第二話 名将祭
生きるべきか死ぬべきか。それが疑問だ。
~シェークスピア~
どうも波才です。
前世では黄巾党の指揮官でした。
今は普通の大学生
「何いってんだお前。漢に決まってんだろうが」
だったはずですがたぶん後漢の時代にいます。
もう本当になんなんだろう。
あれですか?
諸君、私は帰って来たー(棒読み)とでも言えと?
ふざけないでくださいよ。
私はもう平和な日本で一生を終えてあとはあの世で隠居でもするつもりだったんですよ?
日本で転生した。家族を持った。幸せな最後だった。悔いは無かった。神様、チャンスをくれてありがとう。
そう思っていた頃が、私にもありました。
神様、なんでもう一回チャンスという名の嫌がらせするんですか。
「お前その格好、俺らと同じだろ?」
チビな方が私に言います。うん、同じですね。こんな格好で歩いている人間、日本の秋葉にすらいませんよ。即不審者で警察呼ばれますよ。
ってここ日本じゃなかった。中国だった。しかも大昔だった。
「あ、いや。そうであってそうじゃないというかなんというか」
「おいおい・・・意味がわかんねぇよ」
真ん中のおっちゃんがあきれかえっています。
そりゃ私でさえ解らないのに解れって言われても困りますよね。・・・本当に、何なんだろう。
と、取り合えず私は記憶喪失だって事にしておきましょう。
「ああ、ちょいと記憶が飛んだみたいで」
「あ、まじかよ?大丈夫か」
「ええ、所で張角様はいずこへ?」
そうそう、せっかくここに来たんだから張角様へお目通りがしたい。やっぱり私は張角様を今でもお慕いしているのだ。
少なくとも今の俺なら医療の知識も少しあり病状を送らせることも出来るかもしれない。張角様が病気で亡くなっていたと知ってちょっとは医療をかじったからね。
それとなるべく反乱を起こさぬよう諭さなければ。
起こしてもこの時代の英雄達の雄飛のための贄、新しい時代への糧となるだけだ。
そう決心した私でしたが、次の一言で思わず固まってしまった。
「ちょうかく?誰だそれ?」
「へ?」
ちょっと待て。
今なんつった?聞き間違い?聞き間違いだよね?
「いや、貴方は太平道を知らないの?」
「おい、お前ら知ってるか?」
「いえアニキ、そんなもんは知りませんぜ」
「し、知らないんだな」
う、嘘だと言ってよバーニィ!?
OKちょっと深呼吸だ。じゃあこいつら何で頭に黄色い布巻いてるんだ?
それ=太平道の信者だろう?
「その黄色い布はなんで巻いてるんで?」
「あ?趣味だよ」
「趣味ですぜ」
「し、趣味なんだな」
そうか。
趣味ならしょうがねぇ。
個人の自由は偉大だ。偉大すぎて涙が込み上げてくる。
なんなんですか、まじでわけがわかりません。漢の時代に来て同胞だと思ったらただのあれな人達でした。
まだ張角様は布教し始めたばかりなのだろうか?それともそもそも張角様はいないのか?前漢なのか?
なんかもういいです。
考えても解らないことを考えてもしょうがない。今はまず一つでも多くの情報を得るのです。
「おまえ本当に大丈夫か?」
「だめだと私も思っています。悪いですがまだちょいと不安ですからあなた方に付いていってもいいですか?」
さすがにこんなわけもわからんところに一人はダメだ。もしかしたら私が知っている漢とは全然違うのかも知れない。
町の場所を聞いたとしても、そこで何か問題が起こっては意味がない。一人、一人でも多くの繋がりが欲しい。ここでは私は一人なのだ。悲しいが一人で何か出来る事なんてたかが知れている。
「ん~・・・まぁいいか服装から見て同じ稼業だしな。この稼業は人はいればいるだけいいからな」
「稼業?」
「人の物を俺たちが有効的に使ってやる仕事だよ」
そう言っておっちゃんはにやりと笑いました。
いや賊だよね?どう取り繕ったって賊だよなそれ。
もう私、昔ならともかく今は賊なんてやりたくないんだけど?平和が一番なんだけど?ラブ&ピースなんですけど?
