囲まれて謝れコールされるぐらい気まずいんですけど。


額から汗が流れる。

誰かこの状況何とかしてくれないですか?

そう思い内心大慌てしていると……。


……あ、誰か来ますね。助かった!!誰だか分かりませんが最高ですよ!!もう愛してます!!


誰かがこちらに向かってくる気配を感じほっと一息。

やった、これでこの状況は打開できる。話をそらせる!!


人としてやってはいけない責任逃れ1位を躊躇いもなく実行しようとしていた波才だったが……次第に向かってくる気配の正体が掴めてくると仮面に隠された顔を青くした。



「久しぶりね、今は単経って名乗ってるのかしら」



背後から聞こえる凜とした声。

正面の美須々、琉生の二人が仮面を被っていても分かるほどの怒気を放つ。

波才は内心大きなため息をつきながら振り返った。



「あいや~お久しぶりですね、曹操さん。人の陣のど真ん中にアポ無し突撃とか引きますよ?」



そこにいたのは『乱世の奸雄』こと百合の代名詞、頭の良い方のドリル、チビの三拍子。

今最も会いたくない人物ことNo,1の曹操さんの姿がありました。


何しに来たんだこいつ。というかなんでうちの君主よりも早く来てるの?


私の言葉の真意を理解してか、まるで薔薇のような笑みを浮かべる。ようするに刺々しいのだ。この笑顔を向けられては、並みの人間は震え上がってしまうだろう。


……つまり僕は震え上がってました。悪かったな、ヘタレで。



「私は強引に押すことが好きなの。……夜の方もね」


「うわっ艶やかで色っぽいはずなのに、全然魅力を感じねぇ。なんか寒気するんですけど。というわけで私が対応するのはきついので白蓮と乳繰りあっててください」


「悪いけれど……私の愛でる対象に彼女は入らないわ。貴方だったら考えてもいいけど」


「ぬかしよるwww」



笑い飛ばそうとするも口元が引き攣っているので上手く笑えない。

おい、白蓮早く戻ってこい。私の胃が穴どころか融解するぞ。



「公孫賛なら劉備と談笑してたわよ?」



うわ~凄い言い笑みでノゾミガタタレター。

こいつサドだ。ぜってーサドだ。なんでこんな良い笑みで笑いかけてきてんの?サドなの?百合なの?


つうかなんで心読んでるの?



「というか、何で私の正体分かったので?」


「声聞けば分かるでしょ」


「ごもっとも過ぎて反論出来ませんね~。……っで?何用ですか?」


「用件は一つだけよ。貴方達三人……人数が一人足りないわね。四人共に私の軍に入りなさい」



その言葉に後ろの部下二名から怒気が膨れあがる。

美須々にいたっては得物に手をかけていた。おそらくは私が一声かければ、曹操目掛けて飛びかかるだろう。

対して曹操の脇に控える二人、外見の情報から分析しておそらくは夏侯姉妹。二人も同様に驚きを隠せていない。……というか赤と青のペアルックってあんた。な、仲がよろしいことで。


……あ、良いこと思い付いた。


私はとびっきりの笑顔で夏侯惇へと顔を動かす。



「と、曹操さんが申していますが夏侯惇さんはどう思います?」


「認めない!!」



即答かよ。



「というわけで私も認めません!!いやぁ~夏侯惇さん気が合いますね。ちょっと飲んでいきません?良い酒のつまみが入ったんですよ」


「おお!!それは楽しみ「姉者……」っむ!?貴様ぁ!!私を騙したな!!」



おい、夏侯惇。曹操の頬が引き攣ってるぞ。



「春蘭、下がりなさい」


「いやしかし!?「下がりなさいと言っているの……」……っは」



不承不承に夏侯惇は下がり私を睨み付ける。いやさ、私も貴方があそこまでノリ良いとか思ってもみませんでしたよ。


……半ば予想外だよ。だから私のせいじゃない!!



