第十三話 朝が来るまで待って
四十九年
一睡の夢
一期の栄華
一盃の酒
~上杉謙信の辞世の句~
さっそくですが。
もう黄巾党が滅びます。
思ったよりはもった方ですかね。
そりゃいくら私達ががんばったってそれは一部であり、氷山の一角です。
周りの黄巾党の皆さんは次々と敗北していきました。
私達がいくら勝とうと他の皆さんが勝たないと意味ないんですよね。
それに国は無理としても集団として形態を保てない時点でもう黄巾党は終わりなのですよ。
募るならともかく、募ってもいないのに勝手に増えていく兵士達をどうしろと?
どんなに優秀な人間でもそれら全てを知りて行動するのは無理です。
それに劉備やら孫策やら曹操さんに普通の農民上がりでなんの訓練もしてない人たちに勝てと言う方が酷です。
というか演技補正付きの孔明とか関羽とか呂布とかに勝てる気がしないのは何故だろう?
三国無双の連中が来なかっただけマシと思うべきか……。
あ、でも呂布が黄巾党三万切りしたそうです。
三万かぁ……なんだか重火器使っても勝てる気がしません。
呂布止めるのに核で足りるだろうか?
少なくとも英雄達相手になんの後ろ盾もなくよく持ちましたよ。
私だってもうやりたくないですもの。
正直、曹操さんと会った瞬間見定めることができましたが、同時に回れ右して逃げたくなりました。
だってあれです。
後ろからとんでもオーラ出てましたよ?
無理無理、明埜がお淑やかになるぐらい無理。
グサ
・・・最近明埜が心の声を読んでる気がしてならない。
もう人の域越えてないかな。
あれか、ついに異常になったってか。
てことはCCOじゃなくてくじらだったのかぁ。
そんなこんなで私達は本陣に帰還しています。
正直これ以上戦うのは無駄でしかありません。
「・・・・とうのが現状です。おそらく、もうすぐここもばれちゃうでしょうね」
久しぶりに会った天和様達は元気そうでした。
一号達・・・約束を守ってくれていましたね。
ありがとうございます。
ですがやっぱりお顔は優れませんね。
そりゃ私が今死刑宣告したからなんですけど。
でもやっぱり美人さんには笑っていて欲しいですね。
「・・・私達達、死んじゃうの?」
不安そうな目で見つめてくるのは地和様。
いつも元気な彼女もこの時ばかりは暗い顔です。
「普通に考えれば死ぬでしょうね」
人和様も何か諦めた顔をしています。
「・・・やっぱり、私のせいで」
天和様も。
もうあれです。
こんな空気はいやですね。
さっさと進言しましょう。
「そうでしょうね。張角様達はここで死ぬでしょう」
「「「・・・」」」
「そ、そんな!?旦那!!どうにか出来ないんですかい!?」
「それはできません。張角様達はもはやこの大陸の敵。例え逃げたとしても地の果てまでこの国の将達が追い続けるでしょう。張角様はどうしてもここで死ぬ必要があるんですよ」
そりゃ大陸を巻き込んだ大乱。
中には罪もない者達も殺されましたし、その大乱の大本が生きているってのは示しがつきません。
それ以前に飛躍の時を待つ龍がそんなおいしいモノを食べずにいられるわけがない。
まぁ、食べたモノが何であろうと気にしないでしょうけどね。
龍はなかなか悪食ですから。
口に形だけでも入れば何喰ってももんく言わないでしょうから。
「・・・でも、張角様達が死ぬのであって天和様達が死ぬわけではありませんよ?」
「「「「「!?」」」」」
「そうか、そう言う手が・・・」
おや?人和様は解ったようですね。
「波才!?どういうこと!?」
「そ、そうだよ波才さん!私達が死んで死ぬわけでもないってどういうこと?」
「そうですねぇ・・・私が説明ばかりするのも疲れますし、人和様がどうやらお解りのようですが」
「本当なの人和!?」
「姉さん落ち着いて。ようするに私達は死ななくちゃこの乱は終わらない。それは解る?」
「うん、でもどういうことなの?」
天和様が不思議そうに顔を傾ける。
え?何このかわいい主。
は、破壊力がはんぱない!!