妹よ、お兄ちゃんは今人がやっちゃいけない所に行きそうになってます。でもお前の笑顔が有ればお兄ちゃんがんばれる。
とりあえずこいつらには労働の尊さと儚さと虚しさを・・・って後半はいらない!働くことのすばらしさをその身に刻んで上げます。
「いや、ちょっと待ってくださいね。そういうことは」
「アニキ!!あそこに三人組の女がいますぜ!!」
「お、早速来たか!!新入りお前も行くぞ!!」
「お、おーなんだな」
そういって行っちまいやがりました。
……その身に刻んで上げます、物理で。
説教よりO☆HA☆NA☆SIの方が良かったんですか?白い魔王みたいに壁すら貫く私の正拳突きかました方がよかったんですか?
まったく、人の話は最後まで聞けってお母さんに言われなかったのですか・・・。
ちなみに私はむしろ言う側でした。
だって両親が話聞かないで行動しちゃうような人だったんですもの。
昔妹が生まれる前に、ツアーかなんかで集合時間聞かないで行っちゃったからすごい時間に遅れて迷惑かけてたなぁ。
その時、波才に電流走る!
そんな両親の所に妹が一人だけなの思い出した!
このままだと妹も染まっちまう!「お兄ちゃん、ちょっとあんぱん買ってこいや」とか言っちゃう子になるかも知れない!あ、でもそんな妹も愛せる!ってそうじゃなくて、ああもうなんですか。
くそったれです・・・はやく、はやくなんとかしないと。
ん?なんとかしないと?
「あ~あの人達止めるの忘れてました!!」
くだらない・・・いや!最重要事項だがしょうがない、早く終わらせてこの案件を解決せねば!!そう思って私は彼らの下へ駆け出しました。
追いつき分かったことですが、どうやら狙われたのは女性の三人組らしいです。
一人は頭に人形をのせた金髪の少女。・・・なんか人形が大阪万博のあれっぽいですけど。なんか口にペロキャン咥えてるんですけど。
あれ?ここ1800年前ですよね?漢ですよね?あ、そうか。実はこの時代にもペロキャンが・・・。
ねーよ!!どう考えてもねーよ!!まだ冷や飯食ってる時代ですよ?!?なんでこんな時代に飴細工があるんですか!?
お、落ち着くんです。まだ慌てるような時間じゃありません。そう思い二人目の眼鏡をかけた気が強そうな少女を……。
わ~眼鏡ですね。目が悪いんですよね。そうだよな~目が悪かったら眼鏡をかけるもんですよ。
この時代も例外ではない・・・わきゃねーだろ!!何!?なんで眼鏡なんてあるの!?
し、深呼吸です。も、もしかしたら眼鏡はこの時代にあったのかもしれません。ほら、孔明とか本の読み過ぎで目が悪くなって眼鏡をかけたんですよ。よし、そう思えばそんな気がしてきました。
そして最後に・・・・。
青い髪、白い服・・・ああ、ナース服ですか。もう突っ込まない。そうだ、漢の時代にもナース服はあったんだ。高校時代に習った世界史は間違いなんだ。
中国は200年頃にはペロキャン、眼鏡及びナース服の開発に成功。きっとこれが真実なんです。ええ、真実ですとも。
・・・。
・・・何だろう、頭が痛くなってきました。ついでに目頭も熱くなってきました。
もういいや、それよりも。
青い髪女性の手には赤槍が握られている。ぱっと見、それが最初槍だと理解出来なかった自分はおかしくはないと思いたい。
先が二つに割れた赤槍など聞いたことがない。それ以前にあのような槍をこの時代に製造できるものなのか。
纏う闘気は達人のそれと同じ、いやそれ以上。
あの人達それに気がついてない。
このままだと間違いなく死ぬでしょうね。
青髪の女性は人は実際に何人か、何十人か殺しています。その目、己の得物を構えたときの迷いの無さ。
背中に寒気がします。この時代は本当に人の命が軽い。
別にあの盗賊さん達は自業自得、ですが目の前で死ぬのは夢見が悪い。
それにこの格好の自分が頼れるのはあの人達しかいないでしょう。服を買いに行こうにも
「服をください」→「きゃー無法者よ!?」
そんな光景がありありと目に浮かぶ。頼れる人は賊しかいません。DQNとかそんなレベルじゃありません。
なんかもう涙目です。
って青髪の殺気が強くなりました。
ああ、なんでまたこんなところに身を置くとは考えもしませんでしたよ!!神様のクソッタレ!!
