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盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第1章
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26-テオドールの謝罪

その日はもう遅い時間だったため、後日改めてセラフィーネ様の容態を確認しに行くことになった。


エルリックさんに代わり、テオドールとカトレアさんが私の護衛と部屋への案内をしてくれることになった。


「……恩猫様。部屋に向かう前に、ひとつよろしいでしょうか」


歩き出そうとしたところで、テオドールが口を開いた。


「私は、母上を救うためのポーションに必要な素材を採りに、あの森へ向かいました」


「ですが結果は、あの通りです。

収穫も無い上に、犠牲者を出すところでした」


重く事実を語るその声は、責任を強く感じているのが伝わってくる。

上に立つ者の重さを、若くして受け止めている姿に胸を揺さぶられた。


「……そんな時に、恩猫様。あなたに出会いました」


「あなたがあの場を、そして私達を救ってくれた。

とても感謝しています」


穏やかな声になり、表情も少し柔らぐ。

その言葉が本心であることはよく分かった。


けれど、多分――この話だけではない。


彼が今これを話し始めた理由は、きっと別にある。


「だからこそ、御恩を返そうと思い、領地へお招きしました」


「ですが……」


テオドールが足を止めた。


再び声の調子が固くなる。


「その一方で……あなたを、母上の治療に利用しようと考えていたのも事実です」


「我が家で保護し、領地で安全に過ごしていただきたいというのも、本心です。

ですが下心があったのもまた事実です」


「本来ならば、この話をした上で、母上の治療の依頼を私からするべきでした」


「……申し訳ございません」


そう言って、深く頭を下げた。


その姿は誠実だった。

でもどこか、小さく見えた。


まるで、叱られて反省する子供のようだ。


……いや、実際そうなのだろう。


見た目からして、まだ十代半ばほど。

先ほどまで責任の重さを背負っていた彼は、まだ成長途中の少年なのだ。


そんな子が、こんなにも必死に考えて苦しみ、こうして誠意を見せてくれている。


こんな猫の私に、そこまで頭を下げなくてもいいのに。


前の世界では、考えられないことだった。


「やれ」と言われれば、やるだけ。

感謝されることもなく、

「無能だとこの程度か」と言われる毎日だった。


この世界に来て。


猫の姿の私でも、ここに居ていいと思えたのは――

彼がここへ誘ってくれたからだ。


皆に感謝され、存在を認めてもらえた。


だから――


私は頭を下げているテオドールの上へ飛び乗った。


驚く彼の後頭部を、前足でぽんぽんと撫でる。


レオンハルトさんがよくやっている撫で方の真似だ。


猫の手だから、人間のようにはいかないだろう。

でもきっと、伝わるはずだ。


そうして彼の背中から降りると、私はカトレアさんに導かれるまま前へ進む。


後ろで立ち尽くしていたテオドールは、呆然としたあと――


何か言いかけた言葉を飲み込み、静かに後を追ってきた。

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