「で?答えは?」


「と曹操さんは申していますが夏侯淵さんは」


「貴方の答えは?」


「曹操さん、答えを急ぐことが貴方の美徳ですか?」


「あら、くだらない引き延ばしに付き合うのが貴方の生き方かしら?」


「はい」


「……」



頬が引き攣っている。曹操の引きつり顔はレアかもしれない。


くだらない事に付き合うことほど楽しい事はない、と考えている私はおかしいのだろうか?

あながち間違いでもない気がするものだが……。人それぞれか。


ま、コレに対する答えなどとうの昔に決まっているのだ。別にわざわざ応えるほどおっくうなものは無いと私は思いますね。



「まぁコレ以上はぐだぐだになるんでここまでにしときますかね。答えは『いいえ』」


「何故かしら?」


「白蓮ほど貴方に魅力を感じないから」


「……てっきり嫌いだからとか想像してたんだけれど」


「嫌いですよ?私は貴方が苦手で嫌い。ですがそれは認めないという意味ではないでしょうに。私は貴方を認めている。その力、魅力、容姿、全て私は貴方を高評価している。その上で私は貴方が白蓮ほど魅力が無いと感じたんですよ」


「貴様ぁ……華琳様になんて暴言を!!」


「下がりなさい春蘭。それで、私は公孫賛のどこに魅力が劣っているのかしら」



冷静なように振る舞ってはいるが、中は相当荒れ狂っているようだ。

あの夏侯惇が一声で下がるほどの怒気を秘めていると……。


私はちらりと夏侯惇を一瞥すると広いデコに汗が浮かんでいる。凄いな、身近な配下にしか分からないほどの怒気しか漏らさぬか。


っち、化け物だな、私は人間だぞ。化け物には化け物を、龍には龍を向かわせてもらいたいもんだ。



「……夏侯惇さんに聞けば分かると思いますよ?」


「貴方……巫山戯るのもいいかげんに!!」


「落ち着けよ、乱世の奸雄。夏侯惇さん、貴方は何故曹操に仕えているのですか?」



最初先ほどの失態もあって口を出すことに躊躇いを感じていたようだが、曹操が目で促すとこちらを睨み付けて言い放つ。



「華琳様だからだ」


「姉者……もう少しだな、くわしく」


「はい、私も同じ。分かりましたか?曹操さん」



まさかと夏侯淵さんは目を見開き驚く。夏侯惇さんは何故か嬉しそうだ。

さて……とうの曹操さんは……って。


なんか笑いを堪えてるんですけど。



「そうね……そういうこと。分かったわ」



そう言って私達に背を向けて去っていく。振り返り際に見えたその顔は、先ほどとは打って変わって歓喜に満ちあふれていた。

慌てて二人の姉妹はそんな彼女に追随する。曹操は数歩歩いて振り返った。

まるでからかい相手を見付けた、心なしかそんな風に思えてしまった。



「貴方、蛇かと思ったら子供だったのね」


「へ?」



思わず呆けてしまった。

一体どんな言葉を浴びせられるかと身構えてみれば……『子供』?からかっているのか?

そう思い彼女を見つめるが、その目の奥に鈍く輝くそれは真剣みを帯びていた。

幾多もの人材を見抜き、登用した曹操。その曹操が私に対して下した評価は……『子供』?


思わず私は尋ねた。何だそれは。



「子供……子供って年じゃないんですけどね」


「ええ、貴方は大きい子供ね。無邪気で、無垢で、純粋で、疑うことを知らない子供みたい」


「……」


「あら?自分では分かってないのかしら。まぁその顔が見られたから、今日はよしとしましょう。それじゃ、また会いましょうね」



そう言って再び踵を返すと、彼女は二度と振り向くことなく、二人のは以下を連れて悠然とその場を立ち去っていった。残されたのは呆然と佇む『子供』が一人とその配下が二人。


彼女が去った後、一人顎に手を添えて考え込んだ。

彼女は何をもってして私を子供などと評価したのか。まぁ、今日はよしとしましょう?つまりまだ諦めてはいない、私にはその価値があるとのたまわっている。なれば何故子供などと評価した人間を欲する。

