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黄巾無双  作者: 味の素
自己確立の章
24/62

第十六話 失踪する黄巾のパラベラム

未来を予測する最善の方法は、自らそれを創りだすことである


~アラン・ケイ~



黄巾党が滅んだ後。

残った者達を連れて正面突破であの燃える砦から脱出しました。


なんとその際たくさんの綺麗な美少女や女性に追われたんですよ~羨ましいでしょう?

いや~モテる男は辛いですね。みんなが波才さん待って~って激しい声出しながら迫ってくるんですよ。


そう言うときはきっちりとお話して諦めてもらうのが一番何ですけど。



「待て波才!!華琳様の命令だ!!止まれ!!」


「そこのお兄ちゃん待て~!!」


「悪いが・・・華琳様のためにも逃がさん!!」



ははは・・・。



「待ちなさい!!」


「のぉ策殿、なんで我らまで曹操と同じくあやつを追うのじゃ?」


「そんなこと言ってたら曹操のやつに先超されるわよ!!」



これ話し合う気ゼロです。


本当にもてる男ってのは困りますよね~(棒)

ねぇ?羨ましいでしょう?羨ましいって言えよ。言ってくださいお願いします。


そりゃあね。私だって産まれて一度ぐらいたくさんの綺麗な女性に追われてみたいなぁって思いましたよ?私だって男ですもの。


漫画とかで女の子に囲まれて「私が○○君と放課後帰るの!!」とか「○○君は私の物なの!!」とか言われる主人公にパルパルしたり、もげろとか思ったりしましたよ。

私もなってみたいなぁ、結局前世でも結婚出来なかったしとか思いましたよ。


そして今日なんと私にもその日が来たんですよ!!

見てください!!たくさんの綺麗な女性が私を求めて血糊のついた武器を振り回し、雄叫びを上げながら殺気だった兵を連れて馬で爆進しているじゃありませんか!!


あ、なんか後ろから放たれた矢が頬をかすりました。


ワオ!!刺激的!!


















・・・あれ?私が求めたのってこんな命の危険が伴う願いでしたか?

もうちょっとほのぼのしていて温かくて、周りの人が「波才死ね」っていってくれるようなものじゃないのですか?

何だか涙が止まりません。


ていうか孫策さん?なんで貴方まで私を追ってくるんですか?

あれか?張角の首がないなら波才の首でいいじゃないとかいうやつですか?

とんだマリーさんです。貴方の場合は赤字婦人が赤血婦人になるじゃないですか。どんだけ人の血吸ってるんですか。


それに曹操軍も曹操よりの命令で私を追っている?

何それ怖い。

前世のトラウマが再起します。これで官軍が来たら私の命は終了ですね^^


・・・あれ?もしかして本当に死ぬの?



「人は、人は愛故に苦しまなければ・・・」


「主!!いつものご病気を言ってないで早くお逃げください!!この美須々が主の道の礎になりましょう!!」


「うん、馬鹿な事行ってないで一緒に逃げますよ~美須々」


「・・・(馬鹿を見る目)」


「ハイハイ。美須々~血ノ気ガ多イゾ~野菜デモ食ッテ死ンデロ」


「・・・私の覚悟が」















とか心配していましたが何とか無事に逃げ延びました。

途中美須々が何回も玉砕特攻繰り広げようとしたのをみんなで止めました。本人いわく「当たって砕ける!!」だそうです。

砕けちゃだめだろ。


取り合えず疲れました。みなさんも一度でいいので沢山の殺気だった人達に追われてみましょう、きっと貴重な体験過ぎて死ねるでしょうから。



その後、波才の死んだという噂が流れ、私は天和様達と仲良く過ごしましたとさめでたしめでたし。


その後、波才達の行方を知るものは誰もいなかった~







































だったらどんなに良かったことか。


案の定疑り深い曹操が私の捜索に乗り出しました。

そこまでして首が欲しいのかと青くなっていると懸賞金はどうやら生け捕りじゃないと意味がないらしいです。





・・・まさか私の体が目当てか!?

お前百合レッドじゃなかったのですか!?

