第十八話 空、未だ青し。
人生において、万巻の書をよむより、優れた人物に一人でも多く会うほうがどれだけ勉強になるか。
~小泉信三~
「やっぱりばれてたか」
いいえ、かんです。
はずれていたら今日の夜、私は布団の中で思い出して恥ずかしさの余り悶えてました。たぶん。
そう言って物陰から姿を現したのは、まだ返り血が服の所々についている孫策さん。
あの後直ぐに追ってきたのだろうか、服が血まみれのまま着替えられていない。
美人はどんな姿をしていても綺麗だよくいうが・・・流石に血まみれの美人はきついと思うぞ?
血まみれで笑う美人さんを見て貴方はどう思います?しかも血に濡れた剣を帯刀済み。
少なくとも「マジかわいい!!」とか思う人はポジティブ過ぎて羨ましいぐらいです。
まず命の危険を感じましょうよ。
仮面で隠れていますが、今の私の顔は真っ青です。そりゃあ私だって沢山人を殺してきました。因果応報、殺される覚悟もあります。
でも覚悟があると命が惜しいという思いは全くの別物です。
うわ~孫家の宝刀が鈍く輝いちゃってるよ。
ですが、こんな血まみれだからこそ放つ英気というモノもある。
この場が戦場ならばあの血化粧で孫策の姿は引き立てられ、味方の士気は否が応でも上がる。反対に敵、つまり相対している私のような人間は頬が引きつり今にも逃げ出したくなる。
うん、逃げ出したくなる。
慌てながらも冷静に観察している私ははたして心が強くなったのか、はたまた私の男としての本能が強いのか。
こればっかりはどうも白黒つけがたい。つけてもどっちたたずな気もしないでもないですからね。
「いつから解っていたの?」
「いつからでしょうね?」
「いや・・・こっちが聞いてるんだけど」
「なにそれずるい」
「ずるいって・・・ねぇ、この会話前にもしたでしょ?」
「はて?何の事やら」
私は口を隠して笑う。
別にとぼける必要はないんですけどこの人からかうと面白いんですよね。
それに孫策さんは呆れてしまっていますが、ホントになんとなく気がついたが正しいんですよ。
だって孫策さん殺気が無いんだもの。
かつて私があった時の彼女は殺気ましましでした。
寒すぎてもう身震いしてしまうほどですよ。
ですが今の彼女からはまるでその寒気が無くよって身震いもしない。
殺気があればどんなに気を隠していても解るんですけど・・・もしかしてこの人、私に殺意がない?
悩み腕を組んで唸る私を見て疲れたように笑っていた孫策さんでしたが、気を取り直したように私に向き直ります。
・・・正面から見て思うんですがやっぱりこの人は美人だなぁ。
少なくともつり目だった目が優しくなっているのから、殺意はやっぱり無いのでしょうか。
・・・でもその血化粧は本当に止めてください。
本当に心臓に悪いです。
「まずはお礼を言うわ。貴方のおかげで私の民を救うことが出来た」
・・・ああ、そういうことですか。
でもこれは結局の所、自己満足ですからお礼を言われる義理など在りません。
こんな馬鹿者にも譲れないプライドみたいなものはあるのですよ。
・・・小さじ一杯分ぐらいは。
「尻ぬぐいをしただけですよ。別にありがたられる事なんてしたつもりはありません。それにあいつらは気に入りませんでしたからね」
自分が気に入らない、許せないから手を貸しただけであって、別にあの人達が人を殺そうが奪おうがどうでもいいんですよ。
あ、天和様達に害をなすなら別ですよ?
遠くでやる分には別にいいんですが、近くでピーチクパーチク騒がれるのは嫌なんです。耳元で騒がれるなどたまったもんじゃない。
目覚めが悪くなるじゃないですか。
それにしても人を殺してありがとう・・・ねえ。
元日本で平和に生活していた私にそんな日が来ようとは、思いもしませんでしたね。
命を奪ってありがとう。殺してくれてありがとう。
う~んどうも自分には合いません。やっぱり戦は英雄達に任せるべきですね。凡人たる私は平和に屋台を引く姿がお似合いです。
孫策さんはクスリと笑って口を開く。
「それでも救われた事に変わりないしね。本当にありがとう」
そう言って孫策さんは優しげに笑いました。
これが孫策さんの本当の顔かな?