ああ、意味が分からない。


考え込む私に冷ややかな目で、未だに曹操が去った方向を睨む美須々が冷たく言い放つ。



「……主、曹操如きの戯れ言に付き合う必要などありません」



戯れ言……ね。どっかの戯れ言使いならばこの意味を分かるのでしょうか。

分かったところで今更自分を変えようとは思えませんが……あんな言い方されたら嫌でも気になるでしょうに。やっぱり曹操はサドだ。


……いや待て。



「琉生、貴方はどうです?今の曹操の言葉、当たってますか」



私の問いに対して、琉生は無表情なまましばらく私を見ていたが、ついに一回頷いた。

美須々はそんな琉生に何か言いたげであったが、口を出したところでどうにもならないことぐらい分かるのであろう。結局彼女はただ見守ることを選んだ。

……まぁそれが美須々という人間の利点だと私は思うよ。


でもまさか琉生も頷くか。何とも言い難いね、この感情は。自分の知らないところを他人に気が付かれるなんざ気持ち悪いったらありゃしませんよ。


……ま、いっか。美須々の言う通り今は曹操の言葉に付き合っているほど余裕もない。

全てが無事に終わった後に、月でも見ながら酒を飲んで思い出せばいい。



「で?いつまで隠れてるんですか~白蓮?」


「え?あれで隠れてるんですか?なんで来ないのだろうと思いましたが」


「……」



三人が同じ方向を眼を細めて透視する。

しばらくして観念したのか。白蓮が気まずそうにテント同士の合間から顔を出して出てきた。



「あ、あははは。……ばれてたの?」


「多分曹操も気が付いてたんじゃないですか?」


「ま、まじか……」



白蓮もう少し気の隠し方学んだ方が良いですよ?

というかちらちらと見えてましたよあんた。



「あ、あのな。それで曹操の誘いなんだが」


「お断りですよ。私は白蓮を見たいのですから」


「っな!?」



突如顔が真っ赤に染まって驚く白蓮に私は疑わしげな視線を送る。

曹操なんかよりも重要な事はいくらでもあるのだ。さっさと終わらせたい。



「で、軍議はどうでした?袁紹と曹操が喧嘩してて胃が痛かったでしょう?」



何故、袁紹と曹操が喧嘩……とは言っても言い合いになっているのかというと先ほどの戦い、つまり汜水関の戦いが原因だろう。汜水関の戦いで華雄が飛び出してきたのだが、劉備と孫策はそれを受け流し本陣を巻き込む戦いをした。ならば本陣陣営の袁紹と曹操が言い争うことはないだろうと思うかもしれないが……。


曹操が華雄の軍をかわして袁紹軍に突撃させた。


更に曹操は撤退する華雄を追う(まぁこれは名目でしょうけど)ことで汜水関の一番乗りをしようと企んだ。まぁ一番乗りは劉備か孫策でしたけどね。

この戦での戦功はほとんど華雄軍を撃退した彼らのものでしょう。


まぁ戦功なんて興味ないですけどね。

白蓮は欲しそうですけど知らん。


というわけで曹操と華雄の軍の巧みな連携(?)で大損害を受けた袁紹軍。

その後の曹操の行動により更に頭に来たようです。


こうして第一次金色クルクルドリル大戦が勃発。


さぞや胃が痛くなる光景だったのでしょう。さっき曹操さんの機嫌が悪かったのもこれが原因でしょうねぇ。

白蓮は赤かった顔が今や疲れきって心なしか青くなっている。信号機かあんたは。



「……それが解っているのならお前が行って止めろよなぁ」


「いやですよめんどくさい」



犬も食わない喧嘩どころではありませんよ。

そんな犬畜生も喰わないものをなんで人間たる私が食さなければならないのですか。知ってます?ドッグフードって泥の味しかしませんよ。子供の時につまみ食いしてトラウマになりましたから。



「はぁ。取り合えずお前の予想通り、曹操と袁紹と同じく前線で戦う事になったが大丈夫か?」



諦めたのか白蓮は大きなため息をつきます。最近白蓮も疲れていますね。誰のせいなのでしょう?