~星 Side~
まったく。
近頃はこのような身の程知らずの賊が多い。やはり今のこの国は荒れている。
ここに来るまでにすでに数回賊と遭遇し戦闘になった。
そして今も。
「へへへ、嬢ちゃん。持ってる物全て置いてきな」
「おいていけ!」
「お、おいてくんだな」
「まったく、お前達のように民を脅かす連中がいるから人々は安心して暮らせないのだ」
もう何度目なのだろうか。あまりにも多すぎて覚えていない。
国自体が腐っている今、国自体が変わらなければこのような輩は消えないだろう。だからこそ我らは真の主を求めて旅をするのだが……やれやれ。
女三人ではどうも軽く見られる。
「このあま・・・女だからって下手に出りゃぁ」
「女・・・だからといって油断するとその首が落ちるかもしれんぞ」
そう言って私は笑う。
己と相手の実力がわからない者達の道、その先に待つのは死だ。
この者達もそれを辿ることになるだろう。
「へ、よくみりゃ上玉じゃねぇか。倒した後にわからせてやるよ」
下卑た笑みを浮かべる男。
下衆が。私達のようなものに被害が出ぬよう生かしては返さぬ。
槍を静かに構える。
「恨むなら己の未熟さを恨め」
「ぬかせ!!」
そう言って斬りかかる男の剣をはじき飛ばすとそのまま一閃。
だがその一撃は予想外の部外者によって防がれた。
~波才 Side~
あぶねぇ。
槍を剣で受け止めたましたがとんでもねぇ速さです。
あと数コンマ遅かったらおっちゃん死んでましたね。
少なくとも吹っ飛ばされてしばらくは動けなかったはずです。
「貴様・・・何者だ?」
「悪いですね。私の知り合いが迷惑かけました。その剣、引いてもらっちゃくれませんか?」
「外道に引く槍など持ち合わせていない!!」
流石にこちらから仕掛けておいてごめんね、許してくれとか虫がよすぎですよね。
そう言って槍で私の剣をはじく・・・否、弾かれざるを得ない。この少女どこにこんな力が!?
慌てつつも冷静に距離を取る。向こうもこちらの出方をうかがっているようですが・・・一つ聞きたい、貴方人間ですか?一体その細腕のどこにそんな力があるのですか。
おっちゃんはちょっとそこで反省してろ。
繰り出される槍の応酬を剣で受け流す。受け流すことしかできない。
もしこれをまともに受け続ければ、間違いなく腕が使い物にならなくなる。
私も剣で斬りつけるがかわされ、受け流される。
一撃一撃が重く鋭い。動作にまるで無駄が無い。
「っちぃ!!」
槍を受け止めたがくそ重いです!!本当にあの細腕のどこからこんな力が出てくるんですか!?私今なら貴方が魔法使っているって言っても信じちゃいますよ!?
槍を引き戻すと同時に相手の懐に潜り込み突き上げるが余裕を持ってかわされる。
そして反撃に迫る赤槍、髪が何本か持って行かれましたがしゃがんで回避を成功させ・・・。
だが途中で軌道が変わり頭上に槍が迫る。ここで軌道を変えるなんざありですか!?