我が友が「わふぅ」とか「あぅぅ」とか訳解らないことを最強だ!!とか言ってたのを白い目で見てましたけど今なら解る。
これがジャパニーズ「萌え」。
た、耐えるんだ波才。
今はシリアスだと言っているだろう。
あ、無理かも。
だって鼻から溢れ出る忠誠心が
「「「グハァ!!」」」
一号達が血を吐いた!?
うわぁ幸せそうに倒れている。
いい顔してるだろ。萌え死んでんだぜ、こいつら。
たぶん悔いはないでしょう。
私だってもし彼らだったとしたら無い。
むしろ本望。
「つまり、私達が死んだことにするっていうこと」
「そっか!!私達のことを知っている人たちは少ない」
「それに出回っている手配書も別人みたいなんだけど・・・波才さん、私はあんな酷い顔じゃないよ」
三人からは無視されてます・・・。
なんかかわいそうでなりません。
ってか天和様の顔が阿修羅になってるんですが。
錯覚だよね?なんか牙生えてるけど錯覚ですよね?
これあれですか、まこ○死ねじゃなくて波才死ねってやつですか。
ていうか今気がついたけれど天和様の声、コトノ○様に似ていませんか。
死ぬ・・・このままじゃ間違いなく死ぬ。
「天和様!!」
そういって私は天和様の両手を掴み、天和様のお顔に自分の顔を近づけます。
こうなれば恥など知らない!!まず生きる!!生きなければ!!
「///!?」
「申し訳ございません・・・この波才、この時のためにと天和様から余りにもかけ離れた醜い姿に手配書を書きました。本当は天和様の美しくかわいらしいお姿を大陸中に知らしめたかったのですがそれでは天和様が死んでしまいます。いくら天和様達を守るとは言え美しい天和様を醜く描いてしまったのは事実・・・この波才、その多大な罰を受けましょう!!」
そう言って目を伏せる。
ここまで謝ればきっと解ってくれるはず!!
「うん・・・そこまで言われたらしょうがないかな///」
っく、まだ顔が赤いというのは怒っているのか!?
意外と女の子は根に持つからなぁ・・・財布が痛いが食べ物で気を直してもらうしか
グリッ
「痛っ!?」
何ですか!?
今手に地味な痛みが・・・
「ふ~ん・・・お姉ちゃんにばっかりそんなこというんだ」
鬼がいた。
なんで!?なんでこんなことになってるの!?
なんで地和様までそんな目で私を睨むんですか!?
そんで手をねじるのを止めてくれない。
すんごい地味に痛い。
っく!!なんだか解りませんが取り合えず地和様を
ッガ
「って今度はなんですか!?」
足にもの凄い痛みが!!
確実に弁慶の泣き所やられました。
こんな的確な一撃いったい誰が
「・・・」
人和様が怒った顔でバリバリ睨んでいました。
え、なんで一番冷静でまとめ役の人和様まで怒ってるの?
先ほどまで普通にしていたじゃないですか。
それに手配書の件は知っていましたよね?
描かれていたのは天和様だけでしたよね?
「ふ~ん、なんで人和まで波才をやるの?」
「・・・なんだかムカってきたから」
「そうかぁ・・・人和も敵ってわけね」
「・・・」
・・・何が何だか解らない。
思わず某甘党探偵顔になってしまったけど・・・。
なんで?ナンデこの人達が急にこんな険悪な雰囲気になっちゃってるの?
天和様に助けてもらおうと目を向けると夢心地でぼーっと立ったままです。
え?私死ぬん?
「ま、まあまあそれよりも話すべき事が」
「「波才 (さん)は黙ってて!!」」
「・・・はい」
あれです。
女の人に勝てる男なんていません。
下手したら曹操さん以上のオーラが今感じましたよ。
だれか・・・ホント助けて。
「主、明埜からの報告が・・・ってどうなされたので?」
美須々ナイス!!
貴方は今の私にとってキリストやブッタ以上の存在ですよ!!
「「っち」」
うわ~舌打ちしましたよこの子達。
ていうより人和様?貴方キャラ変わってますよ?