まぁ白蓮の心配は解りますがそこまで大変なものではないです。



「大丈夫でしょうね。大方手柄を立て損ねておまけに大損害うけた袁紹がお怒りですから自ら率先して攻めるでしょう。曹操にも私スゲェみたいな所を見せたいと思うでしょうから、そこら辺は問題ないです」



あの人は見栄で動くからなぁ。よく配下の二人ついていってます。

でもついていっているということはやはり彼女達には魅力がある人間なのでしょう。


袁紹の魅力……ねぇ。



ξξ*゜⊿゜)ξξ

おーっほっほっほっ!



「いや、無いわ」


「主?」


「単経?」


「あ~何でもないですよ」



なぁ教えて欲しい。

ξξ*゜⊿゜)ξξ←の魅力とはなんぞや?少なくともボディはうらやまけしからんで金髪ロールのお嬢様キャラだが、それで馬鹿はないと思うんだ。


いや、馬鹿だからいいのか?古今東西馬鹿キャラは愛されるという法則がある。あれかな?愛嬌があるとか?


思わず腕を組んで思考の海に沈む。


……まぁ私みたいな変人についてくる人もいるので、袁紹についてくる人がいても不思議ではないのでしょうね。う~ん、白蓮さんも面白いですけど今考えれば袁紹も面白かったのかもしれない。馬鹿が紡ぐどたばたコメデディーの物語は面白いと相場が決まっている。


顔良ポジションではなくて文醜&袁紹ポジションで馬鹿やるのも楽しかったのかも知れない。

あ、なんかそう考えると楽しそうな気がしてきた。

袁紹……ありかな?



「なぁ、単経。お前さっきからくるくる表情変えてるけどどうしたんだ」


「袁紹に仕えるのもありだったかなぁ~って」



と私が言った瞬間何かが軋むような音がした。氷にジュース入れたら鳴る音とそれはよく似ていた気がする。

あれ?と思い顔を上げるとそこには顎が地面につかんばかりに大口を開けた白蓮と仮面が斜めにずれてちょっと顔が見えてる美須々の姿が。

琉生は……おい、なんでですかそのチョップの構えは。なんか壊れたテレビを無理矢理直そうとするお母さん臭がしますよ?



「単経が……単経が壊れた」



ちょっと白蓮、何人を勝手に壊れもんにしているのですか。



「働きすぎたのでしょう……主、私は何があっても一緒にいますからね」



いや、その言葉は嬉しいんですけどなんでそんな温かい笑みを浮かべているんですか?



「………」



琉生~大丈夫ですよ~そんなもう手遅れだ見たいな目で見ないでくださ~い。

もう、私なんか変なこと言いましたか?















~洛陽 side~



「それで……これはどういう事かな?」



執務室にて男は荒い声を上げる。

宮中の装いをしている男。彼は男としての機能を失っていた。代償にして大きな権力を手に入れたからこそ彼に後悔は一切無い。

彼は宦官であった。


部屋は豪華な調度品に溢れ、彼がどれほどの富を有しているのかは一目見て分かる。

だがその強大な権力と富を持つ宦官の顔は酷く険しい。苦々しく渡された書簡を睨み付けていたのだった。



「どうやら先の汜水関は突破されたようです。ですが次の関に閉じこもる董卓軍に苦戦。撤退する恐れも大きいかと」



部屋に跪く間諜役の顔に包帯を巻き付けた人物の言葉を聞き、宦官は書簡を握りつぶした。

その顔は醜く歪み、真っ赤に染められている。怒りに震える男は激昂し、荒々しく声を上げた。



「董卓の愚か者が!!これではますます帝の信用は奴のものではないか!?涼州の田舎者に土足で荒らされるなど許してなるものか!!」



書簡を叩きつけ、何度も何度も踏みつぶす。既に肉屋のあの女のせいで何人かの重要な宦官が死んでいた。その上この連合を董卓のが撃退すればその名声が大陸に響き渡り、帝はますます董卓を気に入る。さらに後始末として董卓一派は宦官の命を狙うだろう。