どう考えても人間業じゃない。慌てて槍の側面を拳で弾く。
これには少女も驚いたのか目を見開いて隙が出来た。ここしかない!!
一歩、相手の前に進み出て。
二歩、繰り出される槍をくぐり相手の視界から消え。
三歩、切り上げたたっ切る!!
「!?」
避けられた!?でもまだ終わりません更に踏み込み肘で突き通す!!
そう思い付きだした私の肘は彼女がとっさに構えた槍で受け止められた。
ですがそれだけでは衝撃が抑えきれなかったのか、彼女はそのまま地面を足の裏が擦り五メートルほどの距離が出来る。
「(うわぁ・・・この人命のやりとりに慣れてますね)」
まず全く躊躇がない。そりゃ賊相手に躊躇などする必要が無いのだが、あまりにも手慣れすぎている。何故なら彼女が突き、薙ぐ場所は首が主だからだ。
人間当たり前だが、首をはねられれば死ぬ。それは腹を突かれても同じなのだが、重要なのは為す術もなく死ぬかあがけるかだ。
首をはねられれば当然あがくどころの話では無い。即死だ。
それを理解するからこそこの少女は隙あらば私の首を狙うのだ。
以前私を厳しい目で見る少女に思わず嘆息が出てくる。
正直殺し合いなんざしたくない。あの平和な世界を体験した俺にとって人を殺す事は胸くそが悪い物に変わっていた。
だがこの時代は平和などではない。人の命が二束三文の金より安いのだ。
目の前の少女は私を殺したい。だが私は殺されるわけにはいかない。
「(久しぶりに『覚悟』ってやつを決めますかね・・・)」
剣を新たな構えに変える。この構えはカウンター式の構えだ。彼女の攻めに応じ、その命を刈り取る。
だが『覚悟』とかっこをつけたものの、このままだと死ぬかも。
正直私が命のやりとりをしたのはもう20年も前の話です。いくら現代で武を収めたとしても、それは断じて人殺しではなく自衛のもの。
負ける気もありませんが勝てる気もありません。ですが乱世の剣と治世の剣では差がありすぎるんですよね・・・。
話し合いでなんとかなんないかなぁ・・・。
「もう一度言います、槍を引いてくれませんか?」
「どちらかが勝つまで我が槍は引けぬ」
「どうしても、ですか?」
「くどい。だがわからない。何故お前ほどの者が賊に身を落とす?」
お?話を聞いてくれるかな?これが最後のチャンスです。
「ならばまず一つ。こんな格好してるが私は賊じゃありません」
「む?」
「私はこの者達の行いを止めるためにここへ来ました。この者達をかばい立てするのは案内を頼みたいからだであって同じ賊だからということではありません。それにこの者達にも今回の件、賊をやめるようよく言って聞かせることを約束しましょう」
「・・・」
「お願いします」
「・・・解った」
そう言って彼女は槍を下ろす。
「お主の剣と目には曇りがない。お主を信じよう」
曇りとはなんぞやと突っ込みません。藪をつついて蛇を出すなど体験したくもない。
そう思い肩の力を抜き深呼吸をする。額からこぼれた汗をようやくぬぐえた。
命の削り合いは本当に疲れる。いや、これは疲れたで収まるようなものじゃない。ですが残念ながら私はこれを疲れたで済ませる語学力しか持ち合わせていない。
だからあえて言いたい。
本当に疲れました。
もう百年はこんなことしたくない。この世界に来て最初にしたことが殺し合いなんて笑い話にもならない。
二度としたくありません。
でもこの子何者でしょう?