とても優しくもあり強い、そう連想させられるいい笑顔ですね。
・・・でも目の奥に何かありますね~。これあれです、時代劇とかで悪代官が町娘を得るために一計案じる目です。
うわ~ぶっちゃけ逃げたい。
何を考えてるのか全く予想できないんですよこの人。曹操とはまた違った魅力を持つ英雄さんです。
ま、ここは本人に聞くのが一番ですね!!
・・・あ、でも怖い。いやいや、私だっていっぱしの人間なのですから。やましい事はあんまり無いですからね、聞いても良いでしょう。
大丈夫ですよね?ね?
「それで孫策さんは私の首がご所望で?」
「そうねぇ・・・最初はそう思っていたんだけど、もっと欲しいのものが出来たのよ」
とりあえず、命が救われましたね。
一回勝利を掴んではいますが、それは油断していたこともあるでしょうから。
正面からやりあう二回目はどうなることやら・・・あ、ちょっと想像したら何故か遺影に自分の姿が収まってました。
そうか、逃げるが勝ちか。
正直怖いお姉さんと戦うなんてしたくありません。
何が悲しくて『小覇王』なんて本来は廚二病満載なはずなのに、これ以上ないくらい似合う人と殺し合わなくちゃならないんですか。
私は一般人ですよ?か弱い民衆ですよ?戦うんだったら銃ください。
「あなた、私の元に来ない?」
「へ?」
私の元に来ない?
ええと・・・わたしのもとにこない?
え、、もしかしてスカウト?
なんで殺し合って首に剣を突きつけた人間にそんなこと言えるんでしょう?
あ、そうか。この人お酒で酔っているんで・・・あ、目がマジだ。
そうだ、お酒の飲み過ぎで頭がいかれて・・・理性ありありだ。
なにそれこわい。
「お断りします」
即答です。
「あら・・・何故かしら?」
「ぶっちゃけ平和に暮らしたいです」
「へ?」
驚かれているようですが絶対に嫌です。
だって孫策ですよ?
入ったとたんあれじゃないですか、たぶんSEKIHEKIまでまっしぐらじゃないですか。
しかも孫堅さん居ないってことはその時点でパラレル展開、オリジナルルートまっしぐら。死亡フラグもあるよ!!です。
嫌です。死にたくはありません。
私は関わりたいと思ってはいますが、血が舞い、体の一部が舞う戦場のど真ん中に出てまで実感しようとはとてもとても思えないです。
そりゃぁやんなくちゃ駄目だとか死ぬぞとかなら諦めますけど。
そもそも事務も仕事も好きじゃありません。それほど戦いたいわけでもありません。死にたくありません。そうなると軍に所属する事自体OUTな気がしてなりません。
いや、入るのも楽しそうなんですけど私は自分で物語を作るよりも見る方がいいのですよ。それに屋台の楽しさを知っちゃったからなぁ・・・。
平和最高、私は屋台で生きていく。
「貴方・・・それだけの力がありながらこの乱世に何も感じないの?」
「宝の持ち腐れだと?それは買いかぶりすぎですよ。それに私が居なくともたいして変わりませんよ」
イレギュラーが何だってんですか。
そんなの三国志の人間が女になっている時点で霞んでますよ。
私に力がある?笑わせてくれますね。私は特別ではない、貴方達英雄とは訳が違うんですよ。
正直、特別でもない私が天和様達を守れただけで十分です。
神様に感謝しても良いぐらいです。
それから実際に曹操さんや孫策さんと出会って解りましたが案外この乱世、早く終わりが来るかも知れません。なんかそんな気がするんですよね。
だって情報で聞く限り時間すっとばしていろいろな将達が集結してますし。
なんですか黄巾時代に孔明と龐統が参戦してるって。
なんですか董卓の軍師が賈詡って。
なんですか呉に陸遜がいるって。
お化け軍師に化け物将軍共に蹂躙された黄巾党。
黄巾党よく持ったと思います。あんたら凄いよ、ただの農民なのに数頼みでよくやったよ。賞賛は出来ないですけどね。
「確かに民は苦しんでいます。でもそれももうすぐ終わりが来るでしょう」
「・・・なぜかしら」
「貴方達がいるからですよ」
こればっかりは自信を持って言えます。
「それは・・・あの時私に言ったことと関係があるのかしら?」
「ええ、正直私はもういなくてもいい存在だと思っているので」
「ふ~ん」
そう言って孫策さんはつまんないという顔をしていますね。
つまらなくて良いんですよ。
普通という怠惰な時間が一番いいんですから。
……ん?何か悪い事考えた顔になりましたね。
すんごい嫌な予感がします。
「それは天御使いとしての答えなの?」
え、今この人なんて言いました?