「このままでは董卓によって我らは殺される!!っくそ!!っくそ!!」



冷静にそれを見続けていた包帯を巻いた間諜。

だが彼は小さく笑みを浮かべると宦官へ向けてぽつりと声を漏らす。



「いえ、今が好機かと」



その言葉にっばと振り返った宦官は怒り心頭といった様子で男へ向けて怒鳴る。



「何が好機だ!!ここで董卓の配下共が貴様の言うとおりに「今董卓を殺してしまえば宜しいでしょう」……何?」



睨み付ける宦官の視線を受け止めた男は静かに声を紡ぐ。



「董卓のお抱えの武人は誰一人この洛陽にいません。ついで賈詡も虎牢関に出張っております。この洛陽に戻る前に董卓殺害の策を張り巡らすべきかと。さすれば賈詡めは己自身の力では何も出来ないと理解し、助けを求めるべく虎牢関の将軍達を呼び戻すはずです。そうなれば虎牢館は落ち、残るは洛陽のみ。例え董卓殺害の策が失敗しようとも外ので構える連合軍の面々が董卓を殺すでしょう」



宦官は流れ出る男の言葉を静かに聞いていたが、男の話を聞くにつれて赤く怒りに染まっていた顔が喜びへと変わり、話し終える頃には満円の笑みに変わっていた。

先ほどとは打って変わって宦官は喜びの声を上げる。



「っくく、はははははははははは!!なるほどな。確かにお前の言うとおり好機であることに違いはない!!」



しばらく笑っていた宦官は男へ向けてさぞ愉快だとばかりに言う。



「お前の考えを採用してやろう。どうだ?これが済んだらお前に褒美をやるぞ?」


「それは……光栄でございます。ですが今は目の前のことを着実に実行するべきかと。では私は再び調査へと向かいます」


「うむ、ご苦労であった……くく、そうだ。今が好機だ早速他の者達と」



独り言を呟く宦官の男を彼は一瞥することもなく音を出さずにその部屋から出る。

外は雨が降っていた。美しい彫刻が彫られた宮中を濡らしている。どこからかカエルの唄い声が耳に入る。

だれ見も見つからずに宮中を出ると、洛陽の町に町民の服を纏い紛れ込む。雨のせいか洛陽の大通りからにそれ程人の姿はない。男は洛陽の町を走った。


やがて一つの家の前で止まる。特徴があるわけでもなく看板が掛かっているわけでもなく。ただの一軒家、民家であった。

男は辺りを見回し人の気配が無いと分かるや閉じられている木の扉を二回軽く叩き、間を置いて五回叩く。


数秒後に反対側から男の声であろう低い声が発せられる。



「猫飴はいかが?」



すかさず包帯を巻いた男はそれに答える。



「猫飴バケツ一杯食べたいよ」



すると静かに扉が開く。姿を見せた男もまた顔に包帯を巻いている。

男はその男に促され、奥の小部屋に入る。

するとそこには同じく顔に頬隊を巻き、袖が長い赤い服を着た女、明埜の姿があった。


明埜は目を光らせて男に問う。



「首尾ハ?」


「馬元義様の思うがままに進んでおります。馬元義様の言葉通り言いましたが予想通り、十中八九進むかと」


「俺ジャネェヨ。旦那ノ思ウガママダナ」



彼らが何故宮中奥深くにまで潜り込み、活動していたかと言えばそれは黄巾の時代、尤も重要な事柄の一つとして波才が情報という物を周りが見ても呆れるほど重視していたからに過ぎない。


彼が過去に軍を作り上げた際まず真っ先にしたことは訓練でも演説でもなく、間諜の人間を育て上げる計画を立案することから始まった。


一人一人の信用できる逸材を見つけ出すと彼らが明埜に心から心酔するように誘導、そして明埜自身から自分が学び得た知識と現代の諜報技術と人間の行動分析と心理に関する教えをたたき込んだ(波才自身で教えなかったのは明埜へ忠誠を向けさせるためであった)。