私は改めて青髪の少女を見つめる。
私のように疲れた様子もなく、平静を保つ青髪の少女。
そのか細い体からは想像もつかない力を持ち、躊躇いもなく人を殺せる覚悟がある。
もしここが本当に漢ならば、ここまで戦えるならば、多少名が残ってもおかしくはない。というかナース服で強い乙女とか聞いたことがない。
・・・本当に何者なのでしょうね。
「ありがとうございます。所で貴方の武、本当にすごいですね。正直肝を冷やしましたよ」
「お主こそ。ここまでの者はなかなかおるまい。そうだ、私の名は趙雲。お主は?」
「ああ、私の名前は波才と・・・今貴方、なんて言いました?」
「ん?お主ほどの者はなかなかいないと」
「その後ですよ、その後!貴方の名前です!」
「趙雲・・・だが、どうかしたのか?」
・・・。
「(ええええええええええええ!?)」
内心大絶叫を上げた。
頬が引きつり先ほど以上の汗が額から溢れ出てくる。
まぁまず落ち着け。ちょっと待つんだ。
趙雲っていったら男だろ!?どう考えたってナース服来た女性なわけ無いんですけど!?
あれですか!?三国志の趙雲は長坂をナース服で駆け抜けたと!?そんなこと三国志ファンに言ったら袋だたきにされますよ!?
あ、もしかして同姓同名さんか?
または微妙に字が違うとか。
そ、そうですよね~女の人が趙雲子龍とかないですよね。焦った私が馬鹿みたいです。
「星ちゃん、この盗賊さんとは話がついたので?」
今度は頭に太陽の塔のような人形をのせた女の子が話し掛けて来ました。
この世界のファッションは本当に変わってるなぁ。いや、変わってるなで済ませたら本来はいけないんですが。
ちょいと時代を先取りしすぎです。最先端というか最異端です。
もう一人の眼鏡の子も結構変わっていますし。
「ああ、かくかくしかじかでな」
「ふむふむ、まるまるばつばつということですね」
眼鏡の子と趙雲ちゃんが漫画みたいな話し方してますが何言ってるのか解りません。
ふむ。
「そこのお嬢さん?」
「風のことですか?」
「はい、実はかくかくしかじかで」
「ふむふむ・・・お兄さんはずいぶんと甘いですね。普通は助ける人なんていませんよ?」
おお!!やってみるとできた!!すげぇ!!これが異文化コミュニケーションなんだ!!
・・・突っ込まない。絶対に突っ込まんぞ。
そういえばこの二人の名前も気になるな・・・。
まあ流石に趙雲の越えるほどの有名な名前じゃないでしょう。
ていうかそうであって欲しい。
「ははは、自分でも変わってると自覚してます。所でおなた方のお名前も伺っても?」
「私は戯志才といいます」
「風は程立です」
戯志才:郭嘉が来るまで曹操の軍師役をしていた人物。曹操が死んだときにとても惜しんだほどの実力者
程立:程昱の改名前の名前。軍略と計略に優れた軍師。演技では「十面埋伏の計」を用いた
・・・逃げよう。
巻き込まれる前に逃げよう。
あ、ま、待つんです。そうだよ、この人も同姓同名かも知れない。
「あの~もしかして趙雲さんって字が子龍で、程立さんが仲徳じゃないですよね?」
「あれ?風は字をお兄さんに教えましたか?」
「いや、教えてはいないはず。・・・そなたは何者だ?私の字を何故知っている?」
あ、これ夢だ。
そう思い頬をつねると痛かった。夢じゃねぇ。
な、なんなんですか。趙雲がいる蜀関係者だと思ったら私の天敵、曹操の腹心じゃないですか。
というか史実ならこの時期に彼らは旅をしてないし・・・やっぱりここはパラレルワールド?
頭が痛くなってきました。だれか、キャベジンください。
「迷惑をかけて申し訳ありません・・・私は波才と申します。ほら、貴方たちも詫びなさい」
そういって後ろの空気になっていた黄色い三人組に声をかけます。
「え?いや」
「詫びないなら俺が殺す」
「「「すいませんでした!!(だな!)」」」
まったく。
もとはといえば原因はあなた達なんですよ?