どうやら曹操は両刀レッドに進化したようです。


と言うわけで人相を隠すために仮面をつけて旅をすることに。


天和様方には明埜を通して手紙を送り生存報告。いずれ噂がやんだら向かいますと書いておきました。

この際にメールのすばらしさを実感できましたね、どこにいても送受信可能ですから。

旅をしている私にとって送れることはあっても受け取ることは難しい。


旅の資金は黄巾党の砦から拝借。

かんなりため込んでました。具体的に言えば年末ジャンボ宝くじの一等数枚分じゃ済まされない、USの軍事予算ぐらいあったかな?でも本当にそれぐらいあるんです。

各地にある分入れたら間違いなく国家予算分はありますね。

この時代のお金は紙幣ではないのでそれほど持ってはいけませんが私一人で旅をするには十分でしょう。



と言うわけでしばらくぶらぶらとしていました。

広大な漢の大地と自然は圧巻ですね。











でもしばらく旅して飽きてきました。

美須々と琉生はしばらく自由にしていいといって放置してきましたし、明埜は天和様達との橋渡しになってもらってます。


ようするに一人旅に飽きたんです。


それに私は人が見たいのであって、自然を見たいわけでは無いのです。

三国無双で背景グラフィック見たい!!すんげぇってなる人見たことないような感じです。

ただ町を巡るだけでは味気ない。







ふと私は足を止めて空を見る。

どこまでも青く、どこまでも広がっている。この空に終わりがないことを密かに願う自分がいる。


この世で一番の罪は退屈だ。

多分人が進化し、進化し尽くしたなら死因の一番は退屈になるだろうと私は思う。死なず、老いず、この世の全てを謳歌し尽くした彼らに残る物は何だろう?

それは退屈。全てを達成した彼らに残るのは何もない灰色の世界。

全てに飽き、全てに失望し、やがて体験したことが無い死を渇望する。

死にたい訳ではない、死んだことがないからやってみたくなる。ただそれだけだ。

人はやがて太古より恐れた死すら娯楽の一つとして昇華させるだろう。

果たしてそれは幸せか?不幸か?生憎私はそれを知る術はないが少なくとも望んで死ぬような人間ではないよ。


愛を唄う少女を世界中がバカだと笑ったら世界は末期だと思わない?

私は別に思わないけれど。



まとめ、暇。


ようするに暇なのだ。この英雄が蔓延る世界で旅だけで満足できると思った私がバカだった。日本人たる私はどうも日本人特有の病気、「仕事病」らしい。

そういえば日本人は趣味をある程度の義務とステータスとする。会社の面接でも「ご趣味は」の項目がご丁寧にもあるぐらいだ。履歴書に趣味を書くなど私から考えれば病気にしか思えない。

無理に趣味を作ろうとする必要など無いのだ。

この趣味も「仕事病」である日本人の特徴だろう。


さて、私はなにをしよう?まさか軍勤め・・・否、それは天和様を裏切るに他ならない。それ以前に規則正しくおいっちにおいっちにと毎日生活するのは面倒だな。


ならば・・・そうだ。


あれをしよう。私の夢だったではないか。

幼稚園の頃「将来の夢」という題名で私が発表した事を思い出す。周りは宇宙飛行士やサッカー選手やアイドルなどと今現在彼ら自身が笑い飛ばすであろう夢を発表していたが私は一人だけ異彩を放ったのを覚えている。

少なくともあの陽気な両親が引きつった笑みを浮かべていたのはあの時ぐらいだ。


私が二歳の時、父親が連れて行ってくれたあの夜。

そうだ、私は恋をしたのだ。

今でも鮮明に覚えている。ならばこの世界で幼稚園の夢を叶えることもまた一興。


私は「っふ」と小さな笑いをこぼすと夜に沸く町へと歩き出す。

いいだろう、この波才。この漢の夜に一筋の光明を与えたもうぞ!!