これにより初期の段階から周りのめぼしい人間達のもとへ数十名、今や百を超える優れた間諜がこの大陸に飛んでいる。


何もこの男のように目的の人物にかなり近い存在になるばかりではなくその周りの人物、つまり両親や親友と友好を続けさせている間諜もいれば、その町で料理店を営んでいるものもいる。

例えば呉で孫策が行きつけの酒屋の店員がそうであるし、曹操が良く通い宮中に勧誘している料理店の店主もそうである。さらには袁術がよく買い付ける蜂蜜屋の店主も、孔明が買い付けるあれな本屋の店員も、明埜が率いる忍びの者達が潜伏しているのだ。

彼らには黄巾時代から周りからぬきんでた報酬が約束されていた。


楽しそうに笑うと明埜。それにつられて男も笑う。

だが男の笑いがどこかぎこちないことに明埜は気が付く。



「ン?ドウシタンダ?」


「いえ、その」



どうにも煮え切らない様子で男は視線を泳がせる。


明埜は言いたいことをはっきりと言わない人間は嫌いな部類に入る。

それは彼女の生まれ育ちも関係していることだったが、少なくとも彼女は例え部下と言えど例外なくもの申す事が出来る関係を築いてきた。


だからこそ忍は信頼関係を築き上げると共に貴重な情報をだけではなく何気ない情報まで集め、それを組み合わせることで新たな発見を見つけ出してきたのだ。


そんな彼らにとって言葉を濁すことは多くの意味を持つ。

だからこそ明埜は男に問い詰める。



「イイカラ言ッテミロ」



しばらく渋っていたが変わらず鋭い視線で見続ける明埜に覚悟を決めたのか明埜を見つめ返すと神妙な口ぶりで話し出す。



「あの猫飴がどうたらとかいう合い言葉止めません?凄く恥ずかしいですしもっと他にもいいのがあると思うんですよ」















明埜がぴたりと止まった。



「仲間内でもあれ意味わかんないし恥ずかしいしで不評ですよ?」


「エ~ト。ソノダナ……ナンツウカ」



すると珍しく明埜の声が狼狽える。呪われた声と蔑まれたそれだが不思議とこの様では何故かかわいらしく感じてしまう。しばらく躊躇していた明埜だったがやはり仲間内で隠し事は無しという信条と、部下である男が話したのに自分が話さないのはと思い諦めた様子で口を開く。


内心やぶ蛇だったなと明埜は後悔した。



「イヤァナ。旦那ガドウシテモッツウンダヨ。予算デイクラ請求シヨウガ何モ言ワズニ出ス旦那ガ、コレバッカリハユズレナイトカデヨ」


「馬元義様は気に入っておられるので?」


「アホカ!!何ダヨ猫飴ッテ!?何ダヨバケツッテ!?トイウカ山盛リデ飴食ベルトカ何言ッテンノ!?歯ガ死ヌワ!!太ルワ!!」



一通り怒鳴り散らすとゼイゼイと息を荒くする主の姿に若干頬を引きつらせて笑う部下。

不憫そうに見つめる部下を睨み付けると「ダケドナ」とこぼすように呟く。



「ソレデモ、ソレデモ俺ハ旦那ノ望ミ通リニヤラセテアゲテェ……」



部下はそんな隊長の姿に思わず目頭を熱くした。


ちなみにゲームマニアの波才は暗号を決める際、一人深夜遅くまで悩んだようだ。

それで残った最終選択がこれと「ひらけ、ゴマ」である。どうも波才のセンスは果てしなく地を這いずり回っているようだった。



 なんだかんだで来年から東京に住むことになりました。

 もしかしたら来週はごたごたするかもしれない……間を空けて、再来週に更新になるかもしれません。

 それと作者が投稿している恋姫/zeroは、気が向いたら更新することにします。というかそうじゃないとこれ書けないので。


 そういえば、用事で埼京線板橋駅で降りたんです。そしたらハチドリが飛んでました。私は初めてハチドリを見て、しかもそれが目の前で飛んでいるところ見られたとあって嬉しかったです。可愛かったなぁ……。


……あれ?なんかおかしくない?

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