って見れば趙雲さんは目を険しくしてますし、程立ちゃんは目を見開いて驚き、戯志才さんは冷や汗を垂らしています。
「お兄さんは裏表が激しいですね」
「人間はみんな裏表が激しいですよ」
「貴方はそう言うわけでもない気が」
「気のせいですよ、気のせい」
「今の殺気・・・波才殿は先ほどの戦いは手加減していたのかな?」
「あれが私の精一杯ですよ」
「ふむ・・・いずれ機会があったなら本気でやり合いたいものですな」
ふざけんじゃありません。何が悲しくてあの趙雲とやり合わなくちゃいけないんですか。
そんなフラグはいりませんて。
私は平和にのほほんとすごしたいんです。
そう思った私だが、ふとはるか向こうから土煙が舞って来るのに気が付いた。
・・・何かものすごい今以上に嫌な予感がします。
「あの土煙はなんでしょう?」
「おそらくは陳留の軍が来たのでしょう。ここらには賊がよくでますから討伐に乗り出したのでは?」
戯志才さんありがとうございます。後ろのバカ共のせいですね。
じろりとさっき以上の殺気で後ろのバカ共を睨み付けます。
いや別にしゃれじゃありませんよ?
・・・ん?陳留の太守?
更に嫌な予感が増したんですけど。
「陳留ですか。どなたでしょうね?」
「お兄さん、陳留と言えば曹操さんしかいませんよ?」
へぇ・・・曹操かぁ。
曹操ねぇ。
曹操なのかい?
曹操じゃないかなぁ?
曹操・・・
「曹操に天下見るならば、曹操の下におれ!」
頭ん中で某漫画の曹操さんが叫びました。あらかっこいい。
「う、うわぁぁぁぁぁぁおい黄色トリオさんさっさと町に行きますよ!!このままだと貴方たち捕まりますよ!!!」
「な!?おいお前らいくぞ!!」
「へ、へいアニキ!!」
「い、急ぐんだな!!」
「は、波才殿?何故貴方までそんな」
趙雲さんに他の二人も唖然としてますが説明してる暇はない!!
「みなさんお世話になりました!!それではごきげんよう!!」
そう言って私は全速力で後ろを見ずにその場を走り去りました。
なんなんですか!?頼むからこの状況を落ち着いて整理させてくださいよ!!
~星 side~
あの者・・・なかなかのくわせものだ。
私の槍を全て受け流した。そして最後のあの一連の動き、下手をすれば負けていたのは自分・・・か。
あまつさえまだ実力を隠していると見える。
面白い。
あのような者達がいるからこの世は面白いのだ。
「お兄さん達は足が速いですね・・・もうあんなとこまで」
「風、我々も早くこの場を去らなければなりません。今はまだ、その時じゃありませんので」
「うむ、稟の言うとおりだな。早く離れよう」
ふふふ、波才殿。
また貴方と会う時を楽しみにしていますぞ。
~波才 side~
ん、なんかもの凄い寒気がした気が・・・
でも今はそんな暇はない!!
あの時のトラウマが!!曹操がぁ直ぐそこまでぇ!!曹操がぁ馬で襲撃!!曹操がぁ火計でキメタァァァッァァァァ!!って何を混乱しているんだ私!?
そ、曹操。今は私は逃げることしかできません。
ですがいずれかはあの時の借りを返させていただきますよ!!
「だからこれは戦略的撤退なんです!!逃げてるんじゃありません!!」
私は必死に荒野を三人と共に駆け抜けた。
足が・・・足が痛い。
今回はあれな回でした。
シリアスはまた書かなくてはいけませんね・・・作者はシリアス苦手です。
戦闘描写とシリアスをうまく書ける人は凄いと思います。
風が・・・寒いです。
そういえばそろそろ花粉症の時期ですが今年は大変そうですね。
薬を飲まないと・・・。
次回は三姉妹と出会う予定です。