私は新たに自分の道として・・・。











































屋台おでん屋を制作する。




人と触れ合う客商売とかしたい→店を持つのは無理→屋台→日本人クオリティが欲しいな→おでん。


という思考の流れだ。我ながら天才だと思う。



正直、焼き鳥屋かそば屋も考えてはいたが・・・。おでんだろ、常識的に考えて。


私は鶏ガラのこってりだしでいくことにする。



【BGM】地上の星



まずはなけなしの金を全て使って屋台と材料を調達する。

この世界はどちらかと言えば江戸時代のそば屋のような屋台の形式が非常に多く、それが主流だろう。


もうそもそもこの時代に屋台とかねぇだろとかは考えない。常識に囚われてはいけないとミラクルフルーツが言っていた。


既存の屋台を買う方が楽だと思い中古の物を購入。

鍋は特注で鍛冶屋に頼んだ。


ジョバンニが一日で・・・じゃなくて鍛冶屋の親方が一日でやってくれました。


もうつっこまない。この世界ではそれが常識なんだ。この世界で麻帆良大結界が張られていてももう自分は驚かないと思う。もう気にしたら疲れるだけだ。



いよいよ材料もそろえて肝心な煮汁を製造開始だ。


山から汲んできた新鮮なわき水をまず鍋の中に満たす。

ポリタンクなんて便利な物はない。なので瓶や桶で取る必要がある。


・・・自分一人で無理だったので明埜と忍びの皆さんに手伝ってもらいました。忍びの皆さんが呼ばれた内容でちょっとキレかけたなんて事実は無い。


鍋に水を入れて鳥ガラを入れる。ここで肝心なのはこの世界は当然ながら火は薪を燃やす事によって発生する。絶対に激しい炎は出ないのだ。だから火の調節が・・・




















そう持っていた頃が私にもあった。


ばりばり強い火が出ます。


そもそも麻婆が出てきた時点で気が付けば良かった。


中国は漢時代まで冷食が中心だったが唐時代から薪を使った煮炊きが中心となっていた。

宋時代の商業の発展とともに石炭が流通し始めることで強い火力で調理することが可能になり、「火力の芸術」と呼ばれる現在のような中華料理の基礎が出来たのだ。


この世界はいきなり唐の時代の薪を使うという手法。おまけに何故か石炭を使用しないにもかかわらず激しい火が薪で起こる。それこそパラッパラのチャーハンが出来るほどだ。


多分この世界の物理学者は相当頭を捻らせることだろう。もうぶっちゃけ石炭とかいらないんじゃないだろうか?工業革命起こるのか?






・・・気にしたら負けだな。うん。


そのまま強火でひと煮立ちして灰汁をとる。その後ことこと弱火で煮て昆布をいれて味がきつくなりすぎないようまたことこと。


味は醤油をとみりんだ。みりんは度が強い酒から製造し、醤油は・・・何故かある。餃子と一緒に店で出てくる。なんか疲れた。


それを味を見ながら入れて無事完成。


具はこんにゃく、玉子、がんも、つみれ、たこ足、その他練り物系統だ。幸い魚が豊富な土地なので練り物には困らない。

大根は無かった・・・卑弥呼に会いに行こうか悩む。おでんといったら大根だろうに。

餅巾着はつくれそうだがいかんせん手間が他よりも多い。


取り合えずこれでがんばろうと思う。




「苦節二ヶ月!! ようやくこの国で合法的におでんができる日が来たか!! 」



【BGM】終了
















結果としては無事お客さんに受け入れられました。

A級グルメではないにしてもB級グルメとしては大成功です。夜の疲れた町人達の密かな楽しみになっているようす。

私が仮面をしていることで怪しげな雰囲気があるのもまたいいとか。


いや~実に良かったです。こりゃお店出す日も近いね!!