ファンの皆さんが見たら悲しみ・・・一部喜びそうな人もいそうな気がしますけど腹黒アイドルって需要無い・・・あれ?ある気がする。
私は何に悩んでたんだろう。
「もしや私、何か粗相を」
「いえ、大丈夫です。それよりどのような報ですか?」
私がすごい大丈夫です。あとでいいこいいこしてあげましょう。
「っは、各地で曹操、劉備、孫策などの将がここを見つけたようで軍備を整えている模様。おそらく明日の夕方にはこちらに到着とのこと」
おやおや・・・一刻の猶予も無いようですね。
天和様達も目が覚めたようで。
よかった・・・あのままの状態だったらたぶん私の胃がやばかった。
「一号、二号、三号」
「「「っは!?俺達は何を(なんだな)」」」
「取り合えずその鼻血を拭いて。どうやら時間がありません、今すぐ天和様達を連れて近くの町まで行きなさい。美須々、貴方は私と共に最後まで付いてきたくれた我が兵に説得をしに行きますよ」
あれからそろそろ限界だと思った私は自分の軍を解散させました。
自分たちが憂う存在になってしまったことにうすうす感じていたのでしょう。
彼らは私のもとを去っていきました。
それでも半分以上がその場に残ったんですよね・・・。
いつの間にか私に付いていきたい、波才様の部下のままにして欲しいって。
私は時代が変わるときが近いと彼らに言いました。
もうすぐ自分たちが望む時代が来る、我らはその基礎を築いた。
だが礎にまでなる必要はないと。
生きて平和に、幸せに暮らして欲しいと。
なかには涙を流している者も居ました 。
悔しいですよね、私も悔しいですよ。
なんで時代を憂いて立ち上がった貴方達が、この国だけならまだしも自分達と同じである民からも悪と蔑まれ、睨まれなければならないと。
この中には罪もない民を襲うような愚か者はいません。
国を憎み、憂い、立ち上がった者だけです。
それが他の多の愚か者のせいでこんな惨めな目に遭うんですものね。
今、それでも私のもとで戦いたいと残った数百名と本当に天和様達を好いて集まっているファンの方約二万を除いて、他の数万の大半は略奪や罪のない人を殺した者達です。
彼らには時代の礎になってもらいましょう。
・・・ファンの方にも逃げてもらいたいですね。
出来る限り時が来るまでに逃がさなければ。
「ちょっと待って」
と、陣幕から出て行こうとする私を止めたのは天和様。
「波才さんはどうするの?」
「そうよ、あんたはどうするのよ?」
「貴方も私達と一緒に・・・」
「それは無理です」
「「「「「!?」」」」」
「誰かがここに残らねば不審に思った者達が出て行ってしまいますからね」
そうなっては本末転倒だ。
張角様はここで死ななくてはならない。
ここで感づいて続々と逃走されては「張角がいた」という信用が薄くなる。
だからこそ、旗印で在る者が残らねばなりません。
「何も死ぬと言っているわけではなりませんよ。大丈夫です、私もすぐに後を」
「嫌!!」
私は天和様の声で全ての動作が止まりました。
それほど力強く、整然とした声だった。
普段の天和様からは想像も出来ないほどの。
「絶対に嫌!!」
「そうは言っても天和様。誰かがここに残らねば」
「嫌ったら嫌なの!!」
天和様がまるで子供のように私の言葉を一様に拒否する。
そして私に抱きついて両腕を私の腰に巻き付けた。
「て、天和様!?」
「絶対にぐす・・・絶対に嫌にゃの」
その目からは大量の涙がこぼれている。
「ずっと・・・ずっと後悔していた。私のせいで波才さんが戦争に巻き込まれてしまったことに」
「天和様・・・あれは前回話した通り、いずれかは起こる「でも原因は私じゃない!!」」
「戦に向かう波才さんの姿は・・・とても格好良かったけど、同時にとても悲しそうに見えた。波才さん、本当は貴方戦いたくなんてないんでしょ!?」
「・・・そんなことは「嘘だよ!!」」
結局私は今でも悩んでいる。
本当は人なんて殺したくない。
平和に、幸せに普通にすごしていたかった。
あの平和な日本での生活を捨てきれていなかった。
隠せていたと思っていた。
事実、もっとも戦っている時に近くにいた仲間三人は気付いていなかった。
だけど天和様は気付いていたのですか・・・。
「だからもう戦わなくていい、危ない目に遭わなくていい、私達と昔のようにまた旅をしよう?昔はたくさんの人に私を愛して欲しかった。でももうそんなことは思ってない」
天和様から涙が一筋こぼれる。
赤く蒸気した頬が、艶やかな唇が、優しい目が、私の心の鼓動を早くする。
「今みたいにみんなに好かれなくていい、嫌われたっていい。ただ、波才さんだけには私のそばにいて欲しい。お願い・・・もう、一人にしないで。ここで波才さんが死んでしまったら私・・・私」
守りたい、今すぐに彼女を抱きしめてあげたい。
そうして私も彼女と一緒にここから去っていきたい。
それはとても魅力的で
誘惑が強い
毒だ。
それは無理なんですよ。
逃避行が許されるのは物語の中だけ、現実は許してはくれない。
確かに私がここからいなくなっても気付かないかもしれない。
でももし、それを知って不自然に思った者達が逃げ出したら?
ここで私が逃げたならもしかしたら追っ手で彼女が死んでしまうかもしれない。
だからそれはできない。
「天和様・・・」
そう言って私は天和様を優しい声で呼ぶ。
「・・・波才さん」
そう言って天和様は伏せていた顔を上げて私を見る。
本当に綺麗で、美しくて、それ以上に優しいお人です。
だからこそ・・・生きていて欲しい。
~天和 side~
体に衝撃を受けた。
「(え・・・?)」
声を出そうとしても出ない。
意識が・・・闇に落ちていく。
落ち行く意識の中で波才さんが私にしか聞こえない声で言った。
「これは悪い夢だったのですよ。逃れられないね・・・。だから貴方は夢から覚めてください」
それはとても儚く、温かい声だった。
でもそれ以上に、とても悲しそうだった。
みなさん一ヶ月ぶりです。
活動報告で書きましたが地震によりいろいろ危なかったです。
地震で壊れたPC(基盤がアボン)がまだ帰ってこないのですが、流石に一話ぐらい投下しなければと親友の家にて更新中。
今回の地震は本当に凄かったです。
まず津波が恐ろしい。
津波はあと何分後来ますから逃げてと指定された時間よりもずいぶんと速く到着しました。
翌日件の場所へ行くと……あれ?道路から先が海なんだけれど?
潮がまだ引いておらず道路の先には海(色が本当に海で潮の香りが)でした。
潮が引き始めた後、現地の友を手伝いに自転車をこいで(ガソリンが手に入らないため)行ったのですが……カラスが何やら集まってるんです。
何だろうと思ってよく見ると人の形をしているんです。
地獄でした。
よく考えれば磯の香り以外にも何かが腐敗したような臭いがするのです。
その原因は……考えるだけでいやでした。
携帯で警察に連絡したくても充電できないから連絡は出来ないし、ただ手を合わせることしかできませんでした。
仮に充電できたとしても通じないから意味はなかったかもしれません。
民家はみんな壊れていて、昔私が家族で食べた食堂が流された跡をみて涙が溢れてきました。
何故か無性に悲しくて、同時に命があって良かったと安堵してしばらくその場で動けませんでした。
その日はどうしても自分の感情を操れず、友人には謝って後日にまた手伝いに行きました。
メンタル弱くて情けねぇです。
今回の地震で犠牲となられた皆様に深く、哀悼の意を表すると共に、被災された方・そのご家族、関係者の皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。
パソコンが戻って来たわけでは無いので次の更新は来週か……はたまた再来週か。
書きだめも本編見ないとどうしても書けないので早くパソコン戻って来てほしいですね。
そして四月なのでますます忙しくなるという……しかも震災での遅れがいろいろ酷いという。
パソコン戻っても四日に一度更新は無理になるかもしれません。
多分週一が限界かなぁ。
そんな駄目な作者ですが、それでも「構わん、やれ」と行ってくださる方。
どうぞこれからもよろしくお願いします。