07-緊迫の対面
ガサリ。
わざと音を立て、姿を現した。
騎士たちが一斉に剣を向ける。
私は小さい。
魔物よりずっと小さい。
でも、彼らの目にはどう映っているのだろう。
「ま、もの?それにしては……」
「猫にも見えるな……」
警戒と困惑。
少し、申し訳なくなる。
私は静かに魔法を発動させる。
——「清浄」。
風で煤を払い、
水で清め、
火で乾かし、
光で付着した穢れを浄化する。
本来は猫の姿で身繕いを楽にするための複合魔法。
けれど。
鎧の焦げが消え、
血と泥が洗われ、
荒れた地面までもが整っていく。
……しまった。
彼らだけのつもりが、周囲まで影響している。
緊張で制御を誤った。
「何だ!?」
「鎧が……!」
さらに困惑させてしまった。
視線が下がる。
「これは、あなたがやったのか?」
顔を上げる。
守られていた少年が、真っ直ぐ私を見る。
「先程の雨もか……?我々を助けてくれたのか……?」
答えない。
ただ、敵意がないことだけを伝えるように見つめる。
やがて彼は騎士たちに武器を下ろさせた。
「……彼を、我が騎士団長を、助けていただけないだろうか……?」
縋るような声。
胸が痛む。
助けられる?
そんな力が、私に?
私は“無能”だった。
今だって、確信なんてない。
でも。
何もしなければ、私はきっと後悔する。
静かに立ち上がる。
瀕死の男のもとへ歩み寄る。
焼け爛れた肌。
深い傷。
怖い。
けれど。
小さな足を、そっと傷口に触れさせる。
心の中で唱える。
——「治癒」。