でも私、とことんぬけているようでして・・・。




「それでの~冥琳のやつが相変わらず五月蠅いのじゃ!!」


「へぇ」


「ちぃとばかし休憩しての、酒を飲むだけというのに全く!!」


「へぇ」


「おい、店主!!聞いておるのか!?」


「へぇ」


「それでの~」



このお客さん絡み酒がやばい。

しかも無視しようが話し続けます。

髪は白くて長く、赤い服は露出が多い。そして妙に年寄りくさい話し方をする。


何より胸が大きい、天和様も大きかったがそれとは比較にならないぐらい大きい。天和様がメロンだったらこの人は西瓜でしょう。

私は胸で人を決めません。


尻です。女は尻なのです。


そういえばどうでもいいですけど孫策も胸が大きかったですからねぇ。孫呉の地ってのは胸が豊かな地なのでしょうか?あの曹操も呉で兵を起こせばよかったのに。

そしてこのお方。



「黄蓋さん、そろそろ止めにしては?」


「何を言うのじゃ店主、まだまだこれからじゃよ」



そう、あの呉の黄蓋さんなんです。

おい、これ嫌がらせだろ。

適当にぶらりと屋台を引きずりながら旅をしていてここで商売をしていたら、いつの間にか固定客になっていました。

なんだろう、誰かが逃がさないように毒々しい糸で私をふんじばっているような気がします。

私そっちの趣味ないんだけどなぁ。



「店主、酒とつみれとがんもじゃ」


「へいへい」



そう、これがわたしのうっかりです。


この呉の土地は魚が捕りやすいので練り物が作り易いのでやって来ましたが虎の巣ですよね。でもお値段以上の条件なので少しぐらい危なくてもいいのです。

虎穴に入らずんば虎児を得ずと言いますからね。


練り物のために虎の巣のど真ん中にいます。


というか虎を接待しています。


商売人てのはですね、例え親の敵だろうが何だろうが客なら今できる最高の接待をする必要があるのです。ここ、テストに出ますよ。


話していると黄蓋さんは怪しい仮面を被った男が変な食べ物売っていて、それがうまいという話を聞きつけて場合によっては取り締まるために来たようでした。

ですがいつのまにか彼女の愚痴を聞くはめに・・・結構重要な事口走っているような気がするのですが大丈夫かこの軍。


聞けば孫策は相当蜂蜜娘にお怒りのようですね。こりゃこの世界でも独立するかな?

あと周瑜さんマジがんばれ。この人同様孫策もかなり癖が強いようで、そんな彼女達をまとめ上げる周瑜さんの胃はどれほどのものやら。

正露丸あったら送ってます。



「にしても店主、この『おでん』という物は酒によく合うのう」


「ええ、これは私の祖国の食べ物でしてね。こちらのお酒もいいですが故郷のお酒もおいしいですよ?」


「むむ!!お主の故郷の酒とやらを是非飲んでみたいのう」


「あ~言っておいて何ですが難しいですね。一からやるとなると十年ぐらいはかかるかな?」



ビールなら数年でいいと思うんですけど清酒やら大吟醸は難しいよな・・・そもそも水の形態からして違う。

ワインもそれようの環境を整えないと駄目なので放浪している私には無理です。

そもそもこのおでんの汁を作るだけでもかなりの労力と時間がかかりましたし。

みりんとかすごい制作がめんどいです。酒から造り出すのには骨が折れました。


当面の目標はからしかな・・・。

明埜達にアブラナ科の植物であるカラシナを探してもらっています。

からしがあればもっとおでんの味が深まるでしょう。


なんか明埜のほほが引きつってましたが多分気のせいでしょう。



「それは残念じゃのう・・・」



この人ほんとお酒好きだなぁ・・・。

だってここんとこ毎日この屋台に来てるもん。というより真っ昼間も酒飲んでいるらしいです。

肝臓死ぬぞ。


まぁこの人が通い詰めているおかげで商売は良い方に向かってますけどね。そういえばこの人以外の孫策軍の人も来るのかなぁと心配になったのですが、黄蓋さんはここを秘密スポットというか愚痴る場所として隠しているそうです。


それ以前に屋台だから移動できるし、見つからないようにしているんですけどね。



「まあまあ、この卵はサービスですよ」


「さーびす?」



あ、そうか。

ついつい母国語が出ちゃいました。

怪しまれぬようにしないと目をつけられちゃいますからね。



「私の国の言葉で売買した後にモノが残らず、効用や満足などを提供する。つまり私からの心配りでさぁ」


「それではお主が損するのでは?」


「な~に長期的に見てお客さんが通ってくれた方が利益が出るもんです。短期で利益を求めてもこの商売はしょうがないですからね。それにそういうお客さんは選んでいるつもりですぜ?あっしも商売人ですからね」


「ほう・・ならば頂こう。それにしてもお主、この『おでん』といい先ほどのさーびすの考えといい中々の知識を持っているのではないか?確かこの前お主が話した市場に関する話も面白いものであったしの」



そう言って目を光らせる。


あ、これやばい。


人材マニアが私を見る目と同じです。

それにこの前私も酒を飲まされてうっかり話した区画整理や人の心理分析の話が仇となったか。

こっちのお酒度数がやばいんですよね。なるべく気をつけてはいたのですが・・・というかこの人も相当酔っていたはずなのに覚えていたんですか。


汚いなさすが黄蓋汚い。



「いえいえ・・・自分なんてちょっと人より小賢しいだけでさぁ」



正直目をつけられるのはマジ勘弁です。

せっかく平和に屋台で生活しているのに何が好きこのんで歴史に介入せにゃならんのですか?

確かに自分は普通よりは強いですが、死なないというわけではありません。

ほとぼりが冷めたら天和様達と合流して、のんびりと昼間はマネージャー、夜は屋台の狐仮面として生きていくんだ~。



「ほう・・・だがそのちょっと小賢しい人間こそ今我らは欲しているのじゃ」



あ、だめだこの人。

まだ諦めていないや。


そろそろここも潮時かなぁ・・・。

ここはつみれとかの練り物が作り安いから好きだったんだけどしょうがない。

軍勤めは厳しいですし、私は平和にのんびりと暮らすのですよ。

でもどうしようかなぁ・・・思ったより商売するの楽しいんですよね。

次は焼き鳥屋でも始めるかな。













翌日。

思い立ったら吉日と言いますし、さっそく準備を始めました。

よく考えれば呉は有名所です。

そんな所に居ればこうなるのが当たり前なんですよね・・・というよりなんでここの人達は普通に町中闊歩してるんですか?おかげで結構有名な人とか目にします。

孫策さんとかもよくぶらぶらしていますよ?いや、仕事はどうしたっていう。


よく眼鏡の褐色の女性に連れ戻されてます。

大丈夫かこの国。


他の所でも目をつけられることもしばしば・・・あれか?逃がさないってか?意地でも働けってか?

そうだ!!地味な人が治めている所に行こう。

少しでも目をかいくぐって平和に生きてやりますよ!!

ええ!!


・・・なんかフラグ臭いのは気のせいだと思いたい。




地味・・・地味・・・地味ねぇ。




公孫賛?



よし、公孫賛の所にでも行きましょう。

まだ反董卓連合は出来ていませんし、しばらくは平和に過ごせそうですからね。

そう思いながら見納めにと町をぶらぶらしています。

すでに屋台は売り払いましたし、明埜達には七味の材料を探してもらっています。

からしの材料は貴重なので栽培出来るよう懐に大切にしまっています。



狐の仮面を身につけているため変な視線をもらいますが、なじみのお客さんは気軽に話しかけてきてくれます。話しかけてくるお客さんには警備の兵の人もいるので、皆さんの警戒した視線は次第と無くなっていきました。


人々が行き交うこの町は・・・うんうん、今日も平和





































「人質を放しなさい」


「放せと言われて、はい、そうですかーって聞けるかよ!」



・・・返せ!!私の平和な日常を返せ!!


心で号泣しながら見れば人だまりが見えています。

穏やかじゃないなぁ。

少なくとも今の声を聞いてうわぁ!!楽しそう!!とか考えられる人は多分いかれているか馬鹿の二択です。つまり私はいかれていてバカだというわけでして。


と言うか今の声聞いたことがあります。孫策さんですね。

あの黄巾党以来ですねぇ・・・嘘です、たびたび町中で酒飲んでるの見ました。もの凄い色っぽかったです。


でもこりゃますます嫌な予感がします。


こう言うのには関わらない方が・・・いいって解っているのに見ようとしてしまう悲しき庶民の野次馬魂。

つつつと騒ぎの方へ惹き付けられるように移動していく。


民衆に混じり影の方から覗いて見ようとすると



「お主はおでん屋の店主ではないか?」



こそこそ声で話しかけてくる人がいました。

見れば私と同じように影から覗う黄蓋さんの姿が。

いつも屋台で見せる頼りなく酒臭い姿はなく、武人としての心構えであることが感じられます。こりゃだらに嫌な予感がします。


何があったんだ?

貧乳党の連中が呉で挙兵したのか?この国は胸が大きい人が多いですからね。ならば尻の良さを彼らに教え込まねば。



「どうも・・・。いったい何があったので?」


「うむ・・・実は黄巾の残党がこの町に潜んでいたところを孫策殿が見つけたらしくての」



・・・ほう。



「当然引っ捕らえようとしたのだが、残党共は捕まるぐらいならと自棄になって人質を・・・お主、どうした」



黄蓋さんは雰囲気が変わった私に驚いているようです。

あれです、私今怒っちゃってます。でもそれをだだ漏れになってしてませんよ?鋭く、針のような殺気。

それを感じた黄蓋さんはやっぱり普通じゃありませんね。


でもそれよりも今は黄蓋さんの話したことが重要だ。


あいつら馬鹿ですね。どうしようもない馬鹿です。


ああ、気に入らない。本当に気に入らない。

本当は覗いただけで済ませる気でしたがそれならば動くしかないでしょう。



「ちょっとこの件、私に任せてもらっても?」


「・・・大丈夫なのか?」


「ええ・・・その隙に隠れて様子をうかがっている兵達に命令しちゃってください」



実はすでにこの野次馬の中に兵士が紛れ込んでるんですよね。

何故解るかって?

そりゃ一般人と兵士じゃ纏っている気が違いますよ。



「お主はやはり・・・解った。頼むぞ」


「はい」



そう言って私は群衆をかき分けて行った。

いらつき、手を強く握り込みながら。














「いやぁ・・・これはこれは黄巾党の残党さんは何をなさっているので?」



突然現れた狐の男にその場にいた全員が驚く。

孫策さんが隣まで歩み寄った私を警戒しつつ、私にしか聞こえないような声で言う。



「・・・ここは危ないから私に任せてくれないかしら」



おうおう孫策さん、凄い殺気ですね。

でもね。

今回ばかりは全部丸投げ、任せるわけにはいかないんですよ。

あんな気に入らない連中ほっとけって?

馬鹿言っちゃいけませんよ。


私は笑い仮面に手をかける。



「お久しぶりですね・・・孫策さん」



仮面を少し上げる。

私の顔を見た孫策さんは驚くが直ぐに警戒を強くし手渡しに殺気を向けてくる。



「貴方・・・まさか」



頼みますからその殺気を私に向けないでくれませんかね。

正直漏らしそうなぐらい怖いんですが。



「尻ぬぐいをしに来ただけですよ、私はね」


「・・・」



少なくとも味方・・・というのは解ってくれたみたいです。

こういう頭の良い方は私も好きですよ。



「期を見て貴方はお願いしますね」


「・・・解ったわ」



少し間を置いて孫策さんは了承してくれたようです。まぁ現状では打つ手もないですしね。あれなら私を殺せばいいですからね。


まぁ、殺される気はないので精一杯味方になりましょう。

そう言って私は前に出て行く。





































































ああ、気に入らない。本当に気に入らない。あいつらマジで何やってんだろう?

本当に救いようがない、どうしようもないくらいに救いようがない。


ああ、気に入らない。


屋台をすることは作者の長年の夢でした。

幼稚園の発表会が夢というテーマで屋台をやりたいといって先生が引きつった笑みを浮かべていたのを覚えています。


なので小説でやった。後悔はしていない(おい


おでん→呉

焼き鳥→魏

そば→蜀


だったのですがなかなか決まらない。呉は黄巾兵のイベントがある、魏は天和がらみのイベントがある、蜀ははらぺこメンツとの絡みが……どうしよう。


近くにいた友に聞く。


「おでんと焼き鳥とそばどれが良いと思う?」


「おでん、あ、はんぺん入れてね」


「おう、わか……あれ?」


おでん美味しかったです。


おでんの記述に関してふざけんなと思った人。

貴方は正常です。これからもそのままの貴方でいてください。

作者も悩んだんだ。でもね。


恋姫の公式小説にケンタッキーとコーラが出てきたからもう作者も何を信じて良いのかわかんないんだ!!おまけに本編でも石炭使わず木だけでチャーハンとか麻婆とか作ってるんだ!!中華鍋で!!


……と、見苦しい私はここまでにして久しぶりの武将紹介は以前感想覧でやることに決めたあの人です。



□□□□□□□□□


長き髪を二つにまとめた少女が剣を構えた。くりっとした目は覚悟を決めており、静かに息を吐くと。その剣を自らの足に……。


突き刺そうとしたが一人の男に止められた。


「お願い!!お願いだからその手をどけて淩統!!」


「どけられるか!!つうか何しようとしてんの!?」


「だから言ってるでしょ!!私は足が不自由なの!!だから足の筋を切って伸ばして少しでも歩けるようになるのよ!!」


「だからって剣持ち出すなあほ!!」


「いやよぉ!!過去の偉人みたいに戦場で私は風になるのよぉ!!」


ザシュッ


「「あ」」










「というアホですがどうぞお願いします」


「私は留賛!!この国の神風になるわ!!」


「……」


孫権は汗を額に浮かべ微妙な笑い顔を顔を浮かべてることしかできなかったという。

対する姉の孫策はとても良い笑みだったが。






チリーンチリーン


「ららっららららっらららら~い!!!」


チリーンチリーン


「らららっっらららっら~い!!!」



この戦場で戦っているのは甘寧、そして新しい武将の留賛だった。

その腕をまずは確かめようと思ったのだが、その武に皆驚かされた。

彼女が奮うトンフォーにより一発で多くの兵が空を舞う。実に頼もしき姿なのだが……問題が一つあった。


「ららららっらああああ~ゲホゲホ!!らららあーい!!!」


「あの、姉様。なんで留賛はあんな声出しているのかしら?」


「あ~本人が楽しいなら良いんじゃない?」


あの孫策でさえ乾いた笑い声を漏らしている。

留賛は何故か変な歌い声を上げながら髪を振り乱して戦っていた。見ている自分たちでさえこの有様なのだから敵方はさらに混乱しているだろう。


さらに甘寧の鈴の音が合わさることによりもはやこの戦場は混沌とかしていた。


「鈴が、鈴の音が聞こえてくる!?」


「じ、地獄からわき出したような声……」


「だ~れが地獄じゃ-!!ららららーい!!!」


「「ギャー!!」」


確かに、確かに強いのだが。すばらしい武将なのだが……二人は目を合わせると盛大にため息をついた。どうも呉の将達は一癖あるようだ。


これ以降彼女は「戦乱の狂歌」というあだ名がついた。彼女が出る戦場は歌で溢れ、その歌が戦で聞こえたとき呉は必ず勝利した。







「ゲホゲホ……」


「りゅ、留賛様。体調の方は?」


「すこぶる悪いかな……でも敵さんは待ってくれないみたいね」


彼女は魏へと攻めたが病により撤退を余儀なくされた。この時彼女は重い病にかかっていた。彼女は目を鋭くする、どうやら追撃が来たようだ。

今の自分では陣立てすらままならない。


彼女は将軍を示すの曲蓋と印綬を懐から取り出すとその若者へと渡す。


「行きなさい、この……これだけは汚すことは許されないのよ」


「そ、そんな!?留賛様も早く逃げ」


チャキ


「行きなさい……さもなくば貴方の首を叩き折る」


「……分かりました。ですがどうか、どうか生きて帰ってください!!」


そう言うとその若者は馬に乗って走り去っていく。

それを優しげな目で見ていた留賛はやがて見えるだろう敵へ向けて振り返る。


「らら……げほげほ」


歌おうとする血が込み上げてきた。それを服の袖で拭う。

彼女は悲しげに笑みを浮かべた。


「……もう、歌えないみたい」


□□□□□□□□□


留賛、字は正明。


会稽郡長山の生まれで、黄巾賊と戦った際に指揮官の呉桓を斬った変わりに、足を負傷し曲げる事ができなくなってしまう。


身体に障害を抱えてしまった留賛は、兵法書や歴史書を読みあさる日々を送ったものの、歴史書に登場する英雄達のエピソードを読んではため息をついていた。やがて彼は一大決心をする。


「私は足が萎えてしまってこのままでは死んでいるも同然だ。足の筋を切って、伸ばしたいと思う。」


当然親戚一同大反対だが彼は実行。なんとか歩けるようにまでその足を回復させた。その話を聞いた呉の淩統は彼を孫権に推薦することでめでたく呉の武将となる。


彼の一番の特徴はその戦い方にあった。

髪を振り乱つつ天へ向って叫び、声を張り上げて盛大に歌い、留賛に続いて左右の兵が歌い出すというものだった。

この時の彼の部隊は決して負けることはなく不敗神話を打ち立てている。


ぶっちゃけ変態集団も顔負けだと思う。


だが彼が73才、戦に出た際重い病にかかる。彼自身に撤退命令が下り、退却している最中に追撃を受けた。彼は重い病により歌うこともできず、陣立てをすることもままならなかった。彼は死をこの時悟ったとされる。


「私は将となってからというもの、敵を撃ち破って旗を奪い、一度も負けた事は無い。しかし今は、病が重く動く事もままならず、兵も貧弱だ。お前たちは逃げよ。一緒に死んでも無益だ。」


だが彼らの部下はそれを拒んで共に戦おうとしたが、病で動かぬ体で無理をして刀で斬りつける事で強引に撤退させる。留賛自身は蒋班の追撃をうけて戦死。


「俺が戦う時はいつも決まった戦い方があったが病でそれもかなわぬ。ここで死ぬのが天命なのだろう」


と言い残し最後の戦に赴き73歳の生涯を閉じた。


別名「戦場のVOCALOID」。

もうマジでいたのかという人です。不敗神話に死ぬときは歌えなかったとかもう……ここにいるぞよりもよっぽど濃いキャラ。


この人を書くのなら「私の歌を聞けぇぇぇぇ!!」って言わせてみたい。

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