天の・・・何?
「貴方はこの世界の人間じゃないんでしょう?」
お、落ち着けこれは孔明の罠、じゃなくて孫策の罠だ!?
ほ、ほら。そうやってからかって真意を引きずり出そうとしているんだ!!騙されないぞ!!私はこう見えても察しがいいですから貴方の目を見れば・・・。
本気みたいです\(^o^)/
ど、どこでばれた?ええと・・・駄目だ。心当たりがありすぎる。なにやってんだ私。
思わず過去の私をぶん殴りたくなりますがここで慌ててしまっては更にはまっていくぞ。
そ、そうです。ここは気取って余裕を持った態度でいれば!!
私はまるで道化のように仮面をこつこつと叩きつつ彼女を見つめる。
手汗が、背汗がやばい。
「何故そう思われたので?」
そうだ。まだ慌てるような時間じゃない。さぁどんな理屈で来る?全てをこの私が全身全霊を込めて否定してあげ
「かんよ・・・」
・・・今なんて言いましたこの人。
「へ・・・?」
「だから『かん』」
なにそれこわい。
それって理屈とかで解決できないですよね。この話はここで終了で・・・したら終わるがな!!
こんなんで私の屋台生活が壊れるなんて絶対にお断りします。
全力で否定しましょう。
なんかもう駄目な気がしますがそれでも諦めません。燃え上がれ私のコスモ!!
私はやれやれと首を振りため息をつく。
「ハァ・・・孫策さん。疲れてるんじゃないですか?本当に私が御使いだったとしても、なぜ黄巾党は負けたんでしょうね。私が天の意志ならば絶対に負けませんでしたよ?」
「だって貴方、勝つつもり無かったじゃない」
・・・ほう。面白いこと言いますね。
「・・・なんでそう思われたので?」
「貴方と会ったときに聞いた言葉、それを考えるとどうも貴方が勝ちたいなんて思えなかったのよ」
へ~あれでそこまで解っちゃいますか。
時代の英雄は伊達じゃないってことですかね。
「何故かしら?」
そう言って問いかけてくる彼女の顔は嘘は許さないって感じですね。
嘘付いても彼女の『かん』ってやつでばれそうな気がするしなぁ。
年貢の納め時かな?
しょうがないからお話しますかね。これだれにも話した事無いのに。
あら恥ずかしい。
「正直勝てるとは思っていませんでしたよ」
「ならば何故貴方はあの反乱に参加したの?」
「巻き込まれてしまった大切な人達を守るためですかね・・・。まぁ欲を言えば勝ちたかったですけど、そんな甘い夢は見られないと思ったんですよ」
「・・・それはどうして?」
「曹操さんです」
「曹操・・・黄巾討伐で名を上げた1人ね」
そうなんですねよぇ・・・張角様は名も無き兵に殺されて死体は炎で焼けてどれだかわからない、というのが皆さんの見解です。
疑っている者もいるでしょうがいまさら調べた所で証拠なんざ在りませんしね。
太平妖術?
あれならおでんの制作の際、薪の代わりにしました。よく燃えました。
まぁともかく黄巾の乱で一番名を上げたのは火計を仕掛けた孫策さん。
二番手はもっとも多くの黄巾党を撃破した曹操さん。
三番手は義勇軍で一番民心が高い劉備さん。
見事に三国の前触れですね。
まるで三国志ファンの理想郷じゃないですか。全員女性ですが。
「あの人を見た瞬間思ったんですよ。あ、自分たちはいらないなってね。この人は私なんかがいなくても彼らだけで時代を築く。それは孫策さんを見て確信へと変わりました」
「・・・私が時代を築くと?」
「ええ。ですからあの時は楽しくなりましたよ。もともと新しい時代への贄として負けたことにちょっとした不安と心配が有りましたが、孫策さんもいる、曹操さんもいる、劉備さんもいる。ならば心配はもう無いなってね。だから私はもう戦いなんてしませんよ。貴方達が私達が欲したすばらしい国を創ると信じていますから」
「・・・貴方はその国を創るために協力はしないのかしら?貴方がいればもっと早くその国が創れるかも知れない、多くの民が救えるかも知れない」
「そんなことは無・・・」
「有るわ」
私の言葉は彼女に遮られる。
私はしばし熟考し、再び口を開く。
「・・・それは、貴方の『かん』ですか?」
そう聞くと孫策は笑って言う。
「ええ、私の『かん』よ♪」
溢れ出る英気、力強き微笑。
これが英雄が持つ魅力……。
嬉しいですね、英雄に貴方は必要だと、特別でもない私を必要とされるのは。
もうぶっちゃけ勢いでならば私を使ってみるがいい!!とか言い出したくなりますね。すごいすごい、魅力チートは伊達ではない。これでは英雄達がどんどん彼女に下に集まるのもよく分かります。
ま、それは天和様に会う前だったらという話。
自分がかつての戦乱の世に生きていなかったらの話。
自分が黄巾党でなかったらの話。
私が私でなかったらの話です。
「悪いですが、私には心に決めた主君がいるのですよ」
「そう、残念だなぁ」
そう言って笑う孫策さん。
あれ?もうちょっと強引に連れて行こうとするのかなとばかり思っていましたが。
「無理矢理連れて行こうとはなさらないので?」
「貴方はそれで聞くような人間じゃないでしょう?それに貴方には一回負けているしね。力ずくってのは貴方に対して無理かなって」
そう笑っているのですが・・・。
・・・やっぱりこの人は人を引きつけるものがありますね。何より人を見ぬく目がある。
英雄の持つべき魅力、惹き付ける力。
「それで?その主君の元で貴方は天下を獲るつもりなの?」
「いえ、平和にのんびりと表舞台に上がらずに過ごすつもりですが」
「え?」
すごい意外そうな顔してますね。
いや、だからそもそも戦うのは嫌なんですって。謀略も胃が痛くなるし、働きたくないし。何が悲しくて特別な連中と戦えと。
確かにそういう道もありますが、他の道も十分魅力的ですからね。……ないとは思いますがそれらが全て遮られない限りは軍勤めはないですよ。
あれ?なんか自分で考えててフラグっぽい。気のせいですかね。
「え?冗談?」
「ところがどっこいこれが現実です」
「・・・」
なんか考え込みながら見てくるんですけど。
「ん~貴方、結局舞台に上がる気がするんだけどなぁ」
「え?それもかんですか?」
「ええ、『かん』よ」
そういえば明埜もそんなこと言ってた気がします。・・・大丈夫だよね?
もう黄巾党終わったから問題ないよね?モブとして生きていけるよね?
働きたくないでござる!!絶対に働かないでござる!!……な~んてね。
ですが、この人には見逃してもらうなら恩ができますよね。
いくら町民を助けたとはいえそれは自己満足ですから、下手に条件を付けられたりこの件をほじくり返されるよりはちょっとだけ手を貸した方が良いでしょう。
それに今の会話にてこの人の物語を間近で見てみたい、と思ったのもまた事実。
というよりそれを解ってこの人会話を誘導したのでしょうか?
汚い、さすが孫家汚い。
でも、もうちょっとだけ平和を満喫したいなぁ。
こっち来てから戦いの日々だったし、たぶん今この人に付いていったら絶対に仕事まみれになる気がするんです。
なんかこの人仕事しなさそうだし。
ま、ちょっとだけならいいか。何事も体験するのが一番だと日本の両親にも言われましたからね。
人生体験体験、仕事に就くことも生きる上で貴重ですから。
そう決心した私は残念そうに口をとがらす孫策さんに・・・貴方なに子供っぽいことしてるんですか。もう娘って年でもないだろう。
と考えた刹那彼女の顔が悪鬼のような笑いをうかべる。
汗が額から伝い落ちる。
「今何か考えたかしら?」
「いえ、何故そう思われたので?」
「『かん』よ」
かんぱねぇ。この人絶対ニュータイプです、ピキピキピキーンとか音鳴っちゃってるタイプです。
冷や汗を垂らしながら私は先ほど決心したことを述べる。
「でも今回ここで見逃してもらうのなら恩が出来ますよね・・・それはいずれか貴方の所へ返しに行こうと思います。客将としてね」
すると孫策さんは嬉しそうな顔になり、すぐに眉を八の字に。あれ?この人ならすんごく喜ぶと思ったんですけどねぇ。少なくとも曹操だったら絶対いい笑み浮かべてますよ?なんか月くんみたいな。
「恩?良いわよ別に。民をこっちは助けてもらっているわけだし、そんな押しつけがましく言うためにここに来たわけじゃないから」
・・・やばいです。人として出来ていますねこの人。
私の好感度が上昇しました。やっぱりこの人は面白い、英雄たる人です。
それにこれは私のプライドの問題、生き方の問題だ。悪いが退くつもりは毛頭無い。
「貴方はそれで良いかもしれませんが私は良くないのですよ。それにずっといるというわけではないのです」
すると孫策さんはいいこと思い付いたとばかりに私に笑いかけます。
嫌な予感しかしないのですが。
「そうねぇ・・・なら貴方の主君ごとうちに来ない?今なら私の妹が二人いるんだけど一人付けてもいいわよ?」
おい、おまけで自分の妹よこす人なんて初めて見たぞ。
それはさておき孫策の妹?
ええと・・・孫権と孫尚香ですかね。
後半はかなりの賢母になるでしょうが前半は・・・二宮の変など年取った後の行動がやばすぎです。
老後の孫権はかなりとちくるって劉備軍を撃退した陸遜を死に追いやったなど言われているぐらいです。
老後は尻に敷かれるどころじゃなく潰されちゃいます。というより結婚なんてしたくない。結婚は人生の墓場です。
この世で一番体に悪い食べ物って知ってます?私はウエディングケーキだと信じています。
というか披露宴に出される食事全てが殺傷力大です。
この人の妹なのでそれはそれはかわいいのかもしれませんが、流石になぁ。
「謹んで遠慮させて頂きます。まぁ少しだけおじゃまさせてもらう程度なので。まだいろいろと見て回りたいし、のんびり過ごしたいんですよ。時が来たら少しですが手伝いに行きます」
「そう・・・つまり二人つけろということね」
話を聞けや。
「例え二人つけようが孫家が全員付いてこようがこれは変えませんよ。まぁ万が一にもないでしょうけど気が変われば分かりませんが」
「っちぇ。う~ん、ほんとはすぐに来て欲しいし、ずっといて欲しいとこだけど・・・しょうがないか」
納得してくれたようです。
これで呉へ遊びに行くのは決定ですか。
ぶっちゃけ面倒くさいのですが、まぁこれも乙なものということで。
・・・なんでしょう、やっぱりのんびりすごすのが無理に感じてくるのですが。
「それでは、またの機会に」
「ええ・・・あっ忘れてた」
その場を去ろうとする私を孫策さんは呼び止める。
「なんでしょう?」
「祭が言っていたおでんっていう食べ物食べてみたいな~お酒に凄く合うらしいじゃない?」
「 ムリダナ(・×・)」
手でバッテンを作って孫策さんの願望を否定します。
「ガーン」と言う音が鳴ったのではないかと錯覚するように孫策さんはあからさまに驚きます。
器用ですね。
「え、なんで?」
「屋台を売ってしまったのでムリです」
そう言うとすんごい残念そうにため息を付きます。
なんだかすごい罪悪感が。
それにしても黄蓋さんといい、呉の皆さんホントにお酒好きですね。私、お酒弱いのに孫呉に来たとき生き残れるだろうか?アルコール中毒とかで死なないか?
「あ~孫策さんとこに来たときにでも作りますよ、それではまたの機会に」
そう言って私は粛々とその場を去ります。
慌てて移動する必要も無くなりましたしね。
でもなんか逃げられないような気がします。
いえ、表舞台に立たされそうな気がするというか・・・なんていうか。ああ、これが『かん』ですか。
気のせいだと思いたい
・・・それにしても孫家はあれです。
私の中ではブラック認定企業です。何故だか怖いお姉さんに囲まれながら仕事詰めにさせられそうな気がします。
割と早く恩返してとっとと屋台生活がんばろうと私は決心して足早に歩き出した。
~孫策side~
ふふ、なんとか彼を一時的ではあるけど私達の仲間に組み込む事が出来た。
波才は武人としては私を負かすほどの実力があるし、天の知識は料理だけでは無いはず。
必ずやこの孫呉に新しい風を呼び込む。
それに祭から聞いていたおでんが今すぐ食べられないってのは残念だけど約束もしたしね。
祭から聞いたおでんの数々・・・それに新しいお酒の製造法を知っていると聞く。
それだけでも大収穫ね。私達の所に来たら作らせてみましょう。
・・・な~んか忘れている気がするわね。
忘れるという事はたいしたことでは無いだろうし、せっかくの良い気分だからお酒でも飲んでいこうかしら。
そう思った孫策は酒屋に向かうべくその場を後にした。
~波才 side~
こんにちわ、波才です。
私は今
「いたぞ!!」
孫策さんの兵に追われています。
「ってなんでですか!?何で追われているのですか!?」
「策殿の命令じゃ!!おとなしくお縄につけ!!」
そう言って弓矢を五月雨の如く連射してくる黄蓋さん。
どうでもいいですけど今避けた矢、当たれば死んでましたよ!?
「その孫策様に了承をもらったんですよ!!」
「嘘をつけ!!未だにお主の捕縛命令は終わっていないわ!!」
ちょっと孫策さん何してんの?
あれですか。
おでんの恨みですか。
食べ物の恨みは恐ろしいですか。
あ、もしかしてこれは夢か。孫策と出会った事も、今こうして命の危険に晒されていることも、そもそもこの時代に来たことも夢だったんです。
ほら、目が覚めればそこにはおじゃる丸の目覚まし時計があって、コーヒーを読みつつ朝のニュースを
「っふ!!」
シュパッ
頬をかすった矢。流れる我が血液。
やべぇ、これ現実だ。
「だから今の矢首狙ってましたよね!?死にます!!私死んじゃいますよ!?」
「安心せい、お主なら避けられると信じておる。実際に避けておるではないか」
そう言って剛毅に笑う黄蓋さん。
あ、これあれだ。命令無視して絶対に楽しんでやってる。
こ、この白髪頭。
「そんなんだから嫁の貰い手がいないんで「ありったけの矢を放て!!殺しても構わぬ!!」・・・え?ちょっと何言ってるのかわから・・・ってなんか沢山来たーーー!!!」
振り返れば雨の如く此方へ向かってくる矢が。
何とか剣を抜いて奇跡的に捌ききるも
スコン
仮面の眉間にクリーンヒット。
これが、顔面セーフってやつですか?なんか全然セーフじゃない気がするんですけど!?
仮面がなければ死んでいた。
そして黄蓋さんの威圧感がマッハでやばいです。なんか鬼のような形相に変わっています。というか捕縛命令ですよね?さっき殺してもいいとかいってませんでした?呉の兵隊の皆さんなんで「ご愁傷様」みたいな哀れむ目してるんですか?
黄蓋さん。捕縛ですよね?捕縛なんですよね?なんか殺気出てるんですけど?
「さぁまだまだいくぞ!!」
「勘弁してください!!」
そう言って叫んだ私の声は誰にも届かず、私は結局夕方まで逃げ続けました。
女性へのからかいは止めましょう。命が消えます。
・・・孫策軍へおじゃまするの止めようかな。
胃がマッハに痛い。
孫策死亡フラグを折る回、どうも皆さんお久しぶりです。気が付いたら昼食の時間が過ぎている味の素です。でも活動報告にフェイト系クロスのせてたんで実質は約十日ぶりですね。
前回の悲劇から何とか復帰……実は四話消してました。その結果中身がもう作者ですらよくわからんものに。あれです、書き物が書くほど上手くなるのは作者以外の人達です。
誰か……文才をくださいorz
あ、そういえばこの前、地震以来初めて仙台行きました。
今まで買えなかった物をいろいろと補給、小説でFate/zeroに、レイセンに、ダンタリアンの書架に……。
すると私の目に「俺の妹(ry」が。
「友達がはまってたなぁ……」と思いつつ、なんなく見てみると。
■ ■ ■
「魔法少女まどか☆マギカ」のキュウベェさんが桐乃にアドバイス!?
「黒猫と京介の関係?
真実を知りたいのなら確実な方法があるよ。
桐乃が僕と契約して魔法少女になればいいのさ!」
■ ■ ■
気が付いたら手を伸ばしてました。
やべぇ、初めて帯で購入しそうになったわ。というか、あんたなにしてんの!?
ゲフンゲフン、すません。取り乱しました。
さて、今回の武将紹介は以前リクエストもらったけれどやってなかった人です。
■ ■ ■
「きゃはははは♪楽しいなぁ楽しいなぁ♪」
少女は一人、部屋の中で嗤っていた。
身長は小さく、僅かに典韋や許緒よりも大きいほどしかない。頭に色あせた青のずきんを深く被っているため目は見えない。
服も華やかとは遠く、まるで普通の文官のような服装をしている。
「ばっかみたい♪ばっかみたい♪」
それだけ見たら普通の少女であることだろう。だが彼女の周りには膨大な書簡が山積みにされており、一本の蝋燭に明かりをともして彼女はにやにやとそれを見ている。
「関羽の馬鹿、呉の食料庫から強奪してこっちに来たんだ♪ばっかみたい♪待てばやがて呉が関羽を殺すね♪私達は耐えればいい♪」
そして少女はその書を閉じた。
実はこの部屋を埋め尽くさんばかりの資料はただ一度の戦、これから少女が挑む戦のためだけの資料。つまりたった一回の戦で彼女はこれほどの情報を欲したのだ。
「これ、勝ったね♪」
■ ■ ■
「きゃは♪お久しぶりだね関羽ちゃん♪」
「徐晃……久しぶりだな。同郷のよしみでいう、早速だが降伏しろ。既に宛城は水計により水浸し。曹仁ともども降伏しろ。于禁は既に降伏したぞ?」
「(于禁ちゃんかぁ……きゃは♪どうでもいいね♪)ばっかみたい♪ばっかみたい♪」
「何がおかしい!!」
関羽は城の上で笑う徐晃にいらつき怒鳴る。すると徐晃は先ほどとは打って変わり、険呑な光をその目に宿した。そして関羽に聞こえないような小さな声で呟く。
「……ぬかせ。目に物言わせてやろう小娘が。人を顧みぬ刃は武にあらず」
■ ■ ■
「全軍進め~♪」
徐晃は兵を進ませる。彼女はあの後城から脱出、そして現在関羽が立てこもる陣へ向けて向けてゆっくり、ゆっくりと軍を進ませていた。
「っちぃ!!あれでは攻めれぬ!!仕方がない!!一時軍を退かせる」
「!!敵に動き在り♪こりゃ勝ったね♪」
慌て軍を退く関羽に徐晃は最後までゆっくりと幾重に軍を重ねて追い込んだ。
関羽は追い払おうにもその厚さに手を出せない。結果として、彼女の軍は関羽の包囲網まで九メートルの所まで接近することとなり、たまらず関羽は撤退した。
■ ■ ■
「徐晃!!貴様戦では囲頭を攻撃するのではなかったのか!?」
「ばっかみたい♪ばっかみたい♪戦に騙し合いはつきものよん♪」
更に彼女は止まらない。敵は囲頭と四冢に陣営を出していたが、徐晃は囲頭を攻撃すると宣言しながら、実際には四冢を攻撃した。関羽は自ら歩騎五千を率いて四冢に駆け付けたが……彼女に押されていた。
「(なんと!?私が押されている!?馬鹿な!?)」
「きゃははははは♪負けろ♪負けろ♪……我が兵達よ今が好機!!」
「しまっ抜かれる!?退却しろ!!早く!!」
「おせぇよ!!」
その後の彼女の軍の勢いたるや凄まじい。瞬く間に退却する関羽軍に食らい付くと蹂躙、包囲陣に突撃をかまし撃破。その怒濤の勢いに関羽軍ではおぼれ死ぬ者も少なくわなかった。
この戦の戦い方に彼女の主君曹操は大変喜んだ。
「徐晃、貴方のその戦い方はすばらしい。私は今までの戦いの人生で貴方ほどの武人は見たことはない。何でも欲しいものを言いなさい」
「ありがたき幸せ♪でも欲しいものなんか無いよ♪」
彼女は多大な戦果をもたらした。あの関羽を撃退したのだ。何故彼女は褒美を求めぬのか曹操には理解出来ない。曹操は尋ねた、「何故?」。
その瞬間、徐晃は誰もが見惚れるほどの凄絶な笑みを浮かべた。
「古来より素晴らしい君主に出会える者は少ない、私は曹操様に出会えた。そうなればその主君に仕え、その主君の下で闘うのは当然。何を厚かましく欲しようか。私は曹操様の下で闘う以上の喜びをしらないのだから」
■ ■ ■
徐晃、字は公明。
関羽と同郷であり、最初は楊奉に仕えており後に曹操に帰順する。
その頭角はかの名族、袁紹と闘った際に現れた。
ある人物が降伏すると偽り、城に立て籠もって抵抗した。これに曹操は大変怒り、すぐさま撃破せよと命じた際、彼はなんと降伏を促し成功させたのだ。これに曹操はこれに疑問を感じ呼び出すと「今あの城を落としたら他の城も抵抗するでしょ♪だから降伏を認めた方がやりやすいよ♪」(作者訳)と言い放ち、曹操を感心させた。この戦に彼は伏兵を用い勝利に導いた。
韓遂・馬超らが叛乱すると曹操は黄河を渡れないことを心配して徐晃に尋ねた。すると彼は「あいつら蒲阪を守備することを考えない馬鹿ばっか♪私に精鋭くれればそこを突破し陣営を築いて敵を分断しちゃうよ♪」(作者訳)と言い放ち四千の兵と共に出陣。この陣の構築の際、五千の兵の夜襲を受けるも撃退し、馬超を撃破した。
張魯征討の際も無双をかましており、囲まれた味方の将を救いて敵の陣営30以上を破壊し勝利へと導く。
徐晃の人柄は慎重でつつましく、出陣のときには遠くまで間者を出しておき、勝てない場合のことを想定したあとで戦いを始めた。敗走する敵を追撃するときは兵士は食事の暇もなかった。その戦い方はかの有名な孫子に例えられる。
彼はつねづね嘆息して「古人は明君に巡り会うことが苦難であったが、私には幸運にもそれができた。手柄を立てて力を尽くさなければならず、我が身の名声を心配するつもりはない」と言っていた。ついに交友を広げたり、力ある者に頼ったりすることはなかった。
そ~らを自由に飛びたいな~はい!徐晃コプター!!
失礼しました。無双でおなじみ徐晃さん。……なんかまとめていてもうこれ以上ないぐらい凄い人。他にも他の将が酒宴で浮かれているときに、彼だけでなく兵も落ち着いて勤務していて曹操を感心させたらしい。
なんかもう理想の上司。
作者は基本イカレキャラで書きつつ、ここぞと言うときは解放させます。
というかこれを書いていて蒼天航路の「逃げるときは軽(ry)を想像し、笑えてきたのは秘密。
ちなみに関羽は徐晃との戦いの際、呉から食料強奪してました。おい、仁義はどこに